「お墓はいらない」という方におすすめの供養方法やこれからのお墓のあり方を解説
お墓はいらない場合はどうしたらいい?徹底解説
- お墓不要派は納骨堂、樹木葬、永代供養墓が選択肢。
- お墓なしは家族合意、コスト、管理を考慮必要。
- お墓放置は無縁墓リスクあり、墓じまい推奨。
- お墓の形態は多様化し、石塔型以外も選べる。
自宅近くの永代供養のお墓を見てみる
最近では、管理を任せられるお墓や、費用の安いお墓も増えてきました。
4つの質問で見つかる!
Q. お墓は代々継いでいきたいですか?
「もっと、ちゃんとしておけばよかった」「しっかりと供養してあげられなかった」という負い目を感じることがないように、十分な情報収集と、家族との対話をしてみましょう。
地域ごとの永代供養の相場を見てみる
都道府県ごとに、永代供養墓の相場を調べることができます。
永代供養プランありを探す
この記事の目次
お墓はいらないと思っている人が増えている背景
近年、お墓はいらない、と考える人は増えてきています。では現代社会にとって、従来のお墓のどのような点が問題となっているのでしょうか。主な問題点は以下の3点と言えるでしょう。
- お墓を継ぐ人がいない家庭が増えている
- 家族が遠方に住んでいるためお墓の維持・管理が困難
- 管理料などの費用が負担になっている
詳しく見ていきましょう。
お墓を継ぐ人(祭祀継承者)がいない家庭が増えている
ここ数年、非婚化や少子化などでお墓を継ぐ人がいない家庭が増えており、お墓の維持が大きな負担になっています。
これまでお墓は、世代を超えた家族や先祖とのつながりの場所でした。
石は硬くて強く、いつまでもそこにい続けられますから、それこそがお墓の価値でした。しかし、社会の状況は変化しており、核家族化はさらに進行し、少子高齢化も進み、子が親の世代を支えるには大きな負担がのしかかる人口構造になっています。
しかも、進学や就職などで生まれた土地を離れて人生を歩むのが当たり前の時代です。
さらに、単身者世帯や生涯未婚率は年々上昇しており、結婚しない、子どもを持たないという選択をする人も増えています。
決して、親や先祖をないがしろにしているわけではなく、石塔でできたお墓が現実の生活の中で負担になっているのが、昨今の墓離れの大きな要因でしょう。
家族が遠方に住んでいるためお墓の維持が困難
家族はいるのだけれど、親と子と孫が別々の地域に住んでいる場合、同じ場所にい続けるお墓が逆に厄介に感じられることもあるでしょう。
順当にいくと墓守を担う人が、お墓から離れた場所で生活することも普通にあることになってきました。
よってお墓参りに満足に行けないために、お墓が荒れ放題になっているのを心苦しく思っている人もたくさんいるのではないでしょうか。
会社の転勤などで、次にどの土地に住むか定まっていない人もおり、お墓を建てたはいいがお参りができないというケースが相次いでいるようです。
「改葬でお墓問題を解消!いま増えているお墓の引っ越し」の記事でも解説しているように、お墓の引っ越しはできますが、いまあるお墓を入念に解体して、新しい墓地に納まるように石材を加工して設置するのでそれなりの費用がかかってしまいます。
管理料などの費用が負担になっている
多くの墓地では利用者に管理料を求めます。集められた管理料は、墓地内の共益部分の管理や清掃などに使われます。
「お墓の管理費は年間1万円から10万円!何に使っていつまで払うの?」でも解説していますが、相場は年間数千円、高い所でも1~2万円くらいが多いでしょう。
しかし、この管理料などのお金に対して負担に感じる人もいるようです。
「どれも共感するな・・・」と思いますよね。確かにお墓の存在が負担になることはあるでしょう。
墓じまいのことで悩まれている方
今のお墓を撤去するのにかかる費用や手続きに関する疑問は、プロに相談するのがおすすめです。
ライフドットでは、墓じまいに関する一連の流れをサポート。
「なるべく負担をかけずに墓じまいしたい」という方は、ぜひライフドットにご相談ください。
次の章では、お墓を建てるメリット・デメリットを紹介します。
これまでは当たり前のように建ててきたお墓。しかし昨今では決して当たり前ではなくなってきました。今一度、お墓を建てることにはどんなメリット・デメリットがあるのか、考え直してみましょう。
お墓を建てずに供養する方法
「お墓を建てなくていい」「でも供養はしたい」という方には、墓石のお墓を建てずに供養する方法をご紹介します。
墓石のお墓を建てずに供養する方法は以下の3つです。
室内に遺骨を預ける納骨堂
納骨堂とは、仕切られた納骨壇に遺骨を収蔵して供養する方法です。納骨堂は主に屋内に設けられていることがほとんどのため、「室内のお墓」とも言えるでしょう。
納骨堂を探す
植物を墓標にする樹木葬
樹木葬とは、墓標に樹木や草花を用いたお墓のことです。
永代供養料は支払いますが、大きな墓石をつくらないので費用を安く抑えられます。
樹木葬を探す
管理を寺院にお任せする永代供養
永代供養とは、先祖の供養を寺院などに委ねることです。墓守を任せられる跡取りがいない人などが永代供養を選択します。永代供養は、合葬墓や合祀墓などに埋葬されます。
永代供養墓を探す
お墓を建てることで考えられる【メリット】
お墓を建てる時のメリットは以下の3つです。
- 個別に祈る場所がある
- 遺骨を安心して埋蔵できる
- 先祖代々の繋がりを感じられる
個別に祈る場所がある
お墓は祈りの場所です。しかも、誰かと共有のものではなく自分たち家族の個別のものです。
中に入っている人たちも自分たちのご先祖様です。
ご先祖様や家族に会いたい時や、自分の気持ちが落ち着かない時。
悩みや不安があって、なにか大きなものに祈りたい時。
そうした時に、誰のものでもなく、自分たちだけの祈りの場が、お墓です。
親が子を助けるように、ご先祖様は必ず子孫を受け入れてくれるでしょう。
日本人は、神や仏といった概念的な神仏だけでなく、
かつてのこの世界に確実に生きた自分たちのご先祖様にも手を合わせてきたのです。
遺骨を安心して埋葬できる
お墓を建てることで家族の遺骨を安心して埋蔵できます。
葬儀後、遺骨の処遇を巡って心が落ち着かないという人が実にたくさんいます。
「遺骨が自宅にあるうちはなぜか心が落ち着かない」
「納骨堂に遺骨を預けたけれど、土に還さなくてもよいのだろうか」
きちんと土の中に埋蔵して、供養のための石塔を建てることで、遺された人たちは安心できるのかもしれません。
先祖代々の繋がりを感じられる
お墓には先祖代々の遺骨を埋蔵します。
また、その中に遺骨が入ってなくても、
私たちはかつてこの世界に生きた人たちのつながりのおかげで、いまここにいます。
お墓には先祖代々の名前を刻みます。
お墓参りをすることで、私たちは先祖や自分たちのルーツを感じることができ、この世に生きることを感謝します。
以上メリット3つを紹介しました。次にデメリットを見ていきましょう。
お墓を建てることで考えられる【デメリット】
考えられるデメリットは、大きく分けて3点です。
- 跡取りがいない場合に、お墓の維持が困難
- お墓が遠方にあると荒れがちになってしまう
- 他の方法に比べて、費用がかかる
それぞれのデメリットについて、詳しく解説いたします。
跡取りがいない場合に、お墓の維持が困難
子や孫がいれば維持の方法も考えられるでしょう。
しかし、昨今は単身者世帯が増加し、結婚はするものの子供を作らない選択をする夫婦も増えています。
面倒を見てくれる人がいないと、お墓はゆくゆく無縁墓になってしまします。
すでに親や先祖が建てたお墓がある場合、墓じまいを検討しなければなりませんし、これからお墓を考える人の場合は、永代供養を前提として供養の方法を考えることになるでしょう。
お墓が遠方にあると荒れがちになってしまう
住んでいる場所とお墓が離れていると、なかなか満足にお墓参りできません。
お墓参りが疎遠になってしまうと、墓地内は雑草が生え、荒れてしまいます。
そのことが気がかりになってしまうと、逆にお墓の存在が負担に感じられるようになってしまうでしょう。
他の方法に比べて、費用がかかる
お墓を建てるためには、墓地を取得して墓石を建立しなければなりません。
墓石の建立までにかかる費用は200万円から300万円もかかると言われています。
参考:「お墓の値段はどのくらい?今だから考えたい「お墓のこと」」
最近では、樹木葬や、室内墓や、永代供養など、さまざまな供養の方法が登場しています。
これらと比べても、お墓の建立は群を抜いて費用がかかってしまうのです。
メリット・デメリットについて今一度考えたところで、次の章では「お墓がいらない!」と思っている人に考えてほしいことを書かせていただいています。お墓はいらない!と判断する前に、ぜひ読んでみてください。
お墓はいらないと決めた方へ
お墓はいらないと決めた方は、以下のような方法をとることになるでしょう。
遺骨を自宅にずっと保管をすることは、なかなか考えにくいです。
そこで「お墓はいらない」と決めた方はこの章を参考にしてみてください。
砕いた遺骨を撒く散骨(自然葬)
遺骨を砕いた遺灰を、海や山、宇宙などに撒くことを自然葬と言います。そのなかでも海洋散骨とは、パウダー状にした遺骨(=遺灰)を海に撒く供養方法です。後に何も残さなくてよいと考える人がこの方法を選んでいます。
ずっと身近に感じられる手元供養
最近では、仏壇に骨壷を置いて供養をする人が増えています。現代的な住居に合うようにスタイリッシュな骨壷も増えてきました。
また、手元供養の方法として、遺骨ジュエリーなどもあります。
お墓がいらない場合は速やかに墓じまいをする
お墓がいらない場合は、速やかに墓じまいをしましょう。
墓じまいとは、お墓を撤去すること
墓じまいとは、不要となった墓石を解体撤去し、墓地を管理者に返還し、遺骨を他の場所に移すことです。
墓じまいは、大きく分けて3つの項目に分けることができます。
1.墓石の解体撤去
墓石の解体撤去は、石材店に依頼します。きちんと整地化までしてくれるでしょう。
また、解体工事に入る前には、必ず寺院に依頼して性根抜きをしてもらいましょう。
2.墓地の返還
墓地は利用者のものではなく、管理者のものです。
墓地の取得とはあくまでも「使用権」の取得であり、不要となったら管理者に返還しなければなりません。
まちがっても、転売や譲渡などしないようにしましょう。
3.遺骨を他の場所に移す
お墓の中に埋蔵されている遺骨を取り出して、他の場所に移します。
そのため、解体工事までには、新しい遺骨の受け入れ先を決めた上で、会葬の手続きを済ませておきましょう。
墓じまいの流れ
墓じまいは次のような流れで行います。
- 新しい遺骨の受け入れ先を決める
- 墓地の管理者に墓じまいを相談する
- 改葬の手続きをする
- 石材店と墓じまい工事の契約を交わす
- 寺院に性根抜きをしてもらう
- 新しい遺骨の受け入れ先を決める
遺骨の受け入れ先は、お墓だけでなく、永代供養、納骨堂、樹木葬などさまざまな施設があります。
自分たちのライフスタイルや死生観としっかりと向き合って選択しましょう。 - 墓地の管理者に墓じまいを相談する
いまあるお墓の墓地の管理者に墓じまいをしたい旨を伝えましょう。
必要な手続きなどについて教えてもらえるでしょう。
また、墓地が寺院の境内墓地にある場合、墓じまいはそのまま離檀にもなり得ます。
寺院にきちんと理由や事情を伝えましょう。 - 改葬の手続きをする
改葬(遺骨の引っ越し)のためには、いまある墓地の役所から改葬許可をもらわなければなりません。
役所に相談に出向き、必要書類をまとめましょう。 - 石材店と墓じまい工事の契約を交わす
墓じまいをしてもらう石材店を決めます。墓地によっては業者が指定されていることもあります。 - 寺院に性根抜きをしてもらう
解体工事の前には、必ず寺院に性根抜きをしてもらいましょう。その際、僧侶には供養をしていただいたお礼として「お布施(おふせ)」という謝礼金をお渡しします。
- 遺骨を取り出す
埋蔵した遺骨の取り出しは、性根抜きの時や、解体工事の時など、状況によって異なります。 - 解体撤去工事の着工
解体工事そのものは業者に任せましょう。外柵が残っていてもいいのか、
それとも完全に整地化するべきなのか、事前に管理者に確認の上、業者に指示しましょう。 - 管理者に墓地を返還する
工事が済んだら管理者に墓地の返還手続きをします。 - 遺骨を新しい受け入れ先へ納骨する
納骨の際は改葬許可証が必要です。遺骨と一緒に差し出しましょう。
墓じまいについては、以下の記事でも詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみてください。
お墓を放置することで考えられる問題
いまあるお墓をずっと放置していると、当然のことながら墓域内が荒れてしまいます。
雑草が生えて覆い茂り、隣のお墓にも迷惑がかかってしまいます。
「管理費の支払いがない。」
「利用者や家族と連絡が取れない。」
などの状況に陥ってしまうと、墓地の管理者側は、このお墓を「無縁墓」として改葬の手続きに入ります。
無縁墓の改葬は、次のような手順でなされます。
- 官報で、無縁墓の撤去を報告する(1回掲載すればよしとされている)
- 墓地に立て札を掲げ、1年間縁故者や承継の権利を有する人からの連絡を待つ
- 期日までに連絡がなければ無縁墓として改葬
遺骨はしかるべき場所に合葬され、墓石は撤去されるでしょう。
もしも何も知らずに久しぶりにお墓参りしてみると、あるべきはずのお墓がなかったということも起こり得ます。
無責任にお墓を放置するのは絶対にやめましょう。
管理者や隣の人たちに迷惑になるだけでなく、お墓の中の遺骨が知らないうちに合葬されてしまっても、反論のしようがないのです。
墓じまいについて相談する
墓じまい、「正直ちょっと面倒だな」「何から始めたらいいかわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。お墓を放置することは良くないことだとわかっていながら、重い腰が上がらない、と感じる方も多くいらっしゃるでしょう。当サイトを運営するライフドットでは、墓じまいの相談を承っています。疑問や相談がある方は、お気軽にお問い合わせください。
お墓がいらないと思っている人に考えてほしいこと
最近、お墓がいらないと考える人が増えているのは、従来のお墓のあり方が新しい時代にマッチしていないからです。※ここでは一般的な石塔のことをお墓とする。
お墓は、先祖祭祀(せんぞさいし)という世代を超えるつながりの象徴でしたが、その威力は「土地」に根差すからこそ発揮しました。
同じ場所に生まれ、同じ場所に死ぬ。それを血族が世代を超えて続けていく。血族のつながりのシンボルこそが、石塔で作られたお墓だったのです。
現代では、子どもが実家や地方から離れて生活することが多くなっています。親と子と孫が別々の地域に住むのが珍しくない時代といえるでしょう。
固くて、重くて、堅牢な石は、ずっとそこにい続けることに価値があったのですが、人間のライフスタイルそのものがずっとそこにい続けなくなってしまっています。
それでも私たちは、自分のルーツを感じたくなり、亡き祖父母や親の存在を感じていたいと思ってしまう生き物です。
そんな時に立ち返られる場所こそが、お墓なのです。
現代の暮らしに、従来のお墓はそぐわないのかもしれません。
しかし同時に、永代供養や樹木葬や散骨といった新しい葬法が、人間の根源的な欲求、つまり自分の家族やご先祖様に会いたいと欲求を満たしてくれているかというと、疑問が残るところでしょう。
実際にそのようなお墓をタイプを選択した方が後に後悔するケースも多いという結果が全国石製品協同組合のアンケート調査でも出ています。
※「お墓を建てた後に後悔したこと」に関するアンケート調査
少なくとも「楽に」「安く」済まそうとする発想からお墓を敬遠するのであれば、それは大変危険でしょう。
ただ、遺骨の処理のための埋蔵ではなく、その後も故人や先祖とのつながりを感じられる方法を、ぜひとも考えて頂きたいです。
お墓を建てることを検討したい方
「お墓を建てるか、建てないか、どうしよう・・・」という悩みを抱えている方は多いかもしれません。
そんな方におすすめなのが、まずお近くの霊園の資料請求をしてみて、実際に費用を見てから家族・お墓のプロに相談することです。
ライフドットではスマホでも3分程度で無料で資料請求が可能です。お墓を建てる選択肢だけではなく、樹木葬・納骨堂といったタイプのものも探すことができます。納得するお墓を探したい方は、まず資料請求してみましょう。
では次に、お墓は必要か・不要か、一般の人に行ったアンケートの結果を解説します。
お墓は「必要だ」と回答した人は全体の64.2%
20~40代の男女246名に「お墓は必要だと思いますか?」というアンケートを取ったところ、以下のような結果になりました。
では「はい」「いいえ」それぞれどのような意見をもっているのか、見ていきましょう。
「お墓は必要」という人の意見
「はい」と回答した人は、以下のような意見を持っていました。
- 供養したいから
- 供養する場所がほしいから
- 遺された家族のため
- 先祖をたどるきっかけになるから
- 親族どおしの繋がりのため
- お墓がないと子供に迷惑をかけるから(遺骨のやり場に困る)
- 日本の文化的に
「はい」と回答した人は、やはり残された身として先祖を供養したい、という声が多く見られました。
しかし、日本の文化的に、という意見や、なんとなくやらないといけないのではないか、という意見も中にはありました。
「お墓はいらない」という人の意見
反対に「いいえ」と回答した人は、以下のような意見を持っていました。
- 管理が大変だから
- 墓石の価格が高いから
- 子供が将来手入れしなければならないのが気の毒だから
- 必要性がわからないから
「いいえ」と回答した人は、圧倒的に「管理が大変だから」という意見が多く見受けられました。
では、そもそもお墓を建てる意味や目的とは一体何でしょうか。今一度お墓を建てる目的を考えましょう。
お墓を建てる意味や目的とは
日本の一般的な供養方法は、石を目印(墓標)としたお墓を建てる方法です。亡くなった人の遺体は火葬し、供養のために石塔を建て、遺骨はその地下に埋蔵します。
最近では、室内墓(納骨堂)や樹木葬などの新しい葬法の選択肢も登場しています。それでも大多数の人は石塔を建てるタイプのお墓への埋蔵を選びます。
やはり、日本人には石塔のお墓が一番なじみ深いのでしょう。
日本では、昔から先祖供養として埋蔵した場所に石塔を建ててこれをお墓としてました。そして定期的にお墓参りするのが、スタンダードな供養の方法です。
ここではお墓を建てる意味や目的について、具体的に考えてみましょう。
物理的な理由:遺体や遺骨を守る役割として石を置いた
昔から、人々は亡くなった人を埋蔵し、その場に石塔を建てました。
しかし、土葬をしても、その中に遺体が埋められていることを獣たちはその嗅覚で嗅ぎ付けて、すぐに掘り返してしまいます。
遺体の処理は、公衆衛生の面から考えてもとても切実な問題です。見た印象、そして臭いから私たちに嫌悪感を催しますし、疫病の原因にもなりかねません。
獣たちが遺体を掘り返さないために、大きな自然石を置いたのが、墓石の原点ではないだろうかと言われています。
やがて、石が置いてある場所には死者が眠っていると認識されます。
これに石工の技術の進化が伴って、墓石が形作られていったのだと思われます。
供養的な理由:「九相図(くそうず)」に描かれる遺体の朽ちていく様子と石塔
獣が墓地を荒らす心配がないのに石塔を置く例もあります。
鎌倉時代から江戸時代に制作された「九相図」という仏教絵画を見ると、お墓を建てるのは遺体を守るためではなく、純粋に供養のためだということが分かります。
この絵画は、きれいなお姫様が息を引き取ってから、腐敗、白骨化し、最後は土に還っていく様が9つの様相に分けて描かれています。
9つの内の6番目が「噉相(たんそう)」と呼ばれ、遺体を鳥獣が食い荒らす様子が描かれているのです。つまり、死者が土に還っていく過程として、獣に荒らされるのが必要だったのでしょう。
その後、土に還ったその場所に石塔が置かれるのです。もはや、物理的に獣が掘り返しにくる心配がないのに石塔を建てるのは、死者を供養するためにほかなりません。
お墓は、死者の冥福と生者の幸福を祈る場所
お墓は、亡くなった人の遺骨を埋蔵して供養する場所です。これ自体は多くの人は異論などないでしょう。
と、同時に筆者が思うのは、お墓参りする私たち自身の幸福をも祈る場所なのではないかということです。
お墓参りをして、石塔をきれいに掃除して、手を合わすと、どこか晴れやかな気持ちにならないでしょうか。
ご先祖様の冥福を祈るということは、自分たちの幸せを祈ることでもあります。いつもご先祖様が身近にいる、という日本人の死生観が、いまのお墓参りの文化を生んでいるのです。
大切な人の存在がこの世から亡くなったとしても、その人との繋がりまでもが消えてなくなるわけではありません。
記憶や、思い出や、情念の中で、その人とつながり続けるのです。
お墓参りに行くと、その中に眠る人に語りかけるという人、たくさんいるのではないでしょうか。人間は、亡き人を内に抱えて生きる生き物だと、筆者は思います。
大事な人を忘れないために、日本人はお墓を建ててきたのです。
お墓参りについては、「お墓参りの基本や作法を紹介!ご先祖様に会いに行こう」で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
墓石が選ばれる理由は、耐久性が高い物質だから
お墓に石が用いられてきた理由は、石が他の自然物に比べ、耐久性、堅牢性で優れているからです。雨風にさらされても、土に埋もれても、石は消えてなくなりません。石は長く、強く、その場にい続けてくれるのです。
お墓では、両親、祖父母と続いていく、ご先祖様を祀ります。ということは、人間よりも長くそこにい続けられるものがシンボルでなければならないのです。
何世代も続く命の連続性を見守ってくれる役割を果たすものとして、最適なのが、石だったのです。
死者の供養の方法は風土や文化によって異なります。
日本では、仏教が伝来する以前から先祖からつながる命の連続性を大切にしました。先祖祭祀(せんぞさいし)の死生観のシンボルとして、世代を超えてそこにい続けられる石が最適だったのでしょう。
ちなみに、インドでは火葬した遺骨は川に流します。これは、輪廻転生(りんねてんしょう)という死生観を持つインド人が、仮の姿である人間の身体に執着しないためです。
また、チベットでは遺体を鳥に食べさせます。この葬送方法を鳥葬(ちょうそう)と呼びます。チベットは高地で、火葬をするほど薪もなければ、土葬にするには土壌が固いためです。風土や文化が変わると、死者の埋蔵の方法もさまざまなのです。
墓石を用いないお墓もある
多くの人は、お墓と聞くと石塔を連想しますよね。しかし、厳密にお墓とは、遺体や遺骨を埋蔵した場所のことを指します。
古くは、土まんじゅうのように盛土された場所も、塔婆(とうば:戒名などを書いた木の板)が一本立てられただけの場所もあり、そこも立派なお墓でした。
最近で言うならば、納骨堂という建物の中の埋蔵施設もお墓に分類されますし、樹木葬のように墓標を木にしたものも、お墓に含まれます。
お墓について相談する
これまでお墓を建てるメリット・デメリットを見てきました。しかし中には「正直お墓を建てるか建てないか判断に迷う・・・」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
判断がなかなかつかない、という方は一人で抱え込まず、ご家族と相談をして決めるようにしましょう。また、当サイトではお墓の相談を承っております。
「お墓は買うべき買わないべき?」「中立的な意見がほしい」という方は、お気軽にライフドットにお尋ねください。
まとめ
この記事では、お墓を建てる目的について過去の埋葬方法や歴史などをたどって解説いたしました。では最後にこの記事の要点をまとめます。
この記事のまとめ
- 日本では一般的に、遺体を火葬し、供養のために石塔を建て、その地下に埋蔵する
- お墓は、遺体や遺骨を守るため、そして供養のために建てられた
- お墓は、死者の冥福と生者の幸福を祈るための場所
- お墓が石である理由は、ずっとそこにい続けるからであり、先祖祭祀という死生観を持つ日本人とって石こそが最適だった
- 時代や地域によっては、石塔ではないお墓もある
- お墓のメリットは、精神面や供養面で安心できること
- お墓のデメリットは、手間や費用など、維持することの負担が増すこと
- お墓を放置しておくと、知らないうちに無縁墓として撤去される恐れがある
- お墓がいらない場合は、速やかに墓じまいをしましょう
- 永代供養や納骨堂や樹木葬など、お墓を建てない供養の方法もある
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
「○○家の墓」として一つの石塔をシンボルとして建てられているお墓のことを家墓(イエバカ)と言われていますが、家墓とは「家単位につくられた合葬墓」のことを意味します。庶民のお墓に墓石が建てられるようになったのは江戸時代あたりからになりますが、墓石は当初個人単位に建てられていました。明治以降、旧民法下で家督制度が確立し、さらに火葬率の上昇で焼骨を複数納めるカロート(納骨室)が形成されたあたりから、「○○家の墓」としてシンボルの石塔が一つ建てられるようになりました。
このように、近世だけみても弔い方、お墓の形に変化があるように、歴史を振り返れば地域による墓制度も違いますし、当然形も違います。それでも長い歴史の中で不要として切り捨ててこなかったのには理由があり、死者を弔うという作業に意味があったからにほかなりません。「自分の墓はいらないがペットを供養したいので、一緒に入れる墓を買った」という声もあるように、墓のありかたも変化しています。
墓じまいを検討されている方
- 墓じまいはどこに相談するのかわからない
- 複雑な事務手続きをやりたくない
- 墓じまいにいくら必要なのか知りたい
親族や知人などに墓じまいを経験した人がおらず、不安に感じる人もいるかと思います。
また、今あるお墓を片付けることに抵抗感がある方もいるかもしれません。
しかし、大切なのはお墓をきちんと片付け、あとの供養に繋げていくことです。
ライフドットでは、墓じまいの複雑な事務手続きの代行、新しい墓地・霊園への引越しの提案までサポートします。
墓じまいで悩まれている方は、まず一度ライフドットにお問い合わせください。