墓守ってなに? 意味、決め方、役割などを詳しく解説
墓守とは?徹底解説
- 墓守はお墓の管理者で、遺言や慣習、裁判所で決まることも。
- 墓守には名義変更、管理料支払い、法事手配の責任が伴う。
- 墓守を辞めるには、他人への引継ぎや墓じまい、永代供養が必要。
墓守とは、お墓の管理や維持をする人のことです。
お墓は世代を超えて受け継がれていくものである為、お墓がある限り誰かが墓守の役割を引き受けなければならないことを意味します。
しかし、昨今のライフスタイルの多様化が墓守を困難にさせているのが実情です。両親や先祖が眠るお墓をどのように守っていけばいいのか悩む人も多くいるのではないでしょうか。
墓守を任されたら何をしなければならないのか、どれくらいのお金がかかるのか。この記事では墓守について詳しくご説明いたします。
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この記事の目次
墓守とはお墓を維持する役目のこと
墓守とは、お墓の管理や維持をする人のことです。主にお墓の承継者のことを指します。
それ以外にも承継者に代わって墓の管理や掃除をする人を指すこともあれば、霊園の職員など墓地全体の管理や清掃に従事する人を墓守と呼ぶこともあります。
古くは墓所近くに居住し、火葬や土葬に際して遺体の処理をしたり、墓地の管理をする僧のことを指し、三昧聖や隠坊(おんぼう)とも呼ばれました。
いまではそのような職業的な位置づけではなく、個別にお墓を管理・維持する人を指す言葉として用いられています。
墓守として考えられる2つの立場
墓守いう言葉には、承継者としてお墓を守る人という意味とお手入れや清掃などをしてお墓を管理する人という意味と2つの使われ方があります。
それぞれ「お墓を守る」という意味から「墓守」と呼びますが、承継者としてお墓を守るのと、ただ管理や掃除をするだけの墓守とではその責任や役割に大きな差があります。
祭祀承継者 お墓を継ぐ人
お墓を継ぐ人のこと、つまり祭祀承継者を「墓守」と呼びます。お墓は祭祀財産に含まれますが、これは相続財産(遺産)とは区別して考えられます。
その最大の特徴は相続財産が法定相続人に分割して相続されるのに対し、祭祀財産は特定の誰かひとりに引き継がれるという点です。
祭祀財産には、お墓のほかに家系図、仏壇、仏具、位牌、神棚、墓地などがあります。資産や不動産などの相続財産(遺産)は分割が可能ですが、祭祀財産はそもそも分割のしようがありません。
墓石や仏壇を分解して複数の人で分けるなんて物理的にできませんし、お金に換えて分配することもできません。
また、墓石は誰、仏壇は誰という具合にそれぞれを異なる人で承継すると不具合が生じます。ですから祖先の祭祀は特定のひとりに承継者を定めるのです。
お墓の手入れや清掃をして管理してくれる人
もう1つの「墓守」の意味は、実際に墓石や墓域をきれいに管理してくれる人のことです。
本来は施主(祭祀承継者)である墓守がお墓参りやお墓掃除をすればいいのですが、遠方に住んでいたり、病気で体調を崩したりでそれができないことがあります。そんなときに施主になり代わってお墓を管理する人のことを墓守とします。
お墓の承継者となる墓守の決まり方
祭祀承継者とはお墓に限らず、仏壇、位牌、家系図など祖先や神仏を祀るもの全般の所有者のことです。では、この祭祀承継者はどのように決められるのでしょうか?
旧民法では長男が祭祀財産を引き継いだ
戦前までの旧民法では祭祀財産を含めたすべての財産を長男が承継しました。戦後の民法改正後は相続財産は均分相続で、祭祀財産は特定の人による単独相続が基本です。
この戦前までの家制度の名残は現代にも未だ残っており、「家は長男が継ぐ」「墓守は長男が務める」と考える家庭はいまでも根強く残っています。
民法が定める墓守を決める順番
墓守を誰にするか。その考え方の基準が民法の条文に定められています。
民法
第897条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定(相続の一般的効力の規定)にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
この条文を分かりやすく説明すると次のようになります。
系譜(=家系図)、祭具(=仏壇や位牌)、墳墓(=墓地やお墓)を継ぐ人は慣習によって決める。もしも被相続人(亡くなった前祭祀承継者)が遺言で指定した人がいればその人が務める。それでも決まらない場合は家庭裁判所が決める。
民法が定める順番としては、①遺言で指定された人、②慣習によって決められた人、③家庭裁判所で定められた人、となります。
墓守は他人でもなれる
定義があいまいなのが②の「慣習」という言葉です。
これは「地域性や家族や親族間の事情を鑑みて、そのつど決めましょう」という程度に受け取ればいいでしょう。
逆を言うならば誰が祭祀財産を承継しても構わないのです。
長男である必要もありませんし、血族や親族である必要もありません。
民法の条文の中に、どこにも血族や親族でなければならないとは書かれていないため、法的には問題ないのです。
ただし、現実的にはトラブルを回避するために親族たちの了承が求められるでしょう。
墓守は両親と最も近くで生活した人が務めるケースも多い
墓守は両親と最も近くで生活した人が務めるケースも多いように見えます。
長男に限らず、晩年の両親と一緒に住んでいた子が墓守を務めるというのはよくあることです。
墓守は、ただ墓を見ていればいいのではなく、祭祀財産すべての所有者になります。
仏壇や位牌も継ぐとなると、当然、寺院とのやりとりもしなければなりません。
先代の付き合いを引き継ぐという意味においても、両親と最も近くで生活した人が墓守を務めるのが自然な流れになるのでしょう。
結婚して姓が変わっている女性も承継できる
結婚して姓が変わった女性もお墓を承継できます。
戦前の旧民法では墓などを含める家督は長男が継ぎましたが、現在の民法ではそのような制約はありません。
社会的な慣例として、男性が墓守をするという考え方は根強く残っていますが、女性が承継しても何ら問題はないのです。
墓守になったときに必要な手続きと役割
祭祀を承継して墓守になった時にはどのような手続きが必要なのでしょうか。
墓地や霊園の名義変更
お墓のある霊園や墓地に承継の手続きをしなければなりません。
いわゆる墓地の使用者の名義変更です。
公営霊園や民営霊園であれば管理事務所に、寺院墓地であればお寺の住職に問い合わせましょう。
承継の手続きに必要な書類は霊園や墓地によって異なりますが、公営霊園の場合はトラブルを回避するためにも親族の同意を証明する書類の提出が求められます。
主に以下のものを用意します。
共通書類
- 承継使用申請書(霊園が用意する書類)
- 申請者の実印と印鑑登録証明書
- 申請者の戸籍謄本
- 使用者(旧名義人)と申請者(新名義人)の戸籍上のつながりが確認できる戸籍謄本等
- 霊園の使用許可証
承継者を遺言などで指定している場合
- 遺言書
承継者を指定していない場合
- 協議成立確認書(協議者全員の署名と実印の捺印)
- 協議者全員の印鑑証明
墓守としての役割
墓守になりますと自分が中心となって祖先の供養に努めます。
普段のお墓参りやお墓掃除を通じてお墓の維持や管理をしていきますし、寺院とのやりとりもしていかなくてはなりません。
お墓の維持/管理
墓守の一番基本的な役割は、お墓の維持や管理です。
そう難しいことではなく、定期的なお墓参りができればそれで充分なのであまり気負う必要はありません。
お墓参りもの頻度も無理のない程度で構いませんし、墓守だからといってお墓の近くに住んでいる必要もありません。
東京に住んでいる人が年に一度、九州のお墓参りをして墓守の役目を果たしているものとする人もいます。
「墓守だからこれをしなければならない」というわけではなく、あくまでも誰がお墓の維持や祖先供養の中心になるかという親族間の合意にしか過ぎないのです。
負担にならない範囲でお墓参りをしましょう。
年間管理費の支払い
墓守をする人は霊園の使用者として名義登録をしているはずです。
そのため霊園の年間管理費の支払いをしなければなりません。
もしも未払いが続くようであれば使用権が抹消される恐れもあるので充分に気をつけましょう。
法事・法要の準備
葬儀を終えたあとの供養は定期的な法事や法要の中で営まれます。
法事や法要では親族が集まり、寺院と一緒に供養をするのです。
一周忌、三回忌、七回忌などと呼ばれるものがこれに当たり、三十三回忌まで続けます。
法事は墓前よりはむしろお寺の本堂や自宅で行われますが、こうした準備や手配も行います。
寺院との日程の調整、お布施の用意、料理や引き物の手配をして準備します。
墓守が負担しなくてはならない費用
墓守をしているとさまざまな場面で費用の負担が発生します。
どのような時にどれくらいの費用がかかるのかをまとめました。
霊園への年間管理料
霊園の使用者は年に1度、年間管理料を支払わなければなりません。
年間管理料は霊園全体の維持や管理のために充てられます。
相場は安い所で年間3,000円程度、高い所で15,000円くらいでしょう。
納骨の際のお布施
お墓に納骨するときには寺院に墓前供養をしてもらうためお布施を用意しましょう。
お布施の金額は寺院に直接訊ねるのが一番間違いがなく安心です。
相場は1万円から5万円くらいでしょう。
墓石への彫刻費/メンテナンス費用
納骨の時には法要までに墓石や霊標に文字を彫刻しなければなりません。
法要の1か月前くらいまでには石材店に依頼しておきましょう。
故人の戒名、生前の名前、命日、年齢などを彫刻します。相場は安い所で3万円、高い所で7万円くらいでしょう。
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知っておきたいお墓と税金の関係
墓地やお墓には税金はかかるの?だったら毎年の出費が増えてしまうの?
そんなことを不安に思っている人もいるかもしれませんが、基本的にはお墓にまつわるものに税金はかかりません。
詳しくご説明いたします。
1.墓地代に固定資産税はかからない
私たちはお墓を建てる前に墓地を取得しますが、この墓地には固定資産税はかかりません。
なぜなら私たちは墓地という土地を買うわけではなく、墓地の永代使用権を買うからです。
ですから墓地や墓石に対して固定資産税は課税されません。
2.石材店への支払いには消費税がかかる
石材店への支払い、つまりは石材や加工や現場工事に関わる費用には消費税が課税されます。
3.承継の際の相続税はかからない
お墓は祭祀財産に含まれますが、仏壇や位牌や家系図などとともに非課税の対象です。
承継でお墓を受け継いだとしても相続税はかかりません。
墓守をやめる・いなくなる時の対処法
なんらかの事情でどうしても墓守ができない、あるいはお墓の近くに住むことができなくなってしまうこともあります。
墓守をやめざるを得なくなった時にはどのような対策を講じればいいのでしょうか。
誰かに墓守を任せられないか相談する
家族や親族の中で墓守を任せられないか、相談できそうな相手を探してみましょう。
お墓は決して一人で管理しなければならないものではありません。
家族や親族など多くの人の手で協力して維持できるのであれば、こんなに素晴らしいことはありません。
実際に「墓守」という言葉も祭祀承継者を指すだけでなく、代理でお墓の維持をする人のことを指すほどです。
お墓の維持を代わりにしてくれる人、あるいは手伝ってくれる人を探してみて、それが困難であれば墓じまいを検討しましょう。
墓じまい
墓じまいとは墓石を撤去して中の遺骨を別の場所に移すことです。
墓じまいのためには次の4つのことをしなければなりません。
墓じまいのためにする4つのこと
- 「改葬手続き」
遺骨を移すためには改葬元の役所から許可をもらわなければなりません。 - 「改葬先の決定」
お墓の中の遺骨をどこかに移さなければなりません。
納骨堂や永代供養など事前に改葬先を決めておきましょう。 - 「寺院の手配」
墓石を撤去するためには寺院に性根抜き(閉眼供養)をしてもらわなければなりません。
予め相談しておきましょう。 - 「石材店の手配」
墓石の解体撤去工事を石材店に依頼します。
墓石を解体し、墓地を整地し、撤去した石材は廃棄物専門業者にて処分されます。
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今あるお墓を片付けることに抵抗感がある方もいるかもしれません。
しかし、大切なのはお墓をきちんと片付け、あとの供養に繋げていくことです。
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永代供養
永代供養とは遺骨を寺院に預けて供養を永代に渡って任せることです。
墓じまいをしたあとの遺骨は納骨堂や樹木葬など、さまざまな方法で供養できます。
ただ、これらの供養もお参りの人がいることが前提となります。
もしも跡取りがおらず、ゆくゆくはお参りの人もいなくなるのが分かっているのであれば永代供養をお願いしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
では最後にこの記事のポイントをまとめます。
- 墓守という言葉は、祭祀承継者という意味と、お墓の掃除や管理をする人という意味で使われる
- 民法では、墓守(=祭祀承継者)の順番を、①遺言で指定された人、②慣習によって決められた人、③家庭裁判所で定められた人、としている
- 墓守は話し合いで決める
- 墓守は他人でもなれる
- 両親と最も近くで暮らしてきた人がなるケースも多い
- 結婚して姓が変わった女性もお墓を承継できる
- 墓守になると、墓地の名義変更をしなければならない
- 墓守の一番基本的な役割はお墓参りやお墓掃除
- 年間管理料の支払いや法事の手配などもしなければならない
- 墓守が負担しなければならない費用に、墓地の年間管理料、法事の時のお布施、文字彫刻やメンテナンスの時の石材店への支払いなどがある
- 墓地や墓石は非課税の対象である
- 墓守をやめたい時は、他に任せられる人を探し、やむを得ない場合は墓じまいや永代供養を検討する
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
お墓を継いで守っていく人のことを、よく「墓守」といいます。墓守は、墓を使えるというメリットがあると同時に、守っていくためのさまざまな負担が生じます。例えば年間管理費を払ったり、お墓のメンテナンスをしていくのも墓守が行うこと。寺院の檀家になっていれば、寺院を支えていく義務も生じます。
近年は「墓守をする人がいない」という理由で、「墓じまい」をしたり、遺骨を別の場所に移動する「改葬」を検討する人が増えています。遺骨を寺院の永代供養墓等に移す人も、「墓守がいない」という理由の人が多いようです。家族関係が変化し、子々孫々引き継いでいくことを前提として建てられているお墓は、制度疲労を起こしているといっても過言ではありません。