枕飾りってどんなもの? その特徴と考え方、設置の方法

【枕飾り】アイキャッチ画像

葬儀関係のことを調べていると、聞き慣れない単語がたくさん出てくることがあるでしょう。

多くの人にとって、葬儀とは珍しいことであり、イレギュラーなことでもあるからです。

また、動揺しているなかで向き合うことになるため、その場で調べてもなかなか情報を探しにくいこともあります。

そのため、事前に「葬儀に関わる単語はどのようなものがあるのか」「その性質はどんなものなのか」を知っておく必要があります。

今回は、そんな「聞きなれない単語」のなかから、「枕飾り」を取り上げます。

なお、この記事で記載する「枕飾り(まくらかざり)」は、特筆しない限り仏式の枕飾りを指します(キリスト教や神道の枕飾りについては、本文中に項目を設けています)。

また、家族葬や直葬・火葬式、あるいは無宗教の葬儀ではなく、一般の弔問客も招いて行う葬儀を想定しています。

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この記事の目次

  1. 枕飾りとは故人の枕元に飾る仮祭壇のこと
  2. 仏教の枕飾りに必要なもの
  3. 仏教以外の枕飾りについて
  4. 枕飾りの注意点について
  5. 枕飾りを設置するタイミング
  6. 枕飾りは最近では葬儀会社が用意してくれることが多い
  7. 枕勤めについて
  8. 故人を安置する向きや仕方
  9. この記事のまとめ
  10. 監修者コメント

枕飾りとは故人の枕元に飾る仮祭壇のこと

「枕飾り」とは、その名前の通り、故人の枕元に飾る祭壇のことをいいます。「仮祭壇」と呼ばれることもあります。

無宗教の葬儀や直葬・火葬式(通夜や葬式・告別式を含まず、火葬のみを行う葬儀)の場合を除き、葬儀を行う際には基本的には「祭壇」が設けられます。

これは、仏式であれ神式であれキリスト教であれ同じです。

この「祭壇」は、通夜の前に設けられるものです。通夜を行うホールに葬儀会社のスタッフがしつらえ、花などを飾ります。

祭壇の大きさは喪家側の希望によって決まりますが、一般的に、多くの弔問客が見込まれる場合は大きな祭壇を、そうではない場合は小さな祭壇を作るのが基本です(喪家の意向が最優先されるので、弔問客が少ないであろう葬儀でも、大きな祭壇をしつらえること自体は可能です)。

対して、「枕飾り」はまったく違う意味を持ちます。

これは一般的な「祭壇」とは違い、故人の枕元に飾られるものであり、本祭壇の大きさに関わらず、こじんまりとしたものであるのが普通です。

葬儀会社ごとによって大きさに違いはありますが、半畳~1畳くらいの大きさであることが多いかと思われます。

枕飾りを行う意味

通夜が始まる前に、取り急ぎ自宅に足を運びお祈りをしてくれる人がいます。枕飾りはそのような人のために作られていると考える説もあります。

また、故人の立場、宗教的な考え方にのっとるのであれば、「枕飾りをして僧侶に読経をしてもらうことによって、故人が生前に抱いていた食欲などの『欲』が浄化され、供養になる」という意味があります。

「最終的に本祭壇を設けるのであれば、枕飾りはいらないのではないか」と考える人もいるかもしれません。

ただ、実は、亡くなった方は、そのまますぐに棺に納められて葬儀式場に運ばれるわけではありません。

多くの場合、一度ご自宅に帰り、布団に寝かせられます。その際に枕飾りが飾られます。本祭壇を作るためにはどうしても打ち合わせが必要です。

そのため、すぐにできるものではありません。

枕飾りは、それまでの時間の間、「手を合わせられる祭壇」としての性質も持っているのかもしれませんね。

枕飾りと本祭壇と後祭壇の違い

「枕飾り」と「後祭壇」は、しばしば「同じものなのではないか」と間違えられてしまうことがあります。

しかしこの2つは、まったく違うものです。

これは、「枕飾り」「本祭壇(一般的には単純に「祭壇」と呼ばれることもありますが、ここでは分かりやすいように「本祭壇」とします)」「後祭壇」が飾られるタイミングを見ていけば分かります。

枕飾りを使うタイミング

「枕飾り」は、故人が旅立ってから通夜が始まるまでの間、枕元に置かれるものです。

自宅で葬儀を行う場合以外は、通夜の前には納棺が行われ、葬儀会場に故人をお連れすることになります。

このため、枕飾りが使われるのは「御逝去後~ご自宅での安置~通夜の会場に行くまでの間」の極めて短い期間だけです。

もっとも、葬儀会社によって、「枕飾りを片付けるのは、すべての葬送儀礼が終わり、ご家族と一緒に戻ってきて、後飾りをつくるタイミング」というところもあります。

ただその場合であっても、ご家族も故人と一緒に葬儀会場に向かうことが多いので、枕飾りが「祭壇」として活躍できる期間は決して長くないといえるでしょう。

本祭壇を使うタイミング

「本祭壇」は、私たちが「葬儀の祭壇」と聞いたときに真っ先にイメージするものです。

白木や花などを使って作られる祭壇であり、葬儀の規模によって異なる大きさの祭壇が置かれます。

輿のような家のようなかたちをとる白木祭壇がよく使われていましたが、現在ではお花で作る祭壇もよく見られます。

白木祭壇は、基本的にレンタルで作られます。また、花祭壇を作る場合も、その土台は白木で作られていることが多いといえます。

この本祭壇が使われるのは、通夜~葬式・告別式の2日間です

一般弔問客は、この本祭壇に安置された故人に手を合わせ、焼香をすることになります。
葬儀に関わる祭壇のなかでもっともサイズが大きく、飾りつけも豪奢です。

後祭壇を使うタイミング

「後祭壇」は、枕飾りと混同されやすいものです。

これもまた、枕飾り同様、非常に小さいものであり、自宅に飾られます。後祭壇が葬儀式場に設けられることはありません。

日本の法律においては、特別な事情がない限り、ご遺体を火葬場に運んで火葬するように義務付けられています。

火葬が終われば、そのお骨を収骨します。
現在は、火葬後に一度葬儀式場(別の会場が設けられることもあります)に戻り、繰り上げ初七日法要と繰り上げ精進落としの席が設けられることが非常に多いといえます。

繰り上げ精進落としが終わった後、そこに参加していた人も解散します。喪家・遺族はその後、遺影やご遺骨を持って家に帰ることになります。

後飾りは、家に戻った後、白木の位牌や遺影、そしてご遺骨を置くために必要な祭壇です。枕飾りは机の上に白い布をかぶせてつくるのが基本であり、1段だけです。しかし後飾りの場合は2~3段構成になっていることが多いかと思われます。

一番上に遺影を置くのは共通事項ですが、その横にご遺骨や位牌を置くこともあります。このあたりは葬儀会社ごとによって多少の違いがみられます。

後祭壇は、ご遺骨と一緒に戻ってきた後から飾られるものです。

一般的に四十九日のタイミングで撤去されることが多いため、それに合わせるかたちで仏壇を用意する……というご家庭も多いようです。

なお、後祭壇は、葬儀会社を介している場合は、葬儀会社が撤去してくれることが多いかと思われます(自分で購入した場合は自分たちで一般ごみとして処分することもできます)。

葬儀の場においては、さまざまな「祭壇」が登場します。

しかしそれぞれの祭壇は、それぞれ異なる意味を持っていますし、また飾られるタイミングも異なります。

あまりあるケースではありませんが、「自分たちで枕飾りや後飾りを用意する」という場合は特に気を付けてください。

インターネットで「枕飾り ショッピング」などで検索を掛けると、後祭壇用の道具が出てくることもあるため、混同しないように注意したいものです。

仏教の枕飾りに必要なもの

ここからは、仏教の枕飾りに必要なものを取り上げていきましょう。

白木台もしくは白い布をかけた机

まず、枕飾りの道具を置くための台が必要です。これには、白木を使ったものか白い布をかけた小さなテーブルが使われます。サイズはそれほど大きくなく、半畳~1畳程度の大きさのものが多いかと思われます。

白木は、本祭壇にも使われる素材です。やや茶色がかった白い木材であり、これの上に道具を置いていきます。白い布があれば、一般的な机を用いてもよいでしょう。

もちろん、「白木のテーブルの上に、さらに白い布を掛ける」というやり方をとっても構いません。

あくまで体感的なものであり統計をとったわけではありませんから個人的な意見にはなりますが、現在は白い布をかけてつくることが多いように思われます。

仏壇に設置するおりん

「お鈴(おりん)」も置きます。おりんは、単純に「鈴(りん)」と呼ばれることもあります。ちなみに、「すず」とは読まないため、「リン」とカタカナで表記されることもあります。

おりんは、真鍮(しんちゅう)などでできており、その上から樹脂や金メッキが施される場合もあります。お椀型で、鳴らすと音がするもの――――と言えば、多くの人がどのようなものかイメージできるかと思います。おりんの下には、紫や赤色、金色などが使われた座布団が使われています。

このおりんは、おりんを鳴らすための棒(「りん棒」)とセットになっています。

三具足(香炉・燭台・花立)

「三具足」は、「みつぐそく」あるいは「さんぐそく」と読みます。

少し聞きなれない言葉であるうえ、「三具足」という物品それそのものが存在するわけではありませんから、これについては解説が必要でしょう。

三具足は、「香炉(こうろ)」「燭台(しょくだい)」「花立(はなたて。「花立て」とすることも)」の3つを合わせたものの総称です。

そのため、サイトによっては、「三具足」という呼称を使わず、この3つを別々に表記することもあります。

香炉は、仏教の葬儀においては非常になじみ深いものでしょう。通夜や葬式・告別式のときは、この香炉の中に入れられた炭(特に「香炭」といわれる)にお香を落としていきます。

枕飾りにおいては、香炉の中央に1本の線香を立てることになります。枕飾りで使われる香炉は、白色をしていることが多いかと思われます。

なお、「線香を中央にさす」ということからも推測がつくかと思われますが、香炉の側には線香立ても置かれるのが普通です。

「燭台」は、ろうそくを立てるための台です。白い燭台が用いられることが比較的多いのですが、黒色や金色を用いることもあります。

基本的にはろうそくの火を絶やさないようにするべきですが、現在は、火事の危険性などもあり、電気式のものを用いる場合もあります。

最後に、「花立」についても見ていきましょう。これは名前からもイメージがしやすいと思われます。その名前の通りお花を入れて置くための花瓶のようなものであり、枕飾りでは好んで白色がよく使われます。

この花立には、水仙や百合のような控えめな色の花をさしておくことになります。

ただ、より一般的なのは、樒(しきみ)です。樒はモクレン科に分類される植物であり、「しきび」とも記されます。毒性を持っている植物ですが、悪霊を払う効果があると信じられており、好んで使われます。

ちなみに、樒と榊(さかき)は、「葬儀の場に用いられる緑色の葉っぱの植物であり、花をつけていない」という共通点を持つことから混同されがちですが、この2つはまったく違うものです。

榊の方はツバキ科に分類されるものであり、光沢のある葉っぱです。また、榊は、特に神道の葬儀で重んじられる植物です。

飲食物(水・枕飯・枕団子)

このほかに、飲食物も供えられます。
まず、お水です。これは一般的な水道水で構いません。コップや湯のみに入れてお供えします。

次に、ご飯です。「枕飯(まくらめし)」「一膳飯(いちぜんめし)」のような読み方でいわれます。

かつては、故人に献げる枕飯は、日常に食べるお米とは別の鍋で、かつ米をとがない状態で炊き上げたとされていますが(かまども新しく作ったということです)、現在はここまで厳密に区別する必要はないでしょう。

いつも使っている炊飯器から出して構わないと思います。 これを、器(故人が使っていた食器などがよく使われます)に高く丸く盛り付け、その中央部にお箸を突き立てます。

子どもの頃、ご飯にお箸を突き立てて怒られた……という経験がある人もいるかもしれません。これは、このように「亡くなった方に献げるご飯と、その形式が同じであるから」というところからきています。

なお、この「枕飯」ですが、同じ仏教であっても宗派によって多少考え方が異なります。たとえば、同じ在来仏教である浄土真宗の場合は、このご飯は必要ありません。

なお、この「枕飯」は、しばしば「仏飯(ぶっぱん・ぶつはん)」と混同されます。これは、故人の使っていた器ではなく、足がついているこぶりの小さな器に盛りつけるご飯をいいます。

三角形に盛り付けることもあれば、ハスの実の形(円柱形)に盛り付けることもあります。これは、仏壇に供えることを前提としたご飯です。

そのため、枕飾りの場合は通常積極的には用いられません。また、通常は枕飾りを必要としない浄土真宗ですが、「この仏飯に盛り付けて出す」と考える人もいます。

「枕団子」は、枕飾りの際に置かれる団子です。これはうるち米で使われています。今でこそ団子は安価で買えるものとなりましたが、かつては非常に貴重なものでした。

ぜいたくな品であった白米や団子を供えれば「それを食べたいばかりに亡くなった方が生き返ってくれるのではないか」という願いが込められていたともいわれています。

枕団子の数は、地域によって差がみられます。全国的によく見られるのは11個のケースですが、東京の場合は6個供えることもあります。

浄土真宗と枕飾り

在来仏教のひとつである浄土真宗の枕飾りにおいては、ご飯は基本的にお供えする必要はないとされています。

これは枕団子や水についても同じで、これらの「飲食物」は浄土真宗においては必要とされません。

また、守り刀や死に装束も必要ないため、ほかの在来仏教とは少し異なったお見送りの方法をとることになります。

ちなみに、「日常とは異なることをする」ということで行われる「逆さ屏風(さかさびょうぶ。屏風の天地を逆さまにすること)や、服を逆に着せるといったことも行いません。

もっとも、これはあくまで「必要がない」という話です。
浄土真宗のお寺などでも、「枕飾りにおいてお供え物や、また死に装束などは必要とはされないけれども、したからといって悪いものではない」としています。

このため、葬儀会社ごとによっても考え方が多少分かれており、「仏飯というかたちでお供えする」などの意見も出てくるのでしょう。

あまり神経質になる必要はないかと思われますが、もし人から聞かれたのならばこのような考え方からだ、と答えるとよいでしょう。

仏教以外の枕飾りについて

「枕飾り」というと仏教のそれをイメージすることが多いかと思われますが、日本ではほかの宗教においても枕飾りがみられることが多いといえます。

代表的なところで、神式(神道)の枕飾りとキリスト教の枕飾りについて解説していきます。

神道の枕飾り

神道の枕飾りにおいては、「八足机(「はっそくのつくえ」あるいは「やつあしのつくえ」と読む)という白木の机が使われます。
これは文字通り8本の足がついたものであり、神道の宗教的儀式において使われます。

ここに、まず「三方(さんぼう)」を置きます。これは神様にお供えするためのもの(「神饌・しんせん」)を置くためのものであり、ここには水と塩、洗ったお米、それからお神酒が乗せられます。

その両横には、ろうそくを立てるための燭台が置かれます。神道の枕飾りの場合、燭台とお神酒(の入ったとっくり)は2本ずつ用意され、左右に分けて置くことになります。
同じ道具を使っていても、仏教とは置き方が異なるのです。

また、神道の枕飾りにおいても花瓶が使われますが、これも2つ用意します。

そしてそこに入れられるのは、樒ではなく榊です。榊は、神道の通夜や葬式・告別式のときに「玉串奉奠(たまぐしほうてん。仏教式葬儀における焼香と同じような意味を持つ)」使われるものであり、神式の葬送儀礼を語るうえで欠かすことのできないものでもあります。

神式において特に特徴的なのは、「御霊代(みたましろ)」を置くということでしょう。御霊代は「霊璽(れいじ)」とも呼ばれるものであり、仏教における位牌のような存在です。これを中央部分の奥の方に置くことになります。

これが基本のセットですが、ケースによっては、これ以外にも故人の好物をお供えすることもあります。

キリスト教の枕飾り

実のところ、キリスト教において本来は「枕飾り」という習慣はありません。また、元々の考えでは、そもそも通夜自体も行わないとなっています。

しかしキリスト教が日本に入ってきて、そしてそれが広く知れ渡り根付くようになると、より日本になじみ深いかたちへと徐々に変化していきました。その過程で、通夜や枕飾りも行われるようになったと考えられています。

キリスト教の枕飾りでは、白い布を掛けた机を用意します。その中央には聖書、そして向かって左側に十字架を置きます。

右側には、キリストの肉を表すパンを置きます。また、さらにその横には水の入ったコップが置かれます。 どの宗教においても、「燭台」は欠かせません。

キリスト教の枕飾りにおいてもこれが使われます。また、燭台と同様に欠かすことのできないものとして「花瓶」がありますが、キリスト教の場合は白い花を飾るのが一般的です。

キリスト教の枕飾りについて特に扱いに注意が必要なのが、「香油(聖油)の入った入れ物」でしょう。

これは、キリストの「終油の秘跡(しゅうゆのひせき。病者の塗油ともいう。生きている人に対しては病気の完治を願うという性質を持つが、罪が許されるようにという祈りも込める)」にちなんで置かれるものですが、これを使うのはカトリックのみです。

カトリックと並んで有名な宗派であるプロテスタントにおいては、この香油は置きません。

枕飾りの注意点について

枕飾りの注意点について見ていきましょう。

ろうそくの火について

どの宗派であっても、枕飾りにはろうそくが欠かせません。

ろうそくには宗教ごとによって異なる意味がありますが、「光明」「周りを照らす光である」「死後の旅を危険なく行けるように」といった精神的な意味もあれば、「獣から遺体を守る」という実利的な意味もあります。

現在では実利的な意味で使われることはありませんが、その厳かな火は、見送る人間の心に安らぎを与えてくれます。

さて、このろうそくですが、基本的にはずっと絶やさないようにしなければなりません。現在のろうそくは燃焼時間が長く、ある程度目を離していてもきちんと燃え続けてくれます。

ただ、人が出入りしたり、また眠りについたりするときに、ずっとろうそくをつけておくのはかなり危険です。火事のリスクがあるからです。

このため、現在では、「ずっと火を絶やさないでいること」が強く求められることは少なくなりました。また、電気式のろうそくも登場しているため、これを使うこともあります。

枕飾りではなく後飾りの場合は、ある程度長い期間ともし続ける必要があるため、特にこの電気式のろうそくが使われる可能性が高くなっています。

宗派について考える

仏教における浄土真宗、あるいはキリスト教におけるカトリックとプロテスタントのように、枕飾りは宗派によってその飾り方に多少の違いがみられます。

しかし浄土真宗では「特段お供えは必要ないが、したからといって障りがあるものではない」という立場をとっていますし、キリスト教の方でも「枕飾りはもともと必要のないもの。香油を置くことも必須ではない」と考える専門家が多く見られます。そのため、気にしすぎることはないでしょう。

ただ、「親族に強いこだわりを持つ人がいる」「故人がとても信心深い人であり、自分の宗派にこだわりを持っていた」というような場合は、葬儀会社にその旨を伝えるといいかもしれません。

枕飾りを設置するタイミング

枕飾りが設置されるのは、故人を家にお迎えした後です。

枕飾りが設置されている期間は、長くはありません。通夜の少し前には本祭壇が用意され、故人を会場にお連れすることになります。また、火葬の後には後飾りがしつらえられるため、枕飾りの活躍期間も終わります。

いつ撤去するのかは葬儀会社にもよりますが、後飾りの交換するようなタイミングで回収するケースもよく見られます。

枕飾りは最近では葬儀会社が用意してくれることが多い

枕飾りは自分自身で用意することもできます。ただこれは大変ですし、現在は葬儀会社に任せるのが一般的です。

葬儀会社は枕飾りに必要な一式をすべて用意できますし、設置~道具のセッティングに精通したスタッフもいます。彼らがすべて用意してくれるので、基本的には喪家側は何もすることがありません。

喪家側がしなければいけない可能性の高いこととしては、

  • お供え物の飲食物(特にご飯)の用意
  • 必要に応じてお花の準備

くらいでしょう。道具類を揃える必要はありません。また、枕飾りの撤収に関しても葬儀会社が行ってくれるので、自分で行うこともありません。なお、枕飾りの多くはレンタルですから、壊さないようにだけ注意してください。

枕勤めについて

「枕勤め(まくらづとめ)」は、枕飾りとよくセットにして語られるものです。

これは、枕飾りをした後に行われる仏教儀式であり、僧侶に来てもらって枕経(まくらぎょう。まくらきょう と読むこともある)をあげてもらうことをいいます。

ただし、「枕勤めと枕経は同じものだ」と考える専門家がいる一方で、「枕勤めとは、枕飾りをして、そこにともしたろうそくを消さないようにしながら納棺するまでの時間をいう」とする説もあります。

ここでは主に前者の解釈にのっとってお話していきます。

枕飾りをした後に行われるものですから、基本的には自宅で行われます。ただ、例外的に、納棺の前や、葬儀式場で挙げられることもあります。

元々枕経は、「息を引き取る直前に、最後を見守りながら行うもの」でした。しかし現在では、「亡くなった後、最初に行われるお経」という位置づけになっています。

これは通夜とは異なる性質を持ちます。一般葬にする場合であっても弔問客は参加しません。親戚だけで行うのが基本です。

非常に親しく付き合っていた人ならば参列することはあるかもしれませんが、これも例外的な話です。

枕経に参加する場合は、普段着で出ます。ただし、地味な装いにしておいた方がよいでしょう。また、この枕経のときに、個別に香典を用意する必要はありません。

菩提寺に連絡をして来てもらうようにしますが、現在ではこの枕勤めそのものが省略されることもよくあります。

故人を安置する向きや仕方

枕飾りをする前に、故人を布団に安置します。このときは北枕にします。お釈迦さまが入滅するときに北側に頭を向けたことが由来とされています。

ただ、間取りによっては北枕にすることが難しい場合もあります。この場合は仏壇側もしくは西側に頭を置きます。

故人におやすみいただく布団は、故人が愛用していたものを使います。その上に新しい白いシーツを敷きましょう。ただし、葬儀会社によっては、「葬儀会社側で新しい布団を用意する」としていることもあります。

「葬儀では、通常とは逆のことをする」という考え方から、掛布団は上下を逆にしてかけるようにします。

なお、通夜~葬式・告別式がすぐに行われる場合はあまり問題にはなりませんが、薄手の布団を利用する方がより良いでしょう。厚めの布団を使うと熱がこもりやすくなり、ご遺体が傷みやすくなってしまうからです。

加えて、胸の上あたりに守り刀を置きます。これは、「魔物が寄ってこないように」という願いによるものです。ただし、宗教・宗派によっては、守り刀を用いない場合もあります。

この「故人を安置する方法」ですが、これも基本的には葬儀会社の人間が行います。基本的には喪家側が主体となって行うことは少ないと思われます。

この記事のまとめ

枕飾りとは、故人を病院から自宅にお連れした後に設けられる仮の祭壇のことです。

その名前の通り枕元付近に置かれることが多いものです。

通夜~葬式・告別式に使われる本祭壇、火葬した後のお骨が置かれる後祭壇に先駆けて作られる祭壇であるため、枕飾りが使われる期間は非常に短いといえます。

遅くても後祭壇をしつらえる前には撤去されます。しかしここで枕経が行われたり、納棺前の故人を見守ったりする祭壇であるため、その重要度は高いといえます。

枕飾りは、宗教によってその作り方や置くべきアイテムが異なります。また、宗派によっても多少異なります。

厳密である必要はありませんが、こだわる人がいるならば少し注意したいものです。なお、キリスト教において、本来枕飾りは使いませんが、日本では比較的よく枕飾りが飾られます。

枕飾りは自分で用意することも可能です。しかし現在は葬儀会社が用意してくれるため、自分たちで注文したりつくったりする必要性は極めて薄いといえるでしょう。

故人におやすみいただくときは、北枕にして、薄い掛布団を上下逆さまにかけるようにします。布団は、故人が愛用していたものに白い新しいシーツを掛けます。

ただこれも、葬儀会社によっては「葬儀会社の方で用意をする」としている場合もあります。

また、ご遺体を安置するときも、葬儀会社のスタッフが中心となって行います。 枕飾りは、一番初めに作られる祭壇です。その活躍の期間は長いとはいえませんが、大切にしたいものでもあります。


監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

枕飾りに白木の台や白い三具足を使うのには意味があります。白木や白い器は格式が高いという意味もありますが、一度切りというシーンによく使われます。そのため、白木や白い器は、一度使用したら二度と使用できないように壊してしまう習俗もよくみられました。

今でも、新盆に用いる白紋天(白提灯)は、一度きりしか使用しないものとして知られています。葬儀の祭壇で使用する白木祭壇も、本来は使いまわしをするものではないのですが、「対象者一人だけのために組み立てた祭壇」という意味で白木が使われます。

対して仏壇は、家族、先祖複数人を子々孫々お祀りするという意味で塗製になります。位牌も白木の位牌は四十九日までしか使用しないものですが、塗の本位牌は永きにわたって仏壇に安置され、夫婦位牌、○○家の位牌として安置することもできます。

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終活といっても、生前整理、葬儀、お墓の検討などさまざまです。
そのなかでも「お墓」は、一生に一度あるかないかの買い物ですね。

  • 自分のライフスタイルに合ったベストなお墓はどういうものなのか知りたい
  • お墓選びで複雑な手順を簡単に詳しく理解したい
  • お墓選びで注意するべきポイントを詳しく知りたい

など、数々の不安を抱えている方が多いのではないでしょうか。
お墓の購入に関しては、初めての方が多いため、不安や疑問を持つことは仕方のないことでしょう。
しかし、お墓購入後に後悔することだけは避けたいですよね。
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