お墓を引っ越したい!費用や注意点について解説~満足いく供養のために~

【お墓 引っ越し】アイキャッチ

お盆の季節などに、お墓参りのために地元に帰省する人は多いものです。
しかし帰省するたびに、

「手入れをする人がいなくてお墓が荒れてしまっている・・・」
「お墓が遠いため、きちんとお参りするのが難しい・・・」
「遠いところにあるお墓に手を合わせるために、毎回遠い距離を、たくさんのお金をかけて移動するのがつらい・・・」
「母の足腰が弱くなってきたので、連れて帰るのも大変・・・」
と頭を抱える人もいるのではないでしょうか。

このような悩みを抱えていては、先祖の供養をしていきたいという気持ちも十分に叶えることができません。

その解決策となるのが、「お墓の引越し」です。

この記事ではこのような疑問を解消!

  • お墓の引越しができるかどうか、できるとしたら費用はいくらくらいかかるのか
  • どのような引越しの方法があるのか
  • 引越しはどのような手順か
  • 引越し先を選ぶ際のポイントは何か
  • 時間や予算が限られているケースの解決策は何か

などについて詳しく解説していきます。
お墓の引越しを検討している方は、参考にしてみてください。

この記事の目次

  1. お墓の引越しはできる
  2. お墓の引越しにかかる費用は引越し先で変わる
  3. お墓を引っ越す際に必要な手続きと書類 
  4. お墓の引越し先を選ぶ際のポイント3つ
  5. お墓の引越しをする際の9の手順
  6. 【時間がない方向けに】お墓の引越し代行サービスの利用
  7. 【予算がない方向けに】2つの方法
  8. まとめ

お墓の引越しはできる

「お墓の引越し」を行うこと自体は、基本的には何も問題ありません。そのため、「先祖代々のお墓はあるが、そこにはもうだれも住んでいない。」「今後も地元に戻るつもりはないので、近くの霊園に入れたい。」などのような理由でもお墓の引越しは可能です。

ただしご遺骨を動かす場合には、改葬許可証などを役所に出す必要があります。
また、樹木葬や海洋葬で弔った場合は改葬ができないこともあります。理由は遺骨を取り出すことが不可能な場合があるからです。例えば樹木葬の場合、骨壺を用いずに遺骨を土に埋葬していたら、遺骨は分解され、土に還っていることもあるでしょう。

お墓の引越しにかかる費用は引越し先で変わる

墓石とお金

お墓の引越しには、当然のことながらお金がかかります。その平均金額を求めることはかなり難しく、「どこに引っ越すのか」「元々あったお墓はどうするのか」によって費用は異なってきます。

一般墓(継承墓)そのまま引っ越しをする場合

平均費用平均期間必要な書類 
30万円~400万円(それ以上かかることもある)半年~年単位・受入証明書(「永代使用または墓地使用(受入)許可書」)
・埋葬(収蔵)証明書(寺院や民営霊園の場合)
・改葬許可申請書(公営霊園や墓地の場合)
・改葬許可書

墓石をそのまま移動させる、あるいは墓石を撤去する場合は、かなり費用がかかります。また、時間もかかります。

元のお墓を処分するためにかかる費用

元のお墓を処分するための費用として、以下ものが必要となります。

  • 墓石を一度どかして、それを新しいところに移動させる費用
  • 閉眼供養(へいがんくよう)にかかる費用
    ※閉眼供養は「魂抜き」「お性根抜き」とも呼ばれる。お墓に入っていた魂を抜くための儀式であり、宗教者がお経などをあげて行うもの。
  • 檀家を辞めるのに必要な費用
    ※お寺の墓地に埋葬されており、かつその墓地をもう利用しない場合
  • 証明書の発行費用

上記を払うと考えた場合、30万円~100万円ほどの出費となります。

「お墓の引越し」の平均額を求めることが難しいとされている理由として、「それぞれのお墓・家庭・寺院によって考え方が異なるから」というものがあります。特に難しいのが、「檀家を辞めるときの費用」「墓石を動かすときの費用」です。

檀家を辞めるときには寺院との話し合いが必要となりますが、場合によっては百万円以上もの金額を請求されることがあります(相場は20万円以下と思われます)。

また墓石は、一般的な引越しと同様、移動距離や重さによって費用が変わります。「20万円程度で済む」としているところもあれば、「300万円程度かかるのでは」としているところもあります。

また、そもそも墓石自体を引越しさせることが難易度の高いものであることも理由の一つです。墓石を移動させる場合は、一般的な引越し業者ではなく、石材店などに頼むのが基本です。
なお、「墓石を移動させるのではなく、墓石を解体して撤去したい。改葬先で新しく墓石を建てたい。あるいは墓石を必要としない弔い方法に変更したい。」という場合は、撤去費用として30万円程度の出費を覚悟しておけばよいでしょう。

ここまでが、「元のお墓を処分するためにかかる費用」です。

新しく墓石を設置するための費用

ここにさらに、新しいお墓を建てる場合の費用がかさみます。お墓の土地を買い、そこにお墓を設置し、開眼供養(かいがんくよう。閉眼供養と対になるもの。新しくお墓を建てた場合、そこに魂を入れる儀式を言う)新しく檀家になる……この一つひとつに、お金がかかります。

この際に生じるお金は、200万円~300万円程度でしょう。また、墓地の料金はその地域の地価によって決まる部分も大きいため、都心部や人気のある霊園などだと、費用が天井知らずにかさむこともあります。

このように考えると、一般的な「お墓の引越し」には300万円~400万円(場合によってはそれ以上)の費用がかかるということがわかります。また、それ以外の複合的な要因も絡んでくるため、場合によっては1000万円近くの費用がかかることもあります。

この方法を選ぶ場合は、特にしっかりと予算繰りを考えなければなりません。そのためこの方法は、経済的な理由によって引越しを検討しているという人よりも、地元を離れてお参りに行けないことが理由で引越しを検討している人向けの方法だといえます。

時間もかかる

お墓を新しく建立するためには、最低でも1か月程度はかかります。平均として考えれば、2~3か月程度でしょうか。

さらにここに、「墓石を移動してくれる業者を見つけること」「改葬先の確保」などが加わるため、時間はとてもかかります。墓石の移動や撤去は、そのときの状況や業者のスケジュール、また依頼者がどれだけスピーディーに動けるかによっても変わってきますが、3~4か月程度は見て置いた方がよいでしょう。

また、改葬先の確保にも時間がかかります。特に人気の公営墓地に申し込む場合などは、年単位で時間がかかることも覚悟しておかなければなりません。

このかたちで引越しをしようとした場合は、最短でも半年程度、最長ならば年単位の時間が必要となります。

納骨堂へ引っ越しをする場合

仏壇式の納骨堂

平均費用平均期間必要書類
納骨堂の費用は50万円~100万円程度。お墓の撤去費用30万円~100万円程度(合計80万円~200万円程度)納骨堂へ入れるために必要な期間は2週間程度(ただしお墓の撤去には3か月以上かかる場合もある)・受入証明書(「永代使用または墓地使用(受入)許可書」)
・埋葬(収蔵)証明書(寺院や民営霊園の場合)
・改葬許可申請書(公営霊園や墓地の場合)
・改葬許可申請書(公営霊園や墓地の場合)

納骨堂とは、ご遺骨の集合住宅のようなものです。屋内にご遺骨を納めるためのスペースが用意されているのが特徴です。ロッカータイプのものもありますが、仏壇タイプのものや墓石型のものもあります。

この方法を選ぶ場合は、以下の費用がかかります。

  • 元のお墓は撤去する費用
  • 檀家を辞める費用(寺院墓地の場合)
  • 書類の発行手数料
  • 納骨堂の使用料
  • 必要に応じて閉眼・開眼供養の費用


お墓の引越しにおいてもっともお金がかかる「墓石の引越し」「新しい墓石の建立」がないため、費用は大きく抑えられます。

また、「宗教にこだわりがない。そのため、特に供養を必要としない納骨堂を選びたい。」という場合は、閉眼・開眼供養のためのお布施も必要ありません。

ただし、「お墓は撤去するが、その宗派の御本山の納骨堂を利用する」という場合はまた異なります。

なお、納骨堂のスペースは50万円~100万円程度が一般的です。ただ納骨堂も、「どのように収めるか」「何人入ることができるのか」によって費用は異なってきます。

1人用ならば35万円程度で入ることができますが、墓石型を使用したり収納人数が多いノスペースを選んだりした場合は、300万円を超えるケースもあります。

納骨堂に入るまでにかかる期間は、手続き後2週間程度といったところでしょう。ただ、お墓を処分するためには相応の時間がかかります。これに関しては「一般的なお墓の引越し」とあまり変わることはありません。3か月程度の時間を見ておけばよいでしょう。

樹木葬に引っ越しをする場合

【樹木葬 シンボルツリー】アイキャッチ画像

平均費用平均の期間必要な書類
樹木葬の費用は50万円程度。お墓の撤去費用30万円~100万円程度(合計金額は80万円~150万円程度)施設を抑えた場合、2週間以内に本契約をとしているところなどがある・受入証明書(「永代使用または墓地使用(受入)許可書」)
・埋葬(収蔵)証明書(寺院や民営霊園の場合)
・改葬許可申請書(公営霊園や墓地の場合)
・改葬許可書

樹木葬とは、シンボルツリーあるいは花壇の下にご遺骨を収めて弔っていく方法です。ご遺骨を骨壺から出して収める方法と骨壺ごと収める方法があります。

ここでは「一般のお墓から樹木葬に切り替える場合」を想定していますが、骨壺から取り出して収めるやり方の場合は2回目以降の改葬ができないので注意してください。

この方法の場合も、納骨堂に埋葬するときと同様、基本的には以下の費用がかかります。

  • 元のお墓は撤去する費用
  • 檀家を辞める費用(寺院墓地の場合)
  • 書類の発行手数料
  • 樹木葬施設の使用料
  • 必要に応じて閉眼・開眼供養の費用

ただし樹木葬の場合、別途埋葬料が必要になったり、墓碑設置料が必要になったりすることがあります。

また、樹木葬の場合も「1人だけで埋められるタイプ」「家族と一緒に入るタイプ」「合同葬」などによって金額が異なりますので注意が必要です。

合葬墓・共同墓に引っ越しをする場合

【納骨堂 永代供養】アイキャッチ画像

平均の費用平均の期間必要書類
5万円~30万円程度。お墓の撤去費用30万円~100万円程度(合計金額は35万円~130万円程度)施設によって異なる。また、無縁仏となった場合はこの「合葬墓・共同墓」に葬られることもある・受入証明書(「永代使用または墓地使用(受入)許可書」)
・埋葬(収蔵)証明書(寺院や民営霊園の場合)
・改葬許可申請書(公営霊園や墓地の場合)
・改葬許可書

合葬墓・共同墓は、多くの人のご遺骨と一緒にしてお祀りする方法です。
この方法の場合、ご遺骨はバラバラに入れられるため、個人のご遺骨を取り出すことは不可能となります。

墓地の一角に合葬墓・共同墓が作られていることもありますし、納骨堂や樹木葬でも合葬で弔っていく場合があります。なお、厳密にいえば樹木葬の場合は「墓」という表現を使わないこともありますが、ここでは一律で「合葬墓・共同墓」とします。
この方法の場合、ほかの「改葬」とは少し異なる意味を持ちます。

最初から合葬墓・共同墓を選択する

最初から合葬墓・共同墓を選ぶ方法があります。つまり、「先祖代々の墓を処分し、新しい墓地に入れるときに合葬墓・共同墓を選択する」という方法です。この方法の場合、元々のお墓の撤去費用と、新しい合葬墓・共同墓への埋葬費用の2つがかかることになります。

合葬墓・共同墓は経済的な負担が非常に少ないため、経済的な理由によって改葬を考えている人にも向いています。

管理者がいなくなった、あるいは相当の期間が経った場合も「合葬墓・共同墓」がとられる

合葬墓・共同墓がほかの埋葬方法と異なる点として、「自動でこの方法がとられる可能性がある」という点が挙げられます。

一般的なお墓などの場合、そのお墓を継承する人がいなくなってしばらくすると、合葬墓・共同墓に入れられることがあります。
また樹木葬などでも、「埋葬して33年経ったら合葬墓・共同墓に移す」としているところなどもあります。なお、しばらく時間が経過したら合葬墓・共同墓にする、としている施設の場合は事前に説明がされることもあります。

海洋葬を利用する場合

海洋散骨

平均の費用平均の期間必要な書類
30000円~40万円程度。お墓の撤去費用30万円~100万円程度。合計で33万円~140万円程度合同で船をチャーターしていく場合は、その業者の出港日に合わせる・受入証明書(「永代使用または墓地使用(受入)許可書」)
・埋葬(収蔵)証明書(寺院や民営霊園の場合)
・改葬許可申請書(公営霊園や墓地の場合)
・改葬許可書

海洋葬とは、海にご遺骨を撒いて弔う方法です。この場合は、以下の3つのいずれかの手段をとることになります。

  • 個別に船をチャーターして海に出る
  • 業者が持っている船を合同で使い、海に出る
  • 業者に散骨を依頼する

上に行くほど費用が高く、下に行くほど費用が安く済みます。

海で眠ることができるということや、業者への散骨を依頼というかたちで対応すれば最も安い埋葬方法であることから、人気も高いです。しかし当然のことながら、一度撒いてしまったご遺骨を戻すことはできないので注意が必要でしょう。

また合同墓などは、施設によって宗教者の読経などが折々で行われることもあります。ただ海洋葬の場合は基本的には対応していない・もしくはオプション料金となります。

海洋葬は「海に撒く」という方法をとるため、地面などに埋めるときとは異なり改葬許可書や受入証明書などがいらないように思われる人もいるかもしれません。しかし現在は海洋葬であっても、これの書類を必要とするのが一般的です。

ここで紹介してきたそれぞれの「改葬」ですが、数字ややり方はあくまで一例にすぎません。実際にはその施設ごと・業者ごとに違いがありますし、現在のお墓の状態によっても対応方法が異なることもあります。そのため必ず各施設・各寺院に、金額や考え方を確認するようにしてください。

お墓を引っ越す際に必要な手続きと書類 

【墓石 クーリングオフ】アイキャッチ画像

お墓の引越しを行うと決めた場合、まずは移転先を決めなければなりません。またそのうえで、書類を揃えなければなりません。

【ステップ1】移転先を決める

移転先を決めるためには、以下の4点に注目しなければなりません。

  • 希望の形式で埋葬できるのか
  • 通いやすい範囲なのか
  • 予算を決める
  • 家族の理解はとれているか


詳しくは後述しますが、この4点を意識しないで決めてしまうと後悔することになりかねません。

【ステップ2】必要な書類を集める

改葬に必要な書類は、以下の通りです。

  • 受入証明書(「永代使用または墓地使用(受入)許可書」)
  • 埋葬(収蔵)証明書
  • 改葬許可申請書~改葬許可書

他、それぞれの施設の申込書が必要になることもあります。

これを揃えなければ、改葬はできません。

【ステップ3】移転完了

移転先に申し込みを行い、書類をそろえ、家族の理解もとれたのならば、いよいよお墓の引越しです。引越しには時間がかかるものですから、ある程度の時間的余裕は確保しておきたいものです。

【必要な証明書1】受入証明書

受入証明書は、「このご遺骨を受け入れます」とする証明書のことを指します。

発行場所は新しいお墓の管理者

受入証明書は、新しいお墓の管理者から発行してもらうことになります。
施設に直接お願いしたり、ホームページから申し込んだりするとよいでしょう。
また、場合によっては、「埋葬承諾書」と呼ばれる書類が必要になることもあります。

発行からの有効期限が定められている場合もある

受入証明書には、有効期限が定められている場合があります。しかしこれは一律で決まっているわけではありません。証明書を発行してもらう場合に、いつまでが有効期限なのかを聞くようにしてください。

発行の際にかかる金額は0円

受入証明書の発行には、手数料はかかりません。

【必要な証明書2】埋葬証明書

埋葬証明書(埋蔵証明書)とは、「たしかにこの人のご遺骨は、ここに収められています」と表す書類をいいます。「収蔵証明書」と呼ばれることもあります。
また、改葬許可申請書と一緒になっていることもあります。

発行場所は現在の墓地の管理者

埋葬証明書は、現在の墓地の管理者によって発行されます。

発行の際にかかる金額は基本的には300円~1500円程度

埋葬証明書の発行に必要な金額は、300円~1500円程度が相場です。
しかしときに、「檀家でなくなるのであれば離檀の費用が必要」として、100万円を超える費用を要求される場合もあります。

話し合いで納得し合えればよいのですが、どうしても折り合いがつかない場合は、今まで支払ってきた管理料の領収書などで埋葬証明書に代えることが可能なこともあります。ただ、ここまでこじれた場合は、専門家の手を借りた方が安心です。

【必要な証明書3】改葬許可証

改葬許可書とは、「改葬をします」ということを言うための書類です。改葬許可書は、改葬許可申請書と受入証明書、そして埋葬証明書を提出して初めてもらうことができるものです。

発行場所は市役所

移転元のお墓のある市役所に提出すると、これをもらうことができます。

発行からの有効期限はなし

改葬許可書自体には、有効期限はありません。ただし、移転先となる墓地が「○か月以内に移転すること」などとしている場合は、それに従う必要があります。

発行の際にかかる金額は0円~1000円程度

海藻許可証発行にかかる費用は、自治体によって異なります。無料のところもあれば有料のところもありますが、1000円程度もあれば発行してもらえるでしょう。

お墓の引越し先を選ぶ際のポイント3つ

ポイントを示す女性

【ポイント1】通いやすい範囲なのかを確認すること

改葬を行う理由として、「通いにくいから」をあげるご家庭が大半だと思われます。そのため、通いやすい範囲にあるかを確認しなければなりません。

送迎バスがあるかもチェックをすること

この「通いやすさ」とは、単純な距離の話だけではありません。公共の交通機関あるいはその施設からのバスが出ているのか、車いすは対応しているのかなども確認するべきでしょう。

足に自信がないのであれば、全天候型の納骨堂を選ぶのも手です。逆に、「いつでも気軽に行けること」を目的とするのであれば、365日24時間いつでもお参りできる屋外型の墓地を選ぶとよいでしょう。

【ポイント2】希望の形式で埋葬できるのか確認をすること

改葬する場合、「自然に還したい」「手元で供養していきたい」「全天候型の墓地でお祀りしたい」などのようにさまざまな希望が出てくるでしょう。

優先順位を決めたうえで、埋葬形態を選びましょう。また特定の宗教・宗派でお見送りをしたいのであれば、それにも注目をしなければなりません。
民間の霊園や納骨堂、樹木葬や海洋葬の場合はあまり問題にはなりませんが、寺院墓地に移す場合はその寺院の宗派と同じもしくは在来仏教徒であることが求められ場合ともあるからです。

あるいは、「ほかの宗教・宗派でも受け入れるが、それ以降の供養は、当寺院の宗派・宗教で行う」としているケースがほとんどです。

また、「新しく墓石を建てる」という場合は、理想とする墓石のかたちをとれる墓地かどうかも確認しましょう。墓地のなかには、特定の墓石業者しか使えないところもあります。一風変わった墓石を置きたいということであれば、それに対応してくれる墓石業者を使える墓地を選ぶ必要があります。

【ポイント3】予算の内訳を説明してくれる場所を選ぶこと

「予算」も非常に重要なポイントです。
改葬費用を安くあげるのであれば、合同墓や海洋葬(かつ業者による散骨)を選ぶのがよいでしょう。

注意してほしいのは、「改葬の場合は、新しく埋葬するときよりもお金がかかる」という点です。元のお墓を処分するにしろ墓石を直接引越しさせるにしろ、その費用が必要となるからです。

また、「費用の面で不安がある」「いくらかかるかわからない」「別途費用はどれくらい、どのような名目でかかるのか」などの質問にしっかりと答えてくれる業者を選んでください。即答できないことでも、後で調べて折り返して回答してくれる業者ならば信頼して構いません。

【ポイント4】家族の理解を得られるかたちにすること

改葬においては、家族の理解も必要です。たとえば、「愛知県に住んでいる母が亡くなった。自分は北海道に住んでおり、愛知県に戻ることはない。しかし母のいとこが愛知県に住んでいる」などの場合は、「直系であり、かつ将来的には自分が弔っていく必要のある自分は北海道に移したいと思っているが、2か月に1度程度お参りにいっている母のいとこは快く思わない」ということでトラブルが起きる可能性はあります。

また、改装後の埋葬方法(特に海洋葬や合同墓など、個別のお墓がない方法)によっては、家族や親族からの反対が出る可能性もあります。

葬儀や埋葬に関わる親族間の心情的なトラブルは、非常に長く尾を引く可能性の高いものです。必ず家族・親族で話し合って納得し合ってから決めるようにしてください。

お墓の引越しをする際の9の手順

ここからは、実際にお墓を探すときの流れを、それぞれのステップの注意点と一緒に述べていきましょう。

【ステップ1】新しいお墓を探す

まずは新しいお墓を探します。

  • 希望の埋葬方法をとれるか
  • 通いやすい範囲にあるか
  • 予算内で納まるかどうか
  • 家族の理解を得られるかどうか


を基準にして、新しいお墓を選んでいきます。また、海洋葬や合同墓(弔い方によっては樹木葬も)の場合は2度目の改葬はできないので、「将来的には海外で住むかもしれない」などの人は特に注意しておきたいものです。

【ステップ2】新しいお墓の管理者から「墓地使用許可証」または「受入証明証」を発行してもらう

新しいお墓の管理者から、受入証明書(墓地使用許可書)を発行してもらいます。現在はホームページなどから入手できる場合もあります。

【ステップ3】新しいお墓の仕様を決め、工事契約を行なう(工事には3か月程度かかります)

一般墓の場合は、新しいお墓の仕様を決めて工事をお願いします。工事にかかる期間はそれぞれの業者によって異なりますが、3か月程度はかかると見ておいた方が安心です。

なお、樹木葬の場合はどのような木にするか、墓碑はいるかなどを決めていかなければなりません。場合によっては、植樹を行う必要もあります。納骨堂の場合もどのようなかたちにするかを選ぶ必要があります。
合同墓や海洋葬の場合は、これは必要ありません。

【ステップ4】古いお墓がある自治体から「改葬許可申請書」を取り寄せる

元々のお墓がある自治体から、改葬許可申請書をもらいます。

【ステップ5】古いお墓の管理者から「埋蔵証明書」または「収蔵証明書」を発行してもらう

元々のお墓の管理者から、埋蔵証明書(収蔵証明書、埋葬証明書)を受け取ります。
もしこのときに高額な離檀料などを請求された場合は、行政書士などに相談してください。

【ステップ6】古いお墓のある自治体に必要な書類を提出し、「改葬許可証」を発行してもらう

「受入証明書」「埋葬証明書」「改葬許可申請書」を元々お墓のあった自治体に提出して、「改葬許可証」を取得します。これによってはじめて、改葬が許可されます。なお、改葬許可証は、そのお墓に入っている人の人数分必要です。

【ステップ7】古いお墓からご遺骨を取り出す(「閉眼供養」などの儀式を伴う場合があります)

古いお墓からご遺骨を取り出します。この際に、閉眼供養を行うこともあります。閉眼供養にかかるお布施は、30000円~10万円程度が相場です。

【ステップ8】いったん自宅などへ、ご遺骨を安置する

ご遺骨を一度自宅などに持って帰ります。ただ、新しく移動させる施設によっては、「埋葬までの期間、ご遺骨をお預かりします」としているところもあります。ご遺骨を家で保管するのが難しい場合は、このようなサービスを利用するのもよいでしょう。

【ステップ9】新しいお墓の完成を確認する

新しいお墓の完成あるいは新しい埋葬場所にご遺骨を収められる状況になったことを確認します。また、埋葬の際に親族を呼ぶのであれば、その案内もしておくとよいでしょう。

【ステップ10】ご遺骨を埋める(「開眼供養」などの儀式を行う場合があります)

ご遺骨を埋め(撒き)ます。このときに、開眼供養を行うこともあります。また改葬が終わった後に、そこに参加していた親族などと会食をとることもあります。

改葬にかかる時間やお金は、「どのようなかたちで改葬するか」によって大きく異なってきます。ただ、改葬のために踏むべきステップに関しては、それほど大きな違いはありません。一つずつクリアしていきましょう。

【時間がない方向けに】お墓の引越し代行サービスの利用

お墓の引越しには、時間とお金がかかります。しかしお金を使えば時間的な負担を大きく軽減することができますし、また時間や方法をかければ金銭的負担を大きく軽減することが可能です。

ここからは、「お金を使って、時間的な負担を軽減する方法」として、「お墓の引越し代行サービス」を紹介します。

お墓の引越し代行サービスとは、ごく簡単にいえば、「お墓の引越しにまつわるさまざまな手続きを、ご家族に代わって行うサービス」をいいます。

このお墓の引越し代行サービスは、それぞれの業者によって、どこまでやってくれるのか、どのようなやり方をとるのかに違いが見られます。

引越し代行の選び方ポイント1 手順をどこまでやってくれるのか確認をする

お墓の引越し代行サービスを取り扱う業者は、それぞれの会社で「どこまでやるか」に違いが見られます。
たとえば、

  1. 各種申請書類をすべて用意して、墓石の撤去から墓石の移設、ご遺骨の搬送、保管まですべて代行する
  2. 受入証明などはお客様にやってもらい、ご遺骨の移送だけを行う
  3. 各種申請書類はすべて用意する。ただし、納骨は行わない。墓石の撤去やご遺骨の取り出しは行えるが、これはオプション料金である

など、業者によって違いが見られます。また、新しい墓地を探すのを手伝ってくれたり、法要を執り行ってくれたりするところもあります。加えて、「さまざまなサービスを取り扱っているので、お客様のご要望に応じて必要なステップだけを代行する」としているところもあります。

「お墓の引越し代行サービス」といっても、業者ごとで違いが見られるので、このあたりはしっかりと確認しておかなければなりません。

引越し代行の選び方ポイント2 立ち合いが必要なのかを確認する

お墓の引越し代行サービスでは、「お客様の立ち合いを求めない」というところと、「原則として立ち合いが必要」としているところがあります。この部分も確認をしておきましょう。

「お墓を閉じる」ということを考えれば立ちあうのが理想的ですが、「そもそも非常に遠い所にいるので、立ち会うことが難しい。それが理由で改葬を考えた」などの人は、その旨を伝えるようにしてください。

引越し代行の選び方ポイント3 書類の用意もしてくれるのか確認をする

「どこまでやってくれるかには違いがある」としましたが、書類を用意してくれるかどうかも業者によって違いがみられます。「極限まで手間を軽減すること」を目的とするのであれば、書類一式も用意してくれるお墓の引越し代行サービスを選ぶべきでしょう。

ただし、「書類の代行ができると謳っているところはあるが、あまりおすすめはしていない。行政書士などが行うのであれば問題はないが、そうではない場合、不備が出たら再度の手続きが必要になるからだ」としているところなどもあり、このあたりも慎重に考えなければなりません。

【予算がない方向けに】2つの方法

「お墓の引越し代行サービス」には、費用がかかります。「時間がないのでお金がかかってもいいから、とにかくお任せしたい」という人ならばお墓の引越し代行サービスは有用な手段となりますが、「予算が厳しい」と考える人の場合はまた別の方法を考えなければなりません。

その方法の一つが「分骨(ぶんこつ)」であり、もう一つが「永代供養」です。

【方法1】分骨という選択肢をとる

「お墓を移動させたり撤去させたりするような金銭的な余裕はない。しかし、自分の側で故人を弔っていきたい」と考える人におすすめなのが、「分骨」という方法です。

分骨とは、1つのお骨を2か所以上に分けて弔っていく方法です。今回のような場合で言うならば、片方を先祖代々の遠方の土地にあるお墓に入れたままにして、片方を小さな骨壺などに入れて手元供養していく方法となります。

分骨をしておくと故人を自分の手元で供養していくことができますし、当分の間はお墓を移動・撤去しなくて済むため、お金もかかりません。また分骨の場合、後でご遺骨を一緒にすることが可能です。「お金に余裕が出たら、向こうのお墓を処分し、近場でお墓を建てる。そのときまで側にいてほしい」と考える人に有用です。

なお、「分骨をしたら体が2つに分かれてしまうので成仏ができない」という説もありますが、これは迷信です。仏教でも、またほかの宗教(キリスト教など)でもお釈迦さまや聖人のお骨を分けて祀るという方法がとられており、決して悪いものではありません。

また、手元供養については期間に制限がありません。このままずっと手元で供養していくこともできます。

ただ、分骨をしたうちの片方を海洋葬や合同墓、あるいは骨壺から出して行う樹木葬とした場合、「後でひとまとめにしてお墓に入れること」はできなくなるので注意してください。

ちなみに、分骨したご遺骨をダイヤモンドなどに加工したり、ネックレスなどに入れたりして身に着ける方法もあります。

【方法2】永代供養として遺骨を納める方法

お墓を引っ越す費用がない人は、永代供養として、納骨堂や永代供養墓(合同墓など)などを選ぶのも一つの方法です。

施設によって異なりますが、これらの施設の場合、折々のタイミングで宗教者(日本の場合は僧侶が多いかと思われます)がお経をあげてくれることも多いため、家族も安心して任せることができます。
また、樹木葬などでも同じようにしてもらえる場合もあります。

「引越しをして、自分の手で供養していきたい」と考える気持ちは非常に尊いものですが、このような手段もあるということを覚えておきましょう。費用は、預ける先、また元のお墓をどうするかによっても異なりますが、一般的には新しいお墓を購入するよりも安く済みます。

なお、「元の墓地にあったお墓を撤去して、その墓地の合同墓に入れる」という方法も利用できますから、「菩提寺との付き合いは続けていきたい」「なかなか足を運ぶことはできないが、故人が慣れ親しんだ場所、慣れ親しんだ住職に弔いをお願いし続けたい」という場合は、この方法を検討するのもよいでしょう。

永代供養の平均金額 

永代供養に必要な料金は、50000円~50万円程度が相場です。
もっと詳しく知りたい方は永代供養について詳しく書いてあるこちらの記事をご覧ください。

まとめ

お墓の引越しは「改葬」と呼ばれます。
改葬を行うためには、まずは引越し先を決めなければなりません。
その際には、


  • 希望する埋葬形態かどうか
  • 通いやすいところかどうか
  • 予算内で納まるかどうか
  • 家族(親族)の理解は得られるか

を考えましょう。

なお、引越し先の候補としては、

  • 一般のお墓
  • 納骨堂
  • 樹木葬
  • 合同墓(共同墓)
  • 海洋葬

などが考えられます。

一般のお墓の場合は今までと変わらないお参りが可能です。しかし時間もお金もかかります。
納骨堂は一般墓よりも安く、ほかの弔い方よりは高くなることが多いといえます。全天候型の屋内ホールで弔うことができます。

樹木葬の場合は自然に帰って眠ることができます。埋葬方法には施設ごとで大きな違いがあるので、チェックが必要です。

合同墓は、ご遺骨を出してほかの人のご遺骨と一緒にする方法です。永代供養をしていってもらえること、費用が安いことが魅力ですが、「ほかの人とご遺骨が混じること」に抵抗感を覚える人もいます。

海洋葬は、海にご遺骨を撒く方法です。業者に依頼すれば非常に安く済みます。しかしこの方法の場合、「手を合わせること」が非常に難しいのが難点です。

改葬のためには、

  • 受入証明書(「永代使用または墓地使用(受入)許可書」)
  • 埋葬(収蔵)証明書
  • 改葬許可申請書~改葬許可書

の3つが必要です。改葬先のお墓の管理者や元々お墓があったところの管理者、自治体から受け取ることになります。

改葬のための手順は、以下のようなものです。

  1. 新しい移転先を探す
  2. 受入証明書を発行してもらう
  3. 必要に応じて新しいお墓の工事を依頼する
  4. 改葬許可申請書を受け取る
  5. 埋葬証明書を受け取る
  6. 改葬許可証を発行してもらう
  7. 元のお墓からご遺骨を抜く
  8. 自宅などでご遺骨を保管する
  9. 新しいお墓の完成もしくは入ることできる状況にあるかを確認する
  10. 新しい墓所に納骨

お墓のお引越しに関しては煩雑で複雑な手順が多いのも事実です。また、さまざまなトラブルが起きやすい土壌があることもあり、時間もかかります。

そのため、「ある程度お金がかかってもいいから、人に任せたい」という場合は、お墓の引越し代行サービスを使うとよいでしょう。「どこまでやってくれるか」は業者によって違いがみられますが、なかには書類の代行まですべて行ってくれるところもあります。

逆に、「お金をかけずに改葬をしたい」ということであれば、分骨(ご遺骨を2か所に分けて保管すること。たとえば、元のお墓にご遺骨の大部分を置いておき、手元にご遺骨の一部を持ってきて供養する方法などがこれにあたる)や永代供養(合同墓や納骨堂、一部の樹木葬などを選択すると、宗教者によって折々にお経などをあげてもらえる)の方法を検討するとよいでしょう。

「お墓の引越し」は、一部の特例(海洋葬などを選択している場合)を除き、どのような場合でも行えるものです。
しかしそこにかかる費用の負担は、新しく一からお墓を建てるよりもずっと大きいものです。
特に、「元あったお墓を撤去して、さらに新しいお墓を建てる」という場合は、数百万円単位のお金がかかります。

また、時間と手間もかかります。そのため、引越しを行う際は、このような点も踏まえたうえで着手するようにしてください。

墓じまいの基礎知識を解説