仮通夜ってどんなもの?本通夜や半通夜との違いと参列のマナー
葬儀は、多くの人にとっては非常に馴染みの薄いものです。
また、似たような単語もたくさんでてくるため、非常に混乱を招くものでもあります。
今回はそんな単語のなかから、「仮通夜」を取り上げます。
混同されがちな「本通夜」「半通夜」との違いについても解説していきます。
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この記事の目次
仮通夜とは
仮通夜は、「かりつや」と読みます。
仮通夜とは、故人が亡くなった直後に訪れる初めての夜を、弔問した人たちが故人と一緒に過ごすことを指します。
仮通夜の特徴は「故人と静かに過ごす」こと
一般的な通夜の場合、宗教的な儀式が挟まれるのが基本です。
しかし仮通夜は、基本的に「故人と静かに過ごす」ことのみとされています。故人のご遺体を、遺族・親族で見守りながら夜を越すのです。
このため、本通夜とは明確に区別されます。
ただ、「仮通夜」と一口にいっても、その種類ややり方はかなり多岐に富んでいます。
- あくまで故人を見守るための夜であり、僧侶は呼ばない(多くの葬儀会社が「半通夜」と呼ぶのはこのやり方です)
- 近親者のみで行い、枕経も読んでもらう(一部の葬儀会社では、このやり方を「半通夜」としています)
- 焼香も行い、お経もあげてもらう(寺院のなかにはこのやり方をとるところもあります)
は葬儀会社や寺院によってすら「何をもって『半通夜』とするか」は判断が分かれます。
ただ今回は、主に1の意味で使っていきます。
特例として、「通夜を2日間以上かけて行う」という場合は、初日の通夜を「仮通夜」と呼ぶこともあります。
仮通夜と本通夜、半通夜~3つの「通夜」の違い
葬儀の場では、「仮通夜」以外にも「通夜」と呼ばれるものが2つあります。
- 本通夜
- 半通夜
それぞれの違いについてみていきましょう。
なお、現在は家族葬などもよく行われるようになりましたが、ここでは分かりやすくするために、「仏式の葬儀であり、かつ一般の参列者も受け入れる一般葬」を基本としてお話していきます。
本通夜
本通夜とは、一般の参列者などを招いて行う儀式をいいます。
多くの場合、ご逝去の翌日に行われますが、まれにご逝去当日(亡くなったのが日付をかわったばかりのときなどであり、親族なども近くに住んでいる場合)や2日以上経ってから(どうしても参加してほしい人が遠方にいて来るのに時間が必要な場合や、火葬場の休日と被る場合など)から行われることもあります。
本通夜は夜(18時以降が比較的多い)に行われます。
受付に人が立ち、参列者から香典を受け取ります。
また現在は、即日返しということで、この時点で香典返しをお渡しするケースも多く見られます。
開場10分ほど前に会場の中に誘導されるので、参列者はそこで僧侶の入場を待ちます。
読経に合わせて焼香が行われ、喪主の挨拶などを経て終了となります。
葬儀の規模によりますが、45分~3時間程度で終わります(一般的には1時間~1時間半ほどのケースが多いといえます)。
この後には通夜ぶるまいが行われることが多いので、特段の事情がない限りは、この通夜ぶるまいに参加します。
ご遺族に引き留められない限りは長居は避けるべきですが、かたちだけでも箸をつけるようにしてください。なお、車で来ている場合は、お酒の勧めは断っても構いません。
半通夜
「半通夜」という言葉は、現在では「本通夜」とほとんど同じ意味で使われています。
そのため、半通夜について解説するときには、「そもそも、歴史のなかでは『通夜』はどのように扱われていたのか」を見ていく必要があります。
かつて通夜というのは、夜通し故人を見守る儀式を指していました。
昔は今と異なり生死の判定が難しく、一度「亡くなった」と判断されても後で息を吹き返す可能性もありました。
また、線香やろうそくの品質も悪く、夜を通して炊き続けるのは不可能でした(現在は電気式のろうそくなどがよく使われています)。
そのため、だれかが起きていて、文字通り夜を徹して故人を偲び、見守っていたのです。
そこに現れた「特例」が、「半通夜」でした。
半通夜の場合、参列者は数時間で退席します。
夜を通して故人を見守るようなことはなく、日が変わる前に辞するのです。
これは今までの「夜を徹して見守る」通夜と区別され、「半通夜」と呼ばれていました。
ただ、線香やろうそくの発達、小規模な葬儀がよく取り上げられるようになったこと、冠婚葬祭の考え方の変遷などがあり、現在ではこの「半通夜」がスタンダードとなりました。
そのような歴史的な移り変わりのなかで、かつての常識であった「夜を通して見守る」という「通夜」はすたれ、「日付が変わる前に辞する」という半通夜の方が「通夜」と呼ばれるようになってきました。
このため、現在では特段の注釈がない限り、「通夜」といえば、かつてのこの「半通夜」を指すようになりました。
もっとも、半通夜の場合であっても、線香などを絶やさないために見守る家庭もあります。
このため、「かつての通夜」と同じように営まれる「半通夜」があるのも事実です。
ここでは混乱を避けるため、「亡くなった初日に故人を見守る通夜」を仮通夜と呼び、翌日に参列者を招いて行う通夜を「本通夜」として話を進めていきます。
なお、現在は「小さな葬儀」「宗教にとらわれない葬儀」を希望する家も増えています。
このため、通夜自体をカットする葬儀のやり方も注目されています。
通夜を行わずに葬式・告別式だけを行う「一日葬」や、通夜も葬式・告別式も行わないで送る「直葬(火葬式とも)」がその代表例です。
ちなみに、現在多くの人に選ばれている「家族葬」は、基本的には通夜も葬式・告別式も両方行います。
仮通夜に参加するのは基本的に親族のみ
一般参列者を招いて行う本通夜とは異なり、仮通夜は親族だけで行うのが基本です。
肉親同様に親しく付き合っていた人ならば声を掛けることもありますが、一般的には肉親以外は受け入れません。
現在では、仮通夜では宗教的儀式(読経など)は行わないケースが増えてきています。
ただ、遺族が希望し、僧侶(寺院)側の都合がつけば、お経をあげてもらうことももちろん可能です。
このお経は、「枕経(まくらきょう)」と呼ばれることもあります。
枕経は故人が亡くなった後、一番初めに唱えられるお経です。
枕飾り(安置された故人の枕元にしつらえられた小さな祭壇。
仏教の場合は、線香やろうそくなどが乗せられている)がされた部屋で僧侶にあげてもらうものであり、現世の罪を清めることなどを目的とします。
枕経自体は30分程度であげ終わります。
枕経を行うかどうかは、遺族の判断によります。
菩提寺との連絡が密にとれていたり、故人の希望(エンディングノートに記載があったなど)があったりするのであれば枕経を希望してももちろん良いのですが、「絶対に行わなければならないもの」ではありません。僧侶の都合もあります。
また、寺院のなかには、「枕経と、仮通夜であげるお経は別物」と考えるところもあります。
「どのようなかたちにするか決めかねている」「頼むかどうか迷っている」という場合は、葬儀会社に相談するとよいでしょう。
仮通夜に参加するときのマナー
仮通夜に参加するときのマナーですが、これは下記のいずれの考えに従って仮通夜を行うかによって異なってきます。
- あくまで故人を見守るための夜であり、僧侶は呼ばない
- 近親者のみで行い、枕経も読んでもらう
- 焼香も行い、お経もあげてもらう
仮通夜に参加するときの服装と持ち物
1と2の場合は、原則として平服で構いません。地味な服装(黒色や紺色などの洋服)を身に着けていれば、それでよいとされています。
アクセサリーは外すべきですが、結婚指輪ならばつけておいて構いませんし、ズボンなどでも構いません。
楽な姿をしていればよく、格好についてうるさく言われることはないでしょう。
ただ、2の場合は、持ち物として「数珠」が必要です。
枕経をあげる場合は、仏教の葬儀ということですから(神式では「枕直しの儀」ということでご遺体を安置して祭壇を作ることはありますが、お経はあげません。
また、キリスト教の場合は枕飾りをすることもありますが、キリスト教の考え方の根本としては「枕飾りは必要がない」としています)、お参りをするときに必要となるお数珠を持っておく必要があります。
ただ、遺族・親族の立場の場合はそのまま翌日の通夜に参加することが前提となっているので、だれでもお数珠を持っていることでしょう。
なお、数珠の数やかたちは、厳密にいえば宗派によって異なります。
しかし、寺院に所属する僧侶でもない限り、それが問われることはありません。
もし「数珠を忘れてきた!」という場合は、買いに走れば問題ありません。
3の場合は、少し様相が異なります。現在葬儀会社などで取り上げている「仮通夜」は、基本的には1のかたちが多く、2についても「そのようなかたちもとれる」としているところが多いことでしょう。
しかし寺院によっては、明確に「仮通夜」を非常に厳密に扱います。
このようなところの場合、仮通夜を一般的な通夜に準じたものとして扱い、参列者も、「家族や親族だけでなく、近所の人なども受け入れる」とします。
このかたちで仮通夜をする場合、「小規模な通夜」のような認識を持っておいた方がいいかもしれません。
このため、焼香も行います。焼香は回し焼香(主に会場が狭いときに取られるやり方で、香炉と抹香を乗せた焼香台を順繰りに回して焼香していく)で行うケースがみられます。
1と2とは異なり、こちらの場合は、喪服を着用することが求められます。
どのようなかたちの仮通夜をするかは、家族ごと、寺院ごとによって異なります。
ただ、一口に「仮通夜」と言っても、そのやり方はさまざまです。
遺族として参加する場合ならば自分たちで話しあって決めればよく、親族として参列する場合は仮通夜に参加するときの服装を遺族に聞くとよいでしょう。
親族の場合は、当然次の日のための喪服を持ってきているはずです。
「喪服が望ましい」と言われれば、着替えるためのスペースを借りて喪服に着替えるとよいでしょう。
仮通夜、香典はどうする?
仮通夜のときに考えたいものの一つとして、「香典」があることも忘れてはいけません。
この「香典」についても、専門サイトごとで考え方が分かれています。
まず、大前提として押さえておきたいのは、「枕経を行う際には、原則として香典は必要ない」ということです。このため、1や2のケースの場合は、まったく香典を持っていく必要がないように思われます。
しかし、「仮通夜のときでも香典を渡して構わない」とする意見もあります。
仮通夜の場合は、親しい人や近しい人が集まるものです。
また、本通夜や葬式・告別式のときほどは「参列者の対応」に追われることもありません。
そのため、親族としては香典を渡しやすい環境が整っています。
このときに渡す香典は、「亡くなった方」「渡す人の年齢」によって異なります。
祖母の場合は10,000円~50,000円程度、兄弟姉妹の場合は30000円~100,000円程度、良心の場合も兄弟姉妹の場合と同じです。
叔父・叔母の場合は10,000円~30,000円を包みます。
その場合、浄土真宗以外は「御霊前」、浄土真宗では「御仏前(御佛前)」とします。
このように、「仮通夜で香典を出すか出さないか」の一点においても、見解は分かれます。
ただ、「持って行ってもよい」とする説も、「持って行かなければならない」とはしていません。そのため、本通夜があるのであれば、本通夜のタイミングで出すのが無難でしょう。
あるいは、年長者のやり取りにならうかたちで出すかどうかを決めても構いません。
親族であれば本通夜や葬式・告別式には参加するべきです。
ただ、「志望校の受験や、仕事で必要な資格試験がある」などのような事情があり参加が難しい場合は、仮通夜のときに渡しても構いません。
「香典は持って行かないことに決めたけれど、手ぶらで行くのはちょっと……」という場合は、お菓子などを持っていくとよいでしょう。
この場合、本通夜で出せるようなお菓子を持っていくのが基本です。
ただ、多くの人がこのような品を持参することも考えられるので、日持ちがするものを選ぶと喜ばれると思われます。
せんべいなどの乾きものを選べば、遺族が「賞味期限切れ」に頭を悩ませることもありません。
御臨終から仮通夜、仮通夜から本通夜までの流れ
御臨終から仮通夜までの流れと、仮通夜から本通夜までの流れについてみていきましょう。
下記は、すべて「仏教の葬送」を想定しています。
1.ご臨終
現在は病院で亡くなられることが多いと思われます。
亡くなった時点で、葬儀会社に連絡を入れて寝台車を手配します。
なお、葬儀会社への連絡は、365日24時間いつでも行えます。
正月などでも配慮する必要はありません。
2.親族を中心として連絡を入れる
親族に連絡を入れます。
親族への連絡は、時間を問わずに行って構いません。
深夜であっても、連絡して問題ありません。
3.時間帯によっては僧侶へも連絡を入れる
かつては僧侶への連絡も、深夜帯でも行ってよいとされていました。
しかし現在は、深夜帯などの場合は連絡を避けるようになっています。
常識的な時間であればすぐに僧侶に連絡をして構いませんが、深夜帯などの場合は翌日になってから連絡をしましょう。
2と3に関しては、並行して行っていきます。手分けして行うとスムーズです。
4.寝台車の到着~故人をお連れする
寝台車が到着します。
葬儀会社と病院の距離にもよりますが、だいたい20分程度、長くても1時間程度で到着します。
寝台車に故人を乗せて、安置する場所(自宅か葬儀会場が一般的です)にお連れします。
5.ご遺体を安置する
ご遺体を安置して、枕飾りを行います。
仮通夜で僧侶を呼ぶ場合(枕経を必要とする場合)は、この日のうちに僧侶がやってきます。
6. 仮通夜が行われる
仮通夜が行われます。
僧侶を迎えるのであれば、この前段階で僧侶を玄関先まで行ってお出迎えします。
7.翌日に本通夜が行われる
仮通夜を済ませた翌日に、本通夜が行われます。
本通夜は一般の参列者を受け入れて行うことになるのが原則です(ただし、家族葬などの場合は例外です)。
枕経を必要としなかった、あるいは仮通夜で僧侶を呼ばなかった場合でも、本通夜では僧侶を読んで読経してもらうことになります。また、焼香も行います。
8.通夜ぶるまいが行われます。
本通夜が終わったら、通夜ぶるまいを行います。
遺族・親族控え室でオードブルなどが振る舞われます。
9.翌日に葬式・告別式~精進落としまでを行う
翌日に葬式・告別式を行い、出棺します。
出棺後火葬場に行き、荼毘にふします。
本来はここで解散ですが、現在は葬儀会場に帰り、繰り上げ初七日法要と繰り上げ精進落としまでを行うケースが多く見られます。
まとめ
仮通夜とは、本通夜を行う前日に行う通夜をいいます。
「どのような形態で行うか」はそれぞれ異なりますが、現在は、家族や親族だけで故人を見守るというかたちをとるのが一般的です。
ただ、僧侶を呼び、本通夜と同じようなかたちでとりおこなわれることもあります。
仮通夜は、「どのような形態で行うか」によってマナーが異なります。
- 親族や遺族だけで行い、枕経もあげない
- 僧侶を呼び、枕経はあげてもらう
- 焼香も行い、お経もあげてもらう
1や2の場合は、平服で構いません。
2の場合はお数珠が必要ですが、1の場合はお数珠も必要ありません。
3の場合は、喪服を着て参加することが求められるため、1や2とは様相が異なります。
仮通夜では、基本的には香典は持っていきません。
ただ、仮通夜は親族などが集まる場でもあるので、場合によっては、本通夜で出すべき香典をここで出すこともあります。
仮通夜の翌日には本通夜が行われ、その翌日に葬式・告別式が行われます。
葬式・告別式が行われたその日のうちに火葬~繰り上げ初七日法要~繰り上げ精進落としが行われるのが近年よく見られるかたちです。
仮通夜は、現在は省略する家庭も多くあります。
ただ、希望するのであれば、「どのような仮通夜を行いたいか」をしっかりと考えるとともに、僧侶とのスケジュール調整をしていく調整能力も求められます。
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
通夜とは、死者の側に近親者が夜通し付き添うことを意味しています。その間、ロウソクの火を絶やさないようにしたり、死者と添い寝をしたり、儀式的なことをしたり、死者と共にどのように過ごすかは地域による違いが大きいように思います。さらに通夜は1日ではなく数日かけて行わることも多かったため、現代の通夜はそれに対して半通夜という言葉になったともいわわれています。
仮通夜というのは、現代の通夜が告別化し、一般の人が参列するようになったことから、近親者だけで営むものを区別して仮通夜と表現されるようになりました。通夜の形は時代とともに変わっていますが、死を目の前にした遺族が、死者と共に過ごす時間であることに違いはありません。
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