海洋散骨のモラルと安心を守る団体『一般社団法人日本海洋散骨協会』を紹介!
供養の多様化にともない、近年は海洋散骨を選択する人が増加しています。
ほとんどの人は専門業者に依頼して船を出してもらい、散骨をしていますが、現在の日本には散骨を禁止する規定はありません。
そのため、安心して依頼できる業者を選んで節度のある散骨を行いたいものです。
今回のライフエンディングジャーナルで紹介する『一般社団法人日本海洋散骨協会』は、散骨のガイドラインを定めることにより、安心して海洋散骨を依頼してもらうことを目的としている団体です。
ルールやマナーを遵守する企業が加盟している同協会の取り組みを担当者のインタビューを交えつつ紹介します。
この記事の目次
『一般社団法人日本海洋散骨協会』とは
一般社団法人日本海洋散骨協会は、安全かつ安心な海洋散骨を目指して2014年12月1日に設立された団体です。
40社以上の事業者が正会員、または特定事業会員として参画していて、現在、代表理事は株式会社レイセキの栁田さんが務めています。
協会では海を生業とする人々とのトラブル防止や環境保全のために海洋散骨に関するガイドラインを定め、遵守することで、ご遺族に安全かつ安心できる海洋散骨を提供しています。
ガイドラインを遵守する事業者の証「ブルーハートマーク」
一般社団法人日本海洋散骨協会が発行しているブルーハートマークは、青い海に広がる白と青の花びらが特徴。
故人や故人を想う人々の「心」と、海洋散骨事業者の「心」を形にしていています。
当協会が定めたガイドラインを遵守し、経験や実績、許可および届出を確認した事業者に対して付与しています。
よって安心して依頼できる散骨業者を探すときには、このブルーハートマークが目印です。
カタログやHPにブルーハートマークが掲載されている業者は、協会の加盟企業のため、海の環境保全とお客様の安全に努めています。
協会が定める海洋散骨ガイドラインのポイント
祭祀の目的をもって、故人の焼骨を海洋上に散布する海洋散骨ですが、墓地や埋葬などに関する法律には、散骨の規定がありません。
一部地域の条例を除いて法規制の対象外とされているため自由に行えるものの、行う側の自主判断に任されているのが現状です。
そのため、一般社団法人日本海洋散骨協会は、散骨方法に関する自主基準を業界団体として策定する必要があると判断し、ガイドラインを策定しました。
ガイドラインの主なポイントは以下の5つです。
【ポイント】海洋散骨のガイドライン
- 粉骨の義務
- 散骨場所の選定義務
- 自然環境への配慮
- 参列者の安全確保
- 一般市民への配慮義務
上記5点に加え、補足に関してそれぞれ紹介いたします。
粉骨の義務
同協会の加盟事業者は海洋散骨の実施にあたり、遺骨を遺骨とわからない程度(約1~2mm) に粉末化しなければなりません。
散骨場所の選定義務
加盟事業者は人が立ち入ることのできる陸地から1海里以上離れた海上のみで散骨が可能です。
河川やダム、湖や海岸近辺での散骨は禁止されていて、散骨のために出航した船舶においてのみ散骨が許されています。
自然環境への配慮
加盟事業者は散骨にあたって金属やビニールプラスチックなど、自然に還らないものを海に撒いてはいけません。献花や献酒をする際には周囲の状況への配慮が求められます。
参列者の安全確保
加盟事業者は散骨の際に一人当たり3,000万円以上の船客賠償保険に加入した船舶を用いなければなりません。
船舶の整備や保全、船舶の乗船定員の厳守、小児のライフジャケットの着用や緊急時の連絡体制の確立など、細かい安全規定が定められています。
一般市民への配慮義務
加盟事業者が海洋上で散骨をする際には、漁場・養殖場・航路を避けて、一般の先客から視認されないように努めています。
一般の先客がいるフェリーや遊覧船、交通船からの散骨は禁止で、桟橋やマリーナを利用する際には散骨の主催者や参列者にはもちろん、他の利用者へも配慮しなければなりません。
補足
散骨は、基本的に生前の本人または葬儀を主催する権限者からの申し込みのみを受け付けています。
本人の生前の散骨希望意思を確認できず、親族以外が散骨を申し込んだ場合は、全量散骨を避けるなど、適切な助言を努めています。
また加盟事業者は遺族から希望があった場合、散骨した場所を示す散骨証明書を交付しなければいけません。
上記のポイントを含む内容をガイドラインで策定しています。
これによって海を生業とする人々とのトラブルの防止や環境保全、散骨の安全確保などの観点から、問題視される可能性のある海洋散骨の抑止につながると協会は考えています。
散骨の専門家「認定海洋散骨アドバイザー」の認定を行う
一般社団法人日本海洋散骨協会では、海洋散骨について体系的な知識を持って、消費者にアドバイスができる専門家を「海洋散骨アドバイザー」に認定しています。
アドバイザーは葬送全般に関する知識や法規・マナー、また船舶や海洋に関する基礎知識を豊富に有しています。また、自然環境への配慮や遺族の心のサポートなどが求められている点も特徴です。
安心・安全な海洋散骨を提供し、普及する水先案内人である海洋散骨アドバイザーを育成すべく、協会では小冊子「海洋散骨ルールブック」をホームページ上でアップし、希望者には公布しています。
加盟業者数は40社以上
一般社団法人日本海洋散骨協会には、正会員と特定事業会員を合わせて40社以上の業者が加盟しています。
北海道・東日本・東海・関西・中四国・九州・沖縄と、全国7つの支部に分かれていて、それぞれに支部長が存在します。各地で海洋散骨業者を探している人は、同協会のホームページから簡単に探すことができるので便利です。
海洋散骨を安心・安全に行うことを目的としている一般社団法人日本海洋散骨協会。そんな協会の設立者である担当者様インタビューを行いました!
一般社団法人日本海洋散骨協会のスタッフにインタビュー
今はたくさんの散骨業者が一般社団法人日本海洋散骨協会に加盟されているようですね。2014年に設立された協会ですが、設立のきっかけや背景を教えていただけますか。
担当者:日本で海洋散骨のニーズが高まるにつれて、海洋散骨を行う事業者も軒並み増加しました。
散骨に関する法律がないことで無法地帯にならないように、地元漁師や繁殖を行う方々、またレジャー産業など海を生業とする方々とのトラブル防止や、環境保全のためにルールの整備が必要と考え、協会を設立しました。
洋散骨を良く思わない人もいると聞いたことがあります。実際にこれまでどのようなトラブルが発生していたのでしょうか。
担当者:養殖場で散骨をしてしまい、地元業者の間でトラブルになったことはあります。
また、散骨自体を良く思わない人からクレームが入ったことがあるため、現在喪服で乗船や参列ではなく平服で参加など、船着き場ではパーティーや結婚式が開催されていることもありますので、そのような方への配慮としてです。
大きな裁判にまで発展したトラブルはありませんが、一部の港で散骨が禁止されたことはありました。あとは、潮の流れで献花が流れてしまったこともありますね。
さまざまな原因でトラブルが起こりうるのですね。献花が環境汚染につながるのでは?という声もあるなかで、協会全体では環境にどのような配慮をされていますか。
担当者:当協会では釘や貴金属などをご遺骨と一緒に撒かないことはもちろん、六価クロムの除去を行うように推奨しています。
地球にやさしい献花の使用は事業者によって異なりますが、協会では粉骨時に利用する六価クロムの還元剤の製造・販売を行っています。
環境に配慮した散骨を期待できるのですね。海洋散骨業者のスタイルも多様かと思いますが、安心かつ安全な業者を選ぶポイントがあれば教えてください。
担当者:まずは気になる複数の業者から資料請求をしてみてください。
各社が提供している内容とお骨の取り扱い方(郵送・宅配のみの受付で、訪問・持込など直接のコンタクトを避けている対応には注意)、使用船舶の保険加入有無や船舶の不定期行路の取得状況は特に注意して確認しましょう。
いくつかポイントがあるのですね。加盟業者が多い一方で、まだまだ一般社団法人日本海洋散骨協会に加盟していない業者もいると伺っていますが、加盟業者を利用するメリットはどこにありますか。
担当者:当協会は最新の葬送に関する情報に精通していて、業者にも提供しています。
そのため、加盟業者を利用することで海洋散骨に関する有益な情報を得られるのではないかと思います。さらに、研修を受けている業者であれば、スムーズかつ安心・安全な海洋散骨を期待できます。
今後海洋散骨がより広く浸透するために、法律の整備が進むと良いですね。ガイドラインについてのご意見がありましたら、ぜひお願いします。
担当者:埋葬と散骨はそもそも違うものですので、間違った知識で散骨をしないようにしていただきたいと考えています。
現在法律の規制がないので難しいところですが、今後は自然葬など他の協会とも提携して、新しいガイドラインを作っていけたらと考えています。散骨関連の法律の整備に向けた活動は、今のところ予定していません。
近年は、海洋散骨を希望する人が増えていて、供養のかたちが多様化していくのではないかと考えています。実際に海洋散骨希望者は増えているのでしょうか。今後の散骨の立ち位置についての考えについてもお聞かせください。
担当者:一般社団法人日本海洋散骨協会のホームページのアクセス数が上がっていること、また海洋散骨アドバイザーの希望者が増えていることから、海洋散骨への注目度は高まっているといえます。
今後は墓守の減少や少子化、また経済的な面からお墓を建てるのが難しい時代になり、ますます散骨希望者が増えていくのではないでしょうか。実際に自身の散骨を希望する方も増えていますし、散骨の認知度が9割を超えたことで、今後はますます増えるのではと考えています。
需要が高まるにつれて、協会の動きも活発になりそうですね。最後に協会の今後の展望や注力することについてお聞かせください。
担当者:一般社団法人日本海洋散骨協会は目的の柱に、3点を掲げています。
- 散骨業者の海洋散骨における倫理及び社会的責任の明確化
- 漁業者など海洋関連業界の理解
- 一般への正しい海洋散骨の在り方の周知及び普及
の3つを掲げています。①と②については積極的に取り組んでいますが、③についてはまだまだ一般顧客と触れ合う機会が多くありません。
今後は「海洋散骨アドバイザー」が一般の方と触れ合い、正しい知識をお伝えできるような体制作りに注力する予定です。アドバイザーの活躍をもって、散骨業者の協会への加入率が上がると期待しています。
加入業者が増えることで、海洋散骨のイメージがより改善されていきそうですね。貴重なお話をありがとうございます!
一般社団法人日本海洋散骨協会 概要
団体名 | 一般社団法人日本海洋散骨協会 |
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所在地 | 東京都墨田区業平3-8-4 ビレッジマルタニ3F |
代表理事 | 栁田 剛 |
営業時間 | 平日10:00~17:00 |
公式サイト | https://kaiyousou.or.jp/ |
編集後記
これまでさまざまな海洋散骨業者をライフドットで取り上げてきましたが、非常に数が多く、サービスもさまざまだという印象を持ちました。一般社団法人日本海洋散骨協会はそういった業者にしかるべき指導を行い、情報を提供していることがわかり、大変勉強になりました!
ライフエンディングジャーナルは、「Life.(ライフドット)」が企画・発信する特別インタビュー企画です。ライフエンディング業界のイマを取り上げ直接取材し、業界全体をライフドットからも盛り上げて行きます。業界に関わるサービスや商品、そして第一線で活躍する人々にフォーカスし、ライフエンディング業界に対する想いやこれからの展望をお届けいたします。