相続税の申告と納税のしかたを徹底解説
ポイント:相続税の申告は、① 親の住所地を管轄する税務署で、②納付期限内に行う。
この記事の目次
親の死亡を知った翌日から10カ月以内に申告
相続税の申告は、親の死亡を知った翌日から10カ月以内に行います。
これだけの期間が設けられているのは、家族が海外在住や旅行中で、親の死を知ることができない状況が考えられるためです。期限内に税務署に申告書を提出し、確定した相続税額を納付します。
期限内に申告しない場合は納税額がアップする
申告書の提出期限を過ぎても申告を行わないと、税務署は独自に調査を行って、相続税を決定します。そこで決定した税額が相続人あてに通知されます。税務署によるこの決定処分は「無申告加算税」対象となり、納税額が増えます。
無申告加算税とは、理由もなく申告期限内に申告しなかった場合に本税に対して5〜15%の税率で課せられる税金のことです。
相続人が行う準確定申告
亡くなった親の所得税の申告を、相続人が代わって行うことを「準確定申告」といいます。
次の手順で行います。
- 亡くなった日の翌日から4カ月以内までの期限で、
- 親の住所地の税務署長に、
- 法定相続人全員の名前で、
- 申告書を提出します。
親の住所地の税務署で申告する
申告をする税務署は、親の住所地の管轄税務署です。これは相続人が国内・国外各地に離れて住む場合、同じ親からの相続を各自が自分の住所地の税務署で勝手に行うのを防ぐ目的からです。
なお、親の管轄税務署が遠隔地にある場合は、郵送による申告も可能です。
税務署からの「お尋ね」は確認の意味
親の財産額を計算した結果、基礎控除額以下だったときは、申告は必要ありません。しかし、その場合でも、税務署から申告書が送られてくることがあります。これは、申告の必要の有無を調べるためです。
申告書を受け取ったら、財産額が基礎控除額以下に収まるため申告不要の内容を、文書で税務署あてに送ります。財産を評価した根拠となる資料が必要なケースもあるため、資料は保管し、提出できる状態にしておきましょう。
相続税申告のスケジュール
7日以内 | ①葬儀費用の領収書のチェックと保管 ②親の遺言状の有無をチェック ③法定相続人のリストを作成 ④残された財産や債務額を大枠で把握 |
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3カ月以内 | 相続を放棄するときなどは家庭裁判所に申出 |
4カ月以内 | 亡くなった親の個人の所得税を申告(準確定申告) |
10カ月以内 | ①残された財産の正確なリスト化と評価 ②遺産分割協議書を作成 ③各人ごとに納税額を確定 ④相続税の申告が必要なときは、税務署へ申告・納付 |
申告漏れはただちに修正申告する
税務署への申告を済ませた後で、新たに財産が見つかることもあります。その場合は早急に「修正申告」が必要です。
「申告額」が「修正申告額」より小さい場合
そのまま放置すると、税務署に申告漏れはただちに修正申告する脱税とみなされます。速やかに修正申告書を提出して「修正申告」を行いましょう。
なお、税務調査が行われる前に修正申告を終えていれば、延滞税はかかりますが、加算税は原則かかりません。
「申告額」が「修正申告額」より大きい場合
相続税の申告期限から1年以内に「更正の請求」を税務署長に対して行います。納めすぎた相続税は払い戻されます。
申告期限内に遺産分割が決まらない場合
税務署への申告書の提出期限内に遺産分割が終了しないと、納税額が大きく変わります。
これは、遺産が法定相続分で取得した財産扱いになり、各種控除や制度の適用が受けられなくなるからです。 遺産分割が決まらないときは、次の手順で納税を行います。
- 申告書の提出期限内に、
- 未分割の状態で、民法上における法定相続分に従い、
- 仮の遺産分割を行って相続人ごとの相続税を計算し、
- 申告書を提出、納税をすませておきます。
後日確定して、改めて申告を行います。
配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例
原則的には、申告期限から3年以内に遺産が分割されれば、適用が受けられます。申告書を提出する際、「申告期限後3年以内の分割見込書」もあわせて提出する必要があります。
後日、正式に遺産分割協議が決まったとき
申告期限内に仮に払っていた税額と、確定した税額を比較します。3年以内であれば、配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例等の制度も適用します。
納税額が不足したり、反対に納めすぎの場合は税務署に申し出て、不足分の支払いや払い戻しを行います。
相続税申告のときに必要な書類
項目 | 必要な書類 |
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①法定相続人 | 戸籍謄本 |
②遺言の有無 | 遺言書 |
③遺産分割協議 | 遺産分割協議書、全法定相続人の印鑑証明書 |
④土地・建物 | 固定資産税評価額証明書、不動産登記簿謄本、路線価図など |
⑤現金・預貯金 | 預貯金通帳、銀行残高証明書 |
⑥退職金、弔慰金 | 退職金の支払調書 |
⑦障害者 | 身体障害者手帳など |
⑧相次相続 | 前回の相続税の申告書 |
⑨葬式費用 | 領収書など |
⑩寄付金 | 寄付行為の証明書、公益法人である証明書など |
⑪借入金、未払金 | 銀行残高証明書、請求書、領収書など |
⑫生前贈与された財産 | 贈与税申告書、預金通帳、有価証券取引明細書など |
※上記以外にも、証明や控除に必要な書類がある。
■参照元
改訂増補 親の葬儀とその後事典
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平成20年9月30日 旧版第1刷発行
平成29年5月26日 改訂版第1刷発行
著 者:黒澤計男 溝口博敬
発行者:東島俊一
発行所:株式会社法研