「粗供養」とはいったい何?解釈が分かれる「粗供養」のあり方と考え方
人が亡くなったときに聞く単語のなかには、聞きなれないものもあります。そのなかのひとつが、「粗供養」です。
粗供養とは、供養のためにいただいたもののお礼のことをさします。
この記事では、粗供養とはいったい何なのか、満中陰志との違いは何なのか、粗供養はいつどのタイミングで送るのか、地域(ご家庭)ごとによる「粗供養」という単語の解釈の違いとは何なのか、粗供養の相場はいくらくらいなのか……。といった疑問を丁寧に解説していきます。
粗供養とは、非常に多くの解釈がある言葉ですから、自分自身の地域や家庭においての「粗供養」はどれにあたるのかの参考にしてください。
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この記事の目次
粗供養とは「供養」に対するお礼
粗供養とは、簡単に言うと「供養のためにいただいたもの(物品・金銭)」に対するお礼のことをいいます。
この「粗供養」という単語の解釈についてはいろいろあります。
たとえば、一般的に言う「香典返し」と同じ意味で使うところもあります。対して、「通夜・葬式告別式のその日に返すもの」と解釈するところもあります。また、「一周忌のときに贈るもの」と考えることもあります。
このように「粗供養」の言葉の解釈はそれぞれ違います。葬儀のサイトなどを見ているとどれかひとつの解釈だけを提示している場合もありますが、贈るタイミングや金額、どのように贈るか、どのようなものを選ぶかに関しては、解釈の違いが影響されます。
ただ、どの解釈に従おうとも、「通夜、葬式告別式にいただいた弔意へのお返し」という大原則は変わりません。
このため原則として、粗供養は喪家側から弔問客側にお渡しするものといえます。
※「香典返し」について・・・「香典」は厳密には仏教用語ではありますが、代わる言葉がないため、キリスト教や神式の葬儀においてもこの単語が使われることがよくあります。ここでも、特記すべき理由がない限りは、宗教を問わずに「返礼品」の意味で使います)」
「粗供養」と「祖供養」と「志」の違い
さて、「粗供養」という表現ですが、実はこれには多くの書き方があります。このサイトでは、「粗供養(粗品の『粗』)」として展開していきますが、「祖供養(先祖の『祖』)とする場合もあります。
「粗供養」の場合は、日本の謙遜の美徳である「つまらぬものですが」「粗品をお送りする」という意味が込められています。対して、「祖供養」とした場合は、「先祖に対する供養(へのお礼)」という意味を持つことになります。同じ言葉、同じ読み方であっても、そこに込める意味は少し異なるわけです。
ただ、実際の葬儀の現場においては、この違いはそれほど重要視されるものではありません。どちらも同じように使われていますし、使い分けはなされていないのが実際です。もちろん、「粗供養(祖供養)の方の文字を使いたい」ということであり、それを葬儀会社のスタッフに伝えたのであれば、希望の文字の方を選べるでしょう。
もう一つ、「粗供養(祖供養)」と合わせてよく使われるのが、「志(こころざし)」という表現です。これは香典返しの表書きとしても使われるものです。東日本においては、特によく、この「志」という表現が用いられます。
そのため、葬儀会社などに勤めている専門職の人であっても、地方によっては「粗供養(祖供養)とする表現は見たことがない」「志とする表現にはなじみがない」といったケースもあります。
また、「粗供養(祖供養)」「志」もまたさまざまな意味・解釈がある言葉ですから、「ある地方で使われているこの単語と、ほかの地方で使われている単語ではまた解釈が異なる」となることもあります。
これは粗供養(祖供養)に限ったことではありませんが、葬儀にまつわる言葉やマナーについては、地域ごと・家庭ごとによって違いがみられます。その場で相手が使っている単語と自分のなかの知識としてある単語の意味が、本当に同じものなのかどうかのすりあわせが必要になってくる場合もあります。
満中陰志(まんちゅういんし)とは
満中陰志とは、満中陰(四十九日が満ちた)のタイミングでお渡しするときの香典返しを指す言葉です。ただ現在は、「満中陰」を「満中陰志」として解説しているところもあります。
満中陰とは、「中陰が満ちたこと」を表す言葉です。そしてこの中陰とは、死後四十九日」のことを指します。よって四十九日が満ちたタイミングで行われる法要を「満中陰法要(まんちゅういんほうよう)」といいます。
なお、満中陰法要は「四十九日法要」ともいわれます(こちらの方が呼び方としては一般的かもしれません)。なお、中陰は「中有(ちゅうう)」とも呼ばれますが、この呼び方はあまり使われることはないでしょう。
満中陰志と粗供養の違い
このようなことを見ていると、「満中陰志と粗供養は同じものなのではないか」と考える人もいるでしょう。粗供養を「先祖にいただいた供養へのお礼」と考えれば、この説も間違っていないように思われます。
ただ、「満中陰志とはあくまで香典返しとして贈るものであって、粗供養はささやかな粗品を贈るものであるため、意味が違う」と考える説や、「満中陰志は香典返しであり、粗供養は一周忌法要以降の法要の返礼品として贈るものである」とする説もあります。
逆に、「そもそも満中陰志という言葉自体を使わない」とする地域もあります。
このあたりは、地方によって非常に大きな差が出ます。
たとえば関西圏の場合は「香典返しは満中陰志とし、一周忌以降は粗供養とする」というのが一般的ですが、愛知県などでは「香典返しも一周忌以降の返礼品も、すべて粗供養とする」と考える向きが多いといえます。対して、東日本の場合は「そもそも粗供養の表現も、満中陰志の表現も使わない。すべて『志』で統一している」ケースがよく見られます。
このように考えていけば、「満中陰志と粗供養の違い」もまた、地方やご家族によって考え方が異なるといえるでしょう。どのような呼び方を取ればよいのか分からないのであれば、スタッフに一度聞いてみることをおすすめします。
粗供養を贈るタイミングはケースによって異なる
粗供養の解釈は地域ごと・ご家族ごと・葬儀会社ごとによって異なります。そしてそれぞれで「贈るタイミング」も異なってきます。
代表的な考え方は、以下の3つです。
粗供養の解釈 | 贈るタイミング | |
---|---|---|
① | 粗供養=香典返し | 葬儀・通夜に即日返し、又は四十九日後に贈る |
② | 粗供養=会葬お礼 | 葬儀・通夜に即日返し |
③ | 粗供養=ご仏前へのお供えのお返し | 法要のときにお返し |
ひとつずつ見ていきましょう。
「粗供養=香典返し」とし、葬儀・通夜に即日返し、又は四十九日後に贈るケース
粗供養の解釈 | 贈るタイミング | |
---|---|---|
① | 粗供養=香典返し | 葬儀・通夜に即日返し、又は四十九日後に贈る |
「粗供養とは、香典返しのことである」と考える場合、香典返しを贈るタイミングで粗供養を贈ることになります。
香典返しを贈るタイミング
この「香典返しを贈るタイミング」もまたケースバイケースだといえます。
※なお現在は、不祝儀は物ではなくお金で渡されるのが一般的です。この記事では、特に記載がない限りはお金とします。
本来香典返しは、「いただいた不祝儀の2分の1~3分の1の金額をお返しするもの」でした。そのため、10,000円いただいたのであれば3,000円~5,000円のものを返す…などのようなやり方をとるのが原則です。現在でも多額の不祝儀をいただいた場合は、それに応じた香典返しをお持ちするのが基本です。また現在は郵送で済ませることもありますが、本来は直接お伺いをしてお渡しするものです。
ただ、このようなやり方は家族にとって非常に手間が増えることにつながりますし、弔問客にとっても負担が大きいものです。そのため現在は、「即日返し」というやり方もとられるようになりました。
これは、通夜や葬式・告別式のときに受付で不祝儀を受け取り、すぐに香典返しをお渡しするというやり方です。一般的に3,000円~5,000円前後の香典返しをお渡しし、それでよし……とするのです。
10,000円以下の不祝儀に対しての返礼はこれで済んだと考えて、個別の訪問・郵送は行いません。なお、多額の不祝儀を寄せてくれた方には、後日改めてお礼と香典返しをお渡しします。
「粗供養=香典返し」と考えた場合返す必要がなくなることも
粗供養=香典返しと考えた場合、即日返しもしくは多額の不祝儀をいただいた人に後から返すもの……ということになります。
しかし、このような考えに基づくと、「そもそも粗供養=香典返しを贈る必要がない」というシチュエーションも出てきます。現在家族葬などでは、「不祝儀は辞退する」とする場合もあります。このようなときには、当然粗供養(香典返し)を用意する必要はなくなります。
なお、大黒柱を失ったためいただいた不祝儀は遺児の養育費にあてるもしくは寄付するという場合も、粗供養(香典返し)は必要ありません。ただその場合は、お礼とご報告を兼ねたお便りを出す必要があります。
「粗供養=会葬御礼」とし、通夜・葬式告別式に即日返しをするケース
粗供養の解釈 | 贈るタイミング | |
---|---|---|
② | 粗供養=会葬お礼 | 葬儀・通夜に即日返し |
粗供養を、「会葬お礼」と考えるケースでは、粗供養は通夜・葬式告別式のときにお渡しすることになります。
本来、会葬御礼と「即日の香典返し」は異なるものです。会葬御礼とは、あくまで「弔問に来てくれた人にお渡しするもの」であって、「不祝儀を渡してくれた人にお渡しするもの」ではありません。そのため、会葬御礼=粗供養と考えるのであれば、不祝儀を出す・出さない、受け取る・受け取らないに関わらず、当日に粗供養をお渡しすることになります。
ただ、「会葬御礼をどう考えるのか」についてはさまざまな意見もあります。粗供養=会葬御礼の場合はそのまま当日にすぐにお渡しすることになりますが、そこにかけられる金額などは変わってきます。
「粗供養=ご仏前へのお供えに対するお返し」とし、法要のときにお返しするケース
粗供養の解釈 | 贈るタイミング | |
---|---|---|
③ | 粗供養=ご仏前へのお供えのお返し | 法要のときにお返し |
粗供養=ご仏前に供えられたお供え(お金も物品も含む)という場合は、その法要のときにお渡しすることになります。
粗供養=香典返しととらえた場合や粗供養=会葬御礼ととらえた場合は、「通夜・葬式告別式の当日にお渡しする」という選択肢がでてきます。しかし、粗供養=ご仏前へのお供えと考えた場合は、一周忌法要や三回忌法要などの、「法要の後」にお渡しすることになります。
この場合は、引き出物というかたちで用意することになります。
このように、「粗供養を、どのような意味で使うか」によって、贈るタイミングも異なってきます。「古くからこの土地に住んでいる親戚と、外に出てしまった親戚では『粗供養』の解釈も異なり、贈るタイミングも異なる」ということも十分にありえます。その場合は葬儀会社のスタッフなどに聞いて、望ましい表書きを選ぶようにしたいものです。
粗供養は喪主以外が用意する場合もある
粗供養は、「香典返し」として扱われることもあります。しかしこの2つには大きな違いがあります
香典返しを用意するのは、ほぼ100パーセント喪主の仕事です。喪主(や喪家)側が手配をし、見繕います。また親戚に対しても香典返しを渡すことになります。
祖供養の場合もまた、喪家(喪主)が手配するのが基本です。しかし香典返しとは異なり、喪主以外の人が用意するケースもあります。
それにはいくつかのパターンがあります。
1.喪主と施主が違う場合
喪主と施主は、厳密には違うものです。喪主は葬儀全体を取り仕切る役目のことをいい、施主はお金を支払う人をいいます。
通常の葬儀においては、喪主=施主となるためこの2つが明確に区別して話されることはありません。
ただ、「父親が亡くなった。一番近い関係にある母(妻)が喪主として立つが、金銭面の負担は現役世代である長男が負う」という場合などは、「喪主=母親(妻)、施主=息子」となります。
このようなケースで粗供養を用意するときには、喪主からの気持ちを表す粗供養と施主からの気持ちを表す粗供養の2種類を用意することもあります。ただこの場合は、粗供養にかけるお金が2倍になるわけではありません。相場の半額くらいを喪主と施主がそれぞれ担当してお渡しするかたちになります。
なお、喪主と施主が分かれている場合でも、祖供養は一つにまとめるというやり方がとられることもあります。
2.喪主以外の親戚が用意する
粗供養は基本的には喪主が用意するものではありますが、喪主以外の親戚が用意することもあります。たとえば、兄弟姉妹や親などです。
この場合は、兄弟姉妹や親が用意した祖供養も喪主が用意した粗供養も一緒に配られることになります。
1のケースと少し似ていますが、こちらの場合は「喪主でもなく、施主でもない親戚(家族)もまた、粗供養を用意する」という点が違います。
3.粗供養に使うものを持ちよることもある
粗供養とは、本来は弔問客にお渡しするためのものではありますが、「参列する人が、祖供養品として配られるものを持ち寄る」としているところもあります。これはかなり特徴的なことだといえます。
これは関西圏の一部で見られることであり、ほかの地域ではあまりみられません(ほかの地域にはそもそも祖供養の文化自体があまり根付いていないということもありますが)、
ここで紹介した1~3は、どれも「間違っている」といえるものではありません。
祖供養を用意するのは原則として喪主ではありますが、それ以外の人が用意することもある……ということを覚えておくと、予想とは違うことが起きても対応がしやすくなるでしょう。
いくら分を渡すといいの?粗供養の品物を選ぶ金額相場
ここからは、「粗供養にかかる金額」について考えていきましょう。
これもまた、「粗供養をどうとらえるか」によって変わってきます。
「粗供養=会葬御礼」とした場合
粗供養を「会葬御礼」ととらえた場合は、会葬御礼の相場の金額に合わせます。会葬御礼の金額は、500円~1,000円程度が一般的です。このため、このあたりが基本となってくるでしょう。
しかしここで問題が生じます。
それが、「当日に香典返しを行う場合はどのようにバランスをとればよいか」ということです。
会葬御礼(としての粗供養)と香典返しは、本来は別個のものです。香典返しの金額の相場がだいたい3,000円~5,000円くらい(ここでは3000円と仮定)ですから、「会葬御礼としての粗供養と、香典返しを一緒に当日に返す」という場合は、「会葬御礼としての粗供養を500円~1,000円程度で用意して、それとは別に香典返しを2,000円~2,500円程度で用意をする。そして受付ですぐに渡す」とするかたちをとることになります。
「施主と喪主がそれぞれ粗供養を用意するやり方」をとるのであれば、喪主の用意した粗供養1000円分+施主の用意した粗供養1000円分+香典返し1000円分……という3つの物が用意されることになります。
ただ、葬儀会社や地域によっては、「会葬御礼としての粗供養と当日返しの香典返しは、一緒にしてしまってよい。その代わり、香典返しのところに会葬御礼に対する御礼をしたためた礼状はがきを差し込む」「会葬御礼としての粗供養と当日返しの香典返しは一緒にする。その代わり、塩を別に渡す」などのような考え方をとるところもあります。
このような場合は粗供養と香典返しを一つにとりまとめ、3000円程度のものを1つお渡しするかたちをとることもあります。
いずれの場合にせよ、当日に粗供養(即日の香典返しあるいは会葬御礼)を返す場合は、相手の不祝儀の金額は問題になりません。その場で不祝儀袋を開けるわけにはいきませんから、一律で同じ金額のものをお渡しすることになります。なお、非常に多くの不祝儀をいただいた場合は、後日改めて香典返しをお持ちする必要が出てきます。
会葬御礼としての粗供養と香典返しは、基本的には別個のものです。ただ、「絶対に分けて贈らなければならない」というものでもありません。
このあたりを理解しておくと、「会葬御礼としての粗供養」と「即日返しの粗供養」が整理しやすいでしょう。
「粗供養=後日の香典返し」とした場合
香典返しとは、本来はいただいた不祝儀の2分の1~3分の1程度の物品をお返しするものです。このため、「粗供養=後日の香典返し」としてとらえた場合は、いただいた不祝儀の2分の1~3分の1がお返し金額の目安となります。
ただ、「10万円を超える不祝儀をいただいた。これの2分の1をお返しするのは苦しい」というような場合は、4分の1程度でも問題はないとされています。10万円ならば25000円程度の物品を返す……ということです。
後日に香典返しとして粗供養を返す場合は、即日の香典返しや会葬御礼としての粗供養とは異なり、いただいた金額に応じて調整することになります。
いただいた不祝儀の金額は必ず記録にとっておき、失礼のないようにしたいものです。
粗供養として渡すのに相応しい品物~押さえるべきポイント3点
会葬御礼としての粗供養にしろ、香典返しとしての粗供養にしろ、お贈りするときは「品物」で返すことになります。
では、粗供養に相応しい品物とは何なのでしょうか。
弔事なので消えるものが良い
まず基本として、「不祝儀のお返しに関しては、キエモノを選ぶ」というルールがあります。悲しみを長引かせないようにするとも、いろいろな人が来るから好みに関わるものを贈らないようにするためともいわれています。
この基本を踏まえると、下記のようなものがおすすめのカテゴリーとして挙がってきます。
- お菓子
- 飲み物
- 洗剤とせっけん
- タオルやハンカチ
- カタログギフト
それぞれ解説していきます。
お菓子
粗供養としてお菓子が選ばれることがあります。お菓子はキエモノの代表格であると同時に、非常に種類や選択肢が豊富という強みがあります。3000円程度の物でもかなり見栄えのよいものを選べるのもメリットです。
かつて弔事に用いられるお菓子といえば和菓子が中心でしたが、現在は洋菓子もよく選ばれます。慶事に使われるバウムクーヘン(年輪を意味し、長寿などの意味も持つ)は、弔事に用いてもよいものです。また、カステラなどを選ぶのも悪くありません。
お菓子はそれほど重くなく、持ち運びしやすいのもメリットです。ただ、日付はよく見ておきましょう。できるかぎり日持ちをするものを選ぶのが基本です。また、個別包装になっているものをチョイスしてください。
飲み物
お茶に代表される「飲み物」もまた、粗供養の代表例といえます。お茶は仏教と関わりがあることやキエモノであることが理由の代表ですが、かつて高価な品物であり体に良いとされているので「養生してください」「大事にしてください」と伝える意味もあるとされています。
紅茶やコーヒーなどが選ばれることもあります。ただ、紅茶やコーヒーはお茶よりも一般的ではなく、これを粗供養として選ぶケースはそれほど多くはないと思われます。特段の事情がない限りは、好みの分かれにくいお茶を選ぶのが安全でしょう。
なお、同じ「飲み物」に分類されますが、お酒は原則として選びません。これは慶事を強くイメージさせるものだからです。
洗剤とせっけん
「悲しみを洗い流す」という意味を持つこと、キエモノであることから、洗剤やせっけんもよく選ばれます。
大きな箱ではなく、小さめのサイズが選ばれます。また、香りがきつくない、スタンダードなものを選ぶのが基本です。
タオルやハンカチ
粗供養にはキエモノを選ぶのが基本ですが、タオルやハンカチは例外的に「粗供養の代表的な品物」として取り上げられます。
日々使うものであること、人を選ばずに贈ることができるのに種類やデザインが豊富であることが、よく選ばれる理由です。ただ、デザインが豊富とはいっても、基本的には落ち着いた色合い・デザインのものを選ぶのが基本ではあります。
また、ハンカチやタオルには、「この悲しみをぬぐう」「悲しみを包む」という意味があるともいわれています。
カタログギフト
近年注目を浴びているのが、「カタログギフト」です。
カタログギフトのメリットはいくつかありますが、「粗供養をもらった人が、自分で任意のものを選べること」が大きいといえます。粗供養ではお酒やお肉などは避けるべきものとして扱われますが、カタログギフトのなかから選んで注文する分には問題ありません。
持ち運びがしやすいこと、好みのものを選んでもらえること、また予算に応じて決めやすいことから、カタログギフトを粗供養として選ぶ人もいます。
故人が愛したもの
「キエモノ」「好みが出にくいもの」を粗供養の品物として選ぶのが基本ですが、「故人が愛したもの」を選ぶことも良いとされています。
たとえば、ビール券やお酒は基本的には避けるべきものです。しかし故人が、生前に終活の一環として「気に入っているお酒があったからそれを配りたい」などといっていた場合は、これを贈るのも悪くはありません。
地方によっては2種類以上を組み合わせるところもある
2種類以上のものを組み合わせる場合は、同じ系統のものでまとめると違和感がないでしょう。たとえば、ハンカチならばハンカチとタオルのセットで、乾物ならば海苔と海苔の加工品をセットにして贈るなどです。また、お菓子を贈る場合はお菓子にバリエーションを持たせてもよいでしょう。
粗供養の品物として選ばないほうがいいもの
粗供養の品物としては、お酒は避けるべきです。
また、ビール券や商品券などの、「お金」を直接イメージさせるものも避けます。
お肉や魚は生臭類にあたるので、特に当日返しの場合は避けるべきです。
また、昆布などの慶事に使われがちな品物も選ばない方がよいでしょう。
ただ、故人やご家族の強い希望があるのであれば、これらを選んでも構いません。実際、ビール券を粗供養(香典返し)としていた葬儀もありました。
粗供養を渡すのは葬儀や法事・法要のとき
「粗供養を渡すのは、通夜・葬式告別式のときもあれば、法要のときもある」としました。
では、実際に渡す「タイミング」についてはどうなのでしょうか。
通夜・葬式告別式のときに参列者に粗供養を渡すタイミング(即日の会葬御礼として)
即日返しの香典返しあるいは会葬御礼として粗供養を渡す場合は、受付のカウンターでお渡しすることになります。
通夜・葬式告別式に足を運んできた弔問客は、特段の事情がないかぎり、まず先に受付のカウンターに寄ります。そしてそこで記帳を行い不祝儀を出し、代わりに粗供養を受け取ります。この段階で、粗供養の受け渡しが終わります。
ただ、「受付で番号札が渡されるので、通夜・葬式告別式が終わった後で、その番号札と引き換えに粗供養を受け取る」というやり方をとっているところもあります。
なお、受付で渡しが行われる場合は、基本的には受付の係が受け渡しを担当します。受付の係は喪主の会社の付き合いのなかや、町内の人から選ばれるのが基本です。つまり、親戚や遺族がこれを直接渡すことはあまりありません(例外はあります)。
葬式・告別式のときに親族に粗供養を渡すタイミング(引き出物として)
粗供養を「引き出物」として位置づけた場合は、食事の後に渡すことになります。
現在は、葬式告別式が終わる→出棺、家族や親族極めて親しかった友人だけで火葬場に向かう→火葬→収骨→元の葬儀式場に戻ってきて繰り上げ初七日法要→精進落としの食事……という流れをとるのが一般的です。
この場合は、精進落としの食事が終わった時点で粗供養を渡すことになります(食事の会場のイスの下に、粗供養を入れた袋が用意されていることもあります)。
法事・法要のときに粗供養を渡すタイミング(法要のお返しとして)
「後日に贈る香典返し」としての粗供養ならば、ご挨拶のときに渡すことになります。
法事・法要のときに渡すものを「粗供養」として位置づけた場合は、法事・法要が終わった後に渡すことになります。
なお、親族たちがお菓子などを持ち寄った場合は、それをばらして粗供養と一緒に持って帰ってもらうやり方をとることもあります。
粗供養を渡すときに気をつけたほうが良いマナー
日本には、「表書き」「水引」の文化があります。粗供養を渡す場合でも、これは非常に重要になります。
粗供養につける品物の表書きや水引について紹介していきます。
品物の表書き
品物の表書きは、そのまま「粗供養」です。ただ、「志」とすることもあります。また、満中陰に渡す場合は「満中陰志」とすることもあります。
関西では「粗供養」とされることが多いといえます。また、四国や中国地方でもよく粗供養と書きます。ただ、関東圏を代表とするほかの地方においては、粗供養という言い回し・単語自体がそれほど知られていません。
迷ったのならば「志」「(満中陰に渡す場合は)満中陰志」とするのがよいでしょう。
これもあくまで体感的なものではありますが、いろいろな地方の葬儀・葬式告別式、法要の場面でも、「志」とする表現を使っているケースが一番多いように思えます。
なお、今回は主に仏教の葬儀・法要について解説してきましたが、神式の場合はよく「偲び草(しのびぐさ。「偲草」「しのび草」とも)」の表現を使います。粗供養の場合でもこの表書きを使うことがあります。また、キリスト教でもこの表現を用いることがあります。
水引について
水引は、「香典返しや会葬御礼として粗供養をとらえているのか、それとも法要の後にお渡しするものとして考えているのか」によって異なります。
香典返しや会葬御礼として粗供養をとらえている場合は、黒白の水引を使うのが一般的です。黒白の水引は弔事の場面において広く用いられるものです。
法要の後にお渡しする引き出物として粗供養をとらえている場合は、黄色と白の水引をかけます。
ただ、これはあくまで「一般的な例」です。実は水引の色にも地方差があるからです。一部の地域では、通夜・葬式告別式のときであっても、黄色と白の水引を使うことがあります。
ただ、どのような地域・どのような状況であっても、粗供養の水引には「結び切り」を選ぶことになります。結び切りは「二度と繰り返さないこと、繰り返してほしくないこと」に採用されるものです。弔事によく使われますが、結婚式などでも使われます。
それぞれの解釈による違い
最後に、それぞれの解釈による違いをリスト化します。「粗供養をどうとらえるか」によって変わってくるポイントをまとめました。
会葬御礼もしくは当日返しの香典返しとして | 後日の香典返しとして | 法要の後にお渡しするものとして | |
---|---|---|---|
だれが贈るか | 喪主・施主・場合により他親族や弔問客 | 喪主・喪家 | 喪主・喪家 |
時期 | 通夜・葬式告別式当日 | 四十九日法要~四十九日法要の1か月後まで | 一周忌以降 亡くなってから○年目の近くの土日(前倒し可、後ろ倒し原則不可)に行われることが多い |
タイミング | 受付で記帳後もしくは終わった後に引き換え | 直接挨拶に行くのであれば、お相手の御都合の良い日に | お帰りの際の引き出物としてお持ちいただくのが基本(イスの下などにいれておくこともある) |
金額 | 会葬御礼としてだけなら1000円程度 香典返しと一体になるのであれば3000円~5000円程度。 | いただいた不祝儀の2分の1~3分の1程度 多額の場合は4分の1程度でよい | 3000円~5000円程度 |
水引 | 黒白が基本。地域によっては黄白 | 黒白が基本。地域によっては黄白 | 黒白が基本、双銀や黄白も使われる |
御礼状 | 会葬御礼の御礼状としてつけるのが一般的(香典返しにさしはさむなど) | 直接伺う場合は不要、送る場合は必要 | 不要(出しても構わない)。ただし、「参加はできなかったがご厚志はいただいた」という人には出す。 |
お渡しするときの挨拶文言
面と向かってお一人おひとりに挨拶ができる……という場合は挨拶状を用いないのが一般的ですが、「大勢の人にお渡しする会葬御礼もしくは即日返しの香典返しとして粗供養を使う」「後日に贈る香典返しとして粗供養をお渡しするが、直接お会いするのではなく、郵送をする」という場合は、挨拶状が必要となります。
状況が違うわけですから、当然中身も変わってきます。
会葬御礼や即日返しの香典返しとして粗供養をお渡しする場合
この場合は、
- 故人の名前(と喪主/施主との関係性)
- 来てくれたことの御礼
- 生前にお世話になったことへの御礼
- 書面で失礼することのお断り
を入れるのが基本です(3は省かれる場合もあります)。
たとえば
「亡父 ●●●儀 葬儀に際しましてご多忙中に関わらずご会葬いただきまして まことにありがたく 厚く御礼申し上げます
生前賜りましたご厚情に深謝申し上げます
略儀ながら書面にて御礼とご挨拶を申し上げます
日付
喪主の名前
外 親戚一同」
などのように記すことになるでしょう。
後日の香典返しとして粗供養をお渡しする場合
後日香典返しをお贈りする場合の挨拶状の基本は、以下のようになります。
- 頭語
- 故人の名前(と喪主/施主の関係性)
- 会葬の御礼と香典をいただいたことへの御礼
- 法要が終わったことの御礼(香典返しは四十九日法要が終わった後、1か月以内に贈るのが基本)
- 品物を送付した胸
- 書状で挨拶することを詫びる文章
- 結びの言葉
で構成するのが基本です。
謹啓
先日亡父●●の葬儀に際しまして ご多忙の中ご会葬賜り ご丁重なご厚志賜りましたこと 深く御礼申し上げます
おかげさまをもちまして○月○日に四十九日法要を滞りなく執り行いました
追善のしるしとして心ばかりの品をお届けいたしますのでお納めいただけますようお願い申し上げます
本来はお目にかかり直接御礼を申し上げるべきところ 失礼ではございますがまずは書中にてご挨拶申し上げます
敬具
日付
喪主の名前
などとします。
現在はテンプレートも多く出ているので、それほど迷うこともないでしょう。なお、どちらの文面でも句読点は打たない方が無難です。「打った方が読みやすい」という考えがある一方で、「句読点を打つということは、葬儀などに滞りが出ることをイメージさせる」と考える向きもあるからです。
なお、法事の場合は基本的には挨拶状は不要です。ただ、希望すればつけることは可能です。また、「法事には参加できないが、ご厚志はいただいた」という場合にはお礼状を出します。
粗供養について迷ったらスタッフや親族に相談を
粗供養だけでなく通夜・葬式告別式、また法要全般について言えることではありますが、言葉の意味やマナー、どのように解釈すべきかは、土地によって異なってきます。また、ご家族間でのルールなどがある場合もあります。
このため、実際に執り行う際に、困ったことやわからないことが出たら、葬儀会社のスタッフや親族に相談してください。葬儀会社のスタッフは、通夜・葬式告別式だけでなく法要にも通じています。
このため、「会葬御礼・即日返しとしての粗供養」だけでなく、「法要の後の粗供養」についても相談にのってくれます。またその際にはご家族のご意向も確認されることがありますから、こだわりのある親族がいる場合はその意見も聞いておくと話がスムーズに進みます。
通夜・葬式告別式、あるいは法要というものは、多くの人にとって非日常的なものです。わからない単語もたくさん出てきます。特に「粗供養」は、解釈が分かれる単語でもあります。
不明点は相談して解決していってくださいね。
まとめ
「粗供養」という言葉は、非常に多くの意味を持つものです。
基本的には「故人に寄せられたご厚志に対する御礼」と考えますが、さまざまな解釈があります。
- 会葬御礼としてもしくは即日の香典返しとして用いる
- 後日に贈る(送る)香典返しとして用いる
- 一周忌法要などの後に行う引き出物として用いる
によって、それぞれ、
- だれが贈るか
- 時期
- タイミング
- 金額
- 御礼状の有無
が変わってきます。
会葬御礼もしくは当日返しの香典返しとして | 後日の香典返しとして | 法要の後にお渡しするものとして | |
---|---|---|---|
だれが贈るか | 喪主・施主・場合により他親族や弔問客 | 喪主・喪家 | 喪主・喪家 |
時期 | 通夜・葬式告別式当日 | 四十九日法要~四十九日法要の1か月後まで | 一周忌以降 亡くなってから○年目の近くの土日(前倒し可、後ろ倒し原則不可)に行われることが多い |
タイミング | 受付で記帳後もしくは終わった後に引き換え | 直接挨拶に行くのであれば、お相手の御都合の良い日に | お帰りの際の引き出物としてお持ちいただくのが基本(イスの下などにいれておくこともある) |
金額 | 会葬御礼としてだけなら1000円程度 香典返しと一体になるのであれば3000円~5000円程度。 | いただいた不祝儀の2分の1~3分の1程度 多額の場合は4分の1程度でよい | 3000円~5000円程度 |
水引 | 黒白が基本。地域によっては黄白 | 黒白が基本。地域によっては黄白 | 黒白が基本、双銀や黄白も使われる |
御礼状 | 会葬御礼の御礼状としてつけるのが一般的(香典返しにさしはさむなど) | 直接伺う場合は不要、送る場合は必要 | 不要(出しても構わない)。ただし、「参加はできなかったがご厚志はいただいた」という人には出す。 |
なお、「粗供養」という表現は地域によってはあまり聞きなじみがないため、場合によっては「満中陰志(四十九日法要の場合)」や「志」、あるいは「偲び草(主にキリスト教や神式)」などのような呼び方がとられることもあります。
現在、粗供養の品物としては以下のようなものがよく選ばれています。
- お菓子
- 飲み物
- 洗剤とせっけん
- タオルやハンカチ
- カタログギフト
これらは、基本的に「キエモノ」です。また好みを選びにくいものであったり、宗教的な意味があったりするものでもあります。あまり重くならないのも魅力です。なおカタログギフトの場合は、「その人が必要とするものをもらえるように」という気遣いもあります。
お酒などの「慶事」をイメージさせるものは原則として避けますが、故人が特に愛したものであったのならばあまり問題にはされません。
粗供養は非常に多くの解釈を持つ言葉ですし、どのような解釈をするかで贈るタイミングや金額、贈り主も変わってきます。そのため、必ず事前のすりあわせが必要です。
また、もし不明点があるのであれば、葬儀会社のスタッフに相談してください。葬儀会社のスタッフは、通夜・葬式告別式のときのみ働くと思われがちですが、実際には法要。法事に関しての知識も持っています。そのため、「法事のときのお返しとしての粗供養」にも明るく、疑問点を解消してくれます。
また、親族にこだわりがある人がいるのであれば、事前にその人の意見を聞いておくことも重要です。
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
葬儀や法要等でいただく香典に対しては、「半返し」といって、金額の半分程度(実際はそれ以下が多い)の品物をお返しする習慣があります。その品物に対する呼び名は、「粗供養」「志」等さまざまです。
近年のトレンドは、「軽量」「小分け」「使い切り」でしょうか。複数持ち帰らなけばいけないケースもあるので、軽量が好まれます。また、高齢者のみの世帯が増え、小分け、使い切りの商品は利便性が高く人気があります。ウエディングのようにかつては「その人らしさ」を出した趣向を凝らしたお返し物もありましたが、あまり流行ることはありませんでした。弔事の場合は個性的な品物より、定番商品が良いのかもしれません。
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