「武田正文の仏心チャンネル」インターネットを通して世界へ発信!仏教を伝える活動
日本は仏教国といわれますが、特定の宗教観を持っている人は限られている印象です。自分の家族の宗派さえ知らないという人も少なくありません。
取っ付きにくい仏教用語や作法の存在も、仏教離れを起こしている原因の1つでしょう。
仏教から離れている人たちにこの1年間、YouTubeやSNSを通じて仏教情報を提供しているのが、今回紹介する浄土真宗本願寺派高善寺副住職の武田 正文(たけだ まさふみ)さんです。
専門用語を使わずに、わかりやすい法話を発信している武田さんのYouTube登録者数は現在1万人に迫る勢いで注目が集まっています。
「仏教は自分たちの視点を切り替えて、新しい気づきをくれるもの」と語る、武田さんの取り組みと考えを、インタビューを交えて紹介します。
島根の山奥から世界へ!武田正文の仏心チャンネル
武田正文さんは現在、島根県邑南町に位置する浄土真宗本願寺派高善寺で副住職を務めています。
高善寺は、室町時代に第八代御門主蓮如上人の直弟子である了知によって建立された歴史あるお寺です。
武田さんはYouTubeやSNS、またオンラインカウンセリングといった、時代に合った取り組みを積極的に進めています。
そのなかでも、YouTubeチャンネル『武田正文の仏心チャンネル』は大好評で登録数が上昇中。ハンガリーからの視聴者の獲得やブラジルの僧侶との共演など、グローバルな活躍をしています。
そんな武田さんのこだわりは、「わかりづらい仏教用語を使わない法話」にあるとのこと。自身の臨床心理士や公認心理士の資格・経験を生かしつつ、身近でわかりやすいエピソードを用いて仏教の教えを紹介しています。
私たちの視点を切り替えて、新しい気づきをくれる仏教と、心を丁寧に表現する心理学を組み合わせることが、相談者の人生を豊かにするきっかけづくりになると語っています。
Youtubeチャンネルを作った背景
さまざまな人から相談を受け、アドバイスすることが多いお坊さんですが、臨床心理士の資格を持っているお坊さんは決して多くありません。
そこで武田さんは「オンラインを通じて情報を発信することが、仏教の現代的な意味や新しい価値観の発見につながるかもしれない」と考え、YouTubeチャンネルの開設を決意したと言います。
仏心チャンネルで紹介している題材
武田さんが仏心チャンネルで紹介している主な題材は、以下の3つです。
- 浄土真宗の分かりやすい解説
- 仏教の教えに学ぶ生き方
- 浄土真宗のよく聞く○○
詳しい内容をそれぞれ紹介します。
浄土真宗の分かりやすい解説
『仏心チャンネル』のなかでも、もっとも代表的な【分かりやすく解説】シリーズでは、浄土真宗の教えや葬儀、歴史、南無阿弥陀仏などについて解説しています。
いきなり葬儀や法事に参列することになった際には焦る人も多いかと思いますが、この動画を見ることで基本的な作法や知識を身につけられます。
仏教の教えに学ぶ生き方
【仏教の教えに学ぶ生き方】シリーズでは、仏教と心理学を掛け合わせることで、人生に必要な考え方を学ぶことができます。人に言えない悩みを抱えている人も、これを聞くだけで気持ちが軽くなるはずです。いずれの動画も10分程度の長さで、通勤中や夜の自由時間など、ちょっとした空き時間にも耳を傾けられます。
浄土真宗のよく聞く○○
「あなかしこ」「白骨の章」「領解文」など、浄土真宗を学ぶ際によく出てくる言葉をわかりやすく解説しています。誰もが一度は聞いたことのある、「浄土真宗のお経の解説動画」は大人気で、再生回数は10万回を突破しました。
仏教に新しい風を通すべく、チャレンジを続ける武田さんは、どのような考えを抱いているのでしょうか。ここからは、インタビューを通じて武田さんから伺ったお話を紹介します。
浄土真宗本願寺派高善寺副住職の武田正文さんにインタビュー
武田さんのYouTubeを拝見しました!登録者が1万人近く、人気の高さを伺えました。取り組みを通じて叶えたいことはありますか?
武田さん:私が住んでいる地域は人口減少が著しいこともあって、法座などへお参りされる方が年々減少しています。
この寺院離れには、高齢化や定年後も働くシニアの増加で、お参りできない人が増えたことも一因と言われています。
一方で若い世代は、お寺と接点を持つ機会が少なくなってきました。私は、この寺院離れが抱える問題にはYouTubeでこたえられると考えています。時間や接点がなくても、インターネットが発展している現在であれば、仏縁に出会えるはずです。
一度YouTubeをご覧になって、仏教への関心が高まったら、ぜひお寺へお参りに来ていただきたいと願っていました。そしてYouTubeを始めて一年が経過した今、実際にご縁の広がりを実感しています。
ご門徒さんのなかにも「お寺にお参りしたことがない」「法話を聞いたことがない」という方が少なくありません。
そのような方にもまずはYouTubeで雰囲気を味わっていただき、仏教を身近な存在に感じていただきたいですね。
おっしゃる通り、登録者数がどんどん増えていて、ご縁の広がりを感じられますね。武田さんは檀家制度の変化を見越して発信活動をされているそうですが、具体的にどのような未来を予想されていますか。
武田さん:子どもや孫世代まで檀家制度をつなげていきにくい時代には、すでに入っています。これからは実際にどの僧侶の話を聞きたいのか、お参りしたいのかを個人個人が選択していく時代になるのではないでしょうか。
江戸時代以前はそのようなかたちだったと聞きますが、これからは再び個人が選択する時代に戻っていくと予想しています。
武田さん:おっしゃる通り、オンラインの法事に抵抗感を抱く方も少なくありませんでした。これまでの当たり前がガラッと変わるわけですので、反対されるお気持ちもよく分かります。オンライン法要は、親族のなかに若い世代がいらっしゃるとスムーズに接続できて、みなさまに喜んでいただいた事例もございます。
一方、高齢世代の御宅では、家にWi-Fiやパソコンなどの機材がなく、断念したこともありました。お寺の行事の配信はYouTubeで気軽に楽しめても、オンライン法要が一般に浸透するのはまだまだ先になるかもしれません。
武田さん:なるべく専門用語を使わずに、視聴者の身近な体験から人生について考えられる動画を作っています。仏教をいつでもどこでも、わかりやすくお聞きいただけるようになるととてもうれしいですね。
また、コンテンツでは死別の悲しみや、心の悩みについても多く解説しているので、使う言葉には気をつけています。意図しないところで誰かを傷つけてしまわないように、丁寧に台本を作ってお話をしています。
あとは宗派の作法についてもYouTubeで解説していますが、あくまで主要な作法の説明のみです。地域柄によって細かい作法は異なるため、「詳しくはご自身の近くのお寺で聞いてくださいね」の一言を忘れないようにしています。
武田さん:毎週100人もの方が法話を聞きに来てくださるのは、お寺では信じられないことですね。ご縁が、この島根の山奥から広がっているのはとてもうれしいですね。
また、現在は日本国内のみならず韓国やアメリカ、ハンガリーからも見てくれている方がいて、そこでも広がりを感じますね。
普段あまり交わることのなかった大学教授やブラジルのお坊さんとのコラボレーションは、とても印象的な出来事でした。
武田さん:今は時代の変化が激しく、いろいろな意味で不安定な時代です。先祖供養だけではなく、自分の人生について考える機会が社会全体で減っています。特に生老病死といった、つらい現実から目をそむけ続けている人は少なくありません。
しかし、生老病死は誰にでも平等に訪れるものです。そのことから目をそむけ続けていると、いつか訪れる自分の人生の危機に向き合えなくなってしまいます。
そこで、お墓の必要性以前に自分の人生について丁寧に考えることが必要だと考えます。これについては、僧侶がもっと積極的に議論を投げかけなければならず、私たちがYouTubeやSNSの活動を通じてその一端を担いたいと考えています。
武田さん:コロナ禍による社会情勢の変化で、大きな不安を抱えている方が多いかと思いますが、歴史上、時代の節目を迎える際にはいつも仏教がありました。
迷っているときには、ぜひ私のYouTubeなどを通じて仏教や法要の情報を集め、中心道を見つめていただきたいです。それがご自身の人生を深めていくご縁になれば幸いです。
YouTubeやSNSなどの現代的なツールを活用しながらも、武田さんの根本にある仏教への熱い思いに心を打たれました。貴重なお話をありがとうございます!
武田さんについて
武田正文の仏心チャンネル | https://www.youtube.com/channel/UCzmGUiuJbsFPl8nkYqz2eeQ |
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高善寺サイト | https://kozen.or.jp/ |
高善寺住所 | 島根県邑智郡邑南町鱒淵107 |
布教使.com | https://fukyo-shi.com/takeda-masafumi/ |
Twitterアカウント | https://twitter.com/takeda394 |
Facebookアカウント | https://www.facebook.com/masafumi.takeda.58/ |
編集後記
YouTubeを活用するお寺も増えてきていますが、とりわけ武田さんのチャンネルは視聴回数も登録者数も多くて、高い人気ぶりをうかがえました。もうひとつの大きな取り組みであるオンライン法要の広がりにも期待したいです!