神式の葬儀を徹底解説!何をするのか、持ちものなどを紹介
葬儀のかたちは実にさまざまで、とくに昨今ではあらゆるニーズにこたえるために多様になっています。
そして、それぞれの葬儀で求められるマナーは異なります。そのなかでも特によく取り上げられるのが、「宗教ごとの違い」でしょう。行き慣れている宗派では落ち着いて振る舞えるのに、初めて参列する宗派の葬儀だと戸惑ってしまうばかりではないでしょうか。
日本は仏教での葬儀が主流になっていますので、神式やキリスト教式の葬儀だと何を持っていくのか、焼香の代わりに何をするのかといったことがわからない人が多いでしょう。
今回は、仏教以外で日本になじみのある「神式の葬儀」について取り上げます。
初めて「神式の葬儀」に参列する人でも、この記事を読むことでどう振る舞えばよいのか落ち着いて行動することができるようになるでしょう。
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この記事の目次
神式の葬儀の特徴
神式の葬儀とは、神道の葬儀を指します。「神葬式(しんそうしき)」「神葬祭(しんそうさい)」とも呼ばれます。
もっとも大きな特徴は、「榊(さかき)を使うこと」「亡くなった方は、今後家を守るための神様となること」です(この2つについては後で詳しくお話しします)。仏教と似たところもありますが、さまざまな点で異なるため、混同しないように注意が必要です。
参列するときに覚えるべき神式の作法
神式の葬儀においては、「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」が行われます。また、数珠は使いません。装いは一般的な葬儀と同じですが、言葉使いなどに関しては仏教のときとは異なる言い回しをとることもあります。
玉串奉奠は、以下の手順で行います。
- 右手で上から根元を持ち、左手を葉の下に添えて受け取ります
- 祭壇の前で一礼をします
- 根元側が祭壇側に、葉が自分側に向くように右回りに回します
- 祭壇に置きます
- 二礼し、しのび手(音を出さずに拍手すること)で二拍手をし、一礼をします。
神式葬儀の式次第
まずは、神式の葬儀の式次第を見ていきましょう。なおここでは、「参列者」として参加する場合の流れについて紹介します。遺族側であるときは、通夜の前に「枕直しの儀」「納棺の儀」などが行われます。
通夜の流れ
- 参列者が会場内に着席します
- 宗教者(神職者)が入場してきます
- お祓いの儀式が行われます(「修祓の儀・しゅうばつのぎ」)
- おじぎをします
- 棺の近くにいた御霊を、(れいじ)に移し替える祀り事が行われます(「遷霊の儀・せんれいのぎ」)
- お供えをする儀式を行います(「献饌の儀・けんせんのぎ」)
- 玉串奉奠を行います。このときはしのび手(拍手はするが、音は立てない)をします
- この段階で撤饌の儀(てつせんのぎ)という、お供えものを一度下げる儀式が差し挟まれることもあります
- おじぎをします
- 宗教者が退室します
- 喪主からの挨拶があり、通夜の式が終わります。多くの場合、翌日の葬式の案内が行われます
- 通夜振る舞いが行われます
葬式・告別式の流れ
ここからは、葬式・告別式の流れについてみていきましょう。
- 宗教者が入場します
- お祓いの儀式が行われます
- おじぎをします
- お供えをする儀式を行います
- 故人の経歴などが読まれます(「祭詞奏上・さいしそうじょう」
- 玉串奉奠を行います。こ
- お供えものを下げます
- 宗教者が退室します
- 故人の棺などにお花を入れます
- 喪主からのあいさつが行われます
- 出棺に至ります
- 火葬場に到着し、火葬が済むまで待ちます。1~2時間程度でしょう。控え室で軽食を取りながら待ちます
- 収骨
- 火葬場を出発し、会場に戻るあるいは法要の会場に行きます。法要を行わない場合はここで解散となります。
- 霊祭を行います。かつては10日目に行うとされていた「十日祭」ですが、現在では葬儀当日に行うことが多くなっています
- 直会(なおらい)が行われます。仏教における「精進落とし」のようなものです。
故人と親しかったり、またご遺族から「ぜひ」と言われたりした場合は、ご遺族・ご親族と一緒に火葬場に向かうことになります。そうではない場合は解散となります。
ここでは神式の葬儀の基本の流れについて述べてきましたが、実際にはこれに沿わないかたちのものもあります。
たとえば遷霊の儀については「親族のみで行うのが一般的」と考える向きもありますし、「祭詞奏上は通夜のときに行われる。そして、通夜のあとに遷霊の儀が行われる」としているところもあります。
また、上記には加えませんでしたが、神式の葬儀の場合は式に先立ちお手水の儀(口や手を洗う)が入るのが正式です。ただ、現在は省略されることもよくあります。また、献饌の儀も省略される場合があります。
このように、神式の葬儀の在り方は、葬儀会社などによってかなり異なります。参列者として出る場合はスタッフの指示に従っていればよいのですが、遺族側になった場合は、事前にどのような流れで式が行われるのかをしっかりと確認しておくとよいでしょう。
さらに詳しい神式の葬儀について知りたい人は、「神式(神道)の葬式と宗教観がわかる!」の記事も参考にして下さい。
一般的な仏教の葬儀との違い
仏教の葬儀とは違いが大きい「神式の葬儀」ですが、それ以外にも多くのところで違いがあります。
たしかに仏教の葬儀と神式の葬儀では似通ったところがあるのも事実ですが、この「違い」を把握しておかなければ失礼を働いてしまうこともあります。このあたりを見ていきましょう。
仏教の場合は(浄土真宗は違いますが)、人間は生前の行いによって輪廻転生をして新しく生まれ変わるという死生観を持っています。しかし神式の場合は、「亡くなった方はとどまり続け、家を見守ってくださる」という死生観です。
このため、「御冥福をお祈りする」などの言い回しが使えないのです。
また、神式の葬儀の場合は、お数珠は使いません。これは仏教のときにのみ使うものだからです。ただ、「亡くなった方の家の宗教までは分からない」というケースは、そう少なくはありません。
この場合は、とりあえずお数珠を持っていき、神式の葬儀だということがわかったのならばカバンに入れたまま出さないようにすればよいでしょう。
もっとも大きな違いは、「焼香を行わない」ということでしょう。神式の葬儀の場合は玉串奉奠を行うことになるので、仏教ではおなじみの「焼香」という工程がありません。
加えて、会場にも違いがみられます。現在でこそ、仏教の葬儀でも神式の葬儀でも、民間の葬儀式場を利用することが多くなりましたが、仏教では菩提寺で葬儀を行うこともあります。しかし神式の葬儀の場合、神の住まいである神社では、葬儀を行うことがないのです。
神式の葬儀では、仏教の「戒名(かいみょう)にあたるものとして「諡(おくりな)」が付けられます。仏教においては明確に「戒名料」というものが設定されていると断言できるわけではありませんが、寺院や仏教への寄与度(事実上の「戒名料」などの金銭的寄与を含む)によって戒名が変わってきます。しかし、神式の葬儀の場合は、(おくりな)を付けるときには特に金銭的な負担は生じません。
もっとも、「それならば神式の葬儀の方が仏教の葬儀より安いのだ」といえるかというと、そうではありません。規模によって異なるのですが、それほど大きな違いはないと見るべきでしょう。
焼香の代わりに行う玉串奉奠(たまぐしほうてん)について
仏教の「(ご)焼香」に代わるものとして、「玉串奉奠」があります。これは神式の葬儀を象徴する儀式だといえます。
このときに使うのは「榊」です。両手(右手が上、左手が下)で受け取り、祭壇の前に置くものです。まず一例をして玉串を時計回りに回して、根元側が祭壇側に葉っぱが自分の側に向くようにして置くようにします。置いた後は、二礼をしてしのび手で二拍打って、一礼をして下がります。
現在はさまざまな葬儀のかたちがありますし、神式の葬儀のやり方や流れは葬儀式場によって変わります。しかしこの「玉串奉奠」は、神式の葬儀では必ず見られるものでしょう。
不祝儀袋の選び方と表書き
神式の場合はお渡しする不祝儀袋も仏教のものとは異なります。これについて見ていきましょう。
水引は結び切りのものを選びます。色は、地域によって多少異なることもありますが、黒白のもの、あるいは双銀のものが一般的です。このあたりは仏式と変わりません。
もっとも大切なのは、表書きです。
不祝儀袋はときに「香典袋」と呼ばれることもありますが、「御香典」と書くのは仏教だけです。また、「御仏前」も仏教のみの表書きです。
神式の葬儀の場合は、「御玉串料」「御榊料」とします。
相手の宗教が分からないときは、「御霊前」とするとよいでしょう。この言い回しは、仏教でもキリスト教でも神式でも使えます。
また、神式の葬儀の場合は、花や十字架が印刷された不祝儀袋は避けます。「十字架」は見た目ですぐにキリスト教用だとわかるので迷いませんが、気を付けたいのが「花」の方です。ハスの花が印刷されたものは仏教のものですし、百合の花が印刷されたものはキリスト教のものです。間違えないようにしてください。
なお、正式には、不祝儀袋は薄墨の筆で名前などを書きます。しかし現在は筆ペンなどで書く人も多くなっています。
弔電やお供え物をおくるには
お供え物は、必ずご遺族の意向を踏まえて贈ります。ただ問い合わせは、ご遺族に直接行うのではなく、葬儀会社に対して行うのが一般的なマナーです。葬儀を控えているご遺族は精神的なダメージも大きいですし、非常に忙しいもの。お気持ちとお手を煩わせることがないようにします。
神式の場合、お供物としてよく選ばれるのは、果物やお菓子、お酒などです。「海産物を贈るのもよい」とされていますが、これはかなり葬儀式場を選びます。基本的には果物やお菓子を選ぶとよいでしょう。また、これならばお相手の宗教が仏式であっても贈ることができます。
宗教ごとによって望ましいものが変わってくるので、葬儀社に電話をしたときに、このあたりも確かめておくとよいでしょう。ご遺族ではなく葬儀会社に電話するのは、ご遺族のお気持ちとお手を煩わせる心配がないだけでなく、ご遺族には聞きにくいところを確認できるというメリットもあります。
ちなみに、相場は15000円~20000円程度です。
弔電を送る際は、言葉遣いに注意が必要です。仏教のお式でよく使われる「御冥福をお祈りします」という文章は使えません。
「心からお悔み申し上げます」
「御生前のご厚情に感謝申し上げますとともに、心からお悔み申し上げます」
「在りし日のお姿をしのびつつ、哀悼の意を表します」
などがよいでしょう。
参列するときのマナー
ここからは、参列するときのマナーについて細かく見ていきます。
服装
服装に関しては、一般的な葬儀と同じです。男性ならばブラックスーツもしくはダークスーツを着ます。ネクタイは黒色を選びましょう。女性ならば、黒のアンサンブルやスーツを使いましょう。
いずれの場合でも、ストッキング(靴下)は黒色を選び、靴やカバンは金具のついていないものを使用。
着物の場合は、地味な無地に黒い帯を合わせるとよいでしょう。なお、洋装も和装も、「格」という意味では変わりません。
その他身だしなみ
男性の場合、ネクタイピンやカフスボタンは原則として着けません。「真珠ならば構わない」とされることもありますが、「着けていないことがマナー違反になる」ということはないので避けた方が無難でしょう。
女性の場合も同じことがいえます。女性の場合は一連の真珠のネックレスは「涙の粒を表す」ということで容認されますが、着けない方が無難でしょう。また、着ける際には、必ず一連のものを選びます。二連のものは「悲しみが重なる」という意味になりますから、葬儀の場面においては禁忌です。
髪の毛が長い場合は、黒のバレッタなどでまとめます。光沢のある生地、飾りが大きすぎるもの、ビジューなどがついたもの、華やかなカラーのものは避け、黒色の地味なものを選びましょう。
化粧は薄化粧にします。「つけていないと病人に見えるレベルで血色が悪い」などの特別な場合は除き、チークはつけません。また、ラメの入っている化粧品も避けます。
口紅は「淡い色合いのものをひくのがよい」とされていますが、「悲しみが強く、紅もひけません」ということであえて口紅をひかない人もいます。
お数珠は使用しません。ただ、「宗教が分からない」ということであればカバンの中に入れて持っていくといいでしょう。神式の葬儀だということがわかったのならばカバンの中に入れたままにしておく、といった対応をとればよいでしょう。
あいさつ・言葉遣い
「ご冥福をお祈りします」という言い回しが使えないことに、まずは注意してください。この言葉は比較的使いがちなので、意識して避けるようにします。神式の死生観においては、「冥福」という考えがないのでこの言い回しはとらないのです。
また、「重ね重ね」「たびたび」などのように、重ね言葉となるような表現は避けます。「●●さまには重ね重ねお世話になりまして……」などの言い回しは、ついしてしまいがちなので注意が必要です。
「お悔やみ申し上げます」などのような言い回しはしても構いません。もっとも、ご遺族の方は忙しく、精神的にも余裕がないので、長い言葉はかけない方がよいでしょう。「言ってはいけない言葉」だけを押さえて、あとは簡潔に哀悼の意を示すようにします。ただ、ご遺族の方から「話を聞いてほしい」と言われた場合などは、時間を割いてお話するようにしてください。
まとめ
神式の葬儀では、「亡くなった方は家を守ってくださる」という死生観のもと、キリスト教や仏教には見られない通夜・葬儀を行っていくことになります。
ただ、その流れは葬儀会社ごとによって大きく異なります。遺族側として葬儀を出す場合は、事前に流れについて聞いておきましょう。
参列者の立場で特に注意したいのは、仏教との違いです。
仏教との違いについて
- 「御冥福をお祈りします」とは言わない
- 焼香の代わりに玉串奉奠が行われる
- 神式の葬儀では榊が用いられる
- 不祝儀袋は「御香典」「御仏前」ではなくて「御霊前」「御玉串料」「御榊料」とする
- 花が印刷されている不祝儀袋は使わない
- 数珠は使わない
などの違いがありますから、しっかりと押さえておきたいものです。
供物は、ご遺族側のご意向を踏まえて贈ります。現在は、お菓子や果物を贈るのが一般的です。
葬儀会社に電話をして、ご意向を確かめましょう。このときに「どの宗教のお式か」を確認しておけば、数珠の要不要などについても知ることができます。
神道の葬儀を知ってお墓について知りたいなと思った人は、「神道のお墓について解説!仏教のお墓との違いや納骨までの流れがわかる」の記事もぜひ参考にしてください。
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
神葬祭は、聞きなれない言葉や難解な感じが多く、また仏式葬儀に慣れている日本人にとっては慣れない作法が多いと感じるかもしれません。
しかし、基本は七五三や結婚式と同様で、お祓い→献饌(お供え)→儀式→撤饌(お供え下げる)のように流れになります。
拝礼の際に注意したいのは、神道の場合、神様の正面を正中といい通り道になりますので、拝礼の際は中心線はさけて前に進むべきとされています。
しかし構造によっては真ん中が正中にあたるとは限りませんので、その時は神職に相談してみましょう。
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- お墓選びで複雑な手順を簡単に詳しく理解したい
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