指定石材店の制度とは?石材店出身の筆者が墓地や霊園の実態に迫る!

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指定石材店とは?徹底解説

  • 指定石材店制度は、墓石購入を特定店に限るもの。メリットは管理の安定、デメリットはコスト増。
  • 民営・寺院墓地に指定石材店あり。公営では自由に選択可能。
  • 制度は法に触れず、トラブル防止には事前情報収集と納得が必要。

指定石材店制度とは、霊園内における墓石の購入や建立を決められた石材店でしか行えないというものです。
複数他社の相見積もりや知人の石材店で墓石の購入ができないなど、この制度が不合理だという批判は一定数あります。

指定石材店制度は必ずしも悪い面ばかりではないのですが、利用者から見れば腑に落ちない点が多々あることでしょう。

この記事では指定石材店制度がどのようなものなのか、利用者にとってどんなメリットやデメリットがあるのかを可能な限り公平中立に綴って参ります。

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この記事の目次

  1. 指定石材店とは?制度が生まれた理由と目的
  2. 指定石材店があるメリット・デメリット
  3. 複数の指定石材店があるケースの注意点
  4. 指定石材店と実際にあったトラブル事例
  5. まとめ
  6. 監修者コメント

指定石材店とは?制度が生まれた理由と目的

指定石材店制度のある霊園では、墓石の購入や工事を決められた業者でしか行えません。
まずは制度が生まれた理由や目的について確認しましょう。

指定石材店制度があるのは民営霊園と寺院墓地

指定石材店制度があるのは民営霊園と寺院墓地だけです。
この民営霊園というのがなかなかやっかいなのですが、そもそも国の方針として民間企業による墓地の経営は認められていません。

そのため、民営霊園は「経営主体が宗教法人で、実務を行うのが開発業者や石材店」という形をとっています。

つまり、民営霊園も寺院墓地も宗教法人と民間企業とのタッグという意味においては同じなのです。
では、その違いはどこにあるのでしょうか。

民営霊園における指定石材店制度

民営霊園は、霊園の開発段階から宗教法人と民間業者がタッグを組んで始まります。
墓地の経営者は登記上、あくまでも宗教法人です。

宗教法人だけで費用の捻出ができればいいのですが、霊園の開発には莫大な費用がかかるため、民間業者(開発業者や石材店)も資金協力をします。

宗教法人側としては投資をしてもらえるために墓地が開発できます。
民間業者側としては投資をした分、墓地が売れた際には自分たちの会社で墓石を建立して利益を出そうと考えます。

こうした背景から民営霊園では必ず指定石材店制度が敷かれているのです。
墓地や墓石が売れた時のお金に流れの内訳はさまざまです。

墓地の永代使用料は宗教法人の収入とし、墓石建立に伴う売上は民間企業の収入という具合に明確に分ける。

また、墓地の営業販売も含めて霊園の経営をまるごと民間企業に委託している場合、あとから宗教法人に対してキックバックするというところもあるでしょう(キックバックの費用はおおよそ成約金額の1〜2割)。

寺院墓地における指定石材店制度

寺院墓地とは檀家向けの墓地のことです。
寺院墓地の多くも石材店を指定していますが、中には石材店の制約がないところもあり、ここは住職の意向によって分かれます。

寺院側の心理としては慣れた石材店に工事を任せたいと考えます。
さまざまな石材店が出入りすると業者によってそれぞれの方法で墓石工事がなされます。
仕事が丁寧な石材店もあれば雑な石材店もあるでしょう。

寺院の境内には本堂があり、墓地があり、庫裡(くり:住職の家族が住む家)があり、つまりは礼拝空間でもあり、住職やその家族の生活空間でもあるのです。

そうした境内を不慣れな石材店に荒らされたくないという心理が働くのは至極真っ当なことです。
また大切な檀家の墓石工事ですから、なおのこと信頼の置ける石材店に任せたいものです。

石材店側からすれば寺院内の石材工事を任せてもらえるわけですから寺院は重要な取引先です。
キックバックを受け取る寺院もあれば、キックバックを不要とする代わりに檀家への負担を軽減するよう石材店に持ちかける寺院もあります。

公営霊園なら自由に石材店を選べる

公営霊園は地方自治体が経営する霊園です。
いわゆる「役所」が一定の民間業者のみに施行工事を限定することは絶対にありません。
公営霊園には指定石材店制度はあり得ず、自由に石材店を選ぶことができます。

墓地の供給が追いつかなかったバブル期 民営霊園が必要だった

1970年代からバブル期は空前のお墓ブームでした。
民営霊園がここまで多く造られたのもお墓の需要に対して、地方自治体や宗教法人による霊園や墓地では供給が追いつかなかったからでしょう。

そもそも厚生労働省からの通達では、墓地の経営は地方自治体が行うのが望ましいとしています。
そして、地方自治体だけでは対処できない場合もあるために宗教法人や公益法人による墓地の経営も認めています。

ここでポイントなのは「民間企業による墓地経営はふさわしくない」とわざわざ明記しているところです。

墓地の永続性及び非営利性の確保の観点から、従前の厚生省の通知等により、営利企業を墓地経営主体として認めることは適当ではないとの考え方が示されている。(生衛発第1764号平成12年12月6日 厚生省生活衛生局長)

「営利企業を墓地経営主体として認めることは適当ではない」とあえて明記しながらも「民営霊園」と呼ばれてしまう霊園が広く普及してしまったのは民営霊園の必要性を国も認めていたために他なりません。

世間の人々の多くがお墓を求めた時代、民営霊園がなければその供給は追いつかったのです。
国の指針から外れてはいるものの、民営霊園の存在に頼らざるを得ないところがあり、目をつむっていたのでしょう。 

墓地の管理はプロに任せる 指定管理者制度と指定石材店制度

経営主体が、管理や運営などを実務に慣れた業者や団体に任せるのは民営霊園や寺院墓地だけではありません。

管理委託そのものは全国の公営霊園でも見られます。
多くの自治体が指定管理者制度を用いて公営霊園内の管理運営を委ねているほどです。

もちろん公営霊園の指定管理者は、墓地の販売や墓石の施行などの営業活動は行いませんが、「官低民高」と呼ばれるように利用者へのサービスの質の向上に置いては民間業者の力は不可欠です。

寺院においても、お寺の住職が墓地の管理をくまなくできるかというと現実的ではないでしょう。
寺院墓地や民間霊園における指定石材店制度は、墓地の経営者である宗教法人と墓地の実務者である民間企業がお互いを助け合っている面もあります。

もちろんそれが利用者にとっても有益なサービス提供にならなければなりません。

指定石材店制度によって霊園管理が向上

宗教法人、ここで分かりやすく言うと寺院の住職の仕事は、決して墓地の管理や石材についてではなく、彼らはあくまでも祈りや供養といった宗教行為の専門家です。

ですから、指定石材店制度は経営者である住職のサポートをしているという側面もあります。
民間企業だからこその高い管理体制とサービスの向上が見込まれるでしょう。

指定石材店制度は独占禁止法に抵触しない

墓石を購入する石材店が自由に選べないなんて不合理だ。
そう感じる人が多くいるのも事実です。
指定石材店制度は独占禁止法に抵触しないのかと考えてしまいがちですが実際には抵触しません。

なぜならば、霊園や墓地の中には石材店を自由に選べる公営霊園が存在するからです。
ただし、指定石材店が1社に限定されている場合や墓石の費用が不当に高い場合はこればかりではないでしょう。

指定石材店があるメリット・デメリット

指定石材店制度にはメリットもあればデメリットもあります。
具体的にどのようなものか、それぞれまとめました。

指定石材店のメリット

  • 墓地や霊園の運営や管理が安定する
    寺院をはじめとする宗教法人は決して墓地や墓石に関しての専門家ではありません。
    指定石材店が管理運営を受託することで墓地や霊園内がきれいに行き届きます。

  • アフターケアの迅速な対応
    建立後のお墓にもしもの時があった時、指定石材店であれば迅速に対応してくれるでしょう。
    もしも施工の石材店が分からないとしても霊園や寺院に確認すれば教えてくれるでしょう。

  • さまざまな形の墓石が乱立しない
    いろいろな石材店が霊園に出入りすると各々の方法で工事を行うため、全体的な統一感が乱れることがあります。
    石材店を限定しておくことで工事規則が守られ、墓地全体の景観が保たれます。

  • 寺院からの信頼を損なわないように良心的な仕事をしてくれる
    寺院墓地の場合、住職は大切な檀家の仕事を指定石材店に任せることになります。
    石材店側としても住職に顔に泥を塗ることができず、良心的な価格で丁寧な仕事をしてくれるでしょう。

指定石材店のデメリット

  • 希望の石材店で墓石の購入や工事ができない
    もしも墓石建立に関して希望の石材店があったとしてもその石材店には依頼できません。
    墓石の建立やお墓の工事に関しては、霊園が指定する石材店の中から選ばなければなりません。

  • 費用が高騰することもある
    石材店が指定されているということは他社との相見積もりができません。
    それをよいことに強気の価格提示がなされることも多々あります。

  • 指定石材店が複数あるため、どこを選んでよいのか分からない
    墓地や霊園の指定石材店は、1社のこともあれば10社を超える複数の石材店のこともあります。
    利用者からするとどこの石材店に依頼するべきか分かりませんし、サービスや対応に差が出ることもあります。

  • 指定石材店同士の変更もできない
    ひとつの霊園に対して複数の指定石材店があった場合でも他の業者に変更できません。
    これは、石材店同士がある程度公平に顧客を獲得できるように協定を結んでいるためです。

指定石材店制度は売り手側の都合で作られているようなもので、利用者にとってのメリットが少ないというのが実際のところです。

しかし、その霊園が気に入ったのであれば割り切って指定石材店と付き合うべきです。
どうしてもいろいろいろな石材店を見て回りたいのであれば他の霊園を検討するしかないでしょう。

指定石材店は、霊園の中の一切の工事を引き受けてくれるわけですから、なにかあった時もスムーズに対応してくれるという面もあります。

複数の指定石材店があるケースの注意点

民営霊園では複数の指定石材店があります。
霊園の開発には億単位の費用が必要で資金面で協力した業者が指定石材店に名を連ねることになります。

利用者側から見た時に複数の石材店の中からどの業者がどう選ばれるのかを解説します。

指定石材店の決まり方

施主は数ある業者の中から1社を決めなければなりません。
どのように業者が決まるのでしょうか。

霊園探しをする時は、石材店に相談する方法と直接現地に出向く方法とがあります。
どうやって霊園を知るか、そして墓地の契約に至るかによって石材店が決まって来るのです。

石材店に相談した場合

どこかいい霊園はないかと石材店に相談した場合は、きっとその石材店は施主が望む墓地が見つかるよう親身になってくれるでしょう。

そして、晴れて墓地が契約できると、そのままその石材店で墓石の建立までを依頼することになります。
石材店はありとあらゆる霊園の情報を持っているので、いろいろな相談をしたらいいでしょう。
実際に現地に同行してもらい、専門的なアドバイスを受けながら霊園の契約に至ります。

ここまで来ると、その石材店のおかげで墓地を見つけることができたわけです。
契約もその石材店が窓口になることもありますし、そのまま担当の石材店として墓石の建立までを請け負うのです。

直接現地に出向いた場合

誰の紹介もなしに直接現地に出向いた場合は、初回対応した業者がそのまま担当の石材店となることが多いでしょう。

インターネットや新聞折り込み等を見て、誰にも相談せずに霊園に出向くと管理事務所には必ずどこかの業者のスタッフがいて、さまざまな説明やアドバイスがもらえます。
この時に対応する業者は複数ある業者間で順番が決められているため、こちらの任意で決められません。

原則、指定石材店の変更はできない

原則、指定石材店の変更はできません。
これは業者間で協定が結ばれており、公平に顧客を獲得できるようにしているためです。

指定業者同士のもめごとも避けたいと考えるため、施主がどうしても他の業者に変更したいと訴えても受け入れてもらえないでしょう。

指定石材店と実際にあったトラブル事例

指定石材店がある場合、競争原理が働かないために費用が割高になってしまいます。
また費用だけでなく、施工に関してもその石材店に任せざるを得ません。

すべての指定石材店が悪いわけではありませんが、そのシステムゆえ起こり得る弊害について実際のトラブル事例に沿って見ていきたいと思います。

墓地を購入した後に石材店が指定であることを伝えられる

墓地だけを購入して、後日墓石を依頼する石材店をゆっくりと選ぼうとしていたが、石材店が指定されていることをあとから知らされるケース。

この場合、事前にきちんと説明しなかった石材店も悪いのですが、それでも契約に進んでしまった施主にも非がないとは言い切れません。

契約書にサインをしてしまったら取り返しがつきません。
契約の際には契約書の内容を一字一句確認しましょう。

場合によっては、その場でサインせずに一度自宅に持ち帰り、頭の中を整理してから契約するかどうかを考える慎重さも必要です。

石材の産地を偽って墓石を販売する

墓石用の石材の数は100種類以上にものぼります。
この中には、よく似た石もあります。

大島石(愛媛県)とAG98(中国福建省)。天山石(佐賀県)とK-12(中国黒龍江省)。
このあたりはそれぞれの石を並べたとしても素人には見分けがつかないでしょう。

見た目は似ているのですが、価格は倍以上もの差が開くこともあります。
産地を偽るということは安価な石材を高価に販売することです。

まして指定石材店のある霊園であれば、他の業者が入ることもなかなかないでしょうから産地偽証を指摘する人もいません。

業者から石材の説明を受けたなら、その内容をメモに取り、一度自宅に持ち帰り、インターネットなどで検索してみましょう。

業者の説明とネット上の情報があまりにもかけ離れているか、それともある程度重複しているかを確認することで石材店の信頼性をある程度図れます。

施行工事が不十分

施行工事の質も石材店によって異なります。

  • 墓石の傾きが見られる
  • 全体的な仕上がりが雑
  • 納骨棺の中に水が溜まる

どんなに立派な石材を選んだとしても工事が雑であれば大切なお墓が台無しです。
しかし、指定石材店の場合はその業者に依頼するほかありません。

契約の際にアフターフォローやメンテナンスに対してどのような取り組みをしているのかを事前に聞いておきましょう。

お墓の素人がプロの仕事の質を見極めるのは困難かもしれませんが、納得できる返事をもらえるかどうかを確認しておくのも大切です。

まとめ

いかがでしたか?
では、最後にこの記事のポイントを箇条書きでまとめます。

  • 指定石材店制度とは、霊園内における墓石の購入や建立を、決められた石材店でしか行えないというもの
  • 指定石材店制度があるのは、民営霊園と寺院墓地だけ
  • 民営霊園の開発には、経営者である宗教法人だけでなく、開発業者や石材店などの資金協力があり、こうした民間業者が指定石材店として墓石を販売する
  • 寺院墓地の場合は、勝手を知った業者の方が都合がいいために、石材店を指定している
  • 公営霊園は自由に石材店を選べる
  • 指定石材店の存在によって霊園の管理が安定する
  • 指定石材店制度は独占禁止法には抵触しない
  • 指定石材店のメリットは、迅速なアフターサービスなどがある
  • 指定石材店のデメリットは、競争原理が働かないために費用は高騰することなどがある
  • はじめに墓地を案内してくれた石材店が、そのまま墓石の担当になってしまう
  • トラブルを回避するには、契約を急がず、どうしても納得できない場合は他の霊園を検討する

監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

民間霊園のタイプはさまざまありますが、民間霊園を代表するタイプとして、郊外に開発された広大な霊園があげられます。

複数の石材店が入っているような大型霊園の場合、日によって待機する石材店が持ち回りで決められ、その日に訪れた霊園見学者は、自動的に案内した石材店のお客様となることが暗黙のうちに決まります。

チラシ等を持参して石材店をあらかじめ指定して見学に訪れた場合は、たとえ他の石材店が案内役になったとしても、チラシの力のほうが勝ります。

このように、指定石材店制度には、一般には知られていない暗黙のルールがあります。
もし石材店もじっくり選びたいというのであれば、住所や氏名など個人情報を漏らさず見学をするというのもひとつの方法です。