真宗大谷派のお墓の特徴、お墓参りの作法について徹底解説!
浄土真宗大谷派のお墓とは?徹底解説
- 真宗大谷派のお墓に特定の形はなく、五輪塔や宝篋印塔は用いず
- 墓石正面に「南無阿弥陀仏」、側面に法名を彫る
- 卒塔婆供養がないため、塔婆立ては見られない
- お墓参りは本尊への挨拶と故人への感謝の時間
真宗大谷派のお墓の特徴を知っていますか?
真宗大谷派のお墓を建てたいけど、どのようなお墓を選んだらいいのか分からない、という人も多いのではないでしょうか。
この記事を読めば、真宗大谷派のお墓にどのような特徴があるのか分かり、お墓参りや法要の際には正しい作法でお参りすることができます。
また、真宗大谷派の教えや考え方も分かりやすく解説しているので、最後まで読めば、真宗大谷派がどのような宗派なのかも知ることができますよ。
まずは、真宗大谷派の概要について簡単に説明していきます。
あなたにあったお墓を見てみる
お墓に関する4つの質問に答えるだけで、あなたにあったお墓を調べられます。
4つの質問で見つかる!
Q. お墓は代々継いでいきたいですか?
希望エリアのお墓の購入費用を調べる
ライフドットでは全国8,700件以上の霊園・墓地情報を掲載しています。
地域別の費用相場や、詳しいお墓の費用を確認することができます。
エリアから探す
この記事の目次
真宗大谷派(お東さん)の概要
真宗大谷派は、浄土真宗の宗派のひとつで、通称「お東さん」とも呼ばれています。
同じ浄土真宗でも、浄土真宗本願寺派だけが宗派名の頭に「浄土真宗」とつけ、浄土真宗本願寺派以外の宗派では「真宗〇〇派」としています。
現在、浄土真宗の各宗派の中で最も門徒(信者)が多いのは「浄土真宗本願寺派」ですが、2番目に門徒が多い宗派が「真宗大谷派」です。
浄土真宗はいくつかの「○○派」という宗派に分かれていますが、宗派ごとに何か違いはあるのでしょうか?
次は「真宗大谷派」と「浄土真宗本願寺派」を例にあげて、どのような違いがあるのかを見ていきましょう。
浄土真宗本願寺派との違い
真宗大谷派と浄土真宗本願寺派は、数ある浄土真宗の宗派の中でも、同じ流れをくむ宗派です。
しかし、真宗大谷派と浄土真宗本願寺派では、焼香の回数や、念仏やお経の読み方、仏壇に置く仏具やかざりなど、数多くの違いがあります。
例えば「南無阿弥陀仏」という念仏を、真宗大谷派では「なむあみだぶつorなんまんだぶ」と唱えます。
しかし、浄土真宗本願寺派では「なもあみだぶつ」と唱えます。
他にも、宗派の中心となるお寺も違っており、真宗大谷派では東本願寺、浄土真宗本願寺派では西本願寺としています。
真宗大谷派のお墓の特徴
ここからは、真宗大谷派のお墓の特徴について、詳しく解説していきます。
お墓の形や、墓石に刻む文字、真宗大谷派のお墓を見分けるポイントなどを順番に紹介していきます。
まずは、真宗大谷派のお墓の形から見ていきましょう。
真宗大谷派ではお墓の形に決まりはない
真宗大谷派では、お墓の形に決まりはありません。
現在、一般的に広く選ばれているのは、縦長の石を上に置いた「和型墓石」という形の墓石です。
他にも、近年では横長の石を使った洋型墓石や、オリジナルデザインの墓石も増えてきています。
しかし、五輪塔(ごりんとう)や宝篋印塔(ほうきょういんとう)という、塔をかたどった形の墓石は、真宗大谷派の一般的な風習として使用しません。
次に、墓石に刻む文字について解説していきます。
真宗大谷派では墓石に刻む文字に決まりはない
真宗大谷派では、墓石に刻む文字にも決まりはありません。
一般的に、真宗大谷派の墓石の正面には「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」や「俱会一処(くえいっしょ)」という文字が刻まれます。
また、「○○家先祖代々之墓」や「○○家累代(るいだい)」というように、墓石正面に家名を刻むこともあります。
洋型墓石やオリジナルデザインの墓石の正面には、家名を刻んだり、「絆」や「和」などの好きな言葉を刻んだりすることもあります。
では、「南無阿弥陀仏」と「俱会一処」について、どのような意味があるのかを簡単に説明していきます。
「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」の意味
真宗大谷派の墓石に刻まれる「南無阿弥陀仏」とは、真宗大谷派で唱えられている念仏です。
「南無阿弥陀仏」には、「無限の命と光明をそなえた仏さまを信じ、頼りにします」という意味があります。
「俱会一処」の意味
「俱会一処(くえいっしょ)」とは、「ともに一つのところに会う」という意味の言葉です。
簡単に言えば、縁のあった人々とともに浄土につどう、ということです。
浄土とは、仏や菩薩(ぼさつ)が住む場所のことを指します。
墓石の側面に刻まれる文字
和型墓石の場合、一般的に墓石の側面に法名(ほうみょう)という、僧侶から与えられる故人の名前を刻みます。
他にも、故人の命日や享年(数え年)、生きている時の名前を刻むこともあります。
ただし、地域によっては故人の法名などを裏面に刻む場合もあります。
また、埋葬者が多く、墓石の側面に法名などを刻む場所がないといった場合には、墓誌(ぼし)を建てて、その墓誌に埋葬者の法名などを刻みます。
次は、真宗大谷派のお墓を見分けるうえでポイントとなってくる、法名について詳しく解説していきます。
真宗大谷派では戒名ではなく「法名(ほうみょう)」という
死後、もしくは生前に僧侶につけてもらう名前のことを、真宗大谷派が属する浄土真宗では「法名(ほうみょう)」と言います。
浄土真宗以外の宗派では「戒名(かいみょう)」と呼ばれることが多いのですが、戒名は、戒律(規律)を守り修行する人へ与えられる名前です。
浄土真宗では「戒律を守ることができない人でも、必ず救って浄土へ迎えるという、仏さまのはたらき」を「法」と言います。
人々はその「法」のなかで生かされているという考えから、浄土真宗では信徒へ与えられる名前を「法名」と呼ぶのです。
では、法名とは具体的にどのような文字列なのかを見ていきましょう。
法名の構成
法名は、浄土ではすべての人が平等であるという意味から、真宗大谷派の場合、2文字とされています。
そして、法名の頭に「釋(しゃく)」を付け、男性は「釋○○」、女性は「釋尼○○」とします。
「釋」とは「釈」の旧字体で、お釈迦様の弟子、すなわち仏教徒であるということを示しています。
また、お寺や社会に貢献した人などには「院号(いんごう)」という、「〇〇院」の3文字が法名の頭にプラスされることもあります。
法名に院号が付いた場合、男性は「〇〇院釋〇〇」、女性は「〇〇院釋尼〇〇」となります。
ここまでは墓石の形や刻まれる文字について解説してきましたが、次は真宗大谷派のお墓には設置されないものを紹介します。
卒塔婆供養はしないのでお墓に塔婆立てがない
浄土真宗以外の宗派では多くの場合、法要の時などに「卒塔婆供養(そとばくよう)」という供養をします。
「卒塔婆供養」とは、念仏や供養の言葉などを書いた細長い板を、墓石の裏に設置された「塔婆(とうば)立て」に立てるという供養方法です。
しかし、真宗大谷派では卒塔婆供養は行いませんので、真宗大谷派のお墓には「塔婆立て」はありません。
おさらい!真宗大谷派のお墓を見分ける4つのポイント
ここまで紹介してきた真宗大谷派のお墓の特徴を、もう一度おさらいしていきましょう。
この4つのポイントを覚えておけば、真宗大谷派のお墓を簡単に見分けることができますよ。
- 墓石が塔をかたどった形のものではない
真宗大谷派の一般的な風習として、五輪塔や宝篋印塔などの塔をかたどった墓石は使用しません。 - 墓石の正面に「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」や「俱会一処(くえいっしょ)」と刻まれている
真宗大谷派で唱えられる念仏の「南無阿弥陀仏」や、「俱会一処」という言葉が刻まれます。 - 墓石の側面などに「釋(尼)〇〇」または「〇〇院釋(尼)〇〇」という法名が刻まれている
真宗大谷派では、釋の文字と2文字の法名「釋〇〇」、女性の場合は「釋尼〇〇」が墓石などに刻まれます。
ほかにも、法名の頭に「〇〇院」という院号がついている場合もあります。 - 墓石の後ろに塔婆(とば)立てがない
真宗大谷派では卒塔婆供養(そとばくよう)を行わないため、板塔婆を立てるための塔婆立てがありません。
ここまで、真宗大谷派のお墓の特徴について解説してきました。
次は、そもそも真宗大谷派とはどういった宗派なのか、どのような教えなのかを紹介していきます。
浄土真宗の開祖や本山を知る
浄土真宗を開いた人物や、「本山(ほんざん)」という全国にある真宗大谷派のお寺を統轄しているお寺はどこなのかなど、浄土真宗と真宗大谷派に関する基礎知識を順番に見ていきましょう。
浄土真宗の開祖は親鸞
浄土真宗は鎌倉時代の1224年に、親鸞(しんらん)によって開かれました。
親鸞は「仏さまを信じて念仏を唱えれば、誰であっても救われる」という教えを説きました。
浄土真宗は10の宗派に分かれている
現在、浄土真宗は真宗大谷派をはじめ、10の宗派に分かれています。
この浄土真宗の10の宗派は「真宗10派」と呼ばれ、それぞれ違う本山を持ちますが、開祖は同じ親鸞で、教えも同じです。
真宗大谷派の概要の章でも解説したとおり、浄土真宗本願寺派だけが宗派名の頭に「浄土真宗」とつけ、浄土真宗本願寺派以外の宗派では「真宗〇〇派」としています。
真宗も浄土真宗も、呼び方が違うだけで、同じ浄土真宗なのです。
次は、真宗10派共通の「親鸞の教え」について、詳しく見ていきましょう。
浄土真宗の教え
浄土真宗は「他力本願(たりきほんがん)」という教えです。
この「他力本願」とは、何もしないで他人の力をあてにするという意味ではありません。
浄土真宗の「他力」とは、「阿弥陀如来の、人々を救おうとする大きな力」のことをいいます。
そして、「他力本願」とは「阿弥陀如来の大きな力に頼って救われる」という意味なのです。
また、浄土真宗では占いや祟りなどを否定しています。
浄土真宗では「阿弥陀仏の大きな力を信じ、一心に念仏を唱えることでのみ救われる」としていて、おまじないや占い、お守り札などを頼りにしないという教えです。
また、吉日や凶日を選ぶことも否定していて、「大安」や「友引」「仏滅」にはこだわらない、という考えです。
「他力本願」をはじめとする、浄土真宗の教えが書かれたものが、現在もお経として読まれています。
では、浄土真宗の中でも重要とされるお経はどれなのかを見ていきましょう。
浄土真宗の根本経典
基本となる教えが書かれている重要なお経のことを「根本経典(こんぽんきょうてん)」と言います。
浄土真宗の根本経典は「浄土三部経(じょうどさんぶきょう)」というもので、3つの経典から成り立っています。
浄土三部経の3つの経典
「仏説無量寿経(ぶっせつむりょうじゅきょう)」
「仏説観無量寿経(ぶっせつかんむりょうじゅきょう)」
「仏説阿弥陀経(ぶっせつあみだきょう)」
さらに、浄土三部経の中でも「仏説無量寿経」は、親鸞が「真実の教えはこの経典である」と位置づけたため、浄土真宗では最も重要なものとされています。
真宗大谷派の本尊は阿弥陀如来(あみだにょらい)
ここからは真宗大谷派の、お寺の中心に置かれる仏さまである「本尊(ほんぞん)」について詳しく説明していきます。
真宗大谷派の本尊は「阿弥陀如来(あみだにょらい)」です。
「阿弥陀如来」には、木像・絵像・名号(みょうごう)の、3つの形態があります。
木像とは木で作られた阿弥陀如来像、絵像とは阿弥陀如来が描かれたもの、そして名号とは阿弥陀如来をあらわす文字のことです。
一般的に、お寺は木像を、家庭の仏壇は絵像か名号を、本尊としていることが多いです。
では、阿弥陀如来をあらわす名号とは具体的にどのような文字なのか、次の章で見ていきましょう。
本尊としての名号
真宗大谷派の、本尊としての主な名号を3つ紹介します。
それぞれの名号と、その名号の呼び名を表にしました。
名号 | 呼び名 |
---|---|
「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」 | 六字名号(ろくじみょうごう) |
「南無不可思議光如来(なむふかしぎこうにょらい)」 | 九字名号(くじみょうごう) |
「帰名尽十方無碍光如来(きみょうじんじっぽうむげこうにょらい)」 | 十字名号(じゅうじみょうごう) |
真宗大谷派の本山は真宗本廟(しんしゅうほんびょう)京都市下京区
では次に、真宗大谷派の大元となるお寺を紹介します。
全国にあるお寺を統轄しているお寺のことを「本山(ほんざん)」といいます。
真宗大谷派の本山は京都市下京区にある「真宗本廟(しんしゅうほんびょう)」です。
「真宗本廟」は通称「東本願寺(ひがしほんがんじ)」や「お東さん」と呼ばれています。
ここまで、浄土真宗の開祖や教え、真宗大谷派の本山などについて解説してきました。
次は真宗大谷派の法要について、詳しく見ていきましょう。
真宗大谷派の法要と経典について
ここからは、真宗大谷派の法要や、法要で読まれる経典(お経)について説明していきます。
真宗大谷派の法要の回数や種類には、他の宗派と違いはあるのでしょうか?
法要の回数や種類は他の宗派と変わらない
真宗大谷派の法要は、他の宗派と回数や種類は同じです。
一般的に葬儀後の法要は、死後7日目から始まり、以後7日ごとに営まれます。
そして通常は、四十九日で喪に服する期間が終わる「忌明け(きあけ)」となります。
一周忌からの法要は「年忌法要(ねんきほうよう)」と言います。
年忌法要は、多くの場合、三十三回忌までの合計8回行われますが、五十回忌以降も行われることもあります。
この年忌法要は、故人が死亡した日と同月同日の祥月命日(しょうつきめいにち)に行います。
もし祥月命日が平日の場合は、命日の前の土日などに行うのが一般的です。
では、年忌法要の時期について詳しく見ていきましょう。
年忌法要一覧
一周忌から三十三回忌までの法要の時期と、概要をまとめました。
三十三回忌の後は五十回忌などもありますが、現在では三十三回忌をもって弔い上げ(といあげorとむらいあげ)とし、その後の年忌法要を行わないことが多くなってきています。
法要の時期の数え方は、三回忌以降からは亡くなった年を1年目として数えますので、間違えないように注意してください。
他にも、地域によっては二十三回忌・二十七回忌・三十七回忌などを行うところもあります。
法要 | 時期 | 概要 |
---|---|---|
一周忌 | 亡くなった翌年の命日 | 遺族・親族・友人・知人も列席し、読経と焼香、その後に会食をします。 |
三回忌 | 死後2年目 | |
七回忌 | 死後6年目 | |
十三回忌 | 死後12年目 | 遺族・親族で読経と焼香、その後に会食をします。 十三回忌以降は列席者を減らしていくことが多いです。 親族も列席せず、遺族のみで法要を行うという家もあります。 |
十七回忌 | 死後16年目 | |
二十三回忌 | 死後22年目 | |
二十七回忌 | 死後26年目 | |
三十三回忌 | 死後32年目 | 遺族・親族・友人・知人も列席し、読経と焼香、その後に会食をします。 |
ここまでで、真宗大谷派の法要の回数や種類は、他の宗派と違いはないということが分かりましたね。
しかし、法要を行う意味は、真宗大谷派と他の宗派で大きく異なります。
次は、真宗大谷派にとって法要を行う意味を解説していきます。
真宗大谷派とって法要の意味とは?
真宗大谷派では、「法要とは、故人の供養のために行われるものではない」とされています。
そもそも真宗大谷派には、お経や念仏を唱えることで故人が救われる、という考えはありません。
開祖である親鸞自身も、亡き父母のために念仏を唱えたことは一度もない、と弟子に述べたという記録があります。
真宗大谷派の法要は、故人をしのぶと共に、いま生きている者たちが仏さまの教えを聞き、仏さまの恵みに感謝する行事として行われます。
すなわち、真宗大谷派にとって法要とは「故人の供養のためではなく、生きている人々のための行事」なのです。
葬儀や法要で読まれる経典は仏説無量寿経がメイン
では、法要の際に読まれる、仏さまの教えが書かれた経典(お経)について見ていきましょう。
真宗大谷派の葬儀や法要では、主に「仏説無量寿経(ぶっせつむりょうじゅきょう)」が読まれます。
「仏説無量寿経」は、真宗大谷派では最も重要な経典とされていて、「大無量寿経(だいむりょうじゅきょう)」や「大経(だいきょう)」とも呼ばれています。
この「仏説無量寿経」は、「阿弥陀如来が仏となる前の、法蔵菩薩(ほうぞうぼさつ)だった時に人々を救う誓いをし、はかり知れない期間の厳しい修行ののちに仏となり、極楽浄土を建立した」という内容の経典です。
真宗大谷派の法要では、経典を読んでいる僧侶から合図があったら、列席者たちが順番に焼香をしていきます。
次の章では、真宗大谷派の焼香の作法を説明していきます。
【5つの手順】真宗大谷派の焼香の作法
真宗大谷派の焼香の作法を、5つの手順に分けました。
- 念珠を左手に持ち、本尊に向かって一礼する
- 香を右手でつまみ、香炉に入れる
- もう一度、香を右手でつまみ、香炉に入れる
- 数珠を手にかけて合掌し、南無阿弥陀仏(なむあみだぶつorなんまんだぶ)と数回唱える
- 合掌をといてから、一礼する
真宗大谷派の焼香では、香をたく前に合掌はせず、香を額に押し頂くこともしません。
また、焼香の回数も2回とされていますので、間違えないように注意してください。
真宗大谷派では「南無阿弥陀仏」と唱える時に、「なむあみだぶつ」もしくは「なんまんだぶ」と発音します。
どちらの発音でも良いので、声に出して唱えるようにしましょう。
ここまで、真宗大谷派の法要について説明してきました。
次は、真宗大谷派のお墓参りについて、持ち物やお参りの作法などを詳しく見ていきましょう。
真宗大谷派のお墓参りのマナー
真宗大谷派では「お墓参りとは、故人を縁として阿弥陀如来を拝むこと」とされています。
これは、阿弥陀如来に拝むことによって、生かされていることに気づかせてもらう、という意味が込められています。
なので、お寺の墓地にお墓がある場合、お墓参りの前にまず、お寺の本堂にある本尊「阿弥陀如来」にお参りするようにしましょう。
また、本尊にお参りする際には住職へ挨拶をしましょう。
次は「お墓参りとは阿弥陀如来を拝むこと」という考えの真宗大谷派にとって、お墓とはどのような場所とされているのかを簡単に説明していきます。
真宗大谷派にとってお墓とはどんな場所?
真宗大谷派では、お墓とは「あくまでも遺骨を納めている場所であり、生きている者が故人とのつながりを確かめ合い、今の自分があることに感謝の気持ちをあらわす場所」だとされています。
これは「故人はすでに仏となり浄土にいるので、お墓に故人の魂は宿っていない」という教えが基本となっています。
したがって、お供え物も故人へ向けてではなく、阿弥陀如来へのお供えであるとされています。
真宗大谷派のお墓への考え方は、他の宗派とは違うので、お墓に水をかける習慣もありません。
次は、真宗大谷派ではお墓に水をかける習慣がない理由を、解説していきます。
真宗大谷派ではお墓に水をかける必要はない
墓石の掃除以外で、お墓参りの時に墓石に水をかけるのは、故人の魂を浄化するため、故人ののどをうるおすため、という意味で行われてきた習慣だと言われています。
しかし真宗大谷派では、さきほど解説したとおり「故人はすでに仏になり浄土にいる」ので、墓石に水をかけて故人の魂を浄化したり、のどをうるおしたりする習慣はないのです。
したがって、真宗大谷派では、お供えとしてお墓に水をかける必要はありません。
【6つの手順】真宗大谷派のお墓参りの流れ
ここからは、真宗大谷派のお墓参りの流れを6つの手順に分けて、解説していきます。
お参りの作法や数珠の持ち方については、この章の後で詳しく紹介していきますので、まずは流れだけおさえておきましょう。
1.住職や管理事務所に挨拶をする
お墓に行く前に、まずお寺の住職や本尊に挨拶をしましょう。
墓地に管理事務所がある場合は、挨拶の際に、柄杓や桶などの必要な物を借りておきます。
2.お墓に着いたら合掌礼拝をする
お墓に着いたら、まずは全員で合掌礼拝をしましょう。
3.お墓の掃除をする
お墓の周りの落ち葉や雑草を取り除き、墓石の汚れなどを雑巾などできれいに落とします。
墓石に苔などがこびりついている場合は、歯ブラシやタワシでこするときれいになりますが、強くこすりすぎると墓石を痛めますので注意が必要です。
仕上げに乾いたタオルなどを使い、墓石に水気が残らないように拭き清めましょう。
4.お供え物をする
お墓に花を飾り、お菓子や飲み物などをお供えします。
5.お参りをする
一人ずつ、順番にお参りをして線香をあげます。
お参りの時は、立ったままではなく、しゃがむなどして低い位置から、合掌礼拝をします。
6.後片づけをする
お供え物は置いたままにせず、持ち帰ります。
地域によっては、お供え物をその場で食べるという習慣もあります。
ゴミが出た場合は、必ず持ち帰りましょう。
お墓参りの流れが分かったら、次は真宗大谷派の合掌礼拝の作法を説明していきます。
合掌礼拝は、手順2のお墓に着いた時、手順5のお参りする時に行うので、しっかり覚えておきましょう。
真宗大谷派の合掌礼拝の方法
真宗大谷派の合掌礼拝(がっしょうらいはい)は、まず、胸の前で両手を合わせ、念珠をかけます。
合わせた両手の指先を、45度ほど前方へかたむけた状態が、正しい形だとされています。
この姿勢のまま、「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつorなんまんだぶ)」と数回唱えます。
そして、合わせた両手をといてから、軽く頭を下げて礼をします。
真宗大谷派の合掌礼拝の注意点は、合掌したまま礼をしないことです。
必ず合掌をといてから礼をするように、気を付けましょう。
次は真宗大谷派で用いられる数珠と、数珠の持ち方を解説していきます。
真宗大谷派の数珠と持ち方
数珠は念珠(ねんじゅ)とも言い、真宗本願寺派では「一輪念珠(ひとわねんじゅ)」か「二輪念珠(ふたわねんじゅ)」が一般的に用いられています。
念珠を手に持つ時は、必ず左手で持つようにし、お経を読んでいる時などは左手首にかけておきましょう。
一輪念珠を用いて合掌する方法
一輪念珠を用いて合掌する時は、念珠を両手にかけて、房を下にたらします。
そして、親指で念珠を軽く押さえるようにして、合掌します。
二輪念珠を用いて合掌する方法
二輪念珠を用いて合掌する時は、念珠の二つの親珠を、左右の親指ではさみます。
房は左側に下げて、合掌します。
お墓参りの持ち物リスト
この章では、お墓参りで必要となるもの、あると便利なものをリストにして紹介しています。
使い方などの簡単な解説もありますので、お墓参りに行く時にはぜひ参考にしてください。
お供え物の花 | 花立ての数に合わせて用意しましょう |
---|---|
植木ハサミ | 花立てに合わせて、花の茎の部分を切り揃えます |
お供え物のお菓子や果物など | 自由にお供えしてください。帰る時は、その場で食べるか持ち帰りましょう。 |
半紙 | お供え物は直接石に置かず、二つ折りにした半紙の上に置きましょう |
線香 | 墓石の数に合わせて、1束~2束ほど |
ロウソク | ロウソクで線香に火をつけるのが正式な作法です |
ライターまたはマッチ | ロウソクに火をつけます |
数珠 | 真宗大谷派では「一輪念珠(ひとわねんじゅ)」か「二輪念珠(ふたわねんじゅ)」が一般的です |
ほうき | お墓周りの枯葉などを掃除します |
シャベル | お墓周りの草を抜く際にあると便利です |
タワシ | 墓石に付いた苔や、拭いても取れない汚れを落とします |
雑巾 | 墓石に付いた汚れを落とします |
タオル | 掃除し終わった墓石を、水気が残らないよう拭き清めます |
バケツ | タワシや雑巾をゆすぎます |
ゴミ袋 | 枯れた花や抜いた草など、ゴミはきちんと始末しましょう |
筆者ピックアップ!真宗大谷派のお寺
ここで、筆者オススメの真宗大谷派のお寺を3つご紹介します。
それぞれのお寺の見どころも挙げていますので、興味があるお寺がありましたら、この機会にぜひ参拝してみてください。
真宗本廟(しんしゅうほんびょう)京都市下京区
真宗大谷派の本山としても紹介した真宗本廟は、通称「東本願寺(ひがしほんがんじ)」や「お東さん」と呼ばれています。
東本願寺の境内には、「御影堂(ごえいどう)」という建物があり、世界最大の木造建築と言われています。
東本願寺派は、過去に4回の火災によって境内の各建物が焼失し、現在の建物は明治28年に再建されたものです。
明治28年の東本願寺再建の際、全国から1000万人にも及ぶ門徒が集まり、再建の力となったと言われています。
また、再建に使用する綱は、当時の一般的な綱を使用すると切れてしまう事故が相次ぎました。
そのため、切れない丈夫な綱を作ろうと、全国の女性門徒らが髪の毛を提供し、その髪の毛と麻で編まれた「毛綱」は、現在も東本願寺に展示されています。
他にも、東本願寺から150メートルほど離れた場所にある別邸「渉成園(しょうせいえん)」の庭園では、桜や紅葉をはじめとする四季折々の花が見られます。
東本願寺に参拝した際には、ぜひ渉成園にも足を運んでみてください。
井波別院瑞泉寺(いなみべついんずいせんじ)富山県南砺市井波
木彫りの町、井波にある「井波別院瑞泉寺」には、北陸随一とも言われる大きな本堂をはじめ、高さ17.4メートルの立派な山門などがあり、随所で美しい井波彫刻を見ることができます。
瑞泉寺の入り口である山門の正面の梁には、京都の彫刻師によって彫られた龍、そして山門の正面中央には、井波大工による彫刻が施されており、その彫刻の精巧さに、門をくぐる前から圧倒されてしまいます。
また、本堂や太子堂などでも、芸術作品ともいえる見事な彫刻がいたるところに見られ、美術的価値も高いお寺です。
真宗大谷派名古屋別院(しんしゅうおおたにはなごやべついん)愛知県名古屋市中区
真宗大谷派名古屋別院は、別名「東別院(ひがしべついん)」や「御坊(ごぼう)さん」とも呼ばれています。
東別院は名古屋市の街中にあり、広大な敷地を有しています。
そして、1000人が同時にお参りできるという大きな本堂は、まさに圧巻です。
また、毎月28日には東別院の境内で「東別院てづくり朝市」が開催されており、野菜やパン、お菓子、雑貨、名古屋グルメなどが売られています。
この「東別院てづくり朝市」は約170店舗が出店する、愛知県内で最大の朝市です。
朝市の日時に合わせて参拝すれば、ついでにお買い物も楽しめますよ。
本山の「大谷祖廟」に分骨する方法
ここからは、真宗大谷派門徒の習慣である分骨について、簡単に紹介します。
真宗大谷派では、本山の「真宗本廟(しんしゅうほんびょう)」が所有する「大谷祖廟(おおたにそびょう)」という場所に遺骨の一部を納める、分骨(ぶんこつ)という風習があります。
この「大谷祖廟」は親鸞の墓所で、真宗大谷派では喉仏の骨を納めるのが一般的です。
大谷祖廟では2万円以上から分骨することができます。
また、分骨後に大谷祖廟へ参拝した際、1,000円以上の礼金で、お経を読んでもらうこともできます。
分骨の際の注意点として、大谷祖廟に納めた遺骨は、複数の遺骨とともに納骨されるため、返却ができません。
参照元:東本願寺「大谷祖廟の納骨・永代経並びに申経のお取り扱い」
まとめ
最後にもう一度、真宗大谷派のお墓の特徴や、お墓参り、法要の作法などを振り返ってみましょう。
- 真宗大谷派では、お墓の形に決まりはない
- 真宗大谷派では、五輪塔などの塔をかたどったお墓は一般的には使われない
- 真宗大谷派のお墓の正面には「南無阿弥陀仏」や「俱会一処」などが刻まれる
- 真宗大谷派の法名は、男性は「釋〇〇」女性は「釋尼〇〇」、または院号のついた「〇〇院釋(尼)〇〇」
- 真宗大谷派では卒塔婆供養を行わないため、墓石の後ろに塔婆立てがない
- 浄土真宗の開祖は親鸞
- 真宗大谷派の本山は京都市下京区にある真宗本廟で、通称「東本願寺」と呼ばれている
- 真宗大谷派の法要では主に「仏説無量寿経」が読まれる
- 真宗大谷派では、焼香やお墓参りの際に「南無阿弥陀仏」と唱える
- 真宗大谷派では、真宗本廟に分骨する風習がある
真宗大谷派のお墓には、形や刻む文字などの決まりはありませんが、墓石正面に「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」や「俱会一処(くえいっしょ)」という言葉が刻まれるという特徴があります。
お墓参りや焼香の際には、真宗大谷派の念仏である「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつorなんまんだぶ)」を、きちんと声に出して唱えるようにしましょう。
真宗大谷派のお墓を探す
ライフドットでは真宗大谷派の墓地情報を掲載しており、無料でパンフレットも提供しております。
真宗大谷派の墓地をお探しの方は、以下からご希望のエリアを選択したのち、詳細条件で宗教・宗派を真宗大谷派に絞り込んで検索してみましょう。
エリアから探す
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
真宗大谷派は、親鸞聖人を開祖とする宗派です。親鸞聖人は、肉食し妻帯者であったため、当時は世間から異端視されていたそうですが、ありのままの姿でも阿弥陀如来は救ってくださるということを広く伝え、庶民に支持されました。
大谷派は、西本願寺の「お西さん」に対して、「お東さん」と呼ばれます。京都の東本願寺の正式名称は真宗本廟。1602年に徳川家康から寺地の寄進を受け、西本願寺から分流してから、東西二分していますが、根本的な教えは同じです。
本願寺派と大谷派では、厳密には仏壇、本尊や仏具など仕様がすべて異なります。しかし最近は、モダンな家具調仏壇が増え、フルセットで揃える家は服なくなりました。