繰り上げ法要の意味と現在の考え方~繰り上げ法要に参加する際に必要なもの
葬儀のかたちや法要のかたちは、時代とともに徐々に移り変わっていっています。
「繰り上げ法要」はその最たるもののうちの一つです。かつてはイレギュラーだった繰り上げ法要は、現在では多くの人が選ぶ法要のかたちです。
「繰り上げ法要」について解説していきます。
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この記事の目次
繰り上げ法要とは初七日法要を葬儀当日に行うこと
「繰り上げ法要(繰上げ法要とも書く。くりあげほうよう)」とは、ごく簡単に言うのであれば、「法要を行う日をずらし、本来よりも早めのタイミングで行うこと」をいいます。
ただ現在は、「繰り上げ法要=繰り上げ初七日法要」の意味で使われることが主流です。特に断りがない限りは、「繰り上げ法要」が指す「法要」は、初七日法要のことを指すと考えてよいでしょう。
そのためここでも、特筆しない限りは「繰り上げ法要=葬儀当日に初七日法要を行うこと。また、その法要自体を指す言葉」として使っていきます。
初七日法要は、仏教の葬儀における法要のうちのひとつです。「四十九日法要」「一周忌法要」と同じくらいよく知られている言葉でもあります。
亡くなった人は長い時間をかけて旅をしていくことになります。亡くなってから最初の6日間で、三途の川を渡り、審判の場所にたどり着きます。生前の行いを審査する王は10人いますが、その最初の王、
この後、7日ごとに審査が行われ、49日目に行先が決まります。
ちなみに現在は初七日法要でさえ「繰り上げ法要」として火葬した当日に行われることも多いのですが、非常に信仰心の深い人などは、
- 14日目の法要(二七日忌。「にじゅうななにち」と読むのではなく、「ふたなのか」と呼ぶ。恐らく、「7日目を2回繰り返した日」の意味だと思われる。このことから、「四十九日法要」も「七七日・”しちしちにち”もしくは、”なななぬか”あるいは”なななのか”と呼ぶこともある)
- 21日目の法要(三七日忌・”みなのか”、もしくは、”さんしちにち”)
- 28日目の法要(四七日忌・”よなのか”、もしくは、”ししちにち”)
- 35日目の法要(五七日忌・”いつなのか”、もしくは、”ごしちにち”)
- 42日目の法要(六七日忌・”むなのか”、もしくは、”ろくしちにち”)
を行う場合もあります。ただし、これが行われるのは極めてまれです。
最初の7日間と、そして審査が終わる49日目は仏教のなかで特別なものとされているため、この時期に法要を行うことになっています。
従来は亡くなってから7日目(地域によっては亡くなる前日を「1日」とする場合もある)に行うものでした。しかし現在はさまざまな理由があり、葬儀当日に繰り上げ法要というかたちで初七日法要を行う方法が一般化しつつあります。
初七日法要を行わない人が多い理由
「亡くなってから7日目に初七日法要を行う」という考え方が下火になっていったのは、きちんとした理由があります。
そもそも初七日法要は、「葬儀のときに親族同士で落ち着いて話をすることもできないから、葬儀後に改めて会を設け、ゆっくり故人についての話をする」という意味もありました。また、かつては「生まれた土地で育ち、生まれた土地で暮らし、近場の人と結婚して一生を終える」という生活を選んでいた(あるいはしていた)人も多いかと思われます。
しかし現在では働く場所も働き方も多様化していっています。そのため、「通夜~葬儀でたくさん休みをとったのに、7日目でまた休みをとるのは難しい」「非常に遠いところに住んでいるため、往復の交通費だけで20万円近くかかる。さすがに1週間の間に、40万円も交通費にかけるのは苦しい」と考える人も出てきました。
四十九日のタイミングならば……という人は多いものですが、「1週間近くの間に、2回も学校や会社を休み、たくさんのお金を使うこと」は現在の感覚にはあまり沿いません。このような考え方から、「亡くなって7日目に行う初七日法要」が、「火葬当日に、繰り上げ式で行われる繰り上げ法要」に変わっていったのです。
なお、これは主に本州~九州の話です。北海道ではもともとこの繰り上げ法要のかたちが一般的でした。これは、北海道が開拓地であり、非常に忙しく、また過酷な自然環境にあったからだと考えられています。忙しく働くなかで、7日目に集まって法要をするのは負担であるとする考え方があったのだとされています。
繰り上げ法要を行うかは地域差や家庭差がある
さて、この「繰り上げ法要」ですが、これも地域や家庭ごとでかなり考え方に違いがあります。北海道では昔から繰り上げ法要が行われてきましたが、現在は本州~九州でもこのやり方がよくとられるようになっています。
また、(あくまで体感的なものであり個人の感想の域を出ませんが)現在ではまだ「初七日法要は火葬当日に繰り上げ初七日法要として行うが、四十九日に関しては繰り上げない。従来通り1か月半までのなかで、親族たちが都合のつく日で行う」とする家庭が多いかと思われますが、なかには「四十九日法要までも当日に行う」とする地域や家庭も見られるようです。
葬儀や法要のかたちがよりスレンダー化、より自由度が高くなっていく現在においては、「初七日法要だけでなく、四十九日法要までを当日に行う」という考え方は、参列者のニーズに合致していると言えなくもないでしょう。
現在は繰り上げ初七日法要が一般化していますが、10年後・20年後になれば、繰り上げ初七日法要だけでなく繰り上げ四十九日法要も一般的になっているかもしれません。
なお、これもあくまで一個人の経験によるものではありますが、今から17年ほど前の段階で繰り上げ初七日法要はすでに一般的でした。
しかし当時は繰り上げ四十九日法要を提案・提供しているところはまったく見られなかったので、繰り上げ四十九日法要についてはここ15年以内に出てきた考え方なのかもしれません。
繰り上げ法要は、繰り上げ初七日法要にせよ繰り上げ四十九日法要にせよ、参列者の負担を軽減するという意味では非常に優れた合理的な選択肢だといえるでしょう。
ただ、葬儀や法要は、合理性だけで判断されるべきものではありません。
何よりも重要視されるべきなのは、ご家族にとって望ましいかたち、安らぎを得られるかたちで故人と向き合える環境を整えることです。
そのため、故人の家族(特に、親しくしていたパートナーや子どもなど)が希望するのであれば、初七日法要は7日目に行うべきですし、四十九日法要も行うべきです。
また、49日に至るまでの、14日・21日・28日・35日・42日のタイミングでも読経を挙げるとよいでしょう。なお、14日~42日の場合は、基本的には僧侶は呼びません。家族だけで手を合わせて読経するのが一般的です。
ただこの場合も、家族が「やはり僧侶をお願いしたい」ということであれば、依頼をすることは可能です。僧侶を呼ぶ場合にはお布施が必要となると解釈するのが一般的であるため、この点には注意したいものです。
初七日法要と宗教
繰り上げ法要と初七日法要は深い関わりがあるものですが、これは「仏式」のときのものです。神式やキリスト教の場合は、初七日法要という呼び方はとりません。
神式の場合は、初七日法要とは異なり、「十日祭」「二十日祭」と呼ばれる宗教的儀式を執り行います。また、仏教における「一周忌」「三周忌」「七周忌」とは異なり、「一年祭」「三年祭」「五年祭」「十年祭」を行います。
キリスト教でカトリックの場合は、「3日目」「7日目」「31日目」のタイミングで追悼のためのミサを行います。プロテスタントの場合は1か月を目途に、記念集会が執り行われます。
この2つにおいて、「繰り上げで追悼を営むかどうか」は葬儀会社ごとによって異なると思われます。神式の葬儀で繰り上げて行われているケースは何度か目にしましたが、キリスト教の場合はそもそも施行例が極端に少ないこともあり、葬儀会社側がそれほど慣れていないこともあります。
「自分はキリスト教を信仰しており、追悼儀式に対してこのように考えている」
「神式で葬儀を行うつもりだが、お祀りはこのようにしてほしい」
という希望があれば、葬儀会社に明確に希望を伝えた方がよいでしょう。
なお、葬儀・法要のかたちの多様化に従い、現在は無宗教の葬儀を希望する人もいると思われます。また、「無宗教の葬儀というわけではないが、極めて小さい家族葬にする。親族も呼ばず、子どもと配偶者だけで行う」「家族の体調が非常に悪く、長時間にわたる葬送儀式には耐えられないと判断している」とする人もいるでしょう。
葬儀において僧侶を呼ばず無宗教で葬儀をした場合はもちろんのこと、「非常に小さい葬儀であったし、そもそも強い信仰心も持っていない」「体調が著しく悪いので、葬送儀礼にかける時間をできるだけ短くしたい」と希望する場合は、初七日法要(繰り上げ法要)も省いてしまっても構わないと考えてよいでしょう。
たしかに、信心深い人にとって法要は非常に大切なものです。また、「ほかの法要は省いても、初七日法要や四十九日法要はしたい」と考える人もいるでしょう。繰り上げ初七日法要が一般的になってきているというのは、裏を返せば、「合理性は求めるが、初七日法要をしないと割り切れる人が少ないこと」にも繋がります。
ただ、信仰心は人それぞれです。また、求める葬儀や法要のかたち、そしてそれに割ける費用や日数も、それぞれのご家庭によってまったく異なります。故人を弔うときにもっとも大切なのは、「故人の死を悼むこと」です。
その気持ちを表すためには初七日法要(繰り上げ法要)を特に必要としないと考えたり、故人が無宗教の葬儀や法要をしないことを希望していたり、体調や費用や日数の都合で難しいと考えたりする場合は、無理をしなくてもよいでしょう。
もっとも、「家族葬であっても、繰り上げ初七日法要までは火葬当日に行うのが一般的なプランです。また、その後には精進落としの席も設けます」としている葬儀会社は少なくはありません。
このため、「繰り上げ初七日法要はしない。その後の精進落としの席も設けないことを希望する」としているのであれば、事前に葬儀会社にそう伝えた方がよいでしょう。
現在は葬儀会社も「故人様やご家族様の希望に沿った葬儀・法要をすること」を第一に掲げていますから、この希望が拒否されることはありません(逆をいえば、このような希望を伝えているのに関わらず、葬儀会社の都合をゴリ押ししてくる葬儀会社には依頼しない方がよいと言えます。
別日に行う初七日法要と繰り上げ初七日法要の違い
「繰り上げ初七日法要」は「初七日法要」を繰り上げて行うものです。そのため、行う目的や理由は一緒です。しかしながら、繰り上げ初七日法要と、別日に行う初七日法要は以下の点で異なります。
- 場所
- 日時
- お布施
それぞれ、どのような点で異なるのか確認していきましょう。
1.場所
繰り上げ初七日法要の場合は、多くのケースで「葬儀を行った会場」で行うことになります。火葬が終わった後に一度葬儀会場に戻り、そこで法要を行うのです。
法要を行う会場に関しては葬儀会社ごと・葬儀会館ごとで違いがあります。葬儀を行ったところと同じホールで行うところもないわけでありませんが、恐らく多くのところが法要のための部屋で繰り上げ初七日法要を行うように案内するでしょう。
なお、この繰り上げ初七日法要のための準備はすべて葬儀会社が行うため、基本的にはご家族は何も手伝わなくて構いません。ただし、繰り上げ初七日法要に参加する人がだれであるかはきちんと伝える必要があります。
なぜなら、繰り上げ初七日法要に参列した人は多くの場合、次の「精進落としの席」にも参加することになるからです。
初七日法要の後には食事をとるケースが多いといえますが、食事をとるためのお店も予約しなければなりません。
対して、別日に行う初七日法要の場合は自宅や菩提寺を使って行うことが多いと思われます。希望をすれば葬儀会館で行うこともできるケースが多いと思われますので、葬儀会館での初七日法要を希望するのならば一度相談してみてください。また、葬儀会社によっては、葬儀会館以外に法要会館を別に持っていることもあります。
ただ、初七日法要の場合、繰り上げ初七日法要でも別日に行う初七日法要でも参列する人の数は少ないので、別日に行う場合は自宅でもスペース的には事足りることが多いことでしょう。
2.日時
繰り上げ初七日法要は、火葬を行った当日に行われます。対して、別日に行う初七日法要は、故人が亡くなってから7日目に行われることになります。ただ、平日に亡くなられた場合、「平日に休みをとって参加してもらうこと」はなかなか難しいため、「参加する人が都合をつけられる日」「その週の週末」などに行われることもあります。
繰り上げ初七日法要の場合、通夜や葬式の手配をする過程のなかに繰り上げ初七日法要のスケジュールも組み込まれます。そのため、菩提寺の僧侶のスケジュールの都合もつけやすく、スケジュール調整に手間取りません。
対して別日に行う初七日法要は、参列する親族だけではなく僧侶のスケジュールも確保しなければなりませんから、難易度は高くなります。
3.お布施
繰り上げ初七日法要の場合、お布施は葬儀のときにお渡しするもののなかに含まれます。
そのため、「繰り上げ初七日法要用のお布施」を別に用意する必要はありません。お布施は気持ちを表すものだといわれていますが、お経をあげる回数などである程度目安が決まっています。
しかし別日に初七日法要を行う場合は、別途お布施を用意しなければなりません。また、お布施のなかには、車代やお膳代(食事を僧侶が辞退した場合)もいれなければなりません。このため、金銭的負担も大きくなります。
「初七日法要でどれだけのお布施を包むか」はケースによって異なりますが、3万円~5万円程度です。繰り上げ初七日法要の場合は1回分で済む車代とお膳代も、別日に行う場合は加算されます。
このように、場所の面でも日時の面でもお布施の面でも、繰り上げ初七日法要の方が別日に行う初七日法要より負担が軽いといえます。このような現実的な問題もあって、繰り上げ初七日法要が広まっていったともいえます。
繰り込み法要と繰り上げ法要の違い
「繰り上げ初七日法要」と「別日に行う初七日法要」を主に取り上げてきましたが、実はこれ以外の初七日法要のやり方があります。
それが、「繰り込み初七日法要(繰込み初七日法要とも。くりこみしょなのかほうよう)」です。
文字から受ける印象は繰り上げ初七日法要と似ていますが、この2つは似て非なるものです(繰り込み初七日法要の場合でも「繰り上げ初七日法要」と呼ばれることもありますが、ここでは分けて解説します)。
繰り上げ初七日法要の場合、
- 1.葬式・告別式
- 2.出棺
- 3.火葬
- 4.戻ってきた後に初七日法要
- 5.精進落とし
という順番をとります。
しかし繰り込み初七日法要の場合、
- 1.葬式・告別式
- 2.初七日法要
- 3.火葬
- 4.火葬している最中に精進落とし
の順番に進行していきます。
最大の違いは、「お骨になった状態で初七日法要を行うか、それともお骨がない状態で初七日法要を行うか」という点です。繰り上げ初七日法要の場合は火葬した後に行いますが、繰り込み初七日法要の場合は火葬前に行います。
繰り込み初七日法要の場合、「火葬場から一度葬儀会場に戻る時間をとらなくてすむ」「精進落としを火葬している最中に行えるため、時間がかからなくてすむ」というメリットがあります。火葬の後に親族はすぐに解散することができるため、繰り上げ初七日法要以上に合理的なやり方だといえます。
ただ、「お骨になった状態で法要を行える」ということで本来の(別日に行う)初七日法要の形態を踏まえる繰り上げ初七日法要に対して、繰り込み初七日法要は従来の初七日法要とはまったく異なるかたちをとります。
そのため、繰り上げ初七日法要に対しては抵抗感がない人であっても、繰り込み初七日法要に対しては抵抗感を覚えるという人も多いかと思われます。また、葬儀会社によっては、「繰り上げ初七日法要は基本プランとして押さえているが、繰り込み初七日法要は原則として想定していない」というところもあります。
もちろん故人やご家族が強く希望した場合は繰り込み初七日法要を行うことも不可能ではありませんし、繰り込み初七日法要を選ぶこと=「信心が足りないこと」ではありません。
ただ、イレギュラーなかたちではありますから、繰り込み初七日法要を希望する場合も、別日の初七日法要を希望する場合と同様に葬儀会社の人間や親族にしっかり伝えておくことが望ましいといえます。
繰り上げ法要と精進落とし
さて、「繰り上げ法要」と同様に、現代のライフスタイルに合わせるように変化していったものがあります。それが「精進落とし」です。
精進落としは、「精進明け」「精進上げ」「お斎」などの名称で呼ばれることもあります。一般的には「精進落とし」という表現が使われることが多いかと思われますが、葬儀会社などでは精進落としを行う部屋を「お斎室」とすることもあるので覚えておくとよいでしょう。
人が亡くなったときは食事の内容を変え、生臭物(肉や魚)を食べないようにするのがかつてのしきたりでした。そしてその食事内容は、49日目まで続いていたのです。そして忌明けに、「今日から今までと同じ食事をとるようにする」として行われたのが、精進落としなのです。
しかし現在の生活には、このしきたりはなじみません。たとえば子どものことをひとつとっても、「親族が亡くなったから、49日目までは給食で出てくる魚や肉も食べません」とすることは現実的ではありません。
このため現在は、繰り上げ初七日法要同様、「火葬をしたその日のうちに精進落としの席を設ける」というかたちが一般的になってきました。
こう考えると、告別式・葬式を行う日というのは実に不思議なものです。
告別式・葬式~火葬は同日に行われるのが基本でしたが、その日のうちに本来ならば7日目に行うべき初七日法要が「繰り上げ初七日法要」というかたちで入り、さらにその後に49日が過ぎてから行われる「精進落とし」が入り込んでいるのです。そうであるにも関わらず、本来は精進落としと同じタイミングで行う「四十九日法要」は多くの場合別日に行われます。
現在のライフスタイルに即したかたちに変化していった結果とはいえ、なかなか興味深い話なのではないでしょうか。
精進落としの席では、肉類や魚類が出されます。ただこれもまた、地域差などがある話です。
「精進落としの席までは精進料理とする」とする地方や葬儀会社、ご家族もあります。また逆に、「通夜振る舞いでも肉類や魚類を出す」とする地方や葬儀会社、ご家族も見られます。このあたりは非常に考え方が分かれるところです。
また、葬儀会社であってさえ自社あるいはその地域のセオリーにのっとって提案してくるケースが多いため、「肉や魚は精進落としの席でも出してほしくない」「肉や魚は通夜振る舞いまでは避ける、精進落としでは出してほしい」「通夜振る舞いでも精進落としでも、両方とも肉や魚を出してほしい」という希望があるのならば、しっかり伝えておかなければなりません。
「精進落としの席でも肉や魚を出さない」のが基本の葬儀会社では、「精進落としの席に肉や魚が入る料理を希望されるケースは、年に数回程度。1か月に1回あるかどうか」という頻度の場合もあります。
葬儀後から繰り上げ法要終わりまでの一連の流れ
繰り上げ法要は、火葬した当日に行うものです。 一連の流れを紹介します。
- 1.葬式・告別式
- 2.出棺
- 3.火葬場への移動
- 4.炉の前でのお別れ
- 5.火葬
- 6.収骨
- 7.火葬場から葬儀会場への移動
- 8.繰り上げ法要
- 9.精進落とし
- 10.解散
なおここでは、「通夜も葬式・告別式も行う葬儀であり、一般葬であり、かつ仏教の葬儀」を想定しています。また葬儀会社は、自社で葬儀会館を持っており、かつ火葬場とは併設していない会館で執り行うものとします。
1.葬式・告別式
葬式・告別式が行われます。お別れの花などを棺に入れます。棺に花を入れるのは家族・親族を中心としますが、葬儀会社やご家族の意向によってほかの参列者が参加する場合もあります。
繰り込み法要の場合は、この後に初七日法要が営まれます。
2.出棺
専用のストレッチャーを使って棺を移動させ、霊柩車に乗せます。霊柩車は宮型(屋代のようなものが車に乗っているもの)の場合もありますが、見た目だけでは霊柩車とはわからないようなリムジンタイプのものもあります。現在は後者の方が主流です。
霊柩車の定員によって異なりますが、ここに家族が同乗します。1人~4人(運転手を除く)が乗れるようになっているタイプが一般的で、喪主や故人の子どもが乗ることになります。特段の事情がない限り「親族」はここに乗りません。乗るのは「遺族」です。親族は葬儀会社が手配したマイクロバスあるいは自家用車で移動します。まれにマイクロバス型の霊柩車が用いられることがありますが、これは極めて珍しいといえます。一般参列者は、手を合わせて出棺を見送ります。
3.火葬場への移動
火葬場に到着したら、炉の前に移動します。葬儀会社のスタッフはここまでついてきてくれることが多く案内などを担当することもありますが、基本的にはこれ以降は火葬場のスタッフにバトンタッチします。(火葬が終わるころに戻ってきて案内をしてくれる場合もあります)
4.炉の前でのお別れ
炉の前で最後のお別れをします。僧侶による読経が行われます。これが、肉体を持つ故人との最後のお別れです。 炉のスイッチを入れれば、その後は焼き上がりを待つことになります。炉のスイッチは火葬場のスタッフが入れますが、一部の地域あるいは特に希望があった場合は喪主が担当することもあるようです。
5.火葬
火葬が終わるのを待ちます。所要時間は40分~2時間程度とばらつきがありますが、1時間~1時間半程度で終わることが多いといえます。
この間は、待合室で軽食をとって待ちます。お茶と茶菓子が振る舞われます(おにぎりなどが出されることもありますが、この後には精進落としの席があるため、基本的にはお菓子程度が出されるにとどまります)。
6.収骨
収骨を行います。収骨のやり方は地方によって差がありますが、火葬場のスタッフが案内してくれるので安心です。足の方から入れていき、最後に頭蓋骨で蓋をするのが比較的よく見られるかたちです。
7.火葬場から葬儀会館への移動
火葬場から葬儀会場へ移動します。なお、昔は「火葬場から帰るときは、道順を変える必要がある」とされていました。
現在はそれほど厳密に考えられていませんし葬儀会社によっては「基本的に変えている」というケースもあるかと思いますが、気になるようならば葬儀プランを組み立てるときにスタッフに希望を言うようにしてください。
8.繰り上げ法要
葬儀会館に戻り、繰り上げ法要を行います。 葬儀会場よりも少し小さ目のホールに案内されることが多いかと思われます。ここでは僧侶の読経に合わせて手を合わせるなどします。通常の法要と同じように進みます。
9.精進落とし
精進落としの席が設けられます。 葬儀会場にしていたところの後ろ側に食事スペースを設けて行う葬儀会社もありますが、多くの葬儀会社では「お斎室」として別の部屋を用意するでしょう。葬儀会館でとるのが一般的ですが、「故人が好きだったお店でやりたい」などの希望があれば調整は可能です。
ただこの場合は葬儀会社とだけではなく店側との折衝も必要になります。特に繰り上げ初七日法要の後の精進落としは喪服で行くことになるため、この点についても伝えなければなりません。
10.解散
精進落としが終わったら解散です。親族には引き出物を持たせて送り出します。その後、家族は白木の位牌や遺影、そしてご遺骨を持って家に帰ることになります。葬儀会社のスタッフも向かい、後飾り(納骨もしくは四十九日法要のときまでに使われる小さな祭壇のこと)を設置します。
ここにご遺骨や遺影、それから白木の位牌を置きます。ほかにも仏教道具が置かれますが、この設置はすべて葬儀会社のスタッフが行うため安心です。なお、宗派によって後飾りにも多少の違いが見られます。
繰り上げ法要に掛かる費用やお布施
繰り上げ法要の場合、このためだけにお布施を用意する必要はありません。通夜~葬式・告別式に渡すお布施に含まれていると考えてください。金額は、規模にもよって異なりますが25万円~50万円程度でしょう。 お布施の金額は、僧侶の人数が少なく、また読経の回数が少ないほど抑えられる傾向にあります。
繰り上げ法要を行う場合は、
- 枕経(省略されることもある)
- 通夜
- 葬式
- 炉の前でのお経
- 繰り上げ法要でのお経
と4回もしくは5回のお経が必要となるため、包む金額も高くなります。ただ、お布施は「代金」ではなく「気持ちを表すためのもの」です。そのため、そこに「相場」はありますが「正解」はありません。
いくらくらい包めばよいかわからない場合は、葬儀会社のスタッフに尋ねてみてください。
なお現在は「僧侶を派遣する」というサービスもあります。このサービスはお布施が一律で決められており、しかもその金額設定はかなり抑えられています。
喪家側としてはとてもありがたいサービスなのですが、菩提寺との間のトラブルを引き起こす火種になることもありますから、選択は慎重に。
繰り上げ法要に参加する場合の香典
初七日法要に参加する場合は、たとえ葬儀と同じ日に行う場合であっても原則として別に香典を用意する必要があります。これは、精進落としの食事の金額という意味もあるようです。表書きは「御霊前」がとするのがよいでしょう。水引は、黒白もしくは双銀の結び切りを選びます。これは通夜や葬式・告別式に持っていく不祝儀袋と同じです。
金額は、故人との関係が深ければ深い程多くなります。親ならば30000円~50000円程度、兄弟姉妹ならば30000円程度、叔父などの立場の場合は5000円~10000円程度が相場です。迷った場合は高い方の金額を入れるのが無難です。
なお、東京などの首都圏では持って行かない場合もあるそうです。ただ、「持って行ったけれど必要がないようなので出さない」とするのと、「本来は必要なのに持って行かなかった」ではまったく状況が異なります。判断に迷ったのならば葬儀会社のスタッフに聞くか、もしくはとりあえず持って行って周りに合わせるようにするとよいでしょう。
一周忌までに行う法要の種類
繰り上げ法要は早い段階で行われる法要です。
ここから1周忌までの間に行われる法要についても取り上げます。
- 四十九日法要
- 百箇日法要
- 新盆
- 一周忌
番外編:納骨法要
1.四十九日法要
非常に重要な法要です。故人の審査が終わるときに営まれるものです。ただ現在は49日目ぴったりに行われることはほとんどなく、その直前の土日などで行われるのが一般的です。多くの場合この後に食事をとります。また、このときに納骨を行うのが一般的です。
番外編:四十九日法要と行われることが多い納骨法要
納骨は四十九日の法要のタイミング行うことが多いものです。ただ、お墓の準備ができていなかったり、心情的にお骨を手放したくないと思ったりする人もいるでしょう。その場合は納骨の日を後ろ倒しにする場合もあります。納骨を行うタイミングには法律的な縛りはありませんから、いつ行っても構わないのです。
その際には、納骨を行うための法要を執り行うことができます。それを「納骨法要」といいます。
2.百箇日法要
「ひゃっかにちほうよう」と読み、「百か日」と記されることもあります。また、「卒哭忌(そっこくき。家族が泣き暮らす日々から卒業することを表す言葉。『哭』は『大きな声で泣くこと』を意味する)」と呼ばれることもあります。亡くなってから100日後に行われる法要であり、これを機にみんな日常に戻っていきます。
ただ、百箇日法要は現在では省略されるかたちが一般的かと思われます。
3.新盆
「初盆」とも呼ばれます。49日以降に迎える初めてのお盆です。家族だけで行い親族も僧侶も呼ばないで仏壇の前で手を合わせることにするとしている家庭もあれば、親族や僧侶を読んで行うという家庭もあります。このあたりはそれぞれの考え方があるでしょう。なお、お盆の時期は新暦で数えたときに旧暦で数えた場合で違いがあるため、「7月15日(付近)」もしくは「8月15日(付近)」と2つに分けられます。
4.一周忌
亡くなった1年めに行われる法事です。これも非常に大切な法要です。現在は、「四十九日法要が終わったら、次に集まるのは一周忌のときだ」としている人も多く見られます。 なお、これも「1年ぴったりの日程」で行う必要はありません。
この記事のまとめ
繰り上げ法要とは、本来行うタイミングより前に行う法要をいいます。現在は「初七日法要」を指す場合が多い言葉と思われます。
現在のライフスタイルに合わせるようなかたちで選ばれるようになった法要の形態で、火葬場から帰ってきた後に繰り上げで初七日法要を行います。そしてこの後に、本来ならば四十九日の忌明けに行われる精進落としもしてしまうのが一般的です。また、火葬場に行く前に初七日法要を行う「繰り込み初七日法要」というものもあります。
別日に行う初七日法要と繰り上げ初七日法要では、さまざまな点で違いがあります。場所選びもスケジュール調整もお布施も、後者の方がはるかに難易度が低いといえます。特段のこだわりがない限りは、この方法を選んだ方がよいでしょう。
繰り上げ初七日法要に参加する場合は、香典を包む必要があります。表書きは「御霊前」、水引は黒白もしくは双銀の結び切りのものを選ぶようにしてください。
繰り上げ法要は、忙しい現代人にフィットするために作られたやり方です。親族に対する負担が軽減されるためという理由で、これを選ぶ人もいます。
ただ、別日で初七日法要を行うこともできますし、またそもそも法要をしないとする選択肢も選ぶことはできます。
自分が喪家側となった場合は、葬儀会社に明確に希望を伝えて「こういう葬儀(法要)を希望している」としっかり伝える必要があります。
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
初七日法要は、亡くなった日を1日目とし、7日後に行う法要のことです。通夜、葬儀・告別式が行われるのが2~5日後になることが多いことから、改めて7日後に集まらなくても一緒に済ませられるのでは、という発想で、高度成長期時代にかけて繰り上げ初七日法要が広く認知されるようになってきました。今では、初七日法要を葬儀・告別式の式中に行ってしまう式中初七日法要(組み込み初七日法要)も急速に増えています。
ちなみにお釈迦様は、死後6日間は、原住民であるクシナーラーのマッラ族によって舞踊・歌謡・音楽・花輪・香料をもって尊び供養され、7日目に火葬されています。さらに火葬後7日間、公会堂に遺骨を置き、槍の垣と弓の柵で周囲を囲み、同様に舞踊・歌謡・音楽・花輪・香料をもって、供養されたと言われています。
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