バーチャル法要とお墓参りの実態
コロナウイルスの影響で社会全体がリモート化を取り入れ始めていますが、供養業界も例外ではありません。
お寺、お墓、仏壇など、オンラインを活用した供養は私たちの心を充分に満たしてくれるのでしょうか。バーチャルお墓参りやリモート法要など、コロナ禍における新しい弔いのあり方を考えます。
コロナ禍をきっかけに、オンラインでの供養に関するサービスが増えている
21世紀に入り、世の中がインターネットによって激変していくなかでも、供養の世界は比較的従来型の「リアル」なつながりをベースに行われていました。そこには、人と人が直接会うことこそが人の心を満たしてくれるという潜在的な理由があったように思えます。
しかしコロナ禍社会ではソーシャルディスタンスが推奨されています。よって、人が同じ場所に集まって行われる法事や、県をまたいでのお墓参りなどでさえ自粛や敬遠を余儀なくされました。そんな時代の岐路に立たされた供養業界ですが、手探りの中、オンラインを活用したさまざまな試みが行われています。
特に目を見張るのが日本全国のお坊さんです。SNSを活用した情報発信や布教活動、YouTubeなどによる法要のオンライン配信、さらにはバーチャル墓参りに取り組むお寺まであります。「モノ」を介在させずとも言葉や儀式という「コト」を通じて人々に寄り添うお坊さんの可能性は、アフターコロナの世界ではより広がりを見せるのではないだろうかと思われます。
一方、お墓や仏壇といった「モノ」を販売する業界も、オンライン化の波に乗ろうと各社取り組みを始めています。VRによる霊園見学や、バーチャルによる仏壇体験アプリなど、人を介さなくても製品やサービスの魅力を訴える取り組みが見られます。
主なバーチャルサービス
お寺によるバーチャル法要、石材店によるVR墓参りなど、オンラインサービスを使った取り組みを一部紹介いたします。
バーチャル法要
コロナウイルスによる緊急事態宣言を受けて、日本中の寺院がオンラインの活用に着手しました。コロナで檀家の家にお参りに行けない、本堂での法要を開催できない。こうしたお寺によるバーチャル法要の配信が始まったのです。
緊急事態宣言が発令中、奈良の東大寺大仏殿では疫病退散祈願のための法要が毎日行われ、ニコニコ動画による「リモート参拝」が行われたのは記憶に新しいところです。
また、築地本願寺では開門の朝7時からと夕方4時からのお勤めの様子を毎日ライブ配信。お坊さんによる法話もYouTubeで配信しています。
こうした取り組みは日本中のお寺で見られます。法要のYouTube配信、さらにはZOOMなどを使った法事の参加などは、檀家と直接会うことのできない状況で、お寺とのつながりのために有効に活用されています。
VR墓参り
全国約300社の優良石材店グループ「一般社団法人 全国優良石材店の会」(以下:全優石)が手がけたのが、「VRお墓参りサービス」です。
全優石によると、「VRお墓参りサービス」は2020年8月1日より一部の認定店にてサービスを開始。価格は2万5千円からで、お墓参りや墓石の掃除などには別途費用がかかります。
プロの石材店が実際にお墓参りをし、墓石の様子を撮影し、後日自宅に専用のゴーグルが送られてくるというもの。自宅にいながら、さながら本当にお墓参りしているような体験ができます。
県またぎの移動がはばかれる中で、お墓参り代行をさらにひとつアップデートしたVRによる疑似体験。コロナ禍社会で普及していくかどうかは、いましばらく様子を見なければならないでしょう。
オンラインを活用したお墓参りへの関心度
ライフドットが行ったアンケート調査によると、オンラインを活用したお墓参りを認知はしているもの、いまはまだリアルなお墓へのお参りのほうが支持されているようです。
「バーチャル上にお墓があれば、実際のお墓はいらないと思いますか?」や「VRを利用したお墓参りを利用したいと思いますか?」という問いに対して、「はい」と答えた人の数がわずか3割程度にとどまったのに対し、「いいえ」と答えた人は約5割にものぼりました。どんなにバーチャルリアリティやインターネットテクノロジーが発達しようとも、遺骨の埋葬された場所へのお参りを希望する人が多いようです。
とはいえ、逆の見方をすると、約3割の人はオンラインのお墓参りに肯定的です。コロナ禍によって社会全体の、さらには供養のオンライン化はますます加速することが予想されることでしょう。
まとめ
新しい変化が訪れるときには、多くの人が戸惑いを覚えるものです。これから技術革新がさらに進み、そしてインターネットに慣れ親しんだ世代が大人になるに従って、お寺や供養の世界もさらなるオンライン化が進むでしょう。
しかし、オンラインやオフラインはあくまでもツールのあり方。大切なのは亡き人といかにつながれるかです。新しいスタイルよりも、自分たちの心が違和感なく落ち着くような供養の方法が望ましいですね。