「三具足」っていったい何?その概要や使い方、必要な時期について解説
「大切な人が亡くなる」という経験は、多くの人にとって初めてのものです。
そのため、葬儀に臨むときあるいは供養をしていこうと考えるとき、今まで耳にしたことがない、さまざまな単語に接して戸惑うこともあるでしょう。
今回は「供養」のときに使われる「三具足(みつぐそく・さんぐそく)」について解説していきます。
三具足とはいったい何なのか、その使い方はどのようにするのか、歴史や宗教的な解釈はどのようなものであるかを、ひとつずつ見ていきましょう。
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この記事の目次
三具足とは家での供養の際に必要な仏具
「三具足」は、「みつぐそく」あるいは「さんぐそく」と呼ぶものです。
仏具であり、仏教以外の宗教ではこれは見られません(ただし、三具足に似た発想のもとで用いられる道具はあります)。
三具足とは、何か1つのアイテムだけを指す言葉ではありません。
これは、仏教で故人を供養していくために必要な3つのアイテムを総称した言葉であり、「香炉(こうろ)」「燭台(しょくだい)」「花立(はなたて)」をセットにして指す言葉です。
人が息を引き取った際にすぐに設けられるもっとも小さな祭壇である「枕飾り」から、さまざまなことが落ち着いた後でずっと手を合わせ続けることになる「仏壇」まで、ほぼすべてのところで用いられる道具であり、仏教において非常に重要視されるセットでもあります。
ちなみに、「具足」とは「過不足がなく、必要なものがそろっている」という意味を持ちます。
仏教にもさまざまな宗旨・宗派があり、仏壇に入れられるものや祀られるものはそれぞれが信仰する宗旨・宗派によって違いが見られます。
しかし三具足は、在来仏教ならばどの宗旨・宗派でも必要となるものであり、仏教用具のなかでも特別な位置にあるものだといえます。
それぞれの道具について
ここからは、三具足に分類される3つのアイテムについて詳しく紹介します。
- 「香炉」
- 「燭台」
- 「花立」
香炉(こうろ)
これは仏教に限ったことではありませんが、昔から宗教においては「お香」が重要視されてきました。
キリスト教では「乳香(にゅうこう)」がよく取り上げられますし、仏教においては「伽羅(きゃら)」「白檀(びゃくだん)」などがよく使われます。
かつてお香は非常に高価なものでしたし、故人が旅立つさいの道しるべとなると考えられていました。
またご遺体のにおいを紛らわせるなどの実利的な意味もあって、広く使われてきました。
現在ではドライアイスの技術が発達したため、昔のような「腐敗臭を防止する」という意味でお香が用いられることはほとんどありません。
しかし習慣は残り続け、「故人のためにお香を炊くこと」は仏教の供養においてもっとも重要なことだとされています。
香炉には、いくつかの種類があります。
香炉の種類
- 火舎
- 前香炉
- 土香炉
- 長香炉
1.火舎(かしゃ・ほや)
「火舎香炉」とも呼ばれます。読み方は「かしゃ」「ほや」です。
三具足はどのような宗旨・宗派にも見られるものですが、香炉は宗派ごとによって形に違いがみられます。
火舎は真言系の秋波でよく見られるものであり、真鍮製(しんちゅうせい)のものがよく用いられます。
3本の脚がついており、蓋もついています。
2.前香炉(まえこうろ)
「線香炉」とも呼ばれることもあります。
3本の脚がついており、上部分が大きく開口しています。
丸みを帯びたデザインが特徴で、線香を立ててお参りするときに使います。
基本的には仏壇用の香炉とされていますが、実際には葬式・葬儀・通夜の場面でも使われています。
3.土香炉(つちこうろ)
透かし彫りが施されているものと、透かし彫りが入っておらず丸みがあるものの2つに大別されます。
前者は真宗系の宗派でよく使われるものですが、後者は曹洞宗でよく使われます。
また、それぞれで焼香のやり方が異なります。
色に決まりはありませんが、青色~緑色のものが多い傾向にあります。
4.長香炉(ながこうろ)
ほかの香炉とは異なり、この香炉は横に長い形をしています。線香を寝かせた状態で置くこともできます。
蓋がついているものとついていないものがあり、仏壇と似たテイストで作られることが多いといえます。
この「香炉」は、灰を入れて線香や抹香と合わせて使うものです。
このため、特に抹香を利用する場合は抹香を入れておくための「香盒(こうごう。蓋つきで、多くは丸い形をしている)」とセットにして購入する必要があります。
なおここでは「香炉に使われる主な材質・デザイン」を取り上げましたが、現在は「仏壇も自分好みに」という考え方が広まってきたため、オリジナリティのあるデザインの香炉もよく提供されています。
なかには非常に明るい色を使った香炉なども見受けられます。
燭台(しょくだい)
「燭台」は「ろうそく立て」とも呼ばれます。
読んで字のごとく、ろうそくを立てるための台です。
ろうそくは仏様の慈悲や知恵の象徴であり暗闇を照らしてくれるものであるという考え方に基づき、仏壇などに供えられています。
また、ろうそくの火が穢れ(けがれ)をはらい、煩悩を浄化してくれるとも考えられています。さらに、ご先祖様が極楽とこの世を行き来するための目印になるともいわれています。
燭台の材質として比較的よく見られるのが、真鍮(しんちゅう)製のものです。
美しい金色をしているものが多く、見た目にも華やかです。
また黒檀(こくたん)を使ったものや陶器製のものもあります。
燭台のデザインは、「絶対にこれでなければならない」という明確な決まりがあるわけではありません。
ただ、浄土真宗の場合は、本願寺に代表される「西系」は黒い仏具を、大谷派に代表される「東系」では金色の仏具を使うことが一般的です。
また、東系の場合は千年万年を生きると言われている鶴や亀などを意匠に用いることもあります。
ただこのような「宗派・宗旨による使い分け」を専門的な知識がないなかで正しく行うことは難しいものです。
そのため、三具足を揃える際に、仏具店のスタッフなどに自分の宗派を伝えて選んでもらうようにするとよいでしょう。
なお現在は、火災などの危険を防ぐために電気式の燭台も出ています。
一晩中炎を絶やさないことが重要だと考える人が多い通夜などにおいては、これが積極的に用いられます。
花立(はなたて)
単純に「花瓶」などのように呼ばれることもあります。
名前からも分かる通り、花を供えるために使う道具です。
直接器の中に水を入れて生花や樒を入れておきます。
これも真鍮製のものが多く、アルミ製のものなども出ています。
「火災の危険性もあるので、線香やろうそくは毎回消す」というご家庭でも、「仏壇にはいつも生花を供える」というケースが多いことでしょう。
そのため、使用頻度は非常に高いものだといえます。
お手入れのしやすいもの、そして香炉や燭台とよく調和するものを選ぶとよいでしょう。
サイズも多岐に富んでいますから、仏壇とのバランスも見て選びたいものです。
【特別な仏事の時】花立と燭台が各2つの五具足を使用する
三具足は仏教における基本の仏具であり、これがそろっていれば問題はありません。
ただ、特別な仏事の際に使用される「五具足(ごぐそく)」というものがあることも知っておきましょう。
五具足は、三具足にさらに燭台1つと花立1つを足したものです。
つまり、
- 香炉1台
- 燭台1対(2本)
- 花立1対(2本)
以上の5点で構成されるものです。
五具足の場合、中央に香炉を置き、その両脇に燭台を置き、さらにその外側に花立を置くのが基本です。ただ、宗派によって多少の違いはあります。
なお、浄土真宗系では「香炉1台、燭台1台、花立2台」の「四具足」と呼ばれるものが用いられることがありますが、これはほかの宗旨・宗派ではあまりみられません。
三具足は普段のおまいりのときに使うものです。
ただ、特別な仏事(○回忌の法要や開眼法要など)のときには、この五具足が使われることもあります。
また現在では、「五具足とは、香炉・燭台・花立に加えて、仏様にお供えする食事を乗せる仏飯器(ぶっぱんき)や茶湯器(ちゃとうき)のことを言う」としているケースもあります。
普段のおまいりにおいてはあまり使うことのないものではありますが、仏具を買う機会があるのならどうせなら三具足ではなく五具足で揃えるのもよいでしょう。
なお、値段に関しては「三具足か五具足か」というよりは使われている素材などによって違いが出てくるので、「五具足は三具足に比べて、絶対に値段が高くなる」ということはありません。
三具足の成り立ちと意味
仏具の歴史自体はかなり古いものであり、平安時代にはすでに花立が使われていたと考えられています。
ただ、これらの仏具が「三具足」というかたちになって広く知れ渡ったのは、それほど昔ではないとされています。
現在のように、「三具足とは、燭台と香炉と花立のことをいい、並べ方も(宗派によって多少の違いはみられるにせよ)ある程度決まっている」とされるようになったのは、古く見ても650年ほど前の室町時代くらいからだと考えられています。
そこから江戸時代にかけて三具足の「分化」は成熟していったとみられています。
ただ、これらも明確な「答え」ではなく、あくまで「このように考えるのが妥当である」というところに留まっています。
もっとも、香りや明かり、花を故人に手向けるとする考え方自体は昔からあるものです。
三具足もまた、「故人に安らかな眠りを」「仏様の加護がありますように」という願いのもとで作られていったと考えるのが自然でしょう。
また、特に香炉は、仏壇に向かい合う生者を清める意味もあるとされています。
仏教であれば宗旨・宗派関係なく三具足と本尊は必要
三具足は、仏教におけるもっとも基本的な仏具です。
そのため、どのような宗旨・宗派でも、在来仏教においては必ず三具足が用いられます。
宗派によって三具足の必要性は変わるのか
どの宗旨・宗派でも三具足は置かれますが、それ以外のものに関しては宗旨・宗派ごとに違いがあります。
一つずつ全部を取り上げると長くなるため、代表的なものをいくつか取り上げます。
浄土真宗の場合
鈴(りん)や鈴棒、それから仏飯器などが置かれますし、阿弥陀如来も置きます。
浄土真宗ではご本尊として阿弥陀如来が置かれ(掛け軸を用いる場合もあります)、茶湯器などが置かれます。
真言宗の場合
ご本尊を大日如来とします。
※大日如来とは、空海の開いた真言宗で最高の仏のことをいいます。
臨済宗の場合
釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)を本尊に据えて木魚を置きます。
なお、仏壇といえば「位牌」を連想する人も多いかと思われますが、浄土真宗の場合は位牌を基本的には置きません。
浄土真宗では阿弥陀如来を信じさえすれば仏になるとされているため、追善供養のための位牌は必要がないのです(ただし、「位牌を作ったら浮かばれない」などのように考えているわけではありません)。
仏教以外では三具足は必要ない~それに代わるもの
「三具足」は仏教の考え方であるため、キリスト教や神式においてこれは用いません。
ただ、キリスト教でも燭台や香炉が用いられることはありますし、花を供えるための花瓶も使うことがあります。
また、神式の場合も燭台は置きますし、榊を供えるための花瓶も用いられます。
加えて、神式の場合はお酒や米、塩などを供えるのが一般的です。また、鏡も使います。
仏式とは考え方もお供えも違いますが、「故人に対して植物や香、花を供える」という風習は、ほかの宗教でも見られるものです。
三具足と五具足の飾り方
ここからは三具足と五具足の飾り方を取り上げていきます。
宗派や仏壇の状況、またどのようなタイミングで置くかによっても異なりますが、仏壇の場合は以下のような置き方をします。
三具足の場合
中央に香炉を置き、向かって左側に花立てを置く。向かって右側には燭台(火立て)を置く
五具足の場合
中央に香炉を置き、それのほぼ真横(心持ち奥側でもよい)に燭台を1台ずつ置く。そのサイドに花立てを置くが、花立ての位置は「燭台の真横」ではなく、少し奥側に配置する
なお、枕飾り(故人が亡くなったときに作る小さな祭壇)の場合は、中央に香炉を置き、向かって左側の奥に花立を、向かって右側の奥に燭台を置くのが一般的です。
そしてその間に団子や飯などのお供えを置きます。
三具足を買い替えるタイミングについて
仏具は、一般的に「仏壇を買ったとき」に一緒に購入し仏壇をしまうときに一緒に処分するものです。
「落として割ってしまった」などのようなことがない限り、そのまま使い続けてかまわないでしょう。
なお、三具足を処分するときには特に供養などを行う必要はありません。
「閉眼供養」はあくまで位牌などに対して行われるものだからです。行政の指導に応じた分別をしてゴミとして出してしまって構いません。
ただ、気になるのであれば仏壇と一緒に引き取ってもらうとよいでしょう。
三具足とともに飾るもの
三具足と一緒に飾るものについて詳しく見ていきましょう。
これも宗旨・宗派ごとによって違いがありますが、代表的なものをいいます。
三具足以外の仏具
「鈴」「御本尊」などです。
なお、御本尊は宗旨・宗派ごとによってまったく異なるため、必ず確認が必要です。
お供えとそれを置くためのもの
米や水などをお供えします。
なお、米を盛り付ける器や盛り付け方も宗旨・宗派によって異なります。
花
枕飾りのときは「樒(しきみ)」が使われるのが一般的です。
樒は強い香りを持っているため腐敗臭を紛らわせることができると考えられており、悪霊から故人を守るためのものとしても重用されていました。
なお、「樒」とよく混同されるものとして「榊(さかき)」がありますが、これは神式によく用いられるものであって、樒とは明確に区別されます。
樒以外の花としては、仏花である「菊(特に白や黄色)」がよく用いられます。
ただ現在は「故人の愛した花を捧げよう」という考えもあるため、彩りのよい花が供えられることもあります。
ただ、すぐに枯れてしまう花や散ってしまう花は手入れも大変ですから、ある程度もつものを選ぶとよいでしょう。
またこれは主観的なものであり統計をとったわけではありませんが、枕飾りのときに飾る花よりも仏壇に飾る花の方が自由度が高いように思われます。
三具足が必要になるのはいつからいつまで?
三具足は、故人が亡くなった直後の枕飾りのタイミングから必要になり、仏壇にもずっと置かれ続けるものです。
枕飾り、通夜での飾り、後飾り、そして仏壇でのおまいり……と、最初から最後まで必要となるものだといえます。
毎日のおまいりのときにもそれ以降の法要のときにも使っていくことになりますし、葬儀・仏壇の規模に限らず仏式の供養においては必ず用いられるものなのです。
家に仏壇がないから三具足もない……突然の訃報のときにどうするか
核家族化が進んでいる現在、「家に仏壇がない」というご家庭も多いことでしょう。
突然家族が亡くなった場合、「枕飾りのときに置くべき三具足がない」という状況になることもあるかと思われます。
通販などによって取り寄せることもできないわけではありませんが、家族が亡くなったなか、そして忙しいなかで仏壇や三具足をすぐに購入するということは、現実的ではありません。
しかしこのような状況でも慌てる必要はありません。
枕飾りをしつらえるのは葬儀会社ですし、その葬儀会社が三具足も貸し出してくれます。設置もすべて葬儀会社のスタッフがやってくれるので、何も心配はいりません。
また、後祭壇(火葬などが終わり、家にご遺骨となった故人をお連れしたときに作られる祭壇)も多くの場合葬儀会社が貸し出してくれます。
後祭壇も葬儀会社がつくることが多いと思われますから、安心してください。
後祭壇を撤収するタイミングは四十九日法要後が一般的であるため、これまでに仏壇を購入するとよいでしょう。
まとめ
三具足とは、
- 香炉
- 燭台
- 花立
の3つの仏具をまとめたときの呼称です。
ここに「燭台1つ」「花立1つ」を加えたものを「五具足」と呼びますが、おまいりの基本となるのはこの「三具足」です。
三具足は、故人を包むと同時にそこに向き合う生者の穢れを清めてくれるものでもあります。
このため、三具足はどのような宗旨・宗派であっても用いられます。
それ以外の仏具や御本尊は宗旨・宗派によって異なりますが、三具足は形の違いはあるにせよ、仏式で供養していく場合にはなくてはならないものだといえます。
なお、キリスト教や神式の場合も、「三具足」ではありませんがお花やろうそく、香で故人を弔うという考え方があります。
三具足は、基本的には仏壇を購入したときに一緒に購入します。
破損などがない限り、そのまま使い続けるとよいでしょう。
なお、「仏壇をしまう」という場合は三具足も一緒に処分するのが一般的です。
この際は地方自治体の区分に応じて捨てるべきですが、「心理的に抵抗がある」ということなら仏壇と一緒に引き取ってもらうようにするとよいでしょう。
故人が亡くなってすぐに設けられる枕飾りの段階から、仏壇が来た後に行われる法要まで、ずっと三具足は使われ続けるものです。
ただ、「この家から出る初めての故人だから、三具足も何もない」という場合もあるでしょう。
この場合は、葬儀会社のスタッフが枕飾りの一式として三具足も貸し出してくれます。
三具足は、仏教を信じる人にとって非常に大切なものです。
現在は素材もデザインも多岐に及んでいますから、故人を弔うのにふさわしいものを選ぶようにしましょう。
墓じまいを検討されている方
- 墓じまいはどこに相談するのかわからない
- 複雑な事務手続きをやりたくない
- 墓じまいにいくら必要なのか知りたい
親族や知人などに墓じまいを経験した人がおらず、不安に感じる人もいるかと思います。
また、今あるお墓を片付けることに抵抗感がある方もいるかもしれません。
しかし、大切なのはお墓をきちんと片付け、あとの供養に繋げていくことです。
ライフドットでは、墓じまいの複雑な事務手続きの代行、新しい墓地・霊園への引越しの提案までサポートします。
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