海洋散骨をしてみたい!気にしておきたい3つの注意点
海洋散骨とは?徹底解説
- 海洋散骨は経済的で自然に帰る供養。法律を守り周囲への配慮が必要。
- 業者選びは価格と信頼性、サービスを見極め悪質なところは避ける。
- 納骨堂や樹木葬など、継承不要のお墓の選択肢も多様に存在。
お葬式といえば、「僧侶を呼んで仏式で行う」と先入観をもってしまっている人はいませんか?
同様に亡くなった後に納骨する際は、「お墓を作らなくてはいけない」と思っている人もいるかもしれません。
しかし、時代の変化とともに葬儀の形式も大きく変化してきています。
今回は、近年増えてきている「海洋散骨」について解説します。
海洋散骨を検討しているけど、細かいことがわからず、ためらっている人はメリット・デメリットや注意点を把握して検討してみましょう。
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この記事の目次
海洋散骨について
海洋散骨とは、墓石を作らず亡くなった人の遺骨を海へ撒いて供養するという方法のことです。海へ遺骨を撒くといっても、そのまま撒くわけではなく「粉骨」といって粉末状に加工したうえで行うことが一般的です。
従前の墓石という選択肢だけでなく、さまざまな供養方法が提供されるようになったことも海洋散骨が注目される理由の一つでしょう。先祖代々のお墓がないような人は家族が亡くなったときにお墓の購入を検討しなくてはいけません。
しかし、海洋散骨であればお墓を購入する必要はないため、経済的にも負担は軽くなります。また、本人の意向で生前に海洋散骨を選ぶということも可能です。自分の遺骨を大海原へ還してあげることで自然と一体となれるのではと考える人もいます。
海洋散骨の方法と流れをチェックしよう
海洋散骨をする方法や流れはどういったものになるのでしょうか。海洋散骨は「遺骨を海に撒くだけ」というイメージが強いため、個人でもできると感じるかもしれません。しかし、実際はポイントをしっかり押さえておく必要があります。ここでは、散骨業者の探し方や海洋散骨の方法と流れについてみていきましょう。
散骨の専門業者に依頼する
海洋散骨を行いたい場合は基本的に散骨の専門業者へ依頼することがおすすめです。なぜなら、海洋散骨は遺骨を海に撒く以外にもさまざまな手配が必要だからです。
例えば、海に出るために船を手配したり、遺骨を粉状にするため粉骨したりするなどの段取りが必要になります。散骨専門の業者に依頼することでスムーズにセレモニーが進行できるということは大きなメリットです。
散骨業者を探す3つの選び方
散骨業者を探すには大きく分けて3つの方法があります。散骨をしたくても「どうやって散骨業者を選べば良いかわからない」という人は押さえておきましょう。
インターネットで検索する
時間をかけず、手軽に探したいならインターネットで検索するのがおすすめです。「散骨」「業者」などのキーワードを入力すれば、海洋散骨を行っている業者がいくつもヒットすることでしょう。
ただし、インターネットの情報はすべて正しいとはかぎりません。そのため、記載された情報をすべて鵜呑みするのではなく、必ず直接電話をかけて対応や説明がしっかりしているかなど確認することが必要です。
終活イベントに参加する
終活イベントに参加して散骨に関する情報収集をすることも方法の一つです。インターネットで探すことが苦手な人だけでなく、葬儀やお墓など総合的に知識を深めたい人にとってはおすすめでしょう。
終活イベントであれば、自分で細かい内容を掘り下げていかなくても進行役がスムーズに説明してくれる点は大きなメリットです。
規模の大きい葬儀業者に相談する
規模の大きな葬儀業者に足を運んで相談することも良いでしょう。葬儀スタイルの多様化をうけて大手の葬儀業者は商品のラインナップを増やしている傾向にあります。また、葬祭ディレクターの資格を保有しているスタッフも多いと考えられるため、相談するにはうってつけといえます。
散骨を行っている東京の専門業者3選
実際に散骨を専門に行っている業者を3社取り上げてみます。海洋散骨といっても遺族の希望はさまざまです。自分の理想的な散骨業者をみつけてみましょう。
東京海洋散骨
株式会社クローズボンドが運営する東京海洋散骨は「チャーター散骨プラン」「合同散骨プラン」「委託代行散骨」など充実したプランが多い散骨業者です。遺骨の預かりは基本的に対面で行うことをコンセプトとして丁寧かつ、遺族が満足できるような散骨供養に力を入れています。
「チャーター散骨プラン」は船をチャーターして散骨するプランは18万円(税抜き)~相談可能です。「合同散骨プラン」は10万円(税抜き)~、委託代行散骨は3万5,000円(税抜き)~となっています。
海洋自然葬の風
株式会社風が運営する海洋自然葬の風は1998年から海洋散骨を行っている経験豊富な散骨業者です。海洋散骨に関するマナーや法令から遺族の希望に寄り添った提案まで安心して任せられるでしょう。
北海道から沖縄まで日本全国、遺族が希望する場所での散骨について実績があることも安心材料といえます。「チャーター散骨格安コース」は17万円(税抜き)~、「委託散骨格安コース」は4万円(税抜き)~です。
グラン・ブルー・セレモニー
株式会社ジールが運営するグラン・ブルー・セレモニーは創業1993年という業界屈指の散骨業歴を持つ実績のある業者です。散骨の出港場所は全国80ヵ所以上から選択することが可能で、「東京発合同散骨」なども行っています。
「貸切乗船チャーター散骨」は粉骨する代金も含んで25万円(税抜き)、「東京発合同乗船散骨」は同様に粉骨代金含めて12万円(税抜き)です。
海洋散骨する場合は値段で業者は選ばない
海洋散骨を業者へ依頼する場合は、単純に金額が安いという理由だけで業者を選定することは避けましょう。なぜなら、海洋散骨は行政的な許可を取って行う必要がありませんので、「安かろう悪かろう」の悪質業者に遭遇する可能性が高まるからです。例えば、業界相場よりも50%も値段が安いなど、値段で勝負しているような業者は避けたほうが無難でしょう。
散骨の手続きや手配を自分で行う
海洋散骨は自分で行うことも可能です。基本的に海洋散骨するために行政的な許可書が必要ではないからです。ただし、自分で海洋散骨をする場合はさまざまな注意点があります。
海に撒くからといって、遺骨をそのまま海へ投げ込んだり、人目に付くような海岸付近くで撒いたりすることは厳禁です。節度をもったうえで行わないと、海洋散骨は刑法に問われる可能性もありますので注意しましょう。
散骨が増えている2つの理由
海洋散骨が供養方法の一つとして選ばれるようになった主の理由は、経済的な問題と後継者問題です。ここでは、散骨が増えている理由について2つの視点からみてみましょう。
経済的な問題
日本では慣行となっている墓石ですが、建立する場合は墓地を借りて墓石を建てます。そのため、永代使用料や墓石の代金など大きな出費がかかりがちなのです。
「2017年お墓購入者アンケート調査」(全優石)によると、お墓の全国平均価格は167.3万円となっています。葬儀の費用も考えると経済的負担は決して軽いとはいえないのが現状でしょう。海洋散骨であれば、個別の平均相場は20万~30万円程度です。
後継者問題
お墓を管理していく、いわゆる「墓守」という役割を伝承する人がいないことも問題の一つです。
実際に子どもや親族がいないという切実なケースもあれば、子どもや親族はいるが余計な負担をかけたくないというケースもあります。自分が亡くなる前に終活をして、周りに迷惑をかけないために海洋散骨を選ぶということもあるのです。
散骨を選択する人の事情はさまざまであることがよくわかったのではないでしょうか。
海洋散骨で押さえておきたい法律や条例
海洋散骨をする場合は、特段行政的な手続きや許可は必要ありません。しかし、知識がないまま海洋散骨を行うと法律違反となる場合がありますので十分に注意しましょう。ここでは、散骨と法律の関係について解説します。
墓地埋葬法と刑法190条
日本の場合は遺骨そのまま埋葬するには墓地埋葬法上、自治体の許可が必要です。これを知らずに海洋散骨を個人で行ってしまうと、場合によっては刑法190条の死体損壊となってしまう可能性があります。3年以下の懲役となっていますので、個人で散骨を行う場合は注意が必要です。
自治体によっては条例がある
海洋散骨に関して2018年5月時点で国が許可や禁止などを定めている法律はありません。しかし、自治体によっては条例で散骨を禁止しているところもあるため注意しておきましょう。海洋散骨の専門業者に依頼したり、個人で散骨を行ったりする場合、「節度をもって行ったつもり」でも条例で罰則を受ける可能性もあるのです。
例えば、北海道長沼町では焼骨を散布することは禁止されており、6月以下の懲役、または10万円以下の罰金となっています。海洋散骨をする際は専門業者へ依頼したときでも散骨する地域の自治体が許可しているかまでチェックしておきたいところです。
海洋散骨をする人の2つの特徴
海洋散骨をするのに向いている人は、経済的負担を減らしたかったり、自然に還りたいという思いを持っている人です。
経済的負担を軽減可能な散骨
上述したように、従来の墓石に納骨するとなると葬儀と墓石で数百万円にもなってしまいます。そのため、費用負担の軽い供養方法を検討している人にとっては大きなメリットです。新しいスタイルの海洋散骨は5万~30万円と方法によって幅があります。
個人で海洋散骨を依頼する場合
遺族のみで船を手配して海洋散骨を行う場合の平均相場は20万~30万円です。どうしても、船を手配するという関係上、合同や委託よりも費用が高くなります。例えば、身内だけでゆったりと海洋散骨したいという人にはおすすめです。
合同で海洋散骨を依頼する場合
複数の遺族と合同で海洋散骨をする場合の平均相場は10万円前後です。個人で手配をするより、船の代金が安くなるという点ではメリットが大きいでしょう。ただし、日程は他の遺族と合わせたり、人数が制限されたりするなど、こちらの希望するスタイルが取りにくい可能性があります。
委託で海洋散骨を依頼する場合
遺族が海洋散骨に参加しない場合は専門業者へ委託するという方法もあり、平均相場は5万円前後です。遺族のスケジュールが合わない場合などは業者へ任せられるのでメリットでしょう。散骨後、散骨証明書や写真・動画などを提供してくる業者もあります。そのため、自分の希望に合った業者を探すのもよいでしょう。
自然に還りたい人にぴったり
自分が亡くなった後は自然に還してもらいたいという人にも海洋散骨は選ばれる傾向です。墓石は値段が高いだけでなく、「石で閉じ込められている感じがして嫌だ」という人もいます。
死生観に関することなので、価値観は多種多様です。例えば、海洋散骨以外でも自然に還ることができる樹木葬や山への散骨を希望する人もいます。
ここでは、散骨する人の特徴について解説しました。死後の世界は誰にもわかりませんが、自分の死生観や死後の価値観にあったものをできるだけ選択したいものです。
散骨をすると決める前に考えたほうが良い3つのポイント
海洋散骨については法整備がしっかりされていないため、個人で行う場合、業者に依頼する場合のどちらでも最低限押さえておきたい3つのポイントがあります。
散骨する場所が周りの迷惑にならないように行う
業者に依頼せず自分で海洋散骨をする場合は「節度をもって行う」ことが大切です。法律や条例で海洋散骨が禁止されていなかったとしても、人目に付く場所で散骨していたら周りからすればあまり気分の良いものではありません。
人目に付かないといっても私有地に入り込んで行ったり、漁業の妨げになるような場所で行ったりすれば迷惑になるでしょう。
そのため、岸から数キロメートル離れた場所まで船で出てから海洋散骨を行うことが必要です。専門業者へ依頼した場合は、業者選びを間違わなければこれらの心配は少ないでしょう。
しっかりと粉骨を行う
海洋散骨するためには、1~2ミリメートル以下の粉末状に粉骨する必要があります。みただけで骨とわかるような状態で散骨することは法律違反となるだけでなく、刑罰の対象にもなりかねません。
専門業者に依頼する場合、粉骨に関しての心配は少ないです。しかし、個人で粉骨をしようとすると、砕き方が甘くて問題になるということも十分あり得ます。
事前に親族への理解を深めておく
「海洋散骨がどんな供養方法なのか」について事前に親族への説明しておくことは重要です。信頼できる散骨業者を探して、注意点を押さえていても自分の親族が海洋散骨に理解がないと、後々親族間でトラブルや不仲に発展しかねません。
世間で周知されてきているといっても自分の親族が散骨をするとなると抵抗を覚える人はいまだにいます。
従来の供養方法が一番と考えている人にとって、慣れない供養方法は故人を侮辱する行為と捉えてしまう人もいるのです。
そうならないためにも、「海洋散骨の内容の説明」「故人の意思で散骨をする」など、丁寧なアプローチが大切になります。こちらが事前に誠心誠意説明をすれば、親族もきっと理解をしてくれるでしょう。
継承する必要のないお墓の紹介
海洋散骨以外にも継承する必要のないお墓はいくつかあります。ここでは、5つの視点からみていきましょう。
1.納骨堂に収蔵する
納骨堂とは遺骨を安置するための施設です。霊園や寺院などにあることが多いでしょう。法律では墓石などに納骨することを埋蔵といいます。
一方、納骨堂へ安置する場合は収蔵です。短期や長期など預かり期間を選択できるケースも多いでしょう。また、納骨堂もロッカー式や棚式、自動搬送式などさまざまな形式が提供されていることも特徴です。
2.樹木葬に埋蔵する
海洋散骨と同様に自然に還すという意味合いが強いのが樹木葬です。ただし、散骨と異なり、納骨する場所は区画ごとに決まっていることが一般的といえます。樹木葬によっては自分の好きな樹木を選定できる場所もあります。
しかし、あまり大きくなりすぎる種類の木は植えられない傾向ですので注意しましょう。文字通り遺骨は数十年かけて土に還っていきます。改葬は基本的にできないため、その点を考慮して選びましょう。
3.合祀墓に埋蔵する
たくさんの遺骨をまとめて埋蔵できるスペースがあるのが合祀墓です。合同墓や永代供養墓などともよばれます。知らない人の遺骨と一緒に埋蔵されることになりますが、墓石を建てる必要はなく費用もリーズナブルなため経済的負担を減らしたい人にとっては大きなメリットです。
4.自宅で遺骨を保管する
火葬場から持ち帰った遺骨を自宅で保管したままにすることも一つの方法です。火葬が終わると骨壺を入れる箱に埋葬許可証が同梱されることが多いでしょう。
埋葬許可証はどこかに納骨する際は必要な書類で、5年間の保管義務があります。例えば、いったんどこかへ納骨してしまった後では自宅保管はできません。しかし、火葬して埋葬許可証が手元にある状態であれば自宅で遺骨を保管しておくことは可能です。
5.火葬場で遺骨を引き取らない
地域によって差があるでしょうが、火葬後に遺骨を引き取らないという選択肢もあります。一般的に東日本では全骨収骨といって、遺骨をすべて持ち帰ることが慣習です。しかし、西日本では、部分収骨で全体の3分の1程度しか持ち帰らないということも珍しくありません。
そのため、火葬場によっては遺骨を引き取らなくても良いという場所もあります。原則、遺骨は持ち帰るという火葬場のほうが多いでしょうから、あくまでも特殊な一例として認識しておきましょう。
海洋散骨は節度をもって事前にルールを学んでおこう
「海に遺骨を撒く」という簡単に思える海洋散骨ですが、実際に行う際はさまざまな細かい配慮が大切です。周りに迷惑をかけないためにも一連の流れや注意点についてしっかりと押さえておきましょう。
この記事のまとめ
- 海洋散骨は個人でも業者でも行うことは可能
- 個人で行う場合は、節度をもって周りに配慮する
- 自分で粉骨する場合は1~2ミリメートル以下になるように注意する
- 海洋散骨は経済的な問題や後継者問題からも選択する人が多い
- 国で海洋散骨を制限する法律はないが、自治体によっては条例がある
- 海洋散骨をする際は事前に親族へ理解を深めておく
- 海洋散骨以外にも、合祀墓や樹木葬、納骨堂など承継不要のお墓がある
海洋散骨は細かい定義やルールが整備されていないため、利用する人のモラルや、専門で行う業者の経験値によってスムーズに行えるかどうかが決まります。
新しいスタイルの供養方法だからこそ、他人任せにしすぎず、節度をもって気持ちの良い海洋散骨を行いたいものです。
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
海洋散骨では「節度をもって行う」の「節度」がキーワードになります。
「節度」の解釈は多様で、専門家の間でも議論がなされているところですが、少なくとも散骨業者の間では、「遺骨は粉骨にする」「漁船など周囲に配慮する」「海事法規順守」などのほか、喪服を着用しないなどの配慮をしながら行っています。
海洋散骨といっても、すべての遺骨を海にまくのではなく、一部を手元に残しておく人も多いようです。
手元に残しておく場合は、いずれその遺骨をどのようにするかも合わせて考えておくと良いでしょう。
数年間は自宅の仏壇などに保管し、後にお墓に納骨するケースもありますし、数年後、他の家族が亡くなった場合に一緒に散骨するケースもあります。