香典返しに選ばれている品物と渡すときのマナー
葬儀に「香典(不祝儀)」がつきものであるように、いただいた香典に対してお渡しする「香典返し」もつきものです。
ただ、遺族側・親族側となったときに、「どんなものをお渡しすればよいのか」「金額はどれくらいのものにしたらいいのか」などについて考える必要があり、頭を悩ませている人は多いのではないでしょうか。
今回は、葬儀の場でよく耳にする「香典返し」について解説していきます。
香典返しの準備を今までしたことがない人でも、この記事を参考にすると悩まずに選ぶことができるでしょう。
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この記事の目次
香典返しに選ばれている定番品
香典返しによく使われているものとして、「お茶」「乾物」などがあります。これらは「消え物(キエモノ)」と呼ばれるものであり、使い切ってしまえばなくなります。
人の好みにも左右されませんから、選びやすいでしょう。また、賞味期限が極めて長いという特徴も持っています。
現在よく選ばれているものとして、「カタログギフト」があります。あくまで体感ではありますが、15年ほど前から少しずつ見られるようになってきた香典返しであり、現在ではかなりの人気を獲得している選択肢だと思われます。
これのもっとも大きなメリットとしては、「贈られた側が、自分で好きなものを選べる」というところにあります。肉や魚、酒なども選べるうえ、荷物にもならず、金額も分かりにくいため、非常に人気があります。
また、タオルや洗剤が香典返しに選ばれることもあります。これらはだれでも使いやすいものであるのと同時に、「悲しみを洗い流す」「心を包み込む」という意味が込められています。このため、昔から香典返しの候補としてよく取り上げられてきました。
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香典返しで避けられているタブーな品物
香典返しで避けるべきだ、と考えられているものに、まず生臭類があります。肉や魚などです。「精進料理」の考え方からも分かるように、喪に服しているときには殺生は避けるという原則が、この考え方のなかにも息づいています。
もっとも、「香典返しとして肉や魚を渡す」というのは衛生上も問題があるため、候補としては挙がらないでしょう。なお、カタログギフトのなかから選ぶのは問題ありません。
「お酒」は清めの飲料として使われます。しかし嗜好品としての性格も持つため、香典返しとしては一般的には避けられます。乾物類は香典返しによく使われるアイテムですが、「昆布」は「よろこんぶ」に繋がるため避けましょう。
乾物類ならば、海苔などが最適です。また、かつお節も慶事によく使われるため、弔事では避けます。
判断が分かれるのは、「商品券」です。
合理的に考えて、「好きなものを選んでもらえるので、あえて商品券にする」というご遺族もいます。カタログギフト以上に自由度が高いので、たしかに利用価値は高いように思われます。
加えて、一部の地域では、香典返しとしてビール券などをお渡しするところもあります。
ただ、これは「値段」がすぐにわかってしまうものです。そのため、一般的には決して好まれません。また、「目上の人に対して贈るのは失礼になる」という考え方もあるため、基本的には避けるべきでしょう。
香典返しの選び方
香典返しの選び方について見ていきます。
金額の相場や目安
本来、香典返しは「受け取った金額の半分もしくは3分の1程度をお返しする(原則としては半分)」というかたちが主流でした。しかし現在は、通夜や葬式・告別式のタイミングで即日お渡しするかたちも増えてきています。このため、厳密な「半返し」は難しいと思われます。
このような即日返しのスタイルをとる場合、香典返しの相場は二千五百円~五千円でしょう。特に三千円程度のものがよく出ます。
逆に言えば、それ以上の金額の香典(不祝儀)を受け取ったのであれば、後日改めて香典返しをお渡しする必要が出てくるということです。
より詳しく香典返しの金額について知りたい人は、「覚えておきたい!香典返しの金額を決める2つの判断基準」の記事も参考にしてください。
渡す相手との関係で品物を変える必要は?
「相手によって香典返しの品物を変えるかどうか」については、あまり論じられることがないテーマでもあります。
ただ、受付のカウンターが分けられていない葬儀の場合は、相手が会社関係の方なのかそれとも友人知人などかは、受付係には分かりません。このため、即日返しの場合は、基本的には同じものをお渡しすることが多いことでしょう。
親戚の場合は、単純に「香典返し」として贈るだけでなく、「引き出物」を贈るケースが多いと思われます。
現在は葬式・告別式~火葬の後に一度会場に戻ってきて(あるいはほかの会場に移って)、繰り上げの初七日法要を行い、精進落としの会食をするケースが多いと思われます。
この会食が終わった後(席の足元に置かれていることもあります)に渡されるのが「引き出物」で、お菓子やシーツ、砂糖、果物などがまとめられています。
親族の場合は香典返しを受け取るタイミングがほかの参列者と前後することもあるため、この「引き出物」のことも意識しておくとよいでしょう。
団体で受け取った香典へのお返し
「○○課一同」などのようなかたちで香典を受けとった場合、「香典返しをどうするべきか」という考え方が出てきます。
一例として、以下のようなやり方が挙げられます。
法人名義で香典を頂戴した・・・経費として扱われるので、香典返しは必要ない
「○○課一同」などのような名義で頂戴した・・・忌引き明けに、全員で食べられるお菓子などを持参する。また、この表書きの場合は、一般の参列者に渡す香典返しを1つだけ返す、としている葬儀会社もある。
連名で一人ひとりの名前が書いてあり、そのなかの1名が代表として香典を持ってきた・・・
判断に迷うところだが、「連名の場合は、その名前の分だけ香典返しを渡す」としているところもある。
ただ、これについてはさまざまな考え方があるので、葬儀開始前に一度葬儀会社のスタッフに相談しておくことをおすすめします。
香典返しの品物を受け取り側で選べるカタログギフトが人気
現在では、香典返しの品物として「カタログギフト」が人気です。3000円程度のもののなかから、受け取った人が好きなものを選んで注文することができるからです。弔事でもよく使われるこれは、
- 軽くて持ち帰りやすい
- 自分が欲しいものを確実にもらうことができる
- 商品券とは異なり、(ある程度推測はつくものの)明確な金額は参列者には分からない・年齢や立場を選ばない
ということで人気を博しています。「失礼にあたるのではないか」と考える向きがないわけではありませんが、迷ったのであればカタログギフトを選ぶのもよいでしょう。
香典返しをカタログギフトにすることについては、「香典返しにカタログギフトが選ばれる理由を紹介!便利という理由で選ぶ人が増えている」の記事で詳しく取り上げています。ぜひ参考にしてください。
香典返しを渡すタイミング
香典返しは本来、「後日、いただいた香典の半額もしくは3分の1の金額くらいのものをお渡しするもの」でした。こうすれば、香典の金額によって香典返しも正しく選び分けられるからです。
しかし現在、葬儀に参列される方のなかには遠方にお住まいの人も非常に多く見られるようになりました。もちろん郵送というかたちで送ることもできないわけではありませんが、かなり手間がかかるのも確かです。このため、「即日返し」というかたちで香典返しをお渡しするやり方も出てきています。
これは、葬儀会場の受付で香典返しをお渡しするものです。渡すタイミングは、「香典をもらったとき(つまり開式の前)」のときと、「帰り際(閉式の後)」の2通りに分けられます。
香典は、受け取ったときに目の前で開くものではありません。また、帰り際にお渡しするにしても、混雑するなかで、「この人の金額はこうだったから、この香典返しだ」としてお渡しするのは極めて難しいものです。このため、即日返しの場合は、基本的には金額の多寡に関わらず、同じものをお渡しすることになります。
ただ、「一般的な香典返しでは追いつかないような多額の香典をいただいてしまった」というケースもあるでしょう。このような場合は、やはり後日(四十九日後)、新たに香典返しをお贈りする方が良いとされています。
問題になるのは、10万円などの大きな金額を頂いたときの香典返しの相場です。
「半返しもしくは3分の1程度」という香典返しの原則にのっとれば、3万円~5万円ほどのものをお返ししなければならなくなります。
実際に、きちんと半返しでお返しする人もいます。ただ、遺族の負担も大きくなってしまいます。そのため、このような高額すぎる香典を頂いた場合は、一万五千円程度を上限としてお返ししても失礼ではない、とされています。
香典返しを贈るときの熨斗(のし)について
香典返しを贈る際に、名前や表書きを添える紙のことを、本来は「掛け紙」と言います。
香典返しを贈るときにかけるこの掛け紙について見ていきましょう。ただ、その前に、「熨斗(のし)」についても知っておかなければなりません。
のしは、本来は「のしあわび」を示すものでした。御祝いの席に用いられるあわびを平べったくしたものを意味するものですから、本来は慶事のときにしか使われません。
このため、香典返しなどの弔事に使われる「掛け紙」と、慶事に使われるのしを印刷した「のし紙」は、本来はまったく意味合いが異なるものなのです。
ただ現在は、香典返しや法要の御供物をお店で購入する際には、「のし紙をつけてください」などと依頼するケースも増えています。それでも、「香典返しに使うものです」といえば、問題なく「掛け紙」がついてくるでしょう。ただ、念のために「掛け紙で」といっておくとさらに安心です。
また、宗教を指定しない場合、断りなくハスの花が印刷された掛け紙が着けられてくることもあるので、自分で手配をするのであれば注意したいものです。葬儀会社がまとめて依頼するケースでは、喪家の宗教に対して十分に配慮して発注をかけるため、このような心配は原則としていりません。
掛け紙は、黒と白の水引が一般的です。ただ、一部の地方では、白と黄色の結び切りが使われることもあります。
表書きは、「志」を用いることが多いでしょう。関西圏などでは、「満中陰志(まんちゅういんし)」とすることもあります。また、神式の場合は「偲び草(しのびぐざ。偲草とも)」という表書きも好まれます。
水引の下段には、「○○家」「喪主のフルネーム」「喪主の苗字」のいずれかを記します。
この香典返しも、香典と同じく、薄墨で書くのが一般的です。ただ香典とは異なり、香典返しの場合は業者による印刷を頼むことが基本であるため、遺族側は特に気にしなくてよいでしょう。
長生きした故人の「天寿お祝い」と香典返し
かなり珍しいケースではありますが、高齢者が亡くなった場合、天寿をまっとうしたことを祝って紅白のお祝いをつけることもあります。また、このときは、通常ではタブーとされているものでも「故人の好きなものだったから」として採用するケースもあります。
ちなみに、弔事において紅白の水引などを用いるのは非常に珍しいことに思えますが、実は五十回忌などの「弔い上げ(法事はこれでおしまいにする、というもの)」のときも、紅白の結び切りが使われます。
ただ、どこまでが「天寿か」というのはなかなか難しいところですから、この判断はご遺族が行うことになります。そのため参列者は、たとえ百歳を超えた方の葬儀でも、「天寿をまっとうされましたね」などのようなあいさつをしてはいけません。
「まだまだ生きていてほしかった」というご遺族の気持ちを傷つけてしまうこともあるからです。
香典返しを渡さない場合~寄付をする、養育費に使う
香典をいただいたときには基本的には香典返しをするべきですが、一部では特例もあります。
まず、いただいた香典を寄付した場合。
多くは福祉団体や故人と関わりの深い事業などに対して寄付を行うことになるでしょう。この場合は、寄付した団体(事業)をあいさつ状に記し、その発送をもって香典返しに変えます。
また、故人が特に「寄付してほしい」とエンディングノートなどに記していたのであれば、故人の遺志であったことも書き添えておくとよいでしょう。
また、一家の大黒柱を喪い、子どもがまだ小さいという場合も香典返しをしないことがあります。いただいた香典を、子どもを育てるための養育費に使うためです。
このような場合も、あいさつ状で「遺された子どもを育てるための費用にさせていただく」という旨を記して送ります。
いずれの場合であっても、「いただいた香典をどのように使うか」を明示する必要があります。
香典返しの品物を受け取ったときのお礼について
香典返しは、それ自体が「お礼」「お返し」の意味を含むものです。現在は配送というかたちで送られてくることも多く、基本的にはお礼をする櫃世湯はありません。また、「お礼に対してお礼を返す」ということで、いつまでも弔事を引きずることになり好ましくないとする説もあります。
もっとも、弔事や人への気遣いにおいて、厳密な「正解」はありません。
「受け取ったことを知らせたい」
「前に郵便事故が起こっており、相手も着いているかどうか不安に思っているかもしれない」
「物をもらったのに何も言わないのはなんとなくすっきりしない」
というような場合は、軽くお礼を述べるとよいでしょう。ご遺族と特に親しく付き合っているのであれば、なおさらです。
このような場合は、物を送るのではなく、ハガキや電話で簡単にごあいさつをしましょう。「香典返しにお礼は必要?マナーと受取り辞退の方法を紹介」でも香典返しへのお礼について詳しく書いています。参考にしてください。
香典を辞退するときの連絡方法
現在は香典を辞退する葬儀もあります。このような場合は、参列者が戸惑わないように、しっかりと連絡をしておく必要があります。
訃報を伝える段階、あるいは案内状で、「香典は辞退する」という旨を通知します。
また、供物や供花も辞退する場合は、その旨も合わせて記しておくと親切です。
加えて、受付を担当してくれる人にも、「香典は受け取らないように」と通達をしておきます。
香典辞退の連絡を受けた場合の対応法
香典辞退の連絡を受け取った場合は、それが故人もしくはご遺族のご意向ですから、それに従うようにしてください。現在は公務員が香典を受け取ることは問題ないとされていますが、倫理上受け取らない人もいるため、押し付けるのはかえって失礼になります。
「香典は辞退するが、供花や供物は辞退していない」という場合は、これらを贈って香典の代わりにしてもよいでしょう。ただ、香典を辞退している葬儀の場合は、供花や供物を辞退しているケースも多く見られます。このため、贈る前に必ず「贈っていいかどうか」の確認を行いましょう。
なおこの確認は、原則として葬儀会場に対して行います。
「ご遺族と非常に親しく、今までの親戚づきあいのなかでも疑問があれば喪家に直接確認するのが慣例になっている」というような特段の事情がない限り、喪家への直接の電話は控えるべきです。
非常に忙しく、また精神的な余裕がないなかで、個別の質問に答える手間と新郎をかけさせるのはバッドマナーとされているからです。
まとめ
葬儀のかたちが多様化している現在、香典返しのあり方も変わってきています。かつては洗剤やお茶、海苔などが定番でしたが、現在ではカタログギフトも選ばれるようになりました。
受け取った人が自分の好きなものを注文できること、持ち運びが楽であること、(ある程度予想はつくものの)金券などとは違い金額がはっきりとはわからないことなどが受け、多くの世代に選ばれています。
香典返しでは、基本的には生臭類は避けます。また、金券などの、値段がわかるものも避けましょう。天寿をまっとうされた方の葬儀で「お祝い」の意味を含む場合は故人の好きだったものを、また一部の地域ではビール券を贈る風習もありますが、わからなければ避けるべきです。
香典返しは、半返し~3分の1の価格のものを返すのが基本です。しかし現在は、即日返しをするケースも増えてきました。このスタイルの場合、相手の香典の金額に関わらず同じものをお返しします。ただ、それでは収まらないような金額をいただいた場合は、やはり後日改めてお返しをすべきでしょう。
団体名で香典を頂戴した場合の香典返しについては、葬儀会社ごとで考え方も異なります。一度確認をするようにしてください。
「遺された子どもを育てるための費用とする」「福祉団体などに寄付する」という場合、香典返しは不要です。この場合は、後日、目的や寄付団体を書き記したあいさつ状を送付するようにします。
なお、香典返しやあいさつ状を後日受け取った場合、特にお礼などは必要ありません。
香典辞退をする場合は、訃報を知らせるときに必ずその旨を伝えるようにします。また、受付を務める人にも、香典は受け取らないようにきちんと伝えてください。
参列者側の立場で香典を辞退された場合は、持って行かないようにします。ただ、供物や供花を受け付けているのであれば、香典の代わりにこれを出してもよいでしょう。
もっとも、香典を辞退している葬儀の場合、供物や供花を辞退している可能性も高いといえます。勝手に送るのではなく、必ず事前に葬儀会社に「受け付けているかどうか」を確認してください。
特段の事情がない限り、ご遺族ご親族への直接の問い合わせは控えます。忙しく、また落ち込んでいるときに、余計な心労や手間を掛けさせることになってしまうからです。
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
香典返しといえば、昔はお茶や海苔、タオルが定番です。香典返しは消耗品で、後に残らないものをお返ししたほうが良いという考えがあるからです。そのため、お茶や海苔、また洗剤などの消耗品が多く選ばれています。
結婚式のように、一時期は故人の趣向に合わせたオリジナル商品に注目が集まった時期もありましたが、香典返しは個性的なものより一般的なもののほうが良いようです。特に、葬儀に参列する人は高齢者が多いですから、「持ち運びしやすい軽量なもの」「小分けできるもの」「使い切れるもの」で、より実用的なものが好まれます。
香典返しの品物で故人らしさを出すのは難しいですが、そこに沿えるお礼状にひと工夫してみてはいかがでしょうか。オリジナル便箋を使ったり、故人のエピソードを添えることはできます。
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