合同葬ってどんなもの?合同葬の考え方と注意点、ほかの葬式との違いについて
この記事ではこのような疑問を解消!
- 「合同葬ってあまり聞きなれない言葉だけど、どんな意味があるの?」
- 「合同葬とほかの葬式とはどんな違いがあるの?」
- 「合同葬に参列する予定があるけど、何か準備物はある?」
- 「合同葬における費用は、だれが負担するの?」
葬式のかたちが多様化していった今、「だれが、どのように葬式を行うか」でまったく異なった葬式ができるようになっています。
自分自身や遺族の気持ちを最大限反映した葬式ができるようになったのは大きな利点です。しかし同時に、あまりにも多くの選択肢があるため、その選択肢の一つひとつの意味に関してはよく理解できない人も多いものです。
今回はそんな単語のなかから、「合同葬(ごうどうそう)」をとりあげます。
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この記事の目次
合同葬とは会社(組織)と遺族が一緒に開催する葬式
合同葬とは、一言で言うのであれば、「会社が行う葬式と一般葬(個人葬)を一緒に行うこと」です。
そのため、合同葬を理解するために「会社が行う葬式」と「一般葬」について知らなければなりません。
会社が行う葬式というのは、会社に対して特別な功績を残した人や業界全体に対して大きな影響を与えた人、また殉職者などに対して会社が主体となって行う葬式です。「社葬」と呼ばれる場合は、特に、「火葬などが終わって、落ち着いたときに行われるもの」を指します。
対して一般葬とは、その名前の通り、ごく一般的な葬式をいいます。ご遺族が中心となって行うもので、費用もお見送りもご遺族が担当します。会社で行う葬式と比較・区別して語られる場合は、「個人葬」と呼ばれることもあります。
合同葬は、会社が主催して行う葬式と個人で行う葬式を一緒にして行うものです。そのため、ご遺族と会社側が綿密な打ち合わせをし、両者で協力して葬式を組み立てていくことになります。
また、社葬は火葬などが終わった後に行われることが多いのですが、合同葬の場合は火葬を行う前の段階に執り行われることが多いといえます。
会社(組織)内で葬儀実行委員を立てて進める
合同葬は、会社で行う葬式と一般的な葬式の2つの間をとって行うものです。社葬の場合は葬儀実行委員長が立ち、ご遺族の代表として喪主が立ちます。
また、一般葬の場合は喪主が中心となります。一般葬の場合でも近所の人などが葬儀実行委員を務める場合もありますが、体感として、現在はこのような「一般葬のときの葬儀実行委員」は少なくなっていると思われます。
では、合同葬の場合はどうなのでしょうか。
合同葬の場合も、社葬と同じく、ご遺族のなかから喪主が、会社組織のなかから葬儀実行委員が立つことになります。
「どこまでを葬儀実行委員長が決めて、どこまでを喪主が決めるか」「費用の負担は、葬儀実行委員側(会社側)が背負うのか、それとも遺族側が背負うのか」についてはそれぞれの合同葬によって違いが生じます。
ただ、合同葬の場合は特に、会社組織から選出される葬儀実行委員長と喪主の話し合いが重要になってきます。社葬においては、「ご遺族(喪主側)の希望を聞きつつも、葬式委員長がまとめていく」というかたちが比較的多くみられますし、一般葬の場合は当然喪主が決めていくことになります。
しかし、会社側と喪主側で一緒にやっていくことになる合同葬の場合は、どちらの意見も尊重しなければなりません。そのため、話し合いがうまく、威圧感を与えない人を葬式委員長にしなければなりません。
なお、葬式委員は複数人選ばれることもあります。
次の項目からは、実際の合同葬の流れについて見ていきましょう。
合同葬の主な流れは一般的な葬式と同じ
ここからは、合同葬の主な流れについてみていきましょう。
なお、注意してほしいのは、「合同葬は、火葬前から会社側が葬式に関係している」という点です。そのため、合同葬における葬式の流れは、一般葬のときとほぼ同じ流れになります。社葬の場合は火葬が終わってしばらくしてから行われることが多いのですが、合同葬では一般葬のやり方にのっとります。
なお、下記の記述は、特段の事情がない限りは仏教式の葬式を想定しています。
通夜(1時間~3時間程度)
まず通夜が行われます。通夜の場合は、お願いする宗教者の数が多くなる傾向にあります。葬式の規模が大きければ大きい程、僧侶の数は増える傾向にあるのです。
合同葬の場合は弔問客が非常に多いので、焼香が終わるまでに長い時間がかかることもあります。
座る場所(席)について
合同葬の場合、「どこに、だれを座ってもらうか」「関係性の深い順番通りにイスを並べる」ことも考えなければなりません。特に重要な取引先がいるのであれば、しっかり確認したいものです。
なお、合同葬の場合は、断らない限りは供物・供花が送られてくるケースが非常に多いでしょう。その場合、どこにだれの供物・供花を置くかも問題になってきます。これは一般葬のときでも問題になりますが、合同葬の場合はより問題になりやすいポイントです。
挨拶について
もうひとつ考えておかなければならないのが、「挨拶」です。一般葬の場合は喪主がこれを担当しますが、合同葬の場合は葬式委員長も挨拶を行わなければならないこともあります。忌み言葉を避けることなどに注意し、故人を尊重する言葉を述べるようにしましょう。
また、合同葬を行う場合は、事前にリハーサルが行われる場合が多いといえます。一般葬の場合でも行われないわけではありませんが、合同葬は失敗が許されないこと、大規模なものになりやすいことから、厚く行われることが多いかもしれません。
通夜は1時間~3時間程度でしょう。参列者が多い場合は焼香にも時間がかかりますから、長い時間がかかります。なお、通夜は亡くなった翌日の夜か翌々日の夜に行われることが多いといえます。年始にかかる場合は火葬場の休みも考慮して少し遅くなることもありますが、それでも、ご逝去後1週間以内に行われるのが普通です。
通夜ぶるまい(1時間~2時間程度)
通夜の後には通夜ぶるまいが行われます。通夜ぶるまいとは、通夜が終わった後に行われるもので、弔問客に対するお礼と故人を悼む目的で行われるものです。故人の思い出話などを中心とする席であり、飲食物やお酒が出されます。
なお仏教の葬式の場合はお酒が出されますが、キリスト教などの場合にはお酒は避けます(また、原則論として、キリスト教には本来は通夜ぶるまいの考え方はあまりありません)。生臭類(刺身やお肉など)が出されるかどうかには地域差・ご遺族の考え方によって差があります。
通夜ぶるまいが行われる際は、参列者は一声かけられたなら特段の事情がない限りは参加するようにします。なお、車で来ている場合などはお酒を断っても問題はありません。
通夜ぶるまいの時間は明確には決められていません。2時間程度が多いかと思われます。通夜終了後に行われるため、通夜ぶるまいが終わる時間が23時過ぎになる可能性もあります。弔問客として出る場合は、ご遺族の引き留めがない限りはある程度のところで切り上げるのが正解です。
葬式・告別式(1時間~3時間程度、規模によって異なる)
特段の事情がない限り、通夜の翌日には葬式・告別式が行われます。葬式・告別式のときも、基本の流れは通夜と変わりません。
なお、昔は「通夜は故人と親しい人が出る、葬式・告別式はそれほど関係が密ではない人が出るもの」とされていましたが、現在はこのような考え方はあまりしません。
むしろ、合同葬の場合は「仕事の一環」として出る人も多いため、平日の業務にかかるであろう可能性が高い葬式・告別式よりも通夜の方が参加しやすい可能性もあります。
通夜も葬式・告別式も、一般葬よりもご僧侶の数が多くなる傾向にあります。絶対ではありませんが、葬儀の規模が大きければ大きいほど、ご僧侶の数も増えることが多いのです。そのため、お布施も人数分かかります。
告別式は、宗教的儀式を含まないお別れの場です。ただこのあたりに関しては葬儀会社によって考え方に違いがあることも珍しくありません。「棺にお花を入れるのはご遺族だけが基本」としているところもありますが、「できるだけ多くの人に入れてもらいたいので、一人ひとりにお花を渡していく」というところもあります。
「会社関係だけでの繋がりだった」という場合も、葬儀会社からの案内があったのならば従うのがよいでしょう。
葬式・告別式にかかる時間は、1時間~3時間程度でしょう。ただし非常に大規模なものになるとこの限りではありません。
出棺(5分~15分程度)
葬儀会社の人間がストレッチャーでお棺を霊柩車に運ぶので(ただしご遺族が特にと希望した場合は、ご親族の男性陣でお棺を運ぶ場合もあります)、それを待ちます。このときにご遺族から簡単なご挨拶が行われる場合もあります。
ご遺族が車に乗り込み、弔問客は手を合わせてそれをお見送りします。基本的にはここで弔問客は解散となります。
出棺自体にかかる時間は決して長くはありません。5分、長くても15分程度です。
火葬(45分~2時間程度)
火葬場で焼き上がりを待ちます。火葬場での焼き上がりに関しては、合同葬でも一般葬でも何も変わりません。45分~2時間程度でしょう。故人の体格などによっても多少変わってきます。
焼き上がりは、控室で軽い飲食物をとりながら待つのが普通です。なお現在は控室を使わずにロビーで待つプランを用意している火葬場もあります。
火葬が終わったら収骨をしていきます。収骨とは、お骨を回収して骨壺に入れる過程です。
繰り上げ初七日法要~精進落とし
収骨が終わったら、その後は繰り上げ初七日法要~精進落としの席が設けられる場合が多いといえます。一般葬のなかでも家族葬の場合は精進落としの席が省かれる場合もありますが、合同葬の場合は規模も大きいので行われることが多いかと思われます。
繰り上げ初七日法要とは、本来は7日目に行うべき法要を火葬が終わったその日に行うことをいいます。現在は忙しい人・遠くからきている人も多く、火葬が終わったタイミングで行われることが多いといえます。
精進落としは、本来は四十九日目に行われるべきものです。日常の生活に戻っていくための区切りとして、またご僧侶をねぎらうための席として用意されていました。しかし現在は、これも火葬した日に行われることが多くなりました。
精進落としの席で生臭物が出るかどうかは、ご遺族の意向で分かれます。なお、本来は親しい人・近しい人だけで開催される精進落としの席ですが、合同葬の場合は社内の人間が参加することも多いかと思われます。この場合、社内の人間の数が多ければ経費として処理することが可能です。
精進落としの席が終わったら解散となりますが、合同葬の場合は特に「会葬礼状の手配」「付き合いのある各機関(取引先など)への挨拶」が求められます。
また、経費の処理を行ったり、故人の退職功労金の処理をしたりといった残務処理を行っていく必要があります。
このような流れで合同葬は行われていきます。ただ、合同葬を行う「タイミング」はケースによって大きく異なるため、次の項目からはそのあたりを解説していきます。
合同葬を行うタイミングはケースによって異なる
合同葬と社葬のもっとも大きな違いは、「行うタイミング」にあります。
社葬は、故人が亡くなってから1週間~2か月のタイミングで、かつ繁忙期や決済時期ではないタイミングで行われることが多いです。そのため「社葬」と「密葬(ご遺族だけで送る)」に分けられることが多いのです。
合同葬の場合は、「火葬も一緒に行う」「通夜・葬式告別式をご遺族と会社で合同で行う」と考えます。よって特段の事情がない限りは、一般葬と同じタイミングで、合同で行われます。
つまり亡くなってから1日~1週間以内に通夜が行われ、通夜の後には葬式・告別式が行われ、その後に火葬が行われるわけです。この点で、合同葬と社葬は異なります。
詳しく解説していきましょう。
「社葬」を、単なる「会社組織が行う葬送儀礼」ととらえる方法もありますが、一般的には社葬とは「ご遺族の許可をとって会社が行う葬送儀礼ではあるが、社内外への告知と会社の盤石さをアピールするための機会」として(より狭義に)定義づけられています。
このようなスタンスを取る場合、社葬が行われるタイミングは、
- 業界全体にある程度時間的余裕がある時期で
- ご遺族と故人のお別れが十分に済んだ後
です。
合同葬の場合は、一般的な葬儀の形態に会社が関わる……というかたちに近いため、亡くなった後1週間以内(多くは3日以内)のタイミングで行われます。
ただ、合同葬も社葬も、「会社が関わって行う、大規模な葬儀」であることには変わりありません。そのため、専門的な情報を扱うサイトであっても、合同葬と社葬を並列表記していることもあります。
現実の現場においては、「一緒に火葬まで行う合同葬か」「それとも、ご遺族でのお別れが終わってからしばらく経った後に行われる社葬か」を、しっかりと区別して伝えていった方が混乱は少ないといえるでしょう。
なお、どちらの場合であっても、ご遺族と会社側が連携して事を進めていく必要があります。
このようにして進められていく合同葬ですが、大切なのは流れやタイミングだけではありません。葬儀に関わる「宗教」もまた、合同葬を考えるうえで重要な要素となります。
合同葬と宗教の関係
上記では「仏教のやり方での合同葬」について取り上げてきましたが、これには大きな理由があります。
現在、狭義の意味での「社葬」の場合は、宗教色を廃して行われるやり方も増えて行っています。「お別れ会」などのような名目で行われるものであり、ホテルなどで行われることもあるものです。無宗教葬とも呼ばれるものですが、会社側の意向とご遺族の気持ちを考えてこのようにするケースもあります。
合同葬の場合についてはどうでしょうか。
合同葬の場合は、「会社側とご遺族側が手を取り合って行う葬儀」であり、後日に行われる「お別れ会」とはまた別の意味を持つことになります。
このため、たとえ会社側が「宗教色のある葬儀は、各方面に気を使うので行いたくない」「無宗教で葬儀を行いたい」と希望した場合であっても、ご遺族が「本人の(あるいは喪家の)信仰していた宗教で行いたい」という場合はそれが尊重される傾向にあります。
特に仏教や神式などのように日本でも比較的なじみのある宗教の場合は、ご遺族の意向に沿うことになるケースが多いといえるでしょう。
次の項目からは、このあたりも踏まえて、「合同葬と社葬、合同葬と一般葬の違い」について解説していきます。
そのうちのひとつとして、「喪主」「施主」「葬儀実行委員」の3つの役割をとりあげていきましょう。
「喪主」「施主」「葬儀実行委員」の役割ついて
合同葬とは、ご遺族と会社側が提携して行っていくものです。そのため、ほかの葬儀においては混同して使われることになる単語も、合同葬においては、別の意味で使われることもあります。
- 喪主
- 施主
- 葬儀実行委員(長)
たとえば、下記の3つの単語を耳にすることが多いといえます。それぞれの違いについて簡単に解説していきます。
喪主
葬儀を行うときの当主をいいます。特段の事情がない限り、故人の配偶者もしくは子ども(特に長子もしくは長男が多い。まれにその配偶者)が務めるケースが多いかと思われます。
ご遺族のなかでもっとも縁の深かった人が務め、「どの宗教で葬儀を行うか」「親戚筋はどこまで呼ぶか」などを決めていきます。なお、一般葬の場合は、葬儀の規模なども決めていきます。
施主
その葬儀にかかった費用を支払う人・組織をいいます。一般葬の場合は、特別な事情がない限りは喪主=施主ですが、合同葬の場合は会社側もお金を支払うことになるので会社側も「施主」となります。なお、社葬の場合は会社側がほぼすべてのお金を払うことになるので、「施主=会社」となるのが原則です。
葬儀実行委員(長)
葬儀の規模ややり方を決めていったり、葬儀全般のお手伝いをしたりする役割をいいます。特に葬儀実行委員長は、葬儀自体の進行に深く関わります。また、ご遺族との打ち合わせや会社・葬祭業者との折衝役も務めることになります。
かつては一般葬の場合でも近所の人などが務めましたが、現在は社葬や合同葬などで見かけることが多くなりました。
合同葬の場合は、会社の事務部門の上役などが務めることが多いといえます。
合同葬においては、喪主と葬儀委員長が中心となって葬儀のやり方を決めていきます。そのため分からないことなどがあった場合は、自分が遺族側ならば喪主に、会社側ならば葬儀実行委員(長)に聞くとよいでしょう。葬儀全般に関する質問は、葬儀会社の人間に投げると手間がありません。
社葬との違いについてはある程度見てきましたが、次の項目からは混同しやすいほかの葬儀との違いについて解説していきます。
合同葬とほかの葬式との違い
合同葬と混同しやすいものの違いをみていきましょう。
友人葬
「一緒に会社を作って盛り立ててきた人の葬儀を、会社と、また親しく付き合っていたご遺族と挙げるわけだから『友人葬』といえるのではないか」と考える人もいるかもしれません。
しかし「友人葬」というのは創価学会の葬儀を指す言葉であり、合同葬とは明確に区別されます。ただ、「合同葬であり、友人葬である」ということはありうるかもしれません。
社葬
社葬と合同葬は、「会社が関わる葬儀」という点では同じです。しかし社葬の場合は多くは、ご遺族でのお別れ(密葬)が終わった後に行われるものであり、すでにお骨の状態になった故人に祈りを捧げます。
また社葬の場合は、会社側が中心となって行う葬儀であるのが特徴です。社葬では宗教的儀式を排除するやり方もよく見られます。
お別れ会(偲ぶ会)
「社葬=お別れ会(偲ぶ会)」ととらえる向きもありますが、「社葬は大々的に知らせるものであり、お別れ会は非公式に行うものだ」と考える向きもあります。この説にのっとるなら、合同葬とお別れ会の違いは、
- 行うタイミング(お別れ会はお骨になった状態で行う。合同葬は火葬前)
- 告知の範囲(合同葬は大々的に告知される。お別れ会は非公式が多い)
- 宗教的な違い(合同葬はご遺族の意志を優先。お別れ会は宗教に囚われないことも多い)
といえるでしょう。
このように、合同葬とほかの葬儀とではさまざまな違いがあります。違いがあるということは、また違ったメリット・デメリットが存在するということでもあります。
次からはそれを解説します。
合同葬を開催する際に気をつけること(デメリット)
合同葬を行うかどうかの決定は慎重に行わなければなりません。さまざまなデメリットもあることだからです。
その1:ゆっくりとお別れをすることが難しくなることもある
その2:会社側も短い期間での準備が必要となる
その3:参列者に配慮する必要もある
デメリットその1:ゆっくりとお別れをすることが難しくなることもある
落ち着いた頃に行われる「社葬」とも、遺族だけで見送ることのできる「家族葬」とも、多くの人が来る可能性があるものの合同葬よりも規模が小さくなりがちな「一般葬」とも、合同葬は異なります。非常に多くの社内外の人が弔問に訪れることになりますし、葬儀自体も公的な性格を強く持つものとなります。
喪主は会社側との話し合いが必須となりますし、ご遺族も弔問客や会社の人に挨拶をしないわけにはいきません。このため、ご遺族の時間が割かれ、ゆっくりとお別れをすることが難しくなるケースもあります。
デメリットその2:会社側も短い期間での準備が必要となる
合同葬の場合、社葬とは異なり会社側にも時間的な余裕がありません。ご遺体の状態を考えると、どれだけ遅くても1週間以内には合同葬を行わなければなりません(特段の事情がない場合は、1~2日以内でしょう)。
その間に、「合同葬を行うかどうか」「ご遺族へのご連絡」「告知」「通夜や葬式告別式の規模を決めること」などをやっていかなければなりません。また、合同葬は「会社として執り行うもの」でもありますから、失敗が許されません。
このように慌ただしいなかでさまざまなことを決め、またそれに間違いがないようにしなければならないため、会社側にも相応の知識と対応力が求められます。
デメリットその3:参列者に配慮する必要もある
合同葬では、参列者の負担も考える必要があります。
公的な性質を持つことにもなる合同葬の場合、供物・供花の置き方にも配慮が必要ですし、弔辞を依頼するのであれば頼む人の見極めも必要です。また、どの弔電を紹介するかも、一般葬以上にきちんと精査しなければなりません。
このように「喪主・施主側が参列者に配慮しなければならない」いう問題もありますが、参列者側も「拘束時間が長くなる傾向にあること」「失礼なことをした場合、それは自分だけの問題にとどまらず、自社への評価にもつながること」を意識しなければなりません。そのため、参列者にも相応の知識と振る舞いが求められます。
合同葬はたしかに多くのメリットを含むやり方ではありますが、さまざまなデメリットや注意点を持っているものだということも忘れてはいけません。
では、合同葬のメリットとは何なのでしょうか。
合同葬を開催するメリット
数多くのデメリットもある合同葬ですが、当然メリットもあります。それについて見ていきましょう。
メリットその1:会社関係の人でもお顔を見てお別れができる
現在は家族葬も一般的になっているため、「お別れをしたかったのにお顔を見ることができなかった」「会社関係の付き合いだったが、親しく付き合っていた。しかし家族葬には呼ばれなかった」「会社関係で知り合った人間なので、葬儀の案内を受け取れなかった」などのような状況に陥る人もいます。
しかしながら、合同葬の場合は社内外の人間でも、故人のお顔を見てお別れができます。社葬やお別れ会の場合は故人がすでにお骨になっていることが基本ですから、このような「お顔を見てのお別れ」が難しくなります。
メリットその2:時間的な負担が軽減される
合同葬は、たしかに慌ただしいなかでご遺族と会社側と葬儀会社が打ち合わせをして決めていかなければならないというデメリットがあります。また、参列者側も拘束時間が長くなります。
しかしながら、「初めに密葬を行って、その後に社葬を行う」とする場合に比べて、ご遺族の時間的な負担は少なくなります。また、「個人レベルで親しく付き合っていた」という人の場合は、「ご遺族が行う一般葬にも参加して、かつ社葬にも参加すること」にもなりかねません。
合同葬はご遺族での葬儀と会社での葬儀を一度にやれるものですから、時間的な負担は少なくなります。
メリットその3:費用の軽減が可能
合同葬は、「費用が浮く」ともいわれています。これには2通りの考え方があります。
- ご遺族の葬祭費用が軽減される
- 会社側は税制面での負担が軽減される
会社側もお金を出してくれますから、当然ご遺族の経済的負担は少なくなります。「どこまでを会社が負担するか」は考え方によって異なりますが、それでも、自分達だけで同規模の葬儀を行うよりも負担は軽くなるでしょう。
また、会社側も経費として葬儀費用を落とすことができること、不祝儀をご遺族に回した場合は課税対象とはならないことなどのメリットがあります。
合同葬にするかどうかは、メリットとデメリットをはかりにかけて選んでいく姿勢も必要です。
なお、合同葬は多くの人にとって「やり慣れていないもの」です。「だれが何の準備をするのか」をしっかりと確認しておくこともとても重要です。
【立場別】合同葬を開催するまでの準備項目
合同葬を行う場合の役割分担ですが、これは個々の葬儀によって異なります。ただ、ざっくりと説明するのであれば、以下のようになるでしょう。
会社(組織)側が準備する項目
- 規模や会場、日時をご遺族とすりあわせて決定
- 社内外への連絡
- 費用分担の決定
- 葬儀委員や葬儀委員長、それ以外の担当者の決定
- 社内参列者はだれにするかを決定
- 弔辞の手配があれば行う
- 弔問客のリストの作成
- 供物や供花を受け取るかどうか、受け取る場合はその受付
- 車両の手配など
- 当日の案内や受付
- 後日の挨拶
- 後日の記録作成~保管
- 費用の支払い
遺族側が準備する項目
- 規模や会場、日時を会社側とすりあわせて決定
- 親戚筋やプライベート方面の連絡
- 費用分担の決定(会社と話し合う)
- 宗教や宗派及び菩提寺の確認と連絡
- 遺影にするための写真の選定
- 故人の好みに沿う式を作る場合は音楽や花の希望を出す
- 供物や供花を受け取るかどうかの決定~会社との話し合い
- 希望の葬儀会社などがある場合は会社と共有
- 当日の案内や受付の手配(※「町内会用の受付は、会社受付とは別に設ける」などの場合)
- 精進落とし~火葬の参加者の話し合いや決定~共有
- 後日の挨拶
これらのなかには、「どちらがやるか」があいまいなものもあります。また、香典返し(「香典」は通常は仏教の葬送儀礼に用いられる単語ですが、ほかの宗教に合致するものがないためこの言い方が一般的に使われます)の手配はどうするかなど、細かいところも煮詰めていく必要があります。
葬儀を行ううえでは、「だれがどのようにいくらの費用を負担するか」をみることも必要です。これについても説明していきましょう。
合同葬の費用負担割合
葬儀にまつわる「決めるべきこと」のひとつに、「費用の問題」があります。合同葬は、社葬(会社が費用を負担する)とも一般葬(喪家が費用を負担する)とは違い、会社と喪家がお金と力を合わせて行っていくものです。そのため、葬儀費用の割合負担も変わってきます。
合同葬の費用はだれが出す?~会社負担もあれば遺族負担もある
合同葬の場合、会社が負担する部分もあれば遺族が負担する部分もあります。「どこからどうまでを会社が負担し、どこからどこまでを遺族が負担するのか」は、ある程度自由に決めることができます。
ただ、ざっくりわけると以下のようなかたちになるでしょう。
会社(組織)が負担する項目
- 会社人としての故人をたたえるためのメモリアルムービー作成費用や、メモリアルコーナーの設置費用
- 人件費
- 会場の使用料や設備費用、会場を飾るための費用など
- 案内状などの印刷費用
- 訃報を掲載するための費用
- 読経にかかるお布施
遺族が負担する項目
- 飲食費用(通夜ぶるまいや精進落としの時の費用)
- 霊柩車やハイヤー利用の車両費用
- 納棺にかかる費用
- 返礼品や香典返しの費用
- 火葬や、火葬を行うときにかかる待合室利用料金や火葬施設での飲食費用
- 必要な場合はエンバーミングの費用
- 戒名にかかるお布施
「読経にかかるお布施」と「戒名にかかるお布施」は、通常は分けて考えることが難しいものです。特に「戒名料」については、「そのような名前の存在しない」と考える向きもあります。
ただ、法人税を考えるうえでは、「読経料金や謝礼は経費として認められるが、戒名料は認められない」という区切りがあるため、合同葬においては分けて考えられる場合があります。
なお、当然のことながら、お墓や仏壇にかかるお金は喪家が負担します。
もらった不祝儀は遺族のものとなることが多い
社葬の場合はもちろん合同葬でも、頂いた不祝儀は喪家のものとなることが多いといえます。会社がこれを受け取った場合は課税対象となるからです。合同葬において、「返礼品や香典返しは喪家が用意し、その費用も喪家が負担すること」が原則となっているのもこのあたりが関係しているのかもしれません。
合同葬はほかの葬儀とは異なるものです。参列者・遺族側・会社側に求められる姿勢や心構えをお教えします。
参列者に求められる姿勢
参列者として合同葬に参加する場合、故人と仕事上の付き合いがあった人ならば当然それにふさわしい立ち居振る舞いが求められます。特に、「この会社からはこの人を弔問客として出す」として選出された場合は、自分自身の対応が会社の評価に繋がると考えなければなりません。
重ね言葉や忌み言葉は避けます。また、執り行う会社組織やご遺族に対してだけでなく、周りの人全員に対しても丁寧に振る舞うようにしてください。ロビーなどで待っているときでも、故人のことを軽んじるような発言をしたり、葬儀費用がどれくらいかかるかを話題に出したりすることは避けるべきです。
遺族に求められる姿勢
合同葬は、「遺族への別れを告げる場所」であると同時に、公人としての故人に接する場面でもあります。故人に与えられた生前のご厚志に感謝し、敬意を払うようにします。
葬儀のことを決めていくときには、当然遺族側の気持ちが尊重されます。ただ、あまり無理を通すのはやめた方がよいでしょう。会社側と遺族側にあるのは「上下」の関係ではなく、「協力して亡き人を悼もう」という姿勢です。
会社側に求められる姿勢
会社側が一番に考えるべきは、ご遺族の心持ちです。合同葬であれ社葬であれ、喪家から「そっとしておいてほしい」「家族葬だけで済ませたい」という要望があったのなら、それに従うことを検討しましょう。
また何かを決めていくときにも、ご遺族の考え方を尊重する必要があります。特に宗教面に関しては、この姿勢が大事です。
会社側としては、葬儀委員長を立てて、葬儀が滞りなく行えるように注意します。合同葬の場合は公的な性格が非常に強いためそれにふさわしい振る舞いをすることも求められます。
不祝儀を受付で受け取ることも多いかと思われますが、これもきちんと記録し、ご遺族に渡しましょう。また、今後合同葬を行うときのために、記録と資料を作成しておくことも重要です。
最後に、合同葬をお願いする葬儀会社を選ぶポイントについて紹介していきます。
【要確認!】依頼する葬式会社を選ぶポイント
滞りなく合同葬を行うためには、葬儀会社の選定も非常に重要です。
合同葬の実績があるかどうか
合同葬は、それほど頻繁に行われる葬儀形態ではありません。「2年間勤めているが、一度も合同葬を行ったことがない」という人もいました。つまり、合同葬の経験を持っている葬儀会社ばかりではないということです。
会社側に合同葬の経験があるのならば資料やマニュアルもそろっているので行いやすいと思われますが、そうではない場合、「葬儀会社も合同葬をやったことがない、会社側も合同葬をやったことがない、ご遺族側にも経験がない(ご遺族が合同葬をやったことがある可能性は、葬儀会社や一般の会社が合同葬を行った確率よりもずっと少ないでしょう)」ということになります。
もちろん葬儀会社はきちんと調べたうえで合同葬をプロジュースしてくれることでしょうが、不安があるのは事実です。
合同葬は、社葬同様、ミスが許されないものでもあります。加えて、一般葬とは異なり調べてもなかなか情報が出てこない傾向にあるので、葬儀会社のアドバイスが非常に重要になってきます。
このため、合同葬の経験があり、かつ信頼のおける葬儀会社を選ぶことが重要です。
費用明細をしっかり出してくれるかどうか
合同葬では、その後の「費用清算」が少し厄介なものです。会社側が負担する金額もあれば、喪家側が負担する金額もあるからです。
そのため、単純に「総額」や「分野別の支出」だけをざっくり書いた見積書・請求書だけでなく、「何に、いくら使ったか」の詳細まで見積書・請求書を出してくれる葬儀会社を選ばなければなりません。
これは、葬儀会社の見積書・請求書のテンプレートに沿わない場合もあります。このため事前にしっかりと、「費用明細は、何にいくら使ったかまでをきちんと掲載してほしい。
ご遺族が負担する項目と会社が負担する項目があるので」と伝えることをおすすめします。
まとめ
合同葬とは、会社と遺族(喪家)が一緒になって行う葬儀をいいます。社葬とは異なり、一般的な葬儀が行われるタイミング(ご逝去後1日~3日後、遅くても1週間以内)に行われるもので、火葬も精進落としもこのタイミングで行われます。
合同葬の場合は、故人もしくはご遺族が進行する宗教で行われることがほとんどです。もちろん無宗教で行われることもありますが、会社側の意向よりもご遺族側の意見の方が反映されます。
合同葬にかかる費用は、会社側と喪家側で分担します。一般的に、葬儀にかかる大きな費用や訃報の告知にかかる費用は会社側が負担し、納棺やエンバーミング、香典返しなどの個人的な要素が強いものにかかる費用は喪家側が分担します。
しかしこれもひとつの目安にすぎず、実際には話し合いを経て決めていきます。ただ、読経などにかかるお布施は会社側が、戒名料(という言い方は好まれませんが)は喪家側が負担するかたちが一般的です。
また、お墓や仏壇にかかるお金は喪家側の負担となります。
このときにかかる費用は、会社組織の場合は「経費」というかたちで処理することができます。しかし頂いた不祝儀を会社側が受け取った場合は課税対象となることもあり、不祝儀は喪家側に渡されるのが普通です。
なお、このような仕組みがあるため、「葬儀の代表者である喪主は家族葬儀のお金を払う施主は遺族と会社、葬儀全般の進行を担当する葬儀委員長は会社(側の人間)」というように、役割が分けられることが多いといえます。
合同葬を行う場合には、
- ゆっくりとお別れをすることが難しくなることもある
- 会社側も短い期間での準備が必要となる
- 参列者に配慮する必要もある
というデメリットがあります。その一方で、
- 会社関係の人でもお顔を見てお別れができる
- 時間的な負担が軽減される
- 費用の軽減が可能
というメリットもあります。合同葬を行いたいと会社側が考えた場合、このことも踏まえて喪家側も取り組まなければなりません。
合同葬を行う場合は、参列者側には会社の代表者としての姿勢が、遺族には公人の遺族としての立ち居振る舞いが、会社側にはご遺族への配慮と参列者への礼儀正しさが求められることになります。
合同葬はあまり見られない葬儀のかたちです。そのため、ほとんど手掛けたことのない葬儀会社もあります。しかし合同葬はその特性上、特に失敗の許されない葬儀だといえます。このため、合同葬を考えているのであれば、合同葬の経験のある葬儀会社を選ぶべきです。
また、「費用を分担すること」が前提となるため、「どこに、いくらかかったか」をしっかりと示した見積書・請求書を出してくれる業者でなければなりません。
多くの人に見送られることになる「合同葬」ですが、これは「社葬」とも「個人葬」ともまた違う性質を持つものです。
- 行うタイミング
- 弔問客
- 役割
- 宗教
- 代表者にだれを選ぶか
- 費用を払う人間はだれか
などに違いがみられます。このことを、会社側も遺族側も葬儀業者側もしっかりと理解したうえで、合同葬の打ち合わせをしていかなければなりません。
また、会社側の場合(特に合同葬を初めて行う場合)は、資料をきちんと揃え、マニュアル化して、今後に生かしていく姿勢も求められます。
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