遺言の執行、遺言執行者を不可欠とするケースも!
ポイント:遺言を執行するとき、「遺言執行者」(弁護士など)の指定があればスムーズ。
遺言執行の権限
遺言書の中に「遺言執行者」の指定があれば、その遺言執行者が遺言に書かれた内容を実現するために活動します。
遺言執行者とは、遺言の執行に必要な一切の行為をすることができる人で、未成年者と破産者を除いてだれでもなれます。
ただし、専門知識と豊かな経験のある人のほうが安心ですから、あらかじめ弁護士などに依頼しておくことが望ましいと言えます(費用は相続財産から控除できます)。
相続人は指定された遺言執行者の活動を妨げる行為をおこなえません。
遺言執行者が必要となるもの
たとえば、遺言の内容のとおりに不動産の名義を移転することであれば、遺言執行者がいなくてもできます。しかし、ある相続人を「廃除」するという遺言があった場合には、廃除の手続きは遺言執行者がいないとできません。
これらのことは執行者がいないことには実現不可能ですので、執行者に指定された人に対しては、遺言のとおり執行者になるかどうか、期間をさだめたうえで早めに意思確認をおこなうべきです。
また、遺言執行者が必要なことが遺言書に書かれているのに、遺言執行者の指定がなされていない場合には、相続人は家庭裁判所に対して遺言執行者の選任を求める申し立てをすることになります。
遺言執行者の手続き
遺言執行者を不可欠とする遺言事項
①相続人の廃除及び排除の取消し
②子の認知
特定の相続人から相続権を奪う「廃除」という遺言、被相続人の生前にあらかじめ廃除しておいた相続人の「廃除を取り消す」という遺言については、遺言執行者が必須。事情があって生前には認知できなかった婚外子を遺言によって認知する場合も、遺言執行者は必須。
遺言執行者を必ずしも必要としない遺言事項
上記以外のすべて
不動産の相続登記、遺贈の登記、預貯金の解約・名義変更・引き下ろしの手続き、自動車や株式・電話加入権のような名義変更が必要なものの手続きも、相続人だけの手によっておこなうことができる。ただし、 遺言執行者がいれば、これらの事柄についても手続きをおこなうことができるのは遺言執行者だけになる。
遺言執行者の選任の手続き
遺言書に遺言執行者の指定があれば、その人が遺言執行者になるが、就任するかどうか、早めに意思を確認するべき。 遺言執行者が不可欠な遺言事項が書かれているのに遺言執行者の指定が無い場合や、あってもその人が就任を拒んだ場合には、遺言執行者の選任がぜひとも必要になる。 また、必ずしも遺言執行者を必要としない遺言事項であったとしても、 遺言執行者が選任されれば、その人が執行をおこなうので、便利な面もある。
手続きの流れ
専任の申し立て
利害関係人であれば申し立てが可能。相続人に限らない。たとえば相続財産の受遺者も申し立て可能。
家庭裁判所による選任
■参照元
改訂増補 親の葬儀とその後事典
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平成20年9月30日 旧版第1刷発行
平成29年5月26日 改訂版第1刷発行
著 者:黒澤計男 溝口博敬
発行者:東島俊一
発行所:株式会社法研