「みたまうつしの儀」って何をする?特徴と考え方、宗教との関わり
「みたまうつし」という言葉は、多くの人にとって聞き馴染みのないものだと思われます。
ただ、宗教によっては、葬儀のときに見ることになる言葉でもあります。また最近では小林麻央さんが亡くなられた際に「みたまうつしの儀」が行われたということで、ニュースなどで耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
この記事ではこのような疑問を解消!
- 「みたまうつしって何のこと?」
- 「私や親の信じている宗教では、みたまうつしは必要?」
- 「みたまうつしは、宗派や宗教によって考え方が違うと聞いたけれど……」
- 「みたまうつしの儀に参加することになったけれど、マナーがわからない!」
- 「みたまうつしはいつ行うものなの?」
ここでは、「みたまうつしとは何か」「みたまうつしと宗教」「みたまうつしの意味」「みたまうつしのマナー」などについて、詳しく解説していきます。
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この記事の目次
みたまうつしの儀とは「神道」または「天理教」の葬儀で行われる儀式
みたまうつしの儀とは、簡単にいえば、「特定の宗教・宗派の葬送儀礼のうちのひとつ」です。
「葬送儀礼」は、冠婚葬祭のなかでも特に宗教色が現れやすいものですが、「みたまうつし」もそのうちのひとつだといえます。
みたまうつしは、天理教と神道において執り行われる儀式です。
天理教とは
天理教とは、江戸時代に「中山みき」という教祖によってたてられた宗教です。1838年の10月26日が立教の日とされ、「人々はお互いに助け合って生きていくこと(『陽気ぐらし』)を目的とする」という考え方をしています。
そして、教祖(天理教では「おやさま」と呼ばれます)である中山みきは、人々を助けるためと、また親神の教えの元に、私財をなげうって人々を救済したと言われています。
なお、「御筆先(おふでさき)」「御指図(おさしづ)」「神楽歌(みかぐらうた)」という3つの原典・教義書(「啓示書」と呼ばれることもあります)を掲げています。「御筆先」は中山みきが自ら記した書き物であり、1711首の歌が収められています。「御指図」は口述が記載されたもの、「神楽歌」は手ぶりなどが書かれた歌の書です。
天理教は新興宗教のなかでは比較的規模が大きいのですが、神道の流れも汲んでいるため、神式の葬儀に近しいかたちをとることもあります。
神道とは
「神道」は比較的よく知られた宗教であり、日本に昔からある宗教でもあります。かつては仏教と一体化していましたが、明治維新以降に「神仏分離」の考え方から、別々のものとしてとらえられるようになりました(ただし現在でも、儀式や道具などでかぶっているところもあります。
また、この2つのうちのどちらか片方だけを信じ、片方を排する……という極端な考え方は、日本にはなじまないためか、両方を重んじる人もいます)。
「在来宗教としての神道」も、「新興宗教としての天理教」も、どちらも「神道」を基本とするものです。そのため、みたまうつしは神道の宗教儀式だといえます。
次の項目では、そもそも「みたまうつしとはどのような意味を持つか」について解説していきます。神道と天理教では、みたまうつしの意味も少し異なりますので確認していきましょう。
みたまうつし(御霊遷し)の持つ意味について
「みたまうつし」は「御霊移し」「御霊遷し」「御霊写し」と記されます。簡単にいえば、「故人の魂を、肉体からほかのもの(霊璽など)にうつすための儀式です。
天理教と神道では少し考え方が違いますが、「魂を移す」という基本の考え方自体は変わりありません。
長い歴史を持つ「みたまうつし」ですが、これは今と昔で少しやり方が異なっています。それについて解説していきます。
みたまうつしの今昔
「みたまうつし」は、「遷霊祭(せんれいさい)」とも呼ばれます。正式な呼び方が「遷霊祭」の方であるため、この呼び方を積極的に使う場合もあります。ただ、現在は「みたまうつし」の呼び方を使うケースが多くなっています(ここでも、特段の事情がない限りは「みたまうつし」「みたまうつしの儀」という呼び方をとります)。
みたまうつしの儀は、今も昔も、神道を元とする宗教においてもっとも重要視される儀式のうちのひとつです。みたま(御霊)を、みたましろ(御霊代)に移し、これからも家族を見守っていただけるようにするための儀式だからです。
ただ、このように重要な「みたまうつしの儀」も、時代とともに少しずつ変わっていっています。
【昔】「通夜祭」と「みたまうつしの儀」は別日に行われていた
神道では通夜のことを「通夜祭」といいます。かつては、この通夜祭とみたまうつしの儀は別々に行われていました。しかし現在では、通夜のなかでみたまうつしの儀を行うことが一般的です。このため、この2つはほとんど一体化しています。
神式に限ったことではありませんが、時代が経つに従い、葬儀をよりコンパクトに、ある程度合理的なやり方で……と考える人が増えていった影響かもしれません。
【昔】みたましろに鏡が選ばれていた
かつては「みたまにおうつりいただく場所(みたましろ)」には鏡が選ばれていました。しかし現在では、みたましろとして鏡が用いられることはほとんどありません。現在では特段の事情・ご家族の希望がない場合は、白木の霊璽におうつりいただくかたちをとるようになっています。
白木の霊璽には、故人の名前や生年月日が書かれているのが基本です。このようなこともあり、「霊璽は、仏教における位牌のようなもの」と説明されているのでしょう。
なお、あまり見られないケースではありますが、「故人の愛用していた品物にうつしたい」と希望すればそれも叶えられます。
みたまうつしの儀が神道においてもっとも重要な儀式であることは今も昔も変わりありませんが、このように、そのやり方や取り組み方は少しずつ変わってきています。
次の項目からは、みたまうつしに欠かせない「霊璽(れいじ)」について解説していきます。
みたまうつしでうつされる「霊璽(れいじ)」とは
かつては「鏡」にうつされることの多かった故人のみたまですが、現在は白木の霊璽にうつされることが多くなっています。
霊璽とは、故人の御霊をうつすものであるとともに、仏教における「位牌」に近しい役割を持つものです。
鏡や故人の愛用の品物を用いるような例外を除けば、神式の葬儀においてはこの「霊璽」こそが故人の魂を引き受ける依代(よりしろ)となります。みたまうつしの儀が行われる段階では、故人の名前や生年月日が入れられた白木の霊璽を使うことが多いといえます。
霊璽と仏教の位牌との違い
「神道における霊璽は、仏教における位牌のようなもの」と解説されることが多いといえますし、そしてそれも決して間違ってはいません。ただ、この2つにはいくつかの違いも見られます。
魂をうつすタイミングが違う
仏教においても白木の位牌を使いますが、これはあくまで仮のものです。仏教においては四十九日までは来世の行き先が決まらないとされているので、本位牌に魂を入れるのは四十九日法要となります。
対して神式の場合は、「みたまうつしの儀(多くは、亡くなった翌日~翌々日の夜に行う)」のときにおうつりいただくことになります。
また、神式においても「仮の霊璽」を使うことはありますが、基本的には一度おうつりいただいた霊璽をそのままお祀りすることになります。仏教の場合は「仮位牌」「本位牌」という考え方があるため、「四十九日までは仮の位牌で、四十九日法要が終わったら本位牌に」とするやり方が比較的多くみられます(ただし、地域やご家族、故人の希望によって違いはみられます)。
戒名の有無が違う
「戒名」は、仏教においては非常になじみ深いものです。仏教においては、仏弟子になったときに新しい名前が与えられます。これが「戒名」です。かつては「仏門に入った時(つまり生前)にもらうもの」でしたが、現在は亡くなった後に授けられることが多いといえます。位牌には、この「戒名」が入れられます。
対して、神式の場合はこの「戒名」は授けられません。神式では「諡(おくりな)」が与えられることになります。しかし戒名が仏教への寄進度(寺側は肯定まではしていませんが、現在はお布施の金額である程度決められます)で決められるのとは異なり、諡の方は故人の年齢などによって決まるのが基本です。
素材が違う
仏教の本位牌の素材は、「これ」といった決まりがあるものではありません。本位牌の材質には「塗り位牌(白い木材を整形して、漆で塗って仕上げるもの。蒔絵などが施される場合もある)」「唐木位牌(黒檀などの木材を使って作る木目の美しい位牌)」が一般的ですが、クリスタルを使ったり樹脂や焼き物を使ったりして作られる本位牌もあります。またデザインも多種多様で、カラーリングも選べます。
対して、神式の霊璽の場合は基本的には白木でのみ作られます。ほかの素材が使われることはあまりありません(ご家族や故人が強く希望した場合は、ほかの素材を使うことも可能ではあります)。
みたまうつし後の霊璽について
みたまうつしを終わらせた霊璽は、上から覆いをかぶせて丁寧にお祀りします。
神道では「最初にみたまうつしをした霊璽」をそのまま使い続けることが一般的ですから、そのまま祖霊舎にお祀りしていきます。
ただ、「仮の霊璽を作り、そこにみたまうつしをした」という場合は、五十日祭(仏教における「四十九日」)までの間に、改めて霊璽を作り、それをお祀りしていくことになります。
霊璽を祀る場所
霊璽をお祀りするところは、「祖霊舎(それいしゃ。みたまやと呼ばれることもある)」と呼ばれるところです。祖霊者の扉は基本的に開けっ放しにしておきます。ただし、霊璽を納めることになる内扉は閉めたままにしておくのが基本です。
初めて祖霊舎を作った場合は、神職にお祓いをしてもらうところから始めます。仮の霊璽を作った時には「きちんとした霊璽を五十日祭までに作るように」と言われていますが、祖霊舎も、まだ家にない場合は五十日祭までの間に作る必要があります。
ちなみに、祖霊舎と神棚はしばしば混同して語られがちですが、この2つはまったく意味が異なるものです。神棚はあくまで神様を祀るためのものであって、祖霊舎はご先祖様をお祀りするためのものです。霊璽(御先祖様の魂が入っているもの)を納めるのは、「祖霊舎」の方です。
このように、霊璽とみたまうつしの儀、あるいは祖霊舎とみたまうつしの儀は切っても切り離せないものです。また、仏教との違いがはっきりとみられるところでもあるので、みたまうつしの儀にいたる前に、一度確認をしておく必要があります。
なお、同じ「みたまうつし」ですが、厳密には、宗旨・宗派で考え方が異なります。
宗旨・宗派で異なる「みたまうつし」の目的
「みたまうつし」は神道と天理教で行われるものですが、その意味は少し異なります。
神道における「みたまうつし」の目的
神道の死生観では、「亡くなった方は神様となって、子孫を守っていってくれるのだ」と考えます。そのため、霊璽にみたまうつしをした後は祖霊舎に祭り、今まで弔ってきた先祖と一緒に子孫を守ってくれると考えるわけです。そのため、「成仏する」という考え方は、神道にはありません。
天理教における「みたまうつし」の目的
天理教は神道の流れや考え方の一部を受け継いでいる宗教ではありますが、天理教では「現在ある肉体は、神様からお借りしたものである」と考えています。
このため、命を引き取った後は、一度自分の肉体を神様にお返しすると考えます。そして、魂もまた神様に預けることになります。古い肉体から魂を取り出しておくことを、「みたまうつし」としているのです。
天理教においては、この「みたまうつし」が非常に重要視されています。「葬儀をコンパクトに行うこと」を求める人が多くなった今、天理教の葬儀でも1日葬(通夜・通夜祭を伴わない、1日だけの葬儀)を希望したり行ったりするご家庭も増えてきましたが、天理教においては、この「みたまうつし」が省かれることはありません。
ちなみに、ここではあまり大きく取り上げていませんが、みたまうつしを行う宗教・宗派として「金光教(こんこうきょう)」もあります。金光教もまた神道を基本とする新興宗教のうちのひとつで、「ほかのどのような宗教も否定しない」というスタンスをとっている宗教です。
この金光教においては、「人は命が亡くなると、肉体は空になる。霊璽にうつり、神様に抱かれたまま告別式を迎えるのだ」という考え方をとります。
もっとも、これらの「考え方の違い」については、宗教者も比較的おおらかに見ている人が多いようです。「考え方に違いはあるけれども、肉体から霊璽におうつりいただくという点では同じ」と考えている人が非常に多く、厳密に区別されることはあまりありません。
みたまうつしの行われるタイミングは、どれも共通しています。それについても解説していきます。
みたまうつしは夜に行う
原則として、みたまうつしは夜に行われます。正式なことをいえば、神道も天理教も、みたまうつしは真夜中に行うとされています。ただ、現在は通夜と一体化して行われるケースも多くみられます。この場合は、通夜の一番後(通夜の後)に行われることになります。
また、神式の場合も天理教の場合も、部屋を真っ暗にして行われます。これは、「御霊は、昼ではなく夜に動くから」という考え方によるとされています。
神式でも仏教でも、通夜が行われて翌日に葬儀が行われる流れは同じです。しかし仏教の場合、通夜のタイミングで「みたまうつしの儀」が行われることはありません。
みたまうつしの儀は葬儀場や自宅で行う
これは神式の葬儀全般についていえることですが、みたまうつしの舞台となるのは、葬儀式場や自宅です。神社では行いません。
仏教の場合はお寺が葬儀の会場として選ばれることもよくありますが、神道やその流れをくむ宗教・宗派では神社を葬送儀礼の場所として選ぶことはほとんどありません。
神道において死は穢れ(けがれ。「汚れ」とはまた異なり、内面的な意味での汚れやよろしくない出来事、血などを指す言葉)ととらえられているため、神様の住まいである神社で葬送儀礼を行うことはないのです。自宅で葬儀を行う場合、神棚を封じるのも同じ理由だといえます。
タイミングについて学んだところで、次は「みたまうつしを行うときの流れ」を知っていきましょう。
神式の葬儀までの流れ
「みたまうつし」の流れを知る前に、まずは神式の葬儀の流れについて知らなければなりません。神式の葬儀は、特に「神葬祭(しんそうさい)」と呼ばれることもあります。
流れは、大きく10の項目で分けることができます。
1.ご臨終~枕直し
ご臨終の場では、仏式の葬儀同様、末期の水を含ませます。ただしこの場合は、神式の葬儀によく用いられる「榊(さかき)」を使って行うのが理想とされています。
その後に、故人をお連れします。自宅にお連れすることもあれば、葬儀会場に直接おつれすることもあります。
着いたら北枕で安置させます。そして、故人の近くに、枕飾りを設けます。枕飾りは、白木の台に、水・米・酒・塩・お供え物を置いて作ります。また、榊を供えます。ここまでを「枕直し」といいます(基本的には葬儀会社の人間が行ってくれるため、ご家族が行う必要はありません。
2.帰幽奉告(きゆうほうこく)を行う
帰幽奉告(きゆうほうこく)を行います。これは、みたまうつしでも重要な役目を果たす、ご先祖様が祀られている祖霊舎に、故人が亡くなったことを奉告する儀式をいいます。
このあと、祖霊舎には白い紙が貼られます。この白い紙は、死の穢れが及ばないように行うものです。五十日祭が終わった後に霊璽はこの祖霊舎に収められることになりますが、それまではこの白い紙は外しません。
4.納棺
納棺を行います。神式の葬儀では、白い狩衣を着させます。なお納棺はご家族が少し手を添えることもありますが、基本的には葬儀会社のスタッフの手で行われます。
5.通夜祭とみたまうつしの儀
納棺が行われたのち、通夜祭が行われます。通夜祭は、多くの場合、ご臨終の翌日~3日以内の夜に行われます(ただし、「絶対に参加しなければならない人が海外にいて、どうしても都合がつかない」「年末で火葬場があいていない」などのときは1週間程度までは日が開けられることもあります)。
かつては通夜祭とみたまうつしの儀は異なるタイミングで行われていましたが、今は同じタイミングで行われることが多くなっています。また、通夜祭とみたまうつしの儀は厳密には区別されるべきものですが、現在は自然な流れで通夜祭からみたまうつしに移行するかたちが多くなっています。通夜祭とみたまうつしの細かい流れは後述します。
6.通夜ぶるまい・直会
通夜祭とみたまうつしの儀が終わると、通夜ぶるまいが行われます。故人のことを語り合うために行うものなので、ご家族が席を設けられたのであれば、出来る限り参加しましょう。なおこれは「直会(なおらい)」とも呼ばれます。
7.翌日~葬式・告別式
特段の事情がない限り、通夜祭の翌日に葬式・告別式が行われます。このときにも玉串奉奠(たまぐしほうてん)などを行います。なお、神式の葬式・告別式は、特に「葬場祭(そうじょうさい)」と呼ばれることもあります。
8.出棺~火葬
出棺します。ご家族や極めて親しい人以外は、火葬場へと向かうバスや車をお見送りします。
火葬場についたら、炉の前で儀式を執り行ったあと火葬に伏します。なお、神道の場合は火葬後すぐに埋葬を行うこともあります。ただ、「五十日目を節目に行う」というケースも多くみられますし、ご家族の気持ちによって埋葬するタイミングを決めるかたちで問題ありません。
9.直会(なおらい)
食事会を行います。このときの「直会」は、仏教の「精進落とし」とほぼ同じ意味を持つものです。
10.五十日祭と霊璽
神式の葬儀においては、霊璽にはすでにみたまがうつっている状態です。これは五十日祭を機として、祖霊舎にお祀りするのが一般的です。ただし、1年目までは「神葬祭」の流れとしてとらえられることもあります。
ただ、このような「流れ」については、完全に把握しておく必要はありません。基本的な流れは葬儀会社のスタッフに聞けば教えてもらえますし、参列者の場合もスタッフの案内に従って動くかたちで問題ありません。
みたまうつし自体の流れについては、次の項目で説明していきます。
神道の葬儀における「みたまうつし」の流れとマナー
ここからは、「みたまうつしの儀」の流れを細かく取り上げていきます。神道の「みたまうつし」と天理教の「みたまうつし」では意味合いが少し異なるように、流れに関しても少し違いがみられます。また、現在のみたまうつしの儀は通夜と一体化しているので、そのあたりも説明していきます。
流れは13の項目に分けることができます。
1.手水の儀
ちょうずのぎ、と読みます。手を洗い清める儀式で、ひしゃくを使って行います。基本的には1人で行うもので、
- 右手にひしゃくを持つ
- 水をくむ
- 左手にかけて左手を洗う
- 左手で持ち替えて右手を洗う
- 再度右手で持って左手に水を入れて、口をすすぐ
- 最後にひしゃくを縦に持ち、水を伝わらせる(ひしゃくを洗う)
という流れをとります。最後に懐紙で手を拭きます。
ただ、このような設備や手桶を用意するのはなかなか難しいため、現在では省略されることもあります。
2.会場に入る~神職の入場
会場に入り、通夜祭が行われるのを待ちます。
3.斎主一拝
全員で拝礼を行います。
4.祭詞を唱え、お供え物を捧げる
厳密に言えば、ここまでが「通夜祭」にあたります。
5. みたまうつしの儀に入る~部屋を真っ暗にする
電気を落として部屋を真っ暗にします。
6.斎主が言葉を述べる
斎主(その場にいる神職のなかで、一番格上の人)が言葉(「遷霊詞」といいます)を述べながら、霊璽を故人にかざします。これによって、みたまが霊璽に移ります。このときに、警蹕(けいひつ)と呼ばれる声が発せられることがあります。また、太鼓が鳴らされることもあります。これは、「神様が来ること」を告げるために発せられるものです。
7.あかりをつける
会場内の明かりがつけられます。仮霊舎の前に座ります。
8.斎主一拝
斎主が一礼をします。
9.献饌の儀
「献饌(の儀)」を行います。これは「けんせん」と読むもので、お供え物をする儀式をいいます。
10.遷霊の言葉を述べる
ここでも遷霊の言葉が述べられます。
11.玉串奉奠
玉串奉奠を行っていきます。玉串とは、白い紙がつけられた榊の枝です。仏教の「焼香」にあたる儀式で、非常に重要な儀式です。
これは、斎主から行い、続いて喪主、ご家族の順番で行います。一般参列者がいる場合は、ご家族・ご親族の後に、前に座っている人から順番に行っていくのが基本です。玉串奉奠を行う際は、
- 根元を右手で受取、左手を葉の下に沿える
- 祭壇の前に向かう
- 玉串を右回しに半回転させ、葉先が自分に向く用にする
- 祭壇に置く
というやり方をとります。そして二拝二拍手一拝をしますが、葬儀の場合は拍手のときには音はたてません。「忍び手」と呼ばれるやり方をとります。
12.斎主一拝
斎主が礼をします。
13.喪主挨拶~通夜祭とみたまうつしの終了
喪主が挨拶をして、通夜祭とみたまうつしの儀が終了します。このときに、翌日の葬式・告別式の案内がなされることもあります。
なお、「みたまうつしの儀にはだれが参加するか?」という問題がありますが、かつてはみたまうつしの儀は家族や特別に親しい人だけで行われることが多かったといえます。しかし現在では通夜祭のなかで行われることが多くなったため、一般的な弔問客も参加するやり方もよくとられるようになりました。
また、通夜祭のやり方についても、それぞれの葬儀式場・ご家族や故人のご意向、あるいは神職によって多少の違いがみられます。このため、このようなやり方はあくまで「一例」だと考えておいてください。
神道の葬儀に参加したことがない、あるいはあまり慣れていない……という人は多少戸惑うかもしれませんが、遺族側の場合は葬儀会社の人間から説明を受けられるでしょうし、一般弔問客の立場の場合は喪主(ご家族)のやり方を真似すればそれほど大きな失敗はしません。
マナー
神道のみたまうつしの儀に参加する場合は、「しのび手で打つ」ということを理解しておけば問題ありません。玉串奉奠を行うときの受け取り方や捧げ方がわからない場合はスタッフに聞いてください。案外わからないという人は多いので、聞いても恥ずかしくありません。
天理教の葬儀における「みたまうつし」の流れとマナー
天理教におけるみたまうつしの儀の流れを見ていきましょう。
1.斎主入場
参列者が着席している場所に、斎主が入場してきます。
2.お祓いの言葉を唱える
「祓詞奏上」ともいいます。お祓いの言葉を述べて、通夜祭が始まります。ただ、この「祓詞奏上」は「みたまうつしの儀式の一環として行われるもので、消灯の後に行われるもの」としているところもあります。
3. みたまうつしの儀式の始まり~消灯
天理教の場合も、神道の場合と同じで、あかりを消して真っ暗にされます。「消灯」の言葉が掛けられることもあります。
4.お供え物を供える
「献饌の儀」が行われます。神様に御供えをします。
5.玉串奉納
玉串をお納めします。これは、かたちこそ神式と似ていますが、やり方は異なります。神式の場合は「二拝二拍手一拝」ですが、天理教の場合は、「二礼四拍手一拝、そして四拍手一礼」です。
ちなみに「礼」は30度程度の浅いおじぎ、「拝」はほぼ90度の不快おじぎを指します。天理教ではおじぎをする角度も決められていますから、このあたりはしっかりと押さえておきましょう。
なお、玉串奉納はこのタイミングではなく、「しずめの詞」が終わった後に行われることもあります。
6.しずめの詞が唱えられる
玉串奉納が終わったら、しずめの詞が唱えられます。これはみたまうつしの儀が終わったことを示す言葉であり、重要なものです。
7.電気がつけられ、列拝を行う
電気がつけられ、葬儀関係者(世話役も含む)が並んで列拝を行います。4で玉串奉納が行われていなかった場合は、このタイミングで奉納していくことになります。
天理教の場合は、「どのタイミングで玉串を奉納するか」も、葬儀会社ごとに違いがみられます。ただ、行うべきことの基本は変わりません。地域差もあるので、葬儀会社のスタッフの案内に従うとよいでしょう。
マナー
「おしゃべりをしない」「声を立てない」は、天理教のみたまうつしの儀のみならず、葬儀全般にいえることです(一部の宗教・宗派では念仏をみんなで唱えるやり方をとることもあります)。
天理教の葬儀において非常に特徴的なのは、「拍手をするときの考え方」でしょう。
神式の場合はしのび手で打つことになりますが、天理教の場合は、音を立てても構わないとされています。
もっとも、これは「音を立てても問題にならない」という話です。参列者の前にはご家族がお参りをすることになりますから、ご家族が音を立てていないようであれば、音を立てて打つのは避けた方が無難かもしれません。
みたまうつしはこのように通夜と一体化して行われるものですが、そこで気になるのが「お布施」です。これについても学んでいきましょう。
みたまうつしのお布施について
現状は「通夜」と「みたまうつしの儀」を分けて考えることは基本的にはしていません。また、神式の葬儀と仏式の葬儀では、お布施の金額もそれほど変わらないと考えられています。このため、一般的な「お布施の相場」が、そのまま適用されます。
一般的な葬儀(通夜があって、葬式・告別式がある)の場合は、15万円~50万円程度が相場となるでしょう。一般的に、葬儀の規模が大きければ大きいほど、お布施の金額も大きくなりがちです。
また、「その宗教・宗派の信徒が多い土地」の場合にはお布施は安くなる傾向があり、逆に「その宗教・宗派の信徒が少ない土地」の場合はお布施が高くなる傾向にあります。非常にあけすけに言うのであれば、葬儀の数が少ないため、1軒あたりの負担が大きくなるからです。
なお、昔と現在では、お布施に対する考え方が大きく異なっています。かつては「お布施のことは聞いてはいけない」「聞いても、『お気持ちだけで』と言われる」というのが普通でした。しかし現在は、ある程度「目安」もあります。また、葬儀会社のスタッフに聞けば、きちんと相場を教えてもらえるケースの方が多いといえます。
「地域の状況が分からない」「相場の見当がつかない」ということでしたら、まずは葬儀会社のスタッフに相談してください。
最後に、みたまうつしに「参列する側」のマナーについて解説していきます。
みたまうつしに参加する際の参列者のマナー
ここからは、みたまうつしに参加するときのマナーを簡単に解説していきましょう。
服装
喪服の着用が無難です。小物類(ネクタイ・ストッキングや靴下・靴・バッグ)も黒色にまとめておくのが無難です。アクセサリーは、真珠類と結婚指輪ならば許容されます。真珠は黒真珠でも白真珠でも構いませんが、ネックレスをつける場合は一連のものにします。
また、「つけても構わない」であって「着けなければならない」ではないため、突けずに参加しても構いません。
髪の毛は耳より下でまとめます。黒いバレッタなどを使いましょう。
子どもの場合は制服にします。大人ならばNGとされているローファーも、子どもの場合はOKとされています。
持ち物
みたまうつしを行う宗教・宗派は、神道そのものあるいは神道の流れをくむものです。このため、仏教においては重要視される「数珠」を持っていく必要はありません。
不祝儀袋は、白黒もしくは双銀の水引のかかったものを選びます。ハスの花は仏教の、十字架や百合の花はキリスト教のものですから、これらの印刷されているものは避けます。
表書きは「御玉串料」「御榊料」「御神饌料」「御霊前」などが基本です。「御霊前」ならば、相手の宗教が分からないときでも使えます。
まとめ
「みたまうつし」とは、神道や天理教の葬送儀礼において行われる儀式のうちのひとつです。「肉体から離れ、依代(現在は霊璽のことが多い)におうつりいただく儀式」のことをいい、非常に重要視されています。
みたまをうつす対象として使われる霊璽は、「魂をうつすタイミング」「戒名がない」「素材が違う」という点で、仏教の位牌とは異なります。また、魂を受け止めた霊璽は、祖霊舎に祀られます。
なお、祖霊舎は、神様となった霊が祀られる場所であり、非常に神聖な場所です。神道では死を「穢れ」としてとらえるため、すでに祖霊舎があるご家庭の場合は、人が亡くなったら、祖霊舎に穢れが及ばないように白い紙で封をします。
かつては通夜とはわけられていましたが、現在は一緒に行われることが多いといえます。みたまうつしの儀は必ず夜に行われ、部屋を暗くした状態で執り行われます。
神式においては、「みたまを霊璽にうつして先祖の霊とともに家を守っていただくこと」を目的として、みたまうつしを行います。天理教は、「借りていた肉体を神様にお返しする」という目的でみたまうつしを行います。ただ、どちらも「霊璽にみたまをうつす」ということを目的としているため、この2つの違いについてそれほど取りざたされません。
通夜の流れのなかで行われるみたまうつしですが、多くの場合、斎主による祓いの詞などが読み上げられ、霊璽に魂をうつすやり方がとられます。加えて、玉串(榊)を使うのも、みたまうつしの儀式(を伴う通夜)の特徴です。また、お供えを行うケースが非常に多くみられます。ただ、通夜や葬式・告別式のやり方は、葬儀会社ごとや地域ごとによって多少の違いがみられます。
みたまうつしに参加するときの格好は、一般的な葬儀に参加するときの格好と同じです。ただし、仏教の葬儀とは異なり、数珠は用いません。また不祝儀をお渡しするときの表書きには、「御霊前」「御榊料」「御神饌料」が使われます。迷ったときは「御霊前」にしましょう。
「みたまうつし」は神道やその流れをくむ新興宗教において用いられる儀式です。仏教とはまた異なった考え方の元で行われるものですが、これらの宗教・宗派ではみたまうつしを非常に重要視します。その場に立った時に間違えないように、また失礼を働かないように、しっかりと勉強をしておきたいものですね。
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監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
神道は宗教というより信仰という方が適当かもしれません。神葬祭が体系化されたのは明治に入ってから。実は神前式の結婚式も明治になってから体系化されています。通夜を通夜祭、葬儀を葬場祭として儀礼化したのもその一環。通夜際では、御霊うつしの儀が行われ、それを遷霊祭といいます。
神葬祭は神域である神社で行われることはなく、別の斎場で神職を呼んで行われます。神職が斎主および祭員を勤め、祭詞の奏上と、祭員による誄歌(しのびうた)が捧げられます。 神道式の葬儀は、全体の2%程度なので、慣れないと戸惑ってしまう人も多いでしょう。しかし流れはお宮参り、七五三、結婚式などと同じような流れです。拍手はしのび手といって、音を立てないで行うことが弔事の作法になります。