お墓をお寺に建てるときの費用を徹底解説!
お寺のお墓の費用とは?徹底解説
- お墓の場所には寺院、民営、公営の墓地があり
- 寺院の墓地には入檀料や維持費、永代使用料が必要
- 寺院の墓地は供養が手厚く、相談可能だが、檀家制限やデザイン制約がある
- お墓建立費用は約100万円以上で、檀家制度は向き不向きがある
「故人のためにお墓を建てたい」と考えたとき、真っ先に思いつくのがお寺のお墓という人も多いのではないでしょうか。
公営墓地や民営墓地も増えてきていますが、伝統的なお寺のお墓を選びたい人も根強く存在します。
しかし、お寺の細かい事情を知る機会が少ないことが現状です。
また、直接お寺の住職へ聞くことも恥をかきそうで尻込みしてしまうという人も少なくありません。
この記事では、お寺でお墓を建てたい人に向けて、お寺の基礎知識や、お墓の費用、檀家制度などについて徹底解説いたします。
さまざまな疑問や不明な点が多いお寺ですが、実は意味や内容をしっかり把握していれば難しい内容ではありません。
せっかく建てるお墓ですから、お寺任せにせず、しっかりと基礎知識を得たうえで納得できるお墓を建てましょう。
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この記事の目次
お墓をお寺に建てる意味
お墓をお寺に建てるということは昔ながらの伝統的な方法の一つといえます。
先祖代々同じ場所で長い間供養し続けてもらえることは遺族にとっても安心です。
宗派・宗旨は異なっても仏教の考えをしっかり反映できるのはお寺のお墓の魅力でしょう。
お墓離れが深刻化する現代だからこそ、お寺でお墓を新しく建てるというのは、こだわりが必要です。
お墓を建てられる場所は3通り
お墓を建てることができる場所は主に3通りです。
- お寺の墓地
- 民営の墓地
- 公営の墓地
お墓はどこに建てても良いというわけではありません。
『墓地、埋葬等に関する法律』第4条では、「埋葬または焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」と謳われています。
つまり、墓地として認定されている場所にしかお墓を建てることができないのです。
お寺の墓地
お寺の墓地は境内にお墓があることが多いです。経営の主体は宗教法人で、運営管理も宗教法人になっています。
つまり、お寺で全て経営から運営管理までやっているのです。
他の2つと異なり、お寺の墓地へ申し込みする場合は檀家になる必要があります。
また、宗派・宗旨によっては申し込みできない場合もありますので注意が必要です。檀家制度については後述いたします。
民営の墓地
民営の墓地は経営の主体が宗教法人などで、運営管理が石材店などの民間業者というお墓です。
お寺のお墓離れが深刻化するなか、民営の墓地は「明るい雰囲気」「自由度が高い」「設備が充実している」など利用者のニーズに特化しているところが多いといえます。
宗派などのしばりもないため、申込者の敷居は低いです。
公営の墓地
公営の墓地は、経営の主体も運営管理も自治体が行っています。
3つの墓地のなかでは倒産したり、クローズしてしまったりするリスクが低いというのが特徴的です。
一般的には、対象の自治体へ住んでいることが条件になっていることが多く、申し込みの人数が定員を上回った場合は抽選が行われます。
つまり、当選しないと墓地の利用使用権を獲得できないのです。
参照:「市営墓地は応募倍率が高い!その理由がわかる特徴を解説」
墓地の種類 | 経営の主体 | 運営管理 | 特徴 | 宗派・宗旨 |
---|---|---|---|---|
お寺の墓地 | 宗教法人 | 宗教法人 | 檀家になる必要がある | 問われる場合がある |
民営の墓地 | 宗教法人など | 民間業者など |
| ほとんどが問われない |
公営の墓地 | 自治体 | 自治体 |
| 問われない |
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墓地と霊園の違い
墓地と霊園はどちらもお墓を建てるための場所です。
しかし、「違いがわからない」と感じる人もいるかもしれません。
本質的な意味合いとしてはお墓を建てる場所に変わりません。
そこで、ここでは「墓地」と「霊園」の違いについて掘り下げていきましょう。
墓地とは
墓地というのは一般的にお寺の境内にあるものを指します。
一番の違いは「檀家制度があるかないか」という点です。
お寺にお墓を建てる場合は、先述したように檀家となる必要があります。
霊園とは
お寺の境内以外にある墓地が霊園です。
つまり、霊園とは檀家になる必要がない墓地という見方もできるでしょう。
霊園でも自治体が管理する公営霊園、民間業者が管理する民営霊園があります。
これらは、檀家になる必要がありません。
お寺と末永い付き合いをするための檀家制度
檀家制度とは、お寺とお寺(お墓)を利用する利用者が独占的な葬祭の関係を結ぶことです。
お寺でお墓を建てる場合は檀家制度についてしっかり理解したうえで申し込むことが大切です。
基本的にお墓は、どこに建てた場合でも1年、2年など短期間でポンポンと改葬するものではありません。
特にお寺のお墓の場合は、後継世代まで長い付き合いになることが一般的です。
そのため、檀家制度をよく知らないとさまざまなトラブルに発展する可能性があります。
ここでは、檀家制度の歴史や現状について見ていきましょう。
檀家制度の歴史
檀家制度の歴史を見ていくと、仏教が伝来したといわれる飛鳥時代にまで遡る必要があります。
伝来した仏教が有力者によって信仰され、お金を出し合ってお寺を作っていったとされているのです。
これが、檀家制度の始まりです。江戸時代にはキリスト教を禁止したことにともない、寺請制度が確立します。
寺請制度とは、お寺が近隣の住民の戸籍を管理する制度です。
キリスト教でないことを証明するには、お寺の檀家になって寺院から寺請証文をもらう必要がありました。
檀家制度の現状
寺請制度がもとになり、現代の檀家制度まで続いています。
歴史上では半強制的に檀家にさせられたというイメージがありますが、檀家は自分たちのお寺を支援しあって運営していくというスタイルは浸透していったのです。
檀家は個人で入檀するという性質ではありません。
家単位で入壇しているというイメージになります。
近年は檀家離れが増加傾向といわれていますが、檀家が離れていけばお寺は他の檀家で運営を賄わなければ行けなくなるのです。
そのため、法外な離檀料を請求して帳尻を合わせようとするお寺や、運営ができないためお寺をやめてしまうというケースも少なくありません。
お寺にお墓を建てるときに必要な費用
お寺にお墓を建てるときに一番気になるポイントは費用でしょう。
将来の年金や増税など、国民からすると経済的な漠然とした不安は非常に大きい傾向です。
それは、お墓に関しても同様といえます。
お寺のシステムや費用相場を理解して納得のうえで利用することが重要です。
入檀料の目安は10万~30万円
入檀料の目安は10万~30万円程度です。檀家に入ることを入檀といいます。
もちろん、地域によって差があるので一概にはいえません。
お墓を建てたいお寺の住職へ直接聞いてみるのが賢明です。
護寺会費・維持費は5,000~2万円
護寺会費と維持費の平均相場は年間で5,000~2万円程度です。
この費用は、いわゆる管理費と思っておけばわかりやすいでしょう。
お寺の清掃や運営などの費用に充てられる傾向です。
お寺の行事や法要の際のお布施は3万~5万円
お寺の行事や法要に参加する際はお布施が必要です。
平均相場は3万~5万円程度とされています。
お寺の主な行事としては、春と秋のお彼岸にある彼岸会や、お盆の時期にある盂蘭盆などです。
檀家負担金は寄付という位置づけ
お寺や住居を改装する場合には檀家負担金の寄付を募られるでしょう。
本来、お寺は檀家同士の財産かつ、檀家が支援して守っていくものというのが原則ですから、檀家の意味がわかっていれば自然といえます。
ただし、寄付という位置づけになるため強制ではありません。
金額も相場がなく、お寺によっても檀家の数や改築の規模が異なるため、はっきりいくらとはいえないでしょう。
例えば、檀家が100人いて、改築費が1000万円だとすれば、一人当たり約10万円を支援しないとお寺の改築ができないことになります。
その他のお布施
主な檀家の費用以外には下記のようなお布施もあります。
お布施というものは感謝の気持ちをあらわすため金額が確定しているわけではありません。
そのため、極論ではいくらでも構わないわけです。
「住職にお布施はいくらですか」と聞いても「お気持ちで」といわれるのはこのため。
もし聞きたい場合は「他の檀家はどのぐらい包んでいますか」のほうが具体的な金額を知ることができるでしょう。
通夜や葬儀の際の読経や供養のお布施
通夜や葬儀のお布施の平均相場は15万~50万円程度です。
通夜や葬儀があれば檀家となっているお寺の住職に読経や供養をお願いすることになります。
お布施については「葬儀・法要のお布施、相場や渡し方を徹底解説!」でも詳しく解説しています。
一周忌や三周忌などのお布施
一周忌や三周忌のお布施の平均相場は3万~10万円程度です。
月命日などの読経のお布施
月命日などで住職へ読経をお願いするときのお布施の平均相場は、5,000~1万円程度です。
檀家が負担する費用は思った以上にたくさんありますね。
しかし、檀家の本来の意味合いを良く理解していれば、金額が高いと思うか低いと思うかはその人次第です。
また、住職によっては、その地域の相場よりも低い金額を包むとあからさまに怪訝そうな顔をするようなタイプもいるので、その場合は少ないということになるでしょう。
お寺に支払う費用 | 金額の目安 |
---|---|
入壇料 | 10~30万円程度 |
護寺会費・維持費 | 年間5,000~2万円程度 |
お寺の行事のお布施 | 3万~5万円程度 |
檀家負担金(お寺の改築など) | 檀家の数と改築費用によって異なる |
通夜・葬儀の読経など | 15万~50万円程度 |
一周忌・三周忌などの供養 | 3万~10万円程度 |
月命日などの読経 | 5,000~1万円程度 |
永代使用料 | 約77万円(2015年全国平均相場) |
寺院墓地を利用する時の費用については、「寺院墓地の使用料相場は約77万円。檀家料などの費用も必要」でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。
お寺にお墓を建てるときに必要な費用相場
お寺にお墓を建てるときの費用相場とトータルで見ていきましょう。
上述したように、お寺へ支払う費用は、「通夜・葬儀のお布施」「入檀料」「永代使用料」「護寺会費・維持費は5,000~2万円」「納骨式の読経」が一般的です。
永代使用料とは、お寺から墓地を借りる際に支払う費用になります。
2015年に「いいお墓」が調査したデータによると全国の永代使用料の平均相場は、77.39万円です。
お寺にお墓を建てる時に必要な費用
- 通夜・葬儀のお布施 10万~50万円
- 入壇料 10万~30万円
- 永代使用料 約77万円
- 護寺会費・維持費 5,000~2万円
- 納骨式の読経 3万~10万円
上記をトータルすると100.5万~169万円となります。
お寺でお墓を建てる場合は、お墓以外にこのような費用がかかってくることはしっかりと押さえておきたいですね。
お寺にお墓を建てる3つのメリットと4つのデメリット
お寺にお墓を建てる場合はメリット・デメリットがあります。
お寺のお墓にする3つのメリット
お寺のお墓は3つのメリットがあります。
自分の希望と照らし合わせてみましょう。
手厚い供養
お寺のお墓の場合は、住職が常駐していることが多いため手厚い供養を受けることができます。
法事の際にお寺が使える
一周忌、三周忌など法事の際にお寺を利用できるため準備などが楽です。
困ったことを住職へ相談できる
弔事などで困ったときは住職に相談したり、意見をもらったりすることができます。
お寺のお墓にする4つのデメリット
お寺のお墓は、メリットだけでなく当然デメリットもあります。
ただ、どのように感じるかは個人差があるでしょう。
お寺の檀家になる必要がある
お寺の檀家になる必要があることはデメリットにもなります。
上述したようにデメリットに感じるのは費用の問題でしょう。
自分の生活が逼迫しているのに、出費が増えることはどの家庭でもマイナス要因になります。
宗派や宗旨が限定される場合がある
お寺のお墓は宗派や宗旨が限定される場合があることもデメリットの一つです。
無宗教を通したかったり、別の宗派を信仰していたりする場合は選択肢が狭まります。
墓石の形状やデザインが自由でない場合がある
お寺のお墓の場合は、近年注目されているデザイン墓石などが建てられない可能性があります。
お寺の住職の考えによって景観を損ないたくなかったり、従来通りの和式墓石に統一したかったりなど意向があるからです。
石材店が指定されている場合がある
石材店がお寺の指定された業者しか使えない場合があります。
そのため、石材店を比較したり、相見積もりしたりするということもできません。
お寺のお墓には、さまざまなメリットやデメリットがありますね。
自分のなかで優先順位が高いメリットが享受できるようであれば、満足できるお墓を建立することができるでしょう。
檀家制度を選ぶタイプ
檀家制度は歴史のある制度です。しっかりと内容を理解していればさまざまな恩恵を受けることができるでしょう。
しかし、なかには向いていないという人もいます。
自分がどちらのタイプなのかをある程度把握しておくことは重要です。
檀家制度に向いている人
伝統を重視して、後継者へと手厚い供養を継続していきたい人は檀家制度がおすすめです。
故人への供養は金銭価値ではかれるものではありません。
しかし、毎日自分が供養をあげるには限界があります。
他にも、法要をお寺に任せたい人なども向いているといえます。
檀家制度に向いていない人
檀家の費用がもったいないという気持ちが先行してしまう人は向いていません。
どんなにすばらしい供養をしても、檀家の費用がムダな費用という考えが根底にある人は不満となって積もっていきます。
また、従来の形式的なスタイルに納得できないような人もおすすめできません。
檀家の主な行事と費用
檀家になった場合はさまざまな行事があります。
基本的に必ず参加しなければならないという強制ではありませんが、檀家になっている以上お寺へ支援する奉仕の心はもっていないといけません。
ここでは、彼岸会と、盂蘭盆会について解説します。
彼岸会(春と秋)
彼岸会は春分の日と秋分の日を中日した前後1週間にお墓参りなど供養をすることです。
彼岸は「あの世」を指します。彼岸会の費用は3万~5万円程度が目安です。
盂蘭盆会(うらぼんえ)
盂蘭盆会は旧暦の7月15日を中心に先祖をお墓から迎えて、おもてなしをする供養の方法です。
盂蘭盆会の費用は3万~5万円になります。
まとめ
お寺のお墓には、民営のお墓や公営のお墓に比べてさまざまな制限や決まりが存在しています。
従来の伝統的な手厚い供養が受けられる反面、費用負担は決して少ないとはいえません。
また、檀家制度は檀家全員でお寺を支えるシステムです。
そのため、昨今の檀家離れに拍車がかかれば、そのしわ寄せが自分に来る可能性もあります。
墓地の種類は3つある
墓地の種類 | 経営の主体 | 運営管理 | 特徴 | 宗派・宗旨 |
---|---|---|---|---|
お寺の墓地 | 宗教法人 | 宗教法人 | 檀家になる必要がある | 問われる場合がある |
民営の墓地 | 宗教法人など | 民間業者など |
| ほとんどが問われない |
公営の墓地 | 自治体 | 自治体 |
| 問われない |
お寺の費用
お寺に支払う費用 | 金額の目安 |
---|---|
入壇料 | 10~30万円程度 |
護寺会費・維持費 | 年間5000~2万円程度 |
お寺の行事のお布施 | 3万~5万円程度 |
檀家負担金(お寺の改築など) | 檀家の数と改築費用によって異なる |
通夜・葬儀の読経など | 15万~50万円程度 |
一周忌・三周忌などの供養 | 3万~10万円程度 |
月命日などの読経 | 5000~1万円程度 |
永代使用料 | 約77万円(2015年全国平均相場) |
お墓を建てるまでにかかる費用は100.5万~169万円程度(お墓の代金は含まず)
お寺でお墓を建てたい場合は、これまで解説した内容をしっかり理解しておくことが重要です。
自分の一存だけで決定せず、必ず次の世代のことも考えて家族や親族と相談しておくことも大切といえます。
しっかりとメリット・デメリットを踏まえたうえで、経済的な負担も視野に入れながら検討していきましょう。
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
寺院との付き合いというと、「面倒だ」「護持会費等が多くかかるのでは」と不安に思う人が多いでしょう。結論からいうと、それは寺院によって異なります。お寺の数は全国で7万ケ寺以上もありますから、運営の仕方も違って当然です。実際某都市部の寺院では、「法要のお布施は基本的に10万円以上!」と豪語しているところもありました。そうかといえば、「500円でも1000円でも、できる範囲でかまわない。それよりも、お寺に気軽に来てほしい」という住職もいます。
寺院墓地の良さは、日常的に供養の空間が完成されているという点だと思います。同じ敷地内で日々勤行が行われ、お彼岸やお盆、宗祖の記念日等には法要が営まれます。自分たちが訪れることができなくても、常に勤行が行われている空間であることは何より安心感につながるのではないでしょうか。
最近は、寺院墓地の一角を業者が開発して民間墓地を造成しているケースもあります。その場合、「宗旨宗派不問」としてうたって販売していますが、同じ敷地内にあることをふまえ、少なくともその寺院の教義に理解を示すくらいの配慮は欲しいですね。