墓地の地目変更は慣れない手続きが盛りだくさん!押さえておきたい3つの書類
墓地の地目変更とは?徹底解説
- 墓地にするため地目変更は登記簿の更新が必要。
- 地目変更には登記申請や案内図、公図の提出が必須。
- 墓地設置・廃止には許可や同意、分筆登記など多くの手続きが要る。
- 地目変更登記に税金はないが、他の手続きで費用がかかることも。
墓石を建てる際にはさまざまな制約があります。
なぜなら、墓石は墓地にしか建てられないことになっているからです。
墓地になる場所の地目(ちもく)を変更する「地目変更」が必要になり、行うことはめったにないので分からないという人がほとんどでしょう。
今回は、登記簿上で墓地となっている地目の変更をどのように行っていくのかという流れや、地目変更に伴う費用について解説していきます。
墓地に関する地目変更の流れを押さえておくことで周囲とのトラブルを避けることもできるでしょう。
しっかりとポイントを押さえて活用してはいかがでしょうか。
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この記事の目次
地目変更は登記簿上の変更
地目変更とは登記簿上にある「地目」という項目を別の内容に変更する手続きです。
地目とは、登記所で決定した土地の用途のことです。
不動産登記事務手続準則第68条によると、23種類の項目があります。
例えば、宅地や田、畑、山林などです。法務局で不動産登記簿謄本を取得するとその中に地目という項目があり、必ず23種類のどれかが示されています。
私たちの生活で身近な地目変更といえば、住宅を建築する際に、畑や山林、雑種地などから宅地へと地目変更することです。
農地からの地目変更には都道府県知事の許可が必要
地目変更の中でも農地とよばれる「田」「畑」などを別の地目に変更するには都道府県知事の許可が必要になります。
もっと具体的にいえば、都道府県知事の許可以前に各区市町村の農業委員会の承諾が必要です。
なぜなら、農地を簡単にほかの目的で転用できないようにしているからです。
各市区町村での承諾を経て、都道府県知事への審査会にかけられるのが一般的なため、手続きには数カ月から1年という長い期間がかかります。
お墓は「墓地」にしか建てられない
お墓が建てられる場所は「墓地」だけです。
つまり、土地があるからといって安易にお墓を勝手に作れません。
登記簿上「墓地」として地目が認定されていることが必要です。
なぜなら、墓地埋葬法第4条で「墓地」にしか納骨できないという法律があるからです。
逆をいえば、地目が墓地であればお墓を建てて納骨することができます。
ただし、納骨する際には自治体が発行する「埋葬許可書」が必要です。
墓地や霊園を新設する場合に必要な手続き
墓地や霊園を新設する場合はさまざまな手続きが必要になります。
公的な手続きから周辺住人への同意などさまざまな許可が必要です。
そのため、簡単には新設できないようになっているともいえるでしょう。ここでは、墓地や霊園を新設する際の手続きについて解説します。
保健所や区市町村長の許可が必要
墓地や霊園を新設するには、保健所や区市町村長の許可が必要になります。
墓地や霊園を新設しようとする地域を管轄する保健所の許可を得られたら、次には区市町村長の許可へ進むことができるのです。
例えば、東京都の場合では条例で墓地の経営主体が地方公共団体や宗教法人、公益法人でないと許可が下りません。
つまり、個人では許可が下りないということです。墓地埋葬法第10条において、「墓地を経営する場合は、都道府県知事の許可が必要」とありますが、墓地の経営許可事務は2001年4月1日から区市町村長が行うことになっています。
土地の用途に合わせて分筆登記が必要
墓地や霊園を新設しようとしている土地の地目を用途に合わせて墓地へと分筆登記が必要です。
分筆登記は、土地を管轄する法務局で行います。
分筆登記とは、公図上で割り振られている1つの地番を複数にわけることです。
例えば、山林という地目の土地を購入して墓地経営をする場合は、ある場所には管理事務所の建物、ある場所には墓地などレイアウトが必要になります。
その際に、土地を分筆登記しておくと地目の変更がしやすくなるのです。
近隣住民を対象に説明会を行う
近隣住民を対象に、どのような墓地を設置するのか、理由や運営方針などの説明会を開催する必要があります。
その地域で運営していくわけですから、近隣住民への同意は無視できません。
なかには、近隣住民の同意が得られないと許可が下りない自治体もあります。
近隣住民からすれば、墓地や霊園は嫌悪施設です。感覚的に嫌だという漠然としたものだけではなく、土地の評価が下がる可能性もあります。
丁寧かつ余裕を持ったスケジュールで住民への説明がなされないとトラブルの元になりかねません。
墓地を経営しようとしている土地が農地の場合は法令制限がある
墓地へ地目変更しようとしている土地が農地の場合は、農地転用の手続きが必要です。
日本では農地を守って行くため、簡単に農地をほかの目的で転用できないようになっています。
そのため、農地からほかの地目へ変更する際は複雑な手続きが必要です。
一般的に、農地の転用をするには2段階の承認が必要になります。
1つは各区町村の農業委員会の承諾です。
農業委員会の承諾が得られてはじめて都道府県知事への審査会へ進めます。
この一連の流れでは数カ月以上の期間が必要です。
また、審査会に進んでも必ず転用の許可が出るというわけではありませんので注意しましょう。
墓地を経営しようとしている土地が保安林の場合、保安林指定の解除が必要
墓地へ地目変更しようとしている土地が保安林の場合は、保安林転用の解除が必要です。
保安林とは、公益目的のために国や都道府県によって指定されている森林のことをさします。
保安林には第1級地、第2級地という区分けがされており、第1級地の方が解除しにくい傾向です。
解除の手続きは、保安林によって異なりますが、都道府県知事もしくは農林水産大臣の許可が必要になります。
主に3つの必要書類を提出する
墓地への地目変更には3つの必要書類の提出をします。
付随してさまざまな許可書の添付が必要になるケースもありますが、ここでは一般的に地目変更に必要な書類として確認していきましょう。
どんな登記でも必要になる「登記申請書」
法務局で登記手続きをする際には登記申請書が必要です。
登記申請書には、登記の細かい内容について記載をします。
主に土地の所在や地番、地積、申請人の氏名や住所、登記原因(今回は地目変更)などが必要です。
A4の用紙を縦に使用し指定の内容をもれなく記載します。
書類に不備があると法務局では受理してもらえないので注意しましょう。
地目変更する墓地の案内図
地目を墓地に変更しようとしている場所の案内図を添付します。
なぜなら、登記所の担当者が現地調査をする際に案内図を参考にするからです。
特に決まりはありませんが、住宅地図など分かりやすいものを利用すると無難でしょう。
また、現地に印を付けたり、写真を添付したりするとより一層分かりやすくなります。
自分が初めてその土地に行くことをイメージするとよいでしょう。
土地の公図の写し
対象の土地の公図も必要です。
公図とは、法務局で取得できる地番が記載されている地図のことをさします。
民事法務協会が運営するインターネットサービスや法務局の窓口にて有料で取得することが可能です。
ここでは、墓地や霊園を新設する場合に必要な手続きについて解説しました。
非常に複雑で大変な手続きがあるのですね。
すでに解説されている霊園や墓地はこのように複雑な手続きを経て認可されていることが良く理解できたのではないでしょうか。
墓地や霊園を廃止する際に必要な手続き
墓地や霊園を廃止する際にもさまざまな手続きが必要です。
廃止の際にも地目変更という登記手続きは必要になりますのでしっかりとポイントを押さえておきましょう。
墓地を使用している人たちから承諾を得る
廃止に当たっては、墓地を使用している人たちの承諾は必要です。
運営者の都合で墓地や霊園を廃止しても、すでに埋葬されている遺骨やお墓は改葬されるわけではありません。
場合によっては、墓じまいをして墓地使用者はほかの墓地や霊園に改葬する必要があります。
改葬は、時間も費用もかかることになりますので、十分に余裕を持って丁寧に説明することが必要です。
墓じまいの際の費用についてどちらが負担するのかなどは、墓所使用契約書によっても異なるでしょう。
経営主体に墓じまいの費用を請求することは可能かもしれませんが、支払ってもらえるかどうかは財務状況によって異なります。
自治体へ墓地廃止許可申請書を提出する
墓地や霊園を廃止する際は、都道府県知事等自治体へ墓地廃止許可申請書の提出が必要です。
これは、墓地埋葬法第10条2項にも定められています。
上述した墓地使用者の承諾がしっかり行われていれば、廃止も問題なく行われる傾向です。
墓地や霊園の墓石の撤去を行う
墓地や霊園の墓石はすべて撤去する必要があります。
墓地としての許可を廃止するわけですから、その土地は今後、「墓地」ではなくなります。
そのため、法律上お墓を建ててはいけない場所になるのです。
しかし、墓地や霊園のお墓は一つではありません。
たくさんの数の墓石や遺骨があるため、墓地使用者としっかり意思疎通をしたうえでトラブルにならないように進める必要があります。
墓地使用者は、納骨されている遺骨を別の霊園や墓地へ改葬手続きをしなくてはいけないため、余裕を持ったスケジュールの提示や、サポートなどが必要になるでしょう。
墓地から別の地目へ変更をする
廃止する墓地や霊園の墓石撤去が完了した後は、墓地から地目変更を行いましょう。
地目変更に際しては区市町村長など自治体からの許可を得たうえで、法務局へ必要書類を持参します。
新設時でも記載したように書類に不備があると法務局で受理されませんので注意しましょう。
墓地や霊園の廃止の手続きについて解説しましたが、さまざまな手続きがあって大変ですね。
新設する際も廃止する際も墓地や霊園は区市町村長の許可や法務局など公的機関の許可や申請が必要になるのが理解できたのではないでしょうか。
ただし、現実的には霊園や墓地が廃止したり、破たんしたりすることは非常にまれです。
なぜなら、新設時点で廃止や破たんにならないよう自治体が審査をしているからです。
もし破たんをしても、即日改葬が必要というわけではなく、例えば日本霊園の破たん事例のように、その後もお墓は使用できているケースが多いといえます。
つまり、経営譲渡という形で墓地使用者の負担にならないよう配慮がされているということです。
地目変更でかかる可能性のある費用
地目変更にかかる費用はどのように申請するかで変わってきます。
全て自分で行えばその分費用が抑えられることはいうまでもありません。
ただし、法務局を何度も往復しながら、なれない登記申請をすることは大変な面はあります。
登録免許税
地目変更の手続きには登録免許税はかかりません。
土地の売買などで登記をする場合は、不動産の評価額に対して決められた乗率の登録免許税が必要です。
ただし、霊園や墓地の新設や廃止となるとほかにも分筆登記や合筆登記など別の登記手続きも必要な場合があります。分筆登記は登録免許税が1筆ごとに1,000円です。
土地家屋調査士報酬
地目変更に登録免許税はかからないものの土地家屋調査士へ手続きを依頼した場合はその報酬が必要です。
件数や内容によっても異なるので一概にいくらとは言い難いですが、一般的に地目変更を1件依頼すると5万円程度の土地家屋調査士報酬がかかると思っておいた方が良いでしょう。
ほかにも土地家屋調査士に動いてもらい取得した書類や日当などは別途実費分がかかります。
さらに、農地転用などの手続きを依頼するとなると別途10万円程度必要になる場合もあるので、土地家屋調査士へ依頼する場合は事前に相談して見積もりをもらっておきましょう。
まとめ
墓地や霊園を運営するために必要な「墓地」への地目変更や各種手続きについて解説しました。
想像以上に難しい手続きがたくさんあると感じた方が多いのではないでしょうか。
墓地や霊園は、墓地埋葬法にのっとって厳しい審査を経て許可をもらい運営しています。
そのため、地目変更一つをとっても住宅を建築するときのような簡単な地目変更手続きにはなりません。
自分で行うためにはしっかりと全体像を把握していないと、余計な手間暇がかかってしまうでしょう。
この記事のまとめ
- 地目変更とは、登記簿上の地目の項目を変更する手続き
- 地目とは宅地や畑、保安林、墓地など全部で23種類ある
- 農地から地目の変更をする場合、区市町村長の許可が必要
- 墓地埋葬法第4条によりお墓は「墓地」にしか建てられない
- 墓地や霊園を新設するときは保健所や区市町村長の許可が必要
- 土地の用途に合わせて分筆登記が必要
- 墓地や霊園運営に伴い近隣住民の同意が必要
- 元の土地が農地の場合、農地転用手続きをする
- 元の土地が保安林の場合、保安林転用の解除手続きをする
- 地目変更登記には、「登記申請書」「墓地の案内地図」「公図」が必要
- 墓地や霊園を廃止する場合、墓地使用者の承諾を得る
- 廃止の際は、新設時同様に自治体の許可を得る
- 墓石の撤去が完了したら、墓地の地目変更手続きを行う
- 地目変更登記自体は登録免許税がかからない
- ただし、土地家屋調査士へ依頼した場合は報酬として5万円程度かかる
- 農地転用や保安林解除など別途手続きには各10万円程度かかる場合がある
地目変更には公的な手続きが伴うため、全て自分で行うのは大変かもしれません。
委任する場合、土地家屋調査士へ依頼するのがおすすめですが、その分費用がかかることも認識しておきましょう。
事前に土地家屋調査士へ見積もりをしておけば地目変更を含めて全体でどのぐらいの費用がかかるかも分かります。
その金額をみて自分で地目変更を行うかを検討しても遅くありません。
複雑な手続きだからこそ専門家のサポートは重宝するでしょう。
しかし、自分自身でも地目変更の流れを押さえておくことは大切です。
霊園や墓地を運営するわけですから、細かいポイントにも気がつける経営者を目指したいですね。
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
公営墓地については、行政の管理のもとコントロールされていますが、経営母体を宗教法人とする事業型の民間墓地は、都市部を中心に墓地ビジネスとして開発されてるのが現状です。死者を送る儀式に宗教が深く結びついている歴史的背景と、墓地は基本的に「非営利性」「永続性」が求められることから、墓地経営には宗教法人(一部公益法人もあり)が担っていますが、一時期、宗教法人の「名義貸し」で墓地乱開発が行われていたこともあり、問題になったこともありました。
80年代後半から90年代は、郊外型の大規模霊園が多数造成されています。最近では、小規模面積での霊園開発も増え、都市部では、寺院境内の一角に墓地として造成できる場所があれば、そこに入り込むような霊園ビジネスへも多くみられます。