老後に支払う税金は?種類と金額の計算方法を丁寧に紹介
「豊かな老後のためには2,000万円必要」といったニュースが、2019年に世間を賑わせました。
しかしながら老後生活と貯金の関係についてこのように語られることはあっても、老後の税金について詳しく知る機会はほとんどありません。
したがって多くの方が、老後生活に入って初めて老後の税金について知ることになるわけです。老後生活はただでさえ収入が減少するのに、そこから支払うべき税金も不明瞭なのは、大きな不安を感じますよね。
実は老後にもさまざまな税金がかかります。
当記事では老後の生活に影響する退職所得の税金や、年金にかかる税金についてわかりやすく触れていきます。
また必要な手続きもご説明しますので、記事内容を見ながら手続きを進めれば、迷うことなく安心して老後生活を送ることができますよ。ぜひ参考になさってください。
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【老後の生活に影響!】退職金にも税金はかかる
老後生活において、退職金は非常に重要な生活資金です。しかし、ご存知ない人が多いのですが退職金にも税金がかかります。
退職金は「退職所得」という収入の種類に分類され、申告分離課税で計算されます。
申告分離課税とは、株式などの譲渡によって所得が生じた場合の様に、他の所得とは分離して税率が決定される課税方式のことです。
申告分離課税は合計所得に応じて課税される「総合課税」とは違い、単体の所得で税率が決まるため、総合課税の所得が高かったとしても税額に影響することはありません。
退職所得とは、退職に伴って勤務先から受け取る退職金から、退職控除等一定の計算を行い算出する所得のことです。
わかりやすくいえば、退職金は額面収入額で、退職所得は控除後の収入額、と捉えるとわかりやすいでしょう。税額の計算は、控除後の収入額である退職所得がもとになります。
退職所得には下記3種類の税金がかかります。
<退職所得にかかる税金>
- 所得税
- 復興特別所得税
- 住民税
退職金に関しては、社会保険料はかかりませんので安心してください。
ここでは税金計算のもとになる退職所得の計算と、退職金の税金を支払う上での注意ポイントをご説明していきます。
退職所得を実際に計算してみよう
所得とは、収入から対象の控除額を差し引いた金額のことで、税金の算出元になります。
一般的な会社員の退職所得の計算式は、下記のようになっています。退職所得の計算式は非常にシンプルなので、苦手意識を持たずご自身の退職所得を計算してみましょう。
<退職所得の計算式>
(収入額(年間)-退職所得控除額) ×1/2=退職所得の金額
【参考】国税庁HP「退職金を受け取ったとき(退職所得)」より
上記の計算の中で特に重要なのが、「退職所得控除」です。
退職所得は高額な控除枠が設定されており、税額の負担が大きく軽減されています。退職所得控除の計算式は下記のとおりです。
<退職所得控除の計算式>
- 勤続年数が20年以下…40万円×勤続年数 ※計算後80万円に満たない場合には80万円
- 勤続年数が20年超…800万円+70万円× (勤続年数-20年)
例として、勤続年数30年で3,000万円の退職金を受け取った場合の所得を計算してみましょう。
勤続年数30年の場合の退職所得控除は、「800万円+70万円×(30-20)=1,500万円」となります。この退職所得控除を退職金の金額から差し引いて、その金額を半分にすれば退職所得を算出できます。
<勤続年数30年で3,000万円の退職金を受け取った場合の退職所得>
(3,000万円-1,500万円)×1/2=750万円
この750万円に対して、先述した3種類(所得税・復興特別所得税・住民税)の税金が課されることになります。
退職金の税金の中でも、特に住民税には注意が必要です。住民税を支払ううえでのポイントを簡単にご説明しておきますね。
ポイント①:退職金の住民税は一括徴収で高額
退職金の住民税は、原則として天引きの一括徴収です。
住民税は先ほどご紹介した退職所得((収入額(年収)-退職所得控除額) ×1/2)に10%を掛けた金額になります。例えば退職所得が750万円であれば、75万円もの住民税が退職金から差し引かれることになるわけです。
もちろん住民税は退職金から一括徴収されるので、何か手続きが必要になるわけではありません。しかし高額な税金がご自身の収入から差し引かれるため、税引前の金額と見比べると「あれ?こんなに税金高いの?」と感じてしまいがちです。
ご自身の退職所得をあらかじめ試算しつつ住民税額を把握しておけば、実際の納付時に驚かなくて済みますよ。
ポイント②:退職年の給与所得の住民税は翌年に請求が来る
退職金から差し引かれる住民税は、退職金として受け取った金額分のみに対する税金です。つまり退職金以外で給与として受け取った収入分の住民税も別途支払わなければなりません。
加えて注意すべきなのが、退職年の給与所得の住民税は翌年請求という点です。住民税は前年度の所得で金額が決まり翌年に請求が来るため、退職後の1年間も支払いが必要になります。つまり、退職後に収入が大幅に減ったタイミングで納付しなければならないということですね。
したがって退職したからといって給料を使い切ってしまうと、退職金で住民税を支払う必要が出てしまいます。退職金は大切な老後資金ですから、可能なかぎり給料分から住民税を支払うためのお金を残しておきましょう。
【種類別】老後にかかる主な税金の種類とその実例
老後にかかる主な税金を簡潔にお伝えすると、所得税・復興特別所得税・住民税の3種類です
老後の税金に対して「どんなものにいくらかかるのだろうか」と不安を感じている方も多いかと思います。たしかに現役の会社員であれば会社に任せることができたので、老後生活に入って初めて税金に悩む方も少なくありません。当然ながら老後も税金の支払い義務があります。
老後生活にも様々な税金がかかります。もちろんメインの収入源である年金にも税金が課されますので、注意が必要ですよ。
ここでは老後にかかる主な税金の種類と、年金から差し引かれる費用、その他支払いが必要な費用について解説していきます。実例もご紹介しますので、ご自身に当てはめながら読み進めてください。
年金支給時に引かれる税金の種類
老後の重要な収入源である年金ですが、先述したように年金にも税金がかかってきます。年金収入に対してかかる税金は下記の3つです。
<年金に対して課される税金の種類>
- 所得税
得た所得に対して段階的にかかる税金。課税所得額に応じて5%~40%が課される。 - 復興特別所得税
東日本大震災からの復興のために令和19年まで納める税金。基準所得税額に2.1%を掛けて算出する。 - 住民税
地方税の1つで都道府県民税と区市町村民税の2種類を合算したもの。税率は課税所得額に対して大体10%だが、居住地によって多少の差がある。
所得税と復興特別所得税に関しては給料と同様で天引きの源泉徴収、住民税に関しては天引きの特別徴収が基本の支払い方法になります。ただし全ての方が源泉徴収されるわけではなく、下記の条件に該当する方が対象となります。
<所得税と復興特別所得税が源泉徴収される方の条件>
- 65歳未満…該当年の年金受給額が108万円以上の方
- 65歳以上…該当年の年金受給額が158万円以上の方
【参考】日本年金機構 Q&A
さらに税金とは別に、国民健康保険料と介護保険料がかかってきます。
<税金とは別にかかる費用>
- 国民健康保険料
医療を受ける際に必要となる国民皆保険制度の保険料。原則天引きの特別徴収で納付 - 介護保険料
要介護認定または要支援認定等を受けたときに介護保険のサービスを受けるための保険料。65歳以上が第1号被保険者、40歳以上65歳未満が第2号被保険者となっており、それぞれ取り扱いが異なる。老後の支払いは原則天引きの特別徴収で納付。国民健康保険料と介護保険料は税金よりも重い負担になる場合があるので、要注意です。
このように老後生活には3種類の税金(所得税・復興特別所得税・住民税)と、医療を受けるための保険料がかかってきます。特に住民税は所得税よりも控除額が少ないため、金額も高めです。したがって年金の全額が手元に残るわけではないので、注意してくださいね。
具体的に税金の金額を算出するためには、「課税所得額」を計算する必要があります。ただし課税所得額の計算にはそれぞれの家庭で異なる控除額を用いるため、一概に算出できるものではありません。そこで税額をイメージしやすいよう、シミュレーションを1つご紹介します。
年金に対する税金試算例
ここでは、年金にかかる税金を実際に試算していきます。
厚生労働省年金局「平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平成30年度の平均年金月額は14.4万円となっています。こちらを踏まえ、シミュレーションでは夫の年金収入が年間180万円、妻の年金収入が年間70万円の計250万円と仮定して試算します。
【参考】厚生労働省年金局「平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
<年金の税金試算例>
【前提】年金収入:2,500,000円/国民健康保険料、介護保険料:年間140,000円
※夫の年齢と妻の年齢は68歳とする
【試算内容】
1.所得金額
公的年金等の収入-公的年金等所得控除=2,500,000円-1,100,000円=①1,400,000円(年金所得)
2.各種控除
480,000円(基礎控除)+380,000円(配偶者控除)+140,000円(社会保険料控除)=②1,120,000円(控除計)
3.課税所得額 ①-②=1,400,000円-1,120,000円=280,000円
【各種税額概算】
・所得税 20,000円・復興特別所得税 420円・住民税 55,000円
合計:所得税(20,000円)+復興特別所得税(420円)+住民税(55,000円)=75,420円
上記ケースの場合、合計で75,420円の税金がかかることになります。またシミュレーションでも記載されているように国民健康保険料と介護保険料もかかってくるので、大きな負担になりますね。老後の負担を想定しつつ、生活コストを見直してみましょう。
老後に支払う可能性のある税金と実例(年金にかかる税金以外)
他にも、老後に支払う可能性のある税金として、
- 固定資産税…住宅等の不動産に対してかかる税金
- 自動車税…自動車を所有している人にかかる税金
などがあります。
固定資産税額に関しては物件の評価額によって大きく異なるので、一概には言えません。持ち家の場合で大体年間20万円程度、マンションの場合で大体年間15万円程度が1つの目安になると思います。
自動車税は軽自動車で7,200円、普通自動車の場合で34,500円~111,000円の金額帯になります。ただ普通自動車の自動車税の上限は111,000円ですが、一般的な普通自動車であれば34,500円~58,000円前後で収まりますよ。
いずれも世帯の状況によって支払いが必要になる税金なので、ご自身のケースにあてはめてあらかじめ試算しておきましょう。
老後の税金の割合や控除額は年齢や収入で異なる
先述したように、老後の税金には「所得税」「復興特別所得税」「住民税」がかかります。ではご自身の年金にどのような計算で税金が課されるのでしょうか?
ここでは、老後の税金を実際に計算するための雑所得の計算方法をご紹介していきます。税金の金額は手取り収入額に大きく影響しますので、一度計算しておくと安心して老後生活を過ごせます。
実際に税金を計算する際は、下記の計算式を用います。
<公的年金における雑所得の計算>
公的年金等の雑所得=年金受給額―公的年金等控除額
公的年金による収入は「雑所得」という所得分類になっています。公的年金による雑所得は通常の雑所得と計算が少し異なり、公的年金専用の計算式になっていますので、注意してください。
年金による雑所得を計算するうえでは「公的年金等控除額」が重要なポイントになりますが、こちらは65歳未満と65歳以上で計算が異なります。公的年金等控除額とは年金額から差し引ける金額のことで、金額が大きくなるほど支払う税金は少なくなります。
実際の税金を計算するにあたり、65歳未満のケースと65歳以上のケースに分けてご説明していきます。
65歳未満の人
65歳未満の方は、下記の速算表を用いて雑所得を計算します。
【65歳未満】公的年金に係る雑所得の速算表 | ||
---|---|---|
公的年金等の収入金額の合計(A) | 割合(B) | 控除額(C) |
(公的年金等の収入金額の合計額が600,000円までの場合は所得金額が0になります | ||
600,001円から1,299,999円まで | 100% | 600,000円 |
1,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 275,000円 |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 685,000円 |
7,700,000円から9,999,999円まで | 95% | 1,455,000円 |
10,000,000円以上 | 100% | 1,955,000円 |
【参考】国税庁:公的年金等の課税関係
実際の所得額を計算する際は、上記表をもとに「公的年金等に係る雑所得の金額=(A)×(B)-(C)」の計算式で算出します。
例えば65歳未満で年間300万円の年金を受給している方の場合、速算表の3段目を参照して計算します。
<65歳未満で年間300万円の年金を受給した場合の所得計算>
3,000,000×75%-275,000円=1,975,000円(雑所得の金額)
実際に税金がかかるのは、この197.5万円の部分になります。速算表を用いて計算すると簡単に算出できるので、ご自身のケースに当てはめて試算してみましょう。
年金の税金計算で特に重要なのが
- 割合
- 控除額
の2つなので、それぞれのポイントもご説明していきます。
収入別|税金の割合について
【65歳未満】公的年金に係る雑所得の速算表 | ||
---|---|---|
公的年金等の収入金額の合計(A) | 割合(B) | 控除額(C) |
(公的年金等の収入金額の合計額が600,000円までの場合は所得金額が0になります) | ||
600,001円から1,299,999円まで | 100% | 600,000円 |
1,300,000円か4,099,999円まで | 75% | 275,000円 |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 685,000円 |
7,700,000円から9,999,999円まで | 95% | 1,455,000円 |
10,000,000円以上 | 100% | 1,955,000円 |
上記速算表の【B】にあたる部分が、公的年金などの収入合計に対して「課される税金の割合」になります。なぜ全ての収入に税金が課されないのかというと、公的年金は生活に影響の大きい収入源だからです。そのため、公的年金は他の所得とは違い、控除金額が高く設けられています。
例えば年間200万円の年金を受給したと仮定し計算してみます。税金の対象として初めに算出するのは速算表の3段目、総額に75%を掛けた金額です。つまり200万円×75%=150万円だということですね。
ただしこの150万円に税金がかかるのかというと、決してそうではありません。この金額からさらに控除額が差し引かれることになります。
収入別|税金の控除額について
受給した年金額に割合を掛けたら、次は控除額を差し引きます。
【65歳未満】公的年金に係る雑所得の速算表 | ||
---|---|---|
公的年金等の収入金額の合計(A) | 割合(B) | 控除額(C) |
(公的年金等の収入金額の合計額が600,000円までの場合は所得金額が0になります) | ||
600,001円から1,299,999円まで | 100% | 600,000円 |
1,300,000円か4,099,999円まで | 75% | 275,000円 |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 685,000円 |
7,700,000円から9,999,999円まで | 95% | 1,455,000円 |
10,000,000円以上 | 100% | 1,955,000円 |
上記速算表の「控除額(C)」の部分ですね。この控除額が所得額から差し引かれることになります。例えば年金受給額が250万円であれば、速算表の3段目、275,000円が差し引かれます。
したがって65歳未満の方が250万円の年金を受給した場合、「2,500,000×75%-275,000円=1,600,000円(課税対象の雑所得額)」が税金の対象になるということです。速算表を活用すれば、左から順番に計算していくだけで年金の雑所得を算出できますよ。ぜひチャレンジしてみてくださいね。
65歳以上の人
65歳以上の方は下記の速算表を用います。65歳未満を対象とする速算表とは数値が異なるので、注意してくださいね。
【65歳以上】公的年金に係る雑所得の速算表 | ||
---|---|---|
公的年金等の収入金額の合計(A) | 割合(B) | 控除額(C) |
(公的年金等の収入金額の合計額が1,100,000円までの場合は所得金額が0になります | ||
1,100,001円から3,299,999円まで | 100% | 1,100,000円 |
3,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 275,000円 |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 685,000円 |
7,700,000円から9,999,999円まで | 95% | 1,455,000円 |
10,000,000円以上 | 100% | 1,955,000円 |
【参考】国税庁:公的年金等の課税関係
65歳未満の速算表と比較すると、65歳以上の速算表は控除額が高く設定されていることがわかります。これは65歳で収入源が年金のみに絞られるケースが多い点を踏まえ、負担を軽減するための処置ですね。公的金額の収入額が110万円以下なら、雑所得は0円になりますよ。
所得の計算方法自体は65歳以上も65歳未満のケースと同様で、下記の計算式を用いて算出します。
<公的年金等に係る雑所得の計算式>
公的年金等に係る雑所得の金額=(A)×(B)-(C)
例えば受給した年金が400万円であれば、速算表の3段目を参照して計算します。したがって、
4,000,000円×75%-275,000円=2,725,000円
が課税対象の雑所得になります。
公的年金の雑所得を算出するうえで特に重要なのが、速算表の「割合(B)」と「控除額(C)」です。それぞれのポイントを分けてご説明していきますね。
収入別|税金の割合について
年金の収入は生活への影響が非常に大きいため、一定額までは総額に税金がかからない仕組みになっています。その仕組みの1つが下記速算表の「割合(B)」の部分ですね。
【65歳以上】公的年金に係る雑所得の速算表 | ||
---|---|---|
公的年金等の収入金額の合計(A) | 割合(B) | 控除額(C) |
(公的年金等の収入金額の合計額が1,100,000円までの場合は所得金額が0になります | ||
1,100,001円から3,299,999円まで | 100% | 1,100,000円 |
3,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 275,000円 |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 685,000円 |
7,700,000円から9,999,999円まで | 95% | 1,455,000円 |
10,000,000円以上 | 100% | 1,955,000円 |
実際に年金の所得を算出する際は、【B】の割合を掛けた金額を最初に算出します。1年間に受給した年金が350万円であれば、表内の3段目を参照して計算を行います。
したがって、「350万円×75%=2,625,000円」と算出することができます。
この262.5万円からさらに控除額を差し引くことで、公的年金の雑所得を計算することができます。
収入別|税金の控除額について
年金額に一定割合を掛けた金額を算出できたら、次は控除額を差し引きます。
【65歳以上】公的年金に係る雑所得の速算表 | ||
---|---|---|
公的年金等の収入金額の合計(A) | 割合(B) | 控除額(C) |
(公的年金等の収入金額の合計額が1,100,000円までの場合は所得金額が0になります | ||
1,100,001円から3,299,999円まで | 100% | 1,100,000円 |
3,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 275,000円 |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 685,000円 |
7,700,000円から9,999,999円まで | 95% | 1,455,000円 |
10,000,000円以上 | 100% | 1,955,000円 |
上記速算表の「控除額(C)」を参照します。例えば1年間に受け取った年金額が350万円であれば、速算表の3段目、275,000円を差し引く形になります。
したがって実際の計算は、「3,500,000円×75%-275,000円=2,350,000円」 となり、年金の雑所得は235万円になります。
この235万円が税金計算のもとになり、他の様々な所得控除が差し引かれて、最終的に税金額が算出されますよ。
所得控除は世帯の状況によって大きく異なりますので、詳細は税務署に確認してみてください。また所得税の所得控除と住民税の所得控除は金額が異なるので、注意してくださいね。
老後の税金で行うべき2つの手続き
老後の税金で重要な所得額を把握できたところで、実際の手続き面も解説していきます。老後の税金で必要な手続きは、
- 扶養親族等申告書
- 確定申告
のどちらかです。年金受給者は原則として確定申告で所得を申告する必要がありますが、「確定申告不要制度」という簡易的な手続きがあり、下記条件の両方に該当すれば確定申告は不要となります。
<確定申告不要制度の対象者>
- 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
要は年金受給額が年間400万円以下で、かつその他の所得が年間20万円以下であれば、確定申告は不要だということです。
ここではどのような人が扶養親族等申告書で手続きできて、どのようなケースなら確定申告が必要なのかをご説明していきますね。
扶養親族等申告書の提出
年金のみで生計を立てるほとんどのケースでは、「扶養親族等申告書」を提出する必要があります。
扶養親族等申告書とは、申告のあった内容から各種控除を計算し、年金から差し引く税金を決めるための書類です。会社員でいうところの年末調整にあたる書類ですね。
扶養親族等申告書は毎年9-10月頃に郵送で届き、その書類を提出するだけで年金受給に必要な税金の手続きは完了します。扶養親族等申告書の提出期限は10月末日となっています。
【参考】日本年金機構「令和3年分 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」
提出方法は「郵送」「電子申請」の2通りがありますが、電子申請には電子証明書が必要になりますので要注意です。郵送の場合は返信用封筒が同封されていますので、申告書を記載のうえ切手を貼ってポストへ投函すれば、手続きは完了となります。
万が一提出を忘れてしまうと天引きされる税率が高くなり、確定申告をしなければ翌年の年金の手取りが減ってしまいます。
したがって扶養親族等申告書を受け取ったら、忘れてしまわないよう速やかに返送しましょう。もし忘れてしまっていたことに、後で気付いた場合でも該当年分の確定申告をすることで、払いすぎた税金を取り戻すことができます。
扶養親族等申告書の注意点として、この書類は源泉徴収される人のみが対象です。したがって、
- 65歳未満…年間の年金受給額が108円以上
- 65歳以上…年間の年金受給額が158万円以上
の条件に該当しない人には届きません。
ただ、収入源が年金のみで上記の条件に該当していない人はそもそも確定申告自体も不要になるケースが多いので、ご自身の雑所得を計算してみると良いでしょう。年金額から控除額を差し引いた結果、所得が0円になるのであれば、確定申告は不要ですよ。
確定申告の提出
確定申告とは、1年間に得た所得を申告書に記載し、税務署へ提出する手続きのことです。手続きは毎年2月中旬~3月中旬が申告時期になっています。
確定申告の記載内容をもとに税額が確定し、課税されることになります。公的年金に関連して確定申告が必要な例を挙げると、下記に該当するような方です。
<公的年金に関して確定申告が必要な方>
- 公的年金の収入額が年間400万円を超える方
- 給与所得を受け取っていて、かつ公的年金に係る雑所得が20万円を超えている方
- 公的年金に係る雑所得以外の所得が20万円を超えている方(給与所得含む)
- 公的年金等に係る雑所得の金額から所得控除を差し引いても残額がある方
- 扶養親族等申告書を提出し忘れたが各種控除を受けたい方
- 医療費控除など、扶養親族等申告書で受けられない控除を受けたい方
上記の条件に該当する方は、確定申告の必要が出てきます。特にありがちなケースとしては、年金を受け取りながら給与所得を得ているケースでしょう。
受け取った年金から公的年金等控除額を差し引いても20万円を超えた金額が残っていて、かつ給与所得を得ている場合は確定申告が必要になるので、注意してくださいね。
対して収入源が年金だけで上記条件に該当していない方は、扶養親族等申告書で源泉徴収額が確定するため、基本的に確定申告は必要ありません。
その他にも住宅ローン控除等によって確定申告が必要な場合もあるので、ご心配な方は一度税務署に問い合わせしてみましょう。
確定申告不要制度に当てはまれば確定申告が不要
「老後の税金で行うべき2つの手続き」の章でも軽く触れましたが、年金受給者は「確定申告不要制度」という簡易的な手続きを利用でき、下記条件の両方に該当すれば確定申告は不要となります。
<確定申告不要制度の対象者>
- 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
例えば収入源が年金のみで年間受給額が300万円であれば、確定申告は不要です。対して収入源が年金だけだったとしても年間受給額が500万円であれば、確定申告が必要になってきます。
また年間受給額が400万円以下でも雑所得以外の所得金額が20万円を超えていれば、こちらも確定申告が必要になってきます。雑所得以外の所得には給与所得も含まれるので、働きながら年金を受給している方は注意してくださいね。
まとめ
老後は「所得税」「復興特別所得税」「住民税」という3種類の税金がかかり、それ以外にも「国民健康保険料」「介護保険料」の支払いが必要になります。税金や社会保険料は老後生活においても決して軽くない負担ですので、これから老後生活に入られる方は一度シミュレーションしておくと良いでしょう。
当記事内で特に重要なポイントは、下記の6つです。
この記事のポイント
- 退職金にも税金がかかるが、控除額は非常に大きい
- 退職金の税金納付は基本的に天引きで完了する
- 年金にも税金がかかる
- 年金の税金関連手続きは「扶養親族等申告書」「確定申告」のどちらかで行う
- 扶養親族等申告書を提出し忘れると、年金の手取り額に影響する場合がある
- 確定申告が必要かどうかは「確定申告不要制度」の条件を確認しておく
老後生活では、退職金や年金が頼りです。だからこそあらかじめ税金の試算を行って手取り額を把握しておけば、経済的な不安は払拭することができますよ。
税金の計算は一見難解に見えますが、当記事で挙げた順序で計算していけば、実はさほど難しくありません。豊かな老後を送れるよう、当記事を上手く活用なさってくださいね。